【急募】父親を中二病から解放する方法    作:Pekky

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気が付いたらクリスマス……だと……?

はい、お久しぶりです。

恥知らずにも、こうして戻ってきました。

何の音沙汰もないまま五ヶ月程も放置になっていた言い訳として……

仕事場での突然の部署移動

今迄と全く違う仕事内容にてんやわんや

やり方の合わない同僚と大乱闘
❘❘
家に帰れない

というような事があり、感想を返すことさえままなりませんでした。

本当に申し訳ありませんでした。

ようやく仕事に慣れてきて、時間的にも余裕が生まれたので投稿となりました。

久しぶりに書いたので違和感があるかもですが、楽しんで頂ければ幸いです。


最後に一つ。

今更ですが、何人か支援絵を送りたいという有り難い方々がいました。

無視する形になってしまい、五体投地して謝罪します。

ツイッターもディスコードもやってないクソ雑魚ナメクジなので、調べてみるとハーメルンの方で投稿したものを、こちらから使用申請することで使えるのだとか。

なので連絡いただければ申請させていただきますので、お手数ですがよろしくお願いいたします。


それではどうぞ。


2スレ目

 

 USJ、目的別に分けられた7つのゾーンの内の1つ。水難ゾーン。

 

 集められたヴィランもまた、水中移動に長けた個性を持つ者ばかりだった。

 

 転移させられた生徒は3人。

 

 青山優雅、峰田実、そして緑谷出久。

 

 投げ出された場所は大きな湖の真上。足場となるのは1隻の船――――だったが、それもヴィランによって予め端に寄せられ、活用することは難しい。

 

 水中で活動出来る個性はなく、落ちれば圧倒的な不利の中で悪意に蹂躙されることだろう。

 

 今日が初めての救助訓練であった生徒に、そんな状況で的確な判断をしろというのは酷と言うもの。

 

 成す術もなく、3人が泉の中心に落ちようとして――――

 

 およそ1分と少しで、全てのヴィランを制圧していた。

 

「うおー! スッゲェェェエええ!!」

 

 涙を流しつつ両腕を突き上げ、喜びを顕わにする実。

 

 彼が船の上から見る景色は、思い浮かべていた悪夢とは真逆だ。

 

「やっぱ鬼強だぜ()()ぁ! お前と一緒で良かった!」

 

 視線の先では、()()()のようなもので拘束されているヴィラン達と、それを空中に立って眺める一人の少年。

 

 油断なく様子を窺い、全員が気絶しているのを確認してそっと息を吐いた。

 

「ここにいるのが連合メンバーじゃない奴等ばかりで良かった。魔女が率いてきた幹部も他の所みたいだし……」

 

 そう言って取り出した端末には、事の発端となった掲示板が表示されていた。

 

 通常時では制限されている者達の書き込みは嵐のように流れ、僅か数分でPart2へと突入しても止まらない。

 

 魔女側の者と一般人側の者との間で罵倒も飛び交い、混沌としか言えない様相を呈している。

 

 広場で魔女の姿を確認した瞬間からアクセスして情報収集に利用していたが、この様子ではもう使い物にならないだろう。

 

「他のゾーンには幹部もいる。すぐにでも加勢に行かなきゃ!」

 

「おいおい緑谷正気か!? いくらお前でもヴィラン連合は不味いって! 校舎に行って応援呼んだ方が良いんじゃねーのか?」

 

「僕もそう思うかな☆」

 

 恐怖で顔を歪ませて訴える実と、それに便乗する優雅。どちらも小刻みに体を震わせている。

 

 とても戦いに身を投じられる状態ではなく、出久もそれは承知の上だった。

 

「配信までされている時点で外に情報は行ってると思う。距離が遠いから時間がかかってるけど、増援はすぐに来る筈だ」

 

 そもそも魔女の計画は基本的に秘匿とは無縁だ。掲示板への書き込みこそ制限がされているが、閲覧自体は誰でも出来る。

 

 常に情報は垂れ流され、USJに侵入した時点で関係各所が動き出しているだろう。

 

 USJは校舎からバス移動する必要がある程の距離であるため、増援が到着するまで早くても10分程度はかかると思われる。

 

 雄英側がやるべきは、それまでの時間稼ぎ。

 

 たとえUSJを抜け出したとして、外になんの脅威もないとは限らない。相手は魔女なのだ。常に最悪を考えても足りないくらいだ。

 

「1人でも多く合流して、可能なら広場に戻る。それで……」

 

 それで?

 

 出久には、その先を想像出来なかった。

 

 クラスメイトと合流し、オールマイトの元に戻り、時間を稼いで、増援を待って――――

 

 それで本当に、連合と渡り合えるのか?

 

 オールマイトと同等の魔女、それに次ぐ力を持った連合幹部がいる。雄英の教師は皆が現役プロヒーローだが、そのプロヒーローを苦もなく薙ぎ払うような超一級のヴィランばかりなのだ。

 

 はっきり言って絶望的だ。1-Aどころか、今日で雄英高校そのものが終わったって不思議じゃない。

 

 日本どころか、世界を相手に大暴れする最悪の犯罪者集団。それがヴィラン連合。

 

 断じて、一教育機関がどうこうする範疇ではない。

 

「それでも、行かなきゃ」

 

 それでも、だ。

 

 理屈は重々承知。戦力差など火を見るより明らかだ。

 

 しかし、だから、それがどうしたというのか。

 

 理不尽、不条理、絶望。

 

 それを覆すのが、ヒーローという仕事だ。

 

 そんな世界に踏み入る事を、選んだのは自分だ。

 

 選んだつもりになって、何もしていなかったあの頃とは違うのだ。

 

 再び端末を操作し、配信されている動画を一つ一つ確認していく。

 

 どのゾーンに誰が送られているのか、そこに待ち受けているヴィランが誰なのかを把握する。

 

 加えて、連合幹部に課せられた安価の内容を踏まえ、どんなルートで合流を果たすべきかを考える。

 

「僕は暴風・大雨ゾーンに行って状況を確認する。途中まで運ぶから、2人はそのまま広場に戻って、可能なら脱出して」

 

「緑谷ぁ!?」

 

「緑谷君……」

 

 実と優雅を脇に抱え、出久は飛び出す。

 

 風の如く突き進んで1分とかかることなく暴風・大雨ゾーンへの到着し、入り口で2人を下ろした出久はそのまま中へと入って行った。

 

 ドーム状の施設であるそこは、その名の通り吹きすさぶ雨風に身を晒される。

 

 視界も悪く、常に体温を奪われ、風圧に体勢を崩さぬよう注意を配り続けなければならない。

 

 そんな場所を、しかし出久は物ともせず走り抜く。

 

 素早く周囲を確認しつつ、ヴィランとクラスメイト、両者の姿を探して――――

 

「緑谷! こっち飛んで!」

 

 言葉とほぼ同時に、視界が光で塗りつぶされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

112:量産型ヴィラン

水難ゾーンまさかの瞬殺

 

113:量産型ヴィラン

速攻すぎて草

 

114:量産型ヴィラン

いや強すぎィ!?

 

115:量産型ヴィラン

え、最近のヒーロー科生徒ってこんなレベルなん?

 

116:量産型ヴィラン

動きがプロレベルにしか見えないのは俺だけ?

 

117:量産型ヴィラン

いくら幹部のいない当たりゾーン引いたからって流石になぁ

 

118:量産型ヴィラン

でも他の2人は一般的な反応というか、イメージ通りの新入生って感じ

 

119:量産型ヴィラン

たしかに何もしてなかったよな

 

120:量産型ヴィラン

あの緑ワカメが特別だっただけか?

 

121:量産型ヴィラン

あんなフツメン顔がチート能力持ちとかラノベかよ

 

122:量産型ヴィラン

黒い鞭みたいなのと、増強効果もある感じだったな

 

123:量産型ヴィラン

黒いエネルギーみたいなのを操る個性で、体に纏って増強も出来るし、形を変えて武器にする事も出来るみたいな?

 

124:量産型ヴィラン

個性もそうだが、いきなり転移させられたのに対処が早すぎてお茶吹いたわ

 

125:量産型ヴィラン

明らかに素人じゃないな。入学前から訓練積んでたタイプ

 

126:量産型ヴィラン

水難ゾーン即終了して暴風・大雨ゾーンに合流してくれたのは有難い。これでPCの負担減るわ

 

127:量産型ヴィラン

それな

 

128:量産型ヴィラン

俺もうカクカク過ぎて何もわからない

 

129:量産型ヴィラン

どれかに絞って見ろや

 

130:量産型ヴィラン

火災ゾーンもすぐに終わりそうだぞ

 

131:量産型ヴィラン

ほんとだ。頑張ってるやんけ

 

132:量産型ヴィラン

カエルっぽい子がめっちゃグロッキーやん

 

133:量産型ヴィラン

そら苦手のオンパレードみたいな場所にぶち込まれたもんな

 

134:量産型ヴィラン

もう一人のスタ○ド使いみたいな鳥頭も戦いにくそうだし、MVPは風使い男子やな

 

135:雄英生(風の子)

『吹ぅぅぅきぃぃぃ飛ぉぉぉべぇぇぇええッッ!!(大嵐)』

 

136:量産型ヴィラン

うわーお

 

137:量産型ヴィラン

ほんまに吹き飛んだ

 

138:量産型ヴィラン

大技炸裂ぅ

 

139:量産型ヴィラン

人がゴミのようだ(大佐並感)

 

140:量産型ヴィラン

これで水難と火災の2ヶ所クリアか

 

141:量産型ヴィラン

見事と言いたいが、幹部がいない所だし多少はね

 

142:量産型ヴィラン

入学直後の学生がチンピラとは言え勝ててるだけでも凄いだろ

 

143:量産型ヴィラン

たしかに

 

144:量産型ヴィラン

風チームは山岳ゾーンに向かうようですな

 

145:量産型ヴィラン

今更だが、マイクさんが声を拾ったり拾わなかったりしてるのは何で?

 

146:量産型ヴィラン

そりゃ全部の声逐一拾ってたら何が何だかわからんくなるだろ。多分俺らの会話から要所要所で拾ってくれてるのだと思われ

 

147:量産型ヴィラン

さすがマイクさん

 

148:量産型ヴィラン

さすマイ

 

149:量産型ヴィラン

さすマイさすマイ

 

150:量産型ヴィラン

お、緑ワカメが暴風・大雨ゾーンに入ったぞ

 

151:量産型ヴィラン

激戦区の一つに迷いなく入ってしまったな

 

152:量産型ヴィラン

おい、俺が下痢と戦ってる間に何が起こった? Part1だった筈がPart5までぶっ飛んでるのは目の錯覚か?

 

153:量産型ヴィラン

下痢ww

 

154:量産型ヴィラン

とりあえず過去スレ見てから出直してこい

 

155:量産型ヴィラン

一般スレ民との罵倒大会に出られなかったとは可哀想に……

 

156:量産型ヴィラン

Part5に入った段階で制限戻ったからな

 

157:量産型ヴィラン

かつてない爆速スレの嵐で付いて行くのがやっとだったわww

 

158:量産型ヴィラン

最後の方なんてゴミとかカスとか小学生レベルの罵倒しか飛んでなかったしな

 

159:量産型ヴィラン

空気の読めない安価コメしてBAN(物理)された連中はどうなってるんだろう?

 

160:量産型ヴィラン

幹部勢に自首しろだとか、魔女○ねとか言ってた奴等な。個人情報と共に検索履歴だの購入履歴だの暴露された哀れなアホ

 

161:量産型ヴィラン

調子に乗りまくってたアンチ勢が一気に大人しくなってたのは笑った

 

162:量産型ヴィラン

あんなどうでもいい野郎どもの話はおいとけ。暴風・大雨ゾーンが佳境に入るぞ

 

163:量産型ヴィラン

ほんとだ

 

164:量産型ヴィラン

エンデヴァージュニアの炎ビームが緑ワカメに当たりそうになっとるやんけ!!

 

165:量産型ヴィラン

間一髪で避けたが、当たってたらヤバかったな

 

166:量産型ヴィラン

腕立てニキが避けたせいで流れ弾が……

 

167:量産型ヴィラン

なんでや! 腕立てニキ悪くないやろ!

 

168:量産型ヴィラン

そもそもヴィランである

 

169:量産型ヴィラン

ピンク女子の言葉がなければ危うかったな

 

170:量産型ヴィラン

ほんとほんと、ピンク女子のおかげだな

 

171:量産型ヴィラン

ピンク女子えらい

 

172:量産型ヴィラン

ピンク女子ばんざーい

 

173:量産型ヴィラン

ピンクピンクうるせぇぇぇぇええええ

 

174:量産型ヴィラン

エッッな表現かと思いきや、ガチで全身ピンクやしな

 

175:量産型ヴィラン

目も黒いし、角生えてるし、なんの異形かわからん

 

176:量産型ヴィラン

しかも酸性の液体ぽいの出してるぞ。雨のせいかあんま効果ないけど

 

177:量産型ヴィラン

どこのエイリ○ン?

 

178:雄英生(酸女)

『緑谷、大丈夫!?』

 

179:雄英生(緑ワカメ)

『芦戸さん!? それとあれは……轟君!』

 

180:量産型ヴィラン

エンデヴァージュニアVS腕立てニキが激熱だぜ

 

181:量産型ヴィラン

炎と氷を両方使える個性とか強いやん

 

182:量産型ヴィラン

実質個性二つ分だもんな

 

183:量産型ヴィラン

尚相手……

 

184:量産型ヴィラン

そうなんだよなぁ

 

185:量産型ヴィラン

比べる相手が悪いw

 

186:量産型ヴィラン

でも火力で言えば良い線行ってるっぽいな

 

187:量産型ヴィラン

数年前のエンデヴァーくらいには炎の勢いある気がする

 

188:量産型ヴィラン

氷の足場の上を滑って高速移動してるし、既に並のプロヒーロ―超えてるくね?

 

189:量産型ヴィラン

機動力と攻撃力は間違いなくトップヒーロー級に足突っ込んでるやろ

 

190:量産型ヴィラン

 そ し て イ ケ メ ン

 

191:量産型ヴィラン

クソが

 

192:量産型ヴィラン

氏ね

 

193:量産型ヴィラン

イケメンは処すべし

 

194:量産型ヴィラン

強個性+イケメンとか許せぬ

 

195:量産型ヴィラン

羨ましいくたばれ(お前らそこまでいう事ないだろ)

 

196:量産型ヴィラン

この世の不条理を見た

 

197:量産型ヴィラン

神は二物を与えたと言うのか!

 

198:量産型ヴィラン

どうして世界はこんなに残酷なのか

 

199:量産型ヴィラン

俺の中の暗黒面が疼くぜぇ

 

200:量産型ヴィラン

この鬱憤は、イケメンの顔が苦痛と恐怖に歪む瞬間を拝む事でしか癒されない

 

201:量産型ヴィラン

屈折し過ぎてて草

 

202:量産型ヴィラン

男の醜い嫉妬の嵐

 

203:量産型ヴィラン

 

204:雄英生(緑ワカメ)

『轟君!』

 

205:雄英生(紅白頭)

『緑谷!?』

 

206:腕立て師

『……あぁ、来たか。思ったより早かったな』

 

207:量産型ヴィラン

合流したな

 

208:量産型ヴィラン

これは見逃せんぜ

 

209:量産型ヴィラン

連合による蹂躙劇になるかと思ってたのに、嬉しい誤算

 

210:量産型ヴィラン

それな

 

211:量産型ヴィラン

お手並み拝見といこうか(上から目線)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 吹き荒れる雨風の中、3人は対峙する。

 

 体から蒸気を立ち昇らせ、肩で息をしている轟焦凍。

 

 合流したクラスメイトを気にしつつも、敵を注意深く観察している出久。

 

 体の半分を、赤黒い泥を鎧のように纏いつつ佇む師岡立哉。

 

「チンピラだけとは言え、この短時間で20人以上を制圧して来るとはな。新入生とは思えない活躍ぶりじゃないか」

 

 平然と話す立哉の周りはしかし、雨の中で燃え盛る炎の海だった。

 

 建物は崩れ落ち、大きな爆発でも起こったかと言う有様。

 

 その中心にあって無傷で立つ姿は異様の一言だろう。

 

「……ちっ。あれでもダメージなしかよ」

 

 舌打ちした焦凍であったが、半ば予想通りでもあった。

 

 現状の最大火力を放った結果だが、元より個性に不調をきたしているのだ。

 

 炎と氷の両方を扱う「半冷半燃」。強力無比な個性である一方、天候等の違いにより大なり小なり影響を受けてしまう。

 

 降り注ぐ雨水によって火力は減衰し、感覚的には通常の7~8割程度にまでなっている。

 

 ただでさえ埒外の難敵。万全の状態であっても勝機に乏しいのだ。

 

 もう一方の氷は正面から受けた上で砕かれるため、決定打に欠けるのが現状。

 

 せめて戦場を別に移したいというのが焦凍の本音だ。

 

「轟君、相手の個性の情報はある?」

 

「あんまりだな。黒い泥と増強系しか使って来ねぇ。影で相手の動きを止める個性も含めて、他の個性を何も使わねーんだ」

 

 つまり、手加減されている。

 

 プライドが傷つくのもそうだが、まだ手札が残されている脅威もある、

 

 そう考えて表情が歪む焦凍だったが、それを出久が否定する。

 

「使わないんじゃなくて、使えないんだ。向こうは今、使用できる個性を制限されているから」

 

「何……?」

 

 怪しむ焦凍に差し出されたのは、出久の携帯端末。

 

 そこには魔女の掲示板が表示され、とある書き込みで画面を止めてあった。

 

 そこに映し出されていたのは――――

 

「今回の戦いで使える個性は4つ迄――――そう、それが俺の安価だそうだ」

 

 安価によって設けられた課題、その成果。

 

「どっちサイドのコメが当たったのか……ま、ここの安価にしては良心的で助かったと考えるべきだろうな」

 

 言下に、体から泥が溢れ出す。

 

 押し上げられるように立哉の体が浮き、触手のように伸びた先端が蛇の頭を模った。

 

 計8本のそれは、神話に出る八岐大蛇の如く。

 

「時間もそれほどないし、続けようか」

 

 迫り来る大蛇の顎。

 

 巨体が空気を割き、唸り声にも似た轟音を響かせる。

 

「ワンパターンかよ!」

 

 焦凍が地面に手をつき、氷壁を形成する。

 

 トンネルのように大きく穴を穿ったそれに、大蛇を止める能力はない。

 

 用途は足止めではなく、逃げ道を塞ぐ事。

 

 続けて放たれた炎が、大蛇を焼き尽くした。

 

「そっちも対応が同じだが、他はどうする?」

 

 左右と上、三方からの同時攻撃。

 

 高火力の一撃はどうしたって、技後の隙を補い難い。それが経験の浅い者であれば尚更に。

 

 そのまま成す術なく蹂躙され――――とは、もちろんならない。

 

「Oklahoma SMASH!!」

 

 跳び上がった出久が黒い鞭を伸ばし、独楽のように体ごと回転した。

 

 空気を裂く音と共に鞭がうねり、大蛇の首を斬り飛ばすにとどまらず、発生した余波で残りの大蛇も吹き飛ばした。

 

 衝撃が雨を押し飛ばし、一瞬だけ止んだ。

 

「ッ――――!」

 

 直後、何かを察知した出久が背後に裏拳を放った。

 

 発生した衝撃が再度、雨を押しやった。

 

「今のは勘か? 狩人ニキにも太鼓判押されてたんだがな」

 

 いつの間にか回り込んでいた立哉が訝し気に呟く。

 

 出久の拳と、受け止めた立哉の手からバチバチとエネルギーが迸る。

 

「これも安価だから言うけど、これで三つ目な。気配遮断っていう、まぁ狩人ニキの下位互換みたいなもん」

 

「DETROIT SMASH!」

 

 会話に付き合わず追撃。が、当然防がれる。

 

 予期していたように返された拳撃により、互いに弾かれて距離が空いた。

 

 すかさず焦凍の氷が立哉を呑み込まんと迫り、泥の津波が相殺する。

 

 出久と焦凍。今年度の新入生において最強を囁かれる2人の猛攻を、立哉は苦もなく捌き続ける。

 

 建物が倒壊し、路面が抉れ、電柱が小枝のように吹き飛ぶ。

 

 戦いの激化は、ドームの構造部にダメージが達しても尚、止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが日本最高峰と言われる雄英の生徒ですか……」

 

 山岳ゾーン。

 

 整備の不十分な険しい道と、切り立った崖。

 

 凹凸の激しい足元は移動に苦労し、慣れない者は踏破するだけで体力を削られる。

 

 連合の戦力は、寄せ集めのヴィラン紛いが十数名。まとめているのは、魔女一の忠臣(自称)たる、ヒュドラちゃんであった。

 

 相対するのは、尾白猿夫、上鳴電気、耳郎響香の三名。

 

 多勢に無勢にありながらも、気丈にヴィランに立ち向かい、十人近くを無力化した――――というのは、少し前までの話。

 

「他愛もないですね。まぁ、入学したての雛としては頑張ったと言えるでしょう」

 

 膝を突く3人に対するヒュドラちゃんは、成果を誇るでもなく淡々と言う。

 

 彼女の周囲には毒々しい色の霧が漂い、他のヴィランは風上に集まって事態を見ているだけ。

 

 毒を防ぐ術を持たなければ、同じく行動不能になってしまうからだ。

 

 対多数を得意とする代わりに共闘に向かない。故にヒュドラちゃん以外で山岳ゾーンにいるヴィランは他所と比べて少ない。

 

 無論、ヒーローの卵達にとっては何の慰めにもならないが。

 

「体がっ……動かな……!」

 

「やべぇって、これ!」

 

「う……こんのっ!」

 

 ヴィランの目前で無防備を晒している。

 

 そんな危険を理解出来ない筈もなく、三人は顔を青褪めさせている。

 

 必死に体を動かそうともがく雄英生を見て、ヴィラン達はニヤニヤと嘲りの笑みを浮かべていた。

 

「これでは見栄えも何もありませんね。せっかくの安価も活かせず、これでは葬様も楽しめないではないですか」

 

 溜め息をついて、手にした端末を確認する。

 

 彼女に課せられた安価は、戦闘開始時点から移動しない、及び致死性の毒禁止。

 

 ヒーロー側としては有利なものだろうが、結果として大した効果はなかった。

 

 そもそも雄英生は安価を確認しない限り、それを踏まえた戦術も組めない。特に教えろという指示もない以上、殆ど意味はない。

 

 ヒュドラとしては、無難過ぎる安価内容にも、呆気なさすぎる勝利にも溜め息しか出ない。

 

 これでは主に楽しんでもらえないじゃないか、という理不尽な不満が溢れるばかりだ。

 

 せめて雄英生が予想外のプルスウルトラでもして、危機を覆してくれれば良いのに。

 

「あとは好きにして構いませんよ。あなたたち」

 

 なので、そう言った。

 

「ハハッ。良いんですかい?」

 

「譲ってくれるなんてありがてぇや」

 

「へへへ、そんじゃ可愛がってやろうじゃねぇか」

 

 待機していたチンピラが、卑しい笑みを深めて雄英生に近づく。

 

 ピンチに追い込んで覚醒でもすれば良し。ヒーローの卵が成す術もなくヴィランに嬲られるのも、それはそれで配信としては面白いだろう。

 

 血の気が引いた表情の雄英生三人を眺め、ヒュドラは口元を吊り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奥義、全裸修羅!」

 

「いやぁぁぁあああ変態ぃぃぃいいい!!」

 

 土砂ゾーン。

 

 その名の通り、土と埋もれた瓦礫しかない。

 

 そこに飛ばされた雄英生は、障子目蔵、瀬呂範太、葉隠透の3名。

 

 迎え撃つはなんちゃってヴィラン二十数名と、全裸ニキこと禅羅大輝。

 

 安価の結果を待って動かなかった大輝を他所に、有象無象のヴィランを必死に対処していた雄英生の奮闘は見事と言う他なかった。

 

 気付けば残り数名しか残っていないという状況になっており、流石はヒーローの卵と拍手を送ったくらいだ。

 

 そんな最中、大輝に課される安価が決まり、それは実にシンプルだった。

 

 

 最初から全力全開(クライマックス)で(笑)

 

 

 この結果を見たヒーロー側の人間達から血の気が引いたが、まったくの余談である。

 

 よって最初から大輝は奥の手を発動。個性的にも物理的にも全てを解き放った。

 

 迸る力の奔流によって衣服が塵となり、鍛え上げられた肉体が惜しげもなく晒される。

 

 全身を包むオーラが炎のように揺らめき、それに合わせて髪も局部も靡いていた。

 

 目にするだけで色々な意味でたじろぐであろう姿を前に、真っ先に反応したのは雄英側の紅一点。

 

 透明化という個性を持つ彼女は姿が見えず、手袋と靴のみが動いているように見える。

 

 個性を活かすためのコスチュームと言えば聞こえは良いが、見方を変えれば手袋と靴しか着用していないということである。

 

 つまり、花の女子高生がほぼ全裸ということであり――――

 

「何を驚く同志よ。それほど洗練された全裸を晒しながら、この程度で悲鳴を上げるなど嘆かわしい」

 

「洗練された全裸ってなに!? 私のは個性のためだから! べつに見せようとしてるわけじゃないし!」

 

「ふっ、嘘だな。我にはわかる」

 

 手をブンブンと振り回し、身振りで遺憾の意を示す透。

 

 そんな様子を一笑に付し、大輝はビシッと透を指差した。

 

「個性を活かすと言いながら、なぜ手袋と靴をつけている? 真に透明化の本領を発揮するならば、一切なにもつけない事こそ正解だろう。他のヒーローとの意思疎通のため? 他人との接触で無用な混乱を起こさないため? 不慮の事故を防ぐため? たしかにそういう観点からコスチュームを着ける意義はある。だがそれなら、帽子や上着など、もっと着脱しやすいものでもよかった筈だ。特に靴など、今の技術を使えば君の体の一部を使用することで透明化する靴などの製造だって可能なはず。そうでなければ、姿勢を崩して脱ぐ都合上ヴィランの前で無防備を晒す事態にだってなり得る。つまり今のコスチュームは、最悪とまではいかずとも君の個性を活かす品として些か不適当なものなのだ。どうしてそんなものを使っているのか? 答えは明白だ――――見てもらいたいからだろう? 完全に透明化している状態で全裸でいたところで、誰にも認知されないのでは居ないも同然。しかし手袋と靴というアイテムで存在を主張することで、自然とそれ以外がスッポンポンであるという想像を相手に掻き立てさせることが可能! むしろ普通の全裸では即座に目を逸らされて終わる分、自主的な妄想を促す効果が見込めるという秀逸なアイデアだと言えるだろう! 我も全裸を信奉する者として数多くの全裸を説き、その行きつく姿を見てきたが……認めよう、その発想はなかった!! 見せるだけが全裸ではない、見せないことで輝く全裸もあるのだという逆転の境地!! 葉隠透、君の全裸への熱意と研鑽に、我は心よりの称賛と敬意を表する!!」

 

「好き勝手いうなぁぁァァァアアあああッッっ!!!!」

 

 透の魂の叫びが響き渡った。

 

 この男の発言を許せば、ヒーローどころか人として大切な何かが終わる事は確実だった。

 

 現に、残ったチンピラヴィランの何人かが、そういう趣味かよ……と言わんばかりの視線を向けているのだから。

 

 現在進行形で社会的立場が断頭台に縛り付けられている。あと一歩でスパーンと逝ってしまう。

 

 今すぐにでも元凶たる変態男に殴りかかりたいが、しかし忘れてはならない。

 

 相手はヴィラン連合の幹部格であり、プロヒーローでさえ一蹴する存在なのだ。

 

 トップヒーローでもなければ立ち向かうことさえ無謀。そんな評価を世界が下す変態。

 

 姿が見えなくなるだけの個性で相手が務まるような変態ではない。というか相手にしたくない。

 

「安心しろ同志。他の者に無粋な横槍はさせない。新たな可能性を見せてくれた礼として、我が1人で相手をしよう。さぁ――――全力でかかってこい!!」

 

 両手を広げ、前を開けっぴろげにして宣言する変態。

 

 見たくもない成人男性の生まれたままの姿を前に、思春期女子高生の精神は既に限界を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 攻撃は峰打ちのみ。

 

 それが、斬太刀殺に課された安価だった。

 

 スレ民がヒットした結果だったが、雄英生にとって優位な内容であることもあり、ヒーロー側の人間達も安堵するところだった。

 

 殺は絶望した。

 

 せっかく未来ある卵達をなます切りに出来ると思ってワクワクしていたのに、これでは生殺しもいいところ。

 

 葬の言う事は守りたいが、これは自身のアイデンティティに関する重大事である。

 

 安価は絶対。その言葉を覆すとは思えないが、そこを何卒と必要であれば頭を下げる事も辞さない覚悟だった。

 

 そんな思いで葬と連絡を取った。

 

 そして放たれた一言がこちら。

 

『峰打ちしか出来ないなら、峰で斬ればいいじゃない』

 

 殺は天啓を得た。

 

 目から鱗が落ちるとはこのことか。

 

 流石は我が剣を捧げると誓った主であると、葬への畏敬の念を深めた。

 

 まだまだ常識に捉われていた己を恥じ――――

 

「よそ見してんじゃねーぞ!」

 

 伸ばされた手を屈んで避け、お返しに振った刀は空を切った。

 

 攻撃直後の隙を晒さず、即座に移動に転じた男子生徒、爆豪勝己の眼光が殺を貫いた。

 

 殺をして驚きの反応速度。

 

 正直、自身の一刀を学生に躱されるとは思ってもみなかった。

 

 断続的に響く爆発音。視界から消えた相手が頭上に移動したのを察知する。

 

 同時にもう一人、生徒が拳を振りかぶっている。

 

 全身を個性で硬めた赤髪の男子。切島鋭児郎だ。

 

 そちらは脅威にならないと判断し、頭上の勝己を対処――――する前に、視界の端で動く最後の一人に意識を向けた。

 

「お二人共、今です!」

 

 刹那、世界が光で塗り潰された。

 

 原因に思考を割くより先に、目先まで迫った拳を掻い潜って一閃。

 

 殺の刀が、鋭児郎の硬い胴を斜めに砕いた。

 

「ガッあぁ!?」

 

 今まで感じた事がない程の激痛に、鋭児郎は目を剥いた。

 

 合図を送った仲間、八百万百の放った閃光弾により視覚を奪っての一撃。

 

 対する反応は、目をつぶって斬る。ただそれだけ。

 

 当たると確信した直後に平然と反撃され、身構えることさえ出来なかった。

 

 吹き飛び、受け身も取れず転がる。起き上がろうとしても体が動かない。

 

 体は痙攣して咳き込むだけで、鋭児郎の意思に応えてくれない。

 

 たったの一撃で、この場の雄英生の誰より防御力があった者が沈んだのだ。

 

「切島さん!」

 

 駆け寄った百が手当てを施そうとする……が、それを律儀に待つ筈もなし。

 

「やはり勝手が違うでござるなぁ……こうであろうか?」

 

 ヴィランに背を向ける未熟の代償。

 

 先程よりも遥かにキレを増した一撃は、間違いなく百の体を切り裂くに違いない。

 

「A・P・ショット!」

 

 再びの妨害。

 

 跳び上がって移動すれば、細い線のような光が通過し、当たった岩に穴を穿っていた。

 

 勝己の個性『爆破』の応用技。範囲を小さくして貫通力を追及している。

 

「よそ見すんなって言ってんだろぉが! テメーの相手は俺だ!」

 

 粗暴な口調と、凶悪な相貌。

 

 とてもヒーローを志している人間とは思えないが、それは表面上の話。

 

 過激な攻めも位置取りも、殺の意識がクラスメイト二人に向かないためのもの。

 

 自分の力で倒すという言葉にこそ嘘はないが、その立ち回りは紛れもなくヒーローのそれだった。

 

「ふむ……学生と思って気を抜いた非礼を詫びさせていただく」

 

 故にここからは正真正銘の殺し合い。

 

 殺の刀が白いオーラを帯び始める。

 

 性に合わない戦いのせいで燻っていた殺意が吹き上がり、圧力を伴って周囲に広がる。

 

 体が震え、今にも膝を突きそうになる中、しかし勝己の意思は揺るがなかった。

 

 全身に冷や汗を流しつつ、その笑みは深まるばかり。

 

「その命、頸切り丸の糧とするでござる」

 

「んなダセー刀にやられるかボケ。テメーが俺の経験値になるんだよ!」

 

 その目に映るは眼前の殺――――と、その先にいる存在だ。

 

 かつて受けた屈辱を忘れたことはない。当時の自分の行いこそ悔い改めたものの、それとこれとは別だ。

 

 オールマイトという憧れを脅かす巨悪。

 

 己の自信を粉微塵に砕いた悪魔。

 

 №1ヒーローになるという目標を抱く勝己にとって、死柄木葬というヴィランを超える事こそが至上の命題になった。

 

 個性の数? 格の違い? 

 

 知った事かよそんなもの。客観的な事実など百も承知。

 

 それでも目指すことを選んだのだ。挑む事への恐怖より、焦がれた憧憬が己を突き動かすのだ。

 

 かつての自分とは違う。だが、その根本は変わっていない。

 

 俺こそが――――

 

「№1になるのは、この俺だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

897:ハイパー娘ユナイテッド

『なーんか思ってたのと違う(真顔)』

 

898:量産型ヴィラン

ほんとそれ

 

899:量産型ヴィラン

温度差ひどくて草

 

 




一応の補足。

暴風・大雨ゾーン→轟・芦戸&腕立てニキ

水難ゾーン→緑谷・峰田・青山

火災ゾーン→常闇・蛙吹・夜嵐

山岳ゾーン→尾白・耳郎・上鳴&ヒュドラちゃん

土砂ゾーン→障子・瀬呂・葉隠&全裸ニキ

倒壊ゾーン→爆豪・八百万・切島&ござるネキ

中央広場→オールマイト・相澤・13号・飯田・麗日・砂藤&葬・狩人ニキ・弔・黒霧

口田不在


次回は一月中に投稿でき……れば良い……なぁ(遠い目)
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