名家のウマ娘   作:くうきよめない

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先に謝っておきます。トレーナーのオリジナルキャラは許してくださいごめんなさい。





似た者同士

 

 

 

 既に夏の間使っていた冷房とは別れを済ませ、今度は半年ぶりに暖房との再会を果たす季節となってしまった。

 ダイヤの菊花賞から約一ヶ月。つい最近までの暑さは急激にしおらしくなり、代わりにやってきた肌寒さに爬虫類のごとく活動を停止してしまいたくなるほどの季節に近づいていることを実感させられる。

 寒さが苦手な僕にとって、冬は地獄でしかない。かと言って夏は暑いし、春は眠いし、秋は松茸が高級なので、僕の居場所は日本にない。絶望。

 

 後でマイスイートハニーであるこたつを引っ張り出しておこう。彼女がいなければ僕はこの冬を乗り越えることはできない。

 

 

 そんなどうでもいいことを考えながら、経費で落ちるだろうと購入したトレーニンググッズの詰まった荷物を抱え、学園の廊下を歩く。

 目的地であるトレーナー室へと向かうまでの間、他の生徒から聞き覚えのある名前が聞こえてきた。

 

「昨日のジャパンカップ見た? キタサンブラックさん凄かったよね〜!」

 

「うんうん! 最初から最後までずーっと先頭で逃げ切っちゃうんだもん!」

 

「いいなー。あたいもあんなレースしたいなあ」

 

 ジャパンカップ一着、キタサンブラック。

 

 二バ身以上の差を付けた見事な逃げ切り勝利。影をも踏ませぬ圧倒的なその強さは、シニア級ウマ娘においてキタサンブラックの本格的な台頭を象徴していた。

 あの逃げ切りから窺えるのは単なるレベルアップのみとは考え難い。精神面で何かあったのか。

 

 

 この一ヶ月、ダイヤはトレーニングメニューを淀みなくこなしており、次走を予定している有マ記念に向けて一層気合いが入っている。

 それはそう、ダイヤの次走である有記念に、キタサンブラックが出走する。

 彼女の『キタサンブラックに勝ちたい』というもう一つの目標。それを達成するためにも、やらなければならないことが多い。

 

 

 クラシックレースも終わり、ダイヤの前に立ちはだかるシニア級ウマ娘相手に戦い抜くためにも、スピードスタミナと言ったフィジカル面だけを鍛えていては勝つことができない。

 レース運びや展開力もこれまで以上に必須なスキルとなってくる。これは後方から差しに行くというスタイルが基本なダイヤなら尚更だ。

 

 有まで時間がない。なんとか実践形式、できれば逃げウマ娘相手に併せをお願いしたいところなのだが……

 

 

 そう考えていると、横から伸びてきた何者かの手によって僕の持っていた荷物は簡単にひったくられる。

 誰だと思い振り返るとそこには……

 

 

「せーんぱい、どうしたんですか? そんな難しい顔でスマホいじって。歩きスマホはダメですよ」

 

「……なんだ一色か。甲高い声で叫ぶとこだったぞ。んで、なんか用か? てか荷物返せ」

 

「なんだとは何ですか。だいたい、いい歳した男性が大荷物抱えながら怖い顔して廊下歩いてたら生徒ビビっちゃいますよ。あと、先輩の高い声は気持ち悪いのでやめてください」

 

 えぇ……少なくともこいつの前で高い声なんて出しことないはずなんだけど……

 

 眼前、僕を揶揄うように話しかけてきたのは、後輩である"一色星羅"。亜麻色の長い髪と、常に身につけているキャップがトレードマークの若い女性だ。

 ちなみに彼女はセイウンスカイのトレーナーであり、いつの日かの夏合宿でセイウンスカイを押し付けてきた張本人でもある。

 

 一色は僕から奪った荷物を素直に返し、トレーナー室へと向かう僕の横を歩いて世間話を始める。

 

「そんで、先輩。なんかあったんですか? 夏合宿でスカイがお世話になった時のお礼まだできてませんし、わたしが苦労しない程度のことなら協力してあげますよ?」

 

「協力する気ないだろそれ……。いや、別に何も無い……」

 

 ……待てよ、確かセイウンスカイは逃げウマ娘だ。キタサンブラックとは全く違う走り方をするとはいえ、頼みやすい奴がここにいるではないか。

 

「なあ一色、ちょっと頼みたいことあるんだけどいいか?」

 

「おっ、本当に先輩が頼ってくるとは珍しい。何か悪いものでも食べたんですかね?」

 

「僕をなんだと思ってるんだ。頼みたいことってのは……」

 

 そんなこんなで僕は一色にダイヤとセイウンスカイの併せのトレーニングを要請する。

 一色自身も力強く逃げるキタサンブラックと相手を使い巧みなレース運びをするセイウンスカイとの違いを懸念するだろうが、今大事なのは逃げウマ娘を知ることだ。

 

「……ふむふむ、なるほどなるほど。先輩の言わんとすることは分かりました。要はそちらのサトイモちゃんのトレーニングにうちのスカイを使わせて欲しいってことですね?」

 

「言い方があれだけど……うん、まあそうね」

 

「…………先輩、わたし今金欠なんですよねえ」

 

 こいつ、協力するとか言っときながらナチュラルにたかってやがる……。

 

 上目遣いできゃるんという擬音が聞こえそうなほどにあざとく懇願されると、かえってそうしてあげる気がなくなってくるのは何故だろうか。

 

 だが、こちらから頼んでいる以上あまり高慢な態度は取れない。

 あちらにも予定があるのだ、それを調整してまでこちらのトレーニングに付き合わせた挙句、なんの礼もしないというのもあれだろう。

 

「……晩飯奢ってやるよ」

 

「っしゃ! お高いご飯おなしゃす! できれば回らないお寿司で!!」

 

「もっと遠慮しろよ。そしてせめて回れよ」

 

「分かりました! じゃあ回るお寿司で!」

 

 どうやら彼女の辞書に遠慮という文字は無いらしい。沖野トレーナーといい一色といいここにいる連中は一体なんなんだ? 

 

「あ、先輩。併せの件って明日でもいいですか?」

 

「ああ、こちらとしてはそんなに早くしてもらえるなら願ったり叶ったりだが……何かあるのか?」

 

「いやあ、まずスカイを探すところから始めないと。今日もどこほっつき歩いてるのやら」

 

 そういえばセイウンスカイは生粋のサボり魔だったか。僕に対して傍若無人な振る舞いをする一色ですら振り回されているのを見ると、なんだか可哀想に思えてくる。

 本質は努力家な彼女のことだから、今日もどこかで秘密の特訓でもしてるのかもしれないが……

 

「とにかく、スカイのことはわたしがなんとかしますので、こちらは任せてください! 後、ご飯の方も楽しみにしてます!」

 

「へいへい、明日覚えてたらな」

 

「何回でも言いますから! 例え先輩が覚えてなくても思い出すまで耳元で何回も繰り返しますから! なんなら今日の深夜鬼電します!」

 

 地味な嫌がらせやめろ。

 

 そう言った一色は元気にこの場を去っていく。若いっていいなぁ。実際の一色の年齢知らんけど。

 そもそも先輩って呼ばれてる理由もよく分からない。単純にトレーナー歴が僕の方がほんの少しだけ長いってのはあるが、ほぼ同期みたいなもんだし。

 

 何はともあれ、早いとこ逃げウマ娘相手にダイヤの併せを頼めたことはラッキーだ。代償として晩飯を奢らなければならないが、それを差し引いてもお釣りが来るレベルと考えると得した気分になる。

 

 即断即決即行動、トレーナー室に戻り、ダイヤに明日セイウンスカイと併せのトレーニングをすることを説明して、今日の分のトレーニングを行おう。

 

 

 

 ……そういえば一色のやつ、この荷物軽々持ち上げてたな。意外と筋肉質なのだろうか。

 

 

 

 ***

 

 

 

 翌日

 

 

「…………なにこれ」

 

「それはこっちのセリフですわよ」

 

 いつも通り学園のターフへと足を運ぶと、観客席には満員のウマ娘が黄色い声援をあげていた。

 そんな普段と違う光景に僕とマックイーンはぽかんと立ち尽くす。

 

 はて、今日は模擬レースか何かの予定が入っていたのだろうか。

 

 そう思い予約表を確認すると、そこには『サトノダイヤモンドVSセイウンスカイ 模擬レース』との文字が……は? 

 

「……え、本当になにこれ?」

 

「スカイさんとの併せのトレーニングのつもりが模擬レースと勘違いされた……とかでしょうか?」

 

「いや、僕は併せってちゃんと言ったし向こうもそれを理解してるはず……」

 

 一色は頭こそ悪そうに見えるが、中央のトレーナーという狭き門をくぐることができるほどには優秀だ。彼女の地頭の良さは、腹の立つことに何度か感じたことがある。

 

 そんな一色が併せと模擬レースを間違えるとは思えないし、そもそも間違えてたとしてもここまで広まるとは思えない……

 

 だとしたら、間違った情報を意図的に、大々的に広めた第三者がいるということで……

 

 

「サトノダイヤモンド弁当にセイウンスカイ弁当、どちらももうすぐ売り切れちゃうよー! スペ、在庫確認してきて!」

 

「だからなんで私まで働かされてるんですかゴールドシップさん!?」

 

 

 あいつか、諸悪の根源はあのバカか。

 

 

「マックイーン、GO」

 

「承知致しました」

 

 即座にマックイーンを向かわせ制裁を与える。

 てか、ゴールドシップはこのことをいつ知ったんだ? 昨日の今日だからあの時盗み聞きされていたとしか思えないんだが。

 そういえば、ダイヤが入学した時のファン感謝祭でマックイーンとトウカイテイオーが走ることを広めたのもゴールドシップだったか。油断も隙もあったもんじゃない。

 

 改めてトレセン学園は無法地帯だなと思っていると、一色が慌てた様子でこちらに駆け寄ってくる。

 

「せ、せせせ、せんぱーい! これどうなってるんですか!? なんかいっぱい観客のウマ娘達いますけど!?」

 

「昨日の会話、多分ゴールドシップに聞かれてた。それであることないこと広まってこの惨事にな」

 

「あぁ……」

 

 ゴールドシップという名前を聞いた瞬間、一色も全てを察したようだ。あいつの名前をトレセン学園内で知らない者はいない。

 

「でもおかしな話ですねぇ。今大活躍中のサトイモちゃんのレースってなら分かりますけど、相手はスカイですよ? あの子のためにこんなに人が集まったんですかぁ」

 

「お前……自分の担当ウマ娘になんてことを……」

 

「だってスカイったら酷いんですよ!? 普段トレーニング来ないし連絡には出ないし逃げ足だけは速いし……! ……わたしが追いつけないなんて……」

 

「……」

 

「あ、いえ、なんでもありません。でも今日に関しては来ると思いますよ。あの子、そこら辺はちゃんとしてるんで」

 

「そか」

 

 ……なんだかんだいい関係じゃないか。

 一見ツンケンしているようで、彼女はちゃんとセイウンスカイのことを信頼している。

 

「うんうん、セイちゃんもやる時はやるし、走る時は走るし、かっこいい時はかっこいいですからね〜」

 

「そう、そのギャップが良いところっていうか……ってスカイ!? なんでここに!?」

 

「いや、一色ちゃんが来いって言ったんじゃないですか……」

 

 のらりくらりと現れたかと思いきや、テンパる一色にげんなりとツッコミを入れる。忙しいやっちゃな。

 

 そんなセイウンスカイだが、外見から得られる情報として明らかに周りの生徒と違う点が見られる。

 

「「なんで勝負服?」」

 

 口から溢れた疑問が一色と被ってしまった。

 まず僕はセイウンスカイと久しぶりだのなんだのと声を交わす前に第一声がこれである。

 

 別に勝負服で練習してはいけないとの決まりはないが、基本的にGⅠレース以外で着用することはあまりない。

 それこそ、最初の着付けやサイズ変更、メディア露出、場合によってはウイニングライブくらいのものだ。

 

「ゴルシ先輩に言われてね。面白そうだったから私もそれに乗っちゃいました〜!」

 

 乗っちゃいました〜、じゃないが。またあいつかよ。沖野トレーナーはちゃんとゴールドシップをコントロールしろよ。無理だろうけど。

 

「先輩、どうするんです? こんなに人が集まってるのにただ併走するだけじゃブーイング凄いことになると思いますけど……」

 

「……こうなった以上は併走トレーニングじゃなくて本格的な模擬レースに変更だな。セイウンスカイ、それでいいか?」

 

「私は大丈夫ですよ。夏合宿の時のお礼に、あなたの担当ウマ娘に敗北をプレゼント、な〜んて」

 

 ちゃっかりと対抗心を燃やすセイウンスカイに苦笑いをしてしまう。だが、それくらいの気概で来てもらう方がよほどダイヤのためになるというものだ。

 ダイヤ自身のレベルアップのためにも、付き合ってもらうぞ。

 

「それにしても、さっきは息ぴったりだったけど、もしかしてお熱い関係〜?」

 

 何言ってんだこいつ。

 

 セイウンスカイがニヤリと笑うと、なんとも突拍子もないことを言い出した。

 

「そ、そそ、そんなんじゃないから! スカイ、揶揄うのはやめてよ!」

 

「にゃはは〜、顔真っ赤ですよ、一色ちゃん。いっそセイちゃんがキューピッドにでも……」

 

 セイウンスカイがそう言いかけた瞬間、後ろから物凄い勢いで何者かがかっ飛んでくる。

 そして即座に彼女の後ろに回り込み、手刀を首に当てると……

 

「ふざけるのも大概にすべきですわ、スカイさん。くだらない野次ウマをしたいだけなら、そこらへんのカラスでも捕まえて繁殖させていなさい」

 

「…………はい、すみません、マックイーンさん」

 

 こっわ。なにあれ、バケモン? もはや現代の怪異だろ。

 なんで君がそこまでキレるん? というツッコミは置いておこう。

 

 事情を知らない人が見たら漏らしても仕方のないような顔をするマックイーン。名家の令嬢という自覚はないようです。

 

「は、はわわ……せ、先輩……あ、あれ……スカイが……」

 

「大丈夫、いつものことだ」

 

「先輩達いつもあんな感じなんですか!?」

 

 なにを今更、と思ったが、一色相手にマックイーンやダイヤの話をしたことはほとんど無かったか。

 一色にとって、彼女達は名家で良家なウマ娘という認識でしかないのだろう。

 

「あ、あー! 先輩、スカイの言ってたこと間に受けないでくださいね? あれはあの子の冗談と言いますか、人をおちょくるのが好きが故の発言と言いますか……」

 

「わーってる。セイウンスカイがそういう奴ってのは、夏合宿の時に嫌と言うほど思い知らされたよ。おーい、マックイーン! 今のはセイウンスカイの冗談だ。だから暴れるのやめろー?」

 

「…………眼中に無いみたいでそれはそれでムカつくんですけど」

 

 ボソッと聞こえた声を無視して、未だセイウンスカイの首に手刀を当て続けるマックイーンを止めに入る。これ以上は流石にまずい。 

 

「マ、マックイーンさんのトレーナーさん……助けてくれたんですね……?」

 

「ああ、僕にも守らなきゃいけないものがある。マックイーンの名誉とか」

 

「私の心配は!?」

 

「してるしてる(笑)」

 

「(笑)を口に出して言ってる時点でしてませんよね!?」

 

 一色もセイウンスカイも面白い反応を返してくれるためつい不必要な揶揄いをしてしまう。きっと彼女は自分が揶揄われることにあまり慣れてない。だからこそ新鮮味があるのだが。

 

 雑にセイウンスカイをあしらい、魔王マックイーンの手から彼女を解放する。

 その際さっきのはセイウンスカイの冗談だともう一度説明したが、マックイーンは聞き入れる様子はなく拗ねたままだった。

 

 そして、拗ねているウマ娘はマックイーンだけでは無い。

 

「つーん、あんなことされちゃったから、セイちゃん走る気なくなっちゃいました〜」

 

「えっ、ちょ、ちょっとスカイ! 今日は走るって約束したじゃん! ご飯……じゃなくて、いつもお世話になってる先輩にお礼しなくっちゃ!」

 

 一色さん? あなた下心見え見えですよ? 本当にトレーナーですか? 

 

 トレーナーとしてあるまじき発言をしかける一色に苦笑していると、ようやく最後の役者が揃ったようで、周りからの歓声が一段と大きくなる。

 

「トレーナーさん、なんだかとても騒がしいですけど何かあったのですか?」

 

「ああ、ダイヤ。実はな……って、君も勝負服なのね」

 

「はい、ゴルシさんに今日は勝負服で練習だとトレーナーさんが言っていたと伝えてもらいまして」

 

 言ってない。そんなこと言ってない。

 

「あー……ダイヤ。今日はセイウンスカイと併走トレーニングだったんだけど、かくかくしかじかで模擬レースになっちゃってなぁ」

 

「模擬レース! スカイさんと!」

 

 思った以上に食いつくダイヤにたじろいでしまう。何か彼女が心惹かれるところがあっただろうか。

 

「夏合宿の時、マックイーンさんとマーチさんの模擬レースを私達二人は見学していただけでしたので。なんだかあの時の続きみたいでワクワクします!」

 

「……そういえばそんなこともあったな」

 

 夜中にセイウンスカイと釣りをしたり、マックイーンが男湯に飛び込んできたり、非科学的な現象を最後の最後で体験したりと色々あったが、あの時の夏合宿で最も印象に残っているのは高知レース場での模擬レースだ。それはきっとダイヤも同じだろう。

 

「フジマサマーチ元気かなぁ。今度連絡でも取ってみるか」

 

「いいですね、是非私もご一緒させてくださ……」

 

「ちょっとちょっとちょっと〜? 思い出話に浸るのも良いですけど、いい加減そろそろ始めません? 私、早く終わらせて寝たいんですけど〜」

 

 渋々と言った様子で走ることを決意したセイウンスカイは、話が長くなりそうなことを察したらしく僕達の意識を強制的に模擬レースへと向かせる。

 

「悪い悪い、それじゃあ二人はウォーミングアップしに行っておいで」

 

「分かりました」

「りょうか〜い」

 

 ダイヤとセイウンスカイは仲良さげに見えるが、間で不可視の火花を散らしているのご見え見えだ。

 

 セイウンスカイはもとより、ダイヤもこの一年で随分と大きな闘争心という芽が生えた。皮肉ではあるが、当時彼女を悩ませた皐月賞、ダービーの敗北が良い方向に働いている。

 

 敗北を知らぬ者に、真の勝利はない。誰かがそんなことを言っていたような気がする。

 

「おやおや、スカイったらあ〜んなに対抗心燃やしちゃって」

 

「セイウンスカイなら、相手が誰であってもあんな感じだろ」

 

「確かに〜」

 

 担当でもないにも関わらず、僕は鬼気迫る表情をしたセイウンスカイを何度も見たことがある。それが担当のトレーナーとなったら尚更多く見る機会があるはずだ。

 

「今をときめく大注目のサトイモちゃんとのレースですか……。それはそれは厳しい戦いになるでしょうねぇ」

 

「互いにな。あの黄金世代の二冠ウマ娘、トリックスターとも呼ばれるあの逃げは十二分に脅威……」

 

「でもですね、先輩」

 

 いつもの砕けた話し方をする一色とは一変、はっきりと聞こえた彼女の声に、僕達の間には緊迫した雰囲気が流れる。

 

「そう簡単に私達に勝てると思ったら大間違いですよ?」

 

 ……全く、教え子が教え子なら師も師だ。負けず嫌い特有の青臭い闘争本能が、瞳の奥で烈火の如く燃えている。

 

 こうなれば、こちらも相応の態度を示さなければならないな。

 

 

 負けず嫌いなのは、こっちだって同じこと。

 

 

「さて、それはどうかな?」

 

 

 案外、僕達は似た者同士なのかもしれない。

 

 

 




・一色星羅(いっしきせいら)

セイウンスカイ担当のトレーナー。身長160くらい。
亜麻色の髪をしたロングボブと、常に着用している帽子が特徴的な若い女性。駿川たづなとはよく話す仲らしい。
好きな食べ物はお寿司とにんじん。


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