名家のウマ娘   作:くうきよめない

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番外編です。完全に私の趣味なので読まなくていいです。




番外編:The Princess of Tennis

 

 

 

 眼前の光景に目を疑う。敵情視察ではないが、見た方がいいとの助言もあってライバルの様子を見ておこうと軽い気持ちで覗いた試合は、なんとも一方的なものだった。

 

 粘ってボールを返せど返せどコースを読まれているかのように打ち返され、攻めに転じたらそれを利用され逆に攻められ、挙句の果てには反応すらさせてもらえない速攻をも見せつけられる。

 

 普段自分のことを無敵と称し、天才肌でどんなことでも華麗にこなす彼女が

 

 持ち前の明るさで周りをも明るくし、どんなことにもお祭り騒ぎで対応する彼女が

 

「ゲームセットアンドマッチ! ウォンバイ──」

 

 絶望の表情を浮かべ、膝から崩れ落ちていた。

 

 

 

 ***

 

 

 

「球技大会?」

 

 午後の穏やかな昼下がり。トレーナー室の窓越しに差し込んでくる初夏の日射しに当てられているトレーナーさんは、一枚のプリントを手渡されその単語を今一度復唱する。

 

「はい。もうすぐ生徒会主催で球技大会が行われるんです。それも優勝者には豪華賞品付きらしいですよ」

 

 そのプリントを手渡した本人であるダイヤさんの声は心なしか弾んでいるように思える。純粋に球技大会が楽しみなのか、それとも豪華賞品とやらが楽しみなのか。恐らく彼女のことだから前者だろう。

 

「ほーん、結構気合入ってるな。聖蹄祭以外でそういったことやるのは珍しいし、普段走ってばかりだからたまにはいいんじゃないか。僕は外野で応援してるから」

 

「トレーナーさんも挑戦してみてはいかがですか? 一応規定によればトレーナーの方々も出場可能みたいですよ?」

 

「アホ言うんじゃない、誰がウマ娘に混じって運動なんかするか。ワンチャン死人が出るぞ」

 

 トレーナーさんはダイヤさんの提案を全力で拒否する。でも、その気持ちは分からなくもない。走力にしても、跳躍力にしても、筋力しても、身体能力という面で言えばどこをとっても人間がウマ娘に勝てる要素なんてないのだから。

 

「それで、球技大会って言っても種目は何があるんだ?」

 

「五つある種目のうちから一つを選んで出場するみたいですね。バスケットボール、フットサル、テニス、卓球、そして野球」

 

「へー……その中だったら、マックイーンは確実に野球だろうね」

 

「……そのはずだったのですけど……」

 

 ダイヤさんは言いにくそうに小声でトレーナーさんに説明を始める。

 

 先程ダイヤさんが仰っていたように、この球技大会は五つの種目の中から一種目を選んで参加することができる。しかし、当たり前だが定員の数は無限ではない。

 

 もちろん、私は迷うことなく野球を第一希望に書いた。それに対する想いの強さは誰にも負けるつもりはない。

 とはいえ、その想いが反映されるかと言われたら答えは否。厳正なる抽選の結果、見事に野球参加者から落とされてしまったというわけだ。

 

 一連の流れを説明し終えたのか、トレーナーさんはなんとも言えないような声を漏らす。

 

「道理でさっきからずっとソファの上でうつ伏せになってるわけか。おもしろ……ああいや、可哀想に。おーい、マックイーン、生きてるかー? たるんどるぞー?」

 

「……笑いたければ笑えば良いではないですか。どうせ私は敗北者です」

 

「……ふっ」

 

「本当に笑いましたわね!? しかも鼻で!? いいでしょう表に出なさい! 貴方をバットにして千本ノックしてやりますわ!」

 

 ソファから飛び起き狙いをトレーナーさんに合わせると、彼は身の危険を感じたようで即座にダイヤさんを盾にして身を守る。プライドとか無いんですの? 

 

「マックイーンさん、それはトレーナーさんが可哀想ですよ……」

 

「貴方も貴方でこの状況を受け入れてるんじゃないですわよ! とりあえず、その縮こまったトレーナーさんの頭を撫でるのをやめなさい!」

 

 頼られたのが嬉しかったのか、まるで赤子を扱うかのように怯えるトレーナーさんをあやすダイヤさん。自分の身を守ることで必死なトレーナーさんはようやく自分がどういう立場に置かれているか理解したようで、すっと立ち上がり一つ咳払いをする。

 その際、ダイヤさんが名残惜しそうな顔をしていたのはもう放っておこう。

 

「希望が通らなかったのは残念だろうけど、そこでいかに早く切り替えるかが大事だと僕は思うよ」

 

「貴方は切は切り替えが早すぎるのでは……?」

 

 この男、さっきまでの醜態を無かったことにしている。半目で睨みつけていると、とうとう彼は目を逸らした。

 

「どころで、野球に参加できないとなると、マックイーンさんはどの競技に参加されるのですか?」

 

「それ僕も気になってた。この場合だと第二希望になるのかな」

 

 話は変わり、トレーナーさんとダイヤさんは私が参加する競技へと興味を示す。最初は野球でなければなんでもいいと思っていたのだが、とある項目を見てからそうもいかなくなった。

 

「ダイヤさん、先程貴方は"豪華賞品付き"と仰っていましたね?」

 

「え? は、はい、言いましたけど……」

 

「トレーナーさん、その球技大会についてのプリントをよく読んでみてください」

 

「お、おう、ええっと……『尚、大会のルールとしてフットサル中にふっと去るのは禁止とする』……なにこれ、ふざてんの?」

 

「どうしてそんなところを読むんですの!? 今の流れからして豪華賞品の所でしょう!?」

 

 というかこのプリント、絶対ルドルフ会長が作っていますわね。よくこれでOKが出たものですわ。

 

「トレーナーさん、ここもだじゃれというものではないですか?」

 

「なになに……『テニスコートが定休日の場合は使用を控えるように』。ほう、"定休"と"庭球"を掛けたのか。これは芸術点が高い、よく見つけたな、ダイヤ」

 

「えへへ」

 

「えへへ、ではありませんって! いい加減駄洒落から離れてくださいまし!」

 

「「はーい」」

 

 この二人、放っておいたらどこまでもボケ倒し続けてるのではないだろうか。やはりこのチームの最後の良心は私ということを認識する。

 

「気を取り直して、なになに……チーム戦のバスケとフットサルと野球の優勝賞品は焼肉食べ放題、卓球は寿司でテニスは……なるほど、そういうこと。ベタというか単純というか、こりゃ大変だな」

 

 プリントを最後まで読んだトレーナーさんはやれやれと苦笑いを浮かべる。優勝賞品までもは確認していなかったダイヤさんは不思議そうな顔をしていたが、プリントの内容を見るや否や納得の表情をする。

 

 甚だ野球の希望が通らなかったのは残念ではあるが、私とて無策で第二希望の競技を選んだわけではない。

 

「私はこのテニスで、優勝賞品の『スイーツ食べ放題』の権利を必ず勝ち取ってみせますわ!」

 

 

 

 

 と、いうのが二週間前の話。日が経つのは早いもので、今日は例の球技大会の日だ。

 

 流石のトレセン学園といえどもテニスコートは存在しない。あったら逆に怖い。そのため、学園外の施設を貸し切って使用しており、多くのウマ娘が溢れかえる事態となっている。

 

 せめてもの救いは、他の種目より人数が少ないところでしょうか。ほとんどの方はチーム戦を主とする野球やフットサル、バスケットボールなどに散ってしまっている。その分、私達が優勝できる可能性が高まるので良いのですけど。

 

「あ、マックイーン! おーい!」

 

 優勝商品であるスイーツのことを考えていると、背後から元気な声が私を呼び思わず振り返る。

 

「テイオー……! もしかして貴方もテニスに?」

 

「うん、そうだよ。本当は別の種目を希望してたんだけど、抽選が外れちゃって。本当はバスケがしたかったんだけどさ」

 

 貴方もですか。

 

 たははと苦笑いを浮かべるテイオーになんだか同情してしまう。

 

「そうだ、マックイーンはシングルスとダブルスどっちに出るの? ボクはキタちゃんとダブルスにでるんだけど」

 

「私もダイヤさんとダブルスに出場しますわ」

 

「……と、いうことは、また勝負になりそうだね」

 

「せいぜい決勝まで上がってきてくださいまし」

 

「それはこっちのセリフだよ♪」

 

 軽口を交わし、テイオーはこの場を後にする。それと同時にこの球技大会、優勝するのが簡単ではないことを悟った。

 

 テニスに関しては多少嗜んだことはあるものの、それだけで楽に優勝できるかと言われたら首を縦に振ることは難しい。テイオーのような強敵が参戦すると分かった以上、難易度はさらに高くなった。

 ではどうすれば安定して勝てるようになるのか。そんなことは簡単、普段のレースで勝つため走りのトレーニングするのと同じ、テニスの特訓をすればいいだけの話。

 

 来るその日に向けて、私達はダイヤさんもといサトノグループが別個で所有するテニスコートを使わせていただき特訓を行ってきた。もちろん、首根っこを捕まえられても抵抗を続けていたトレーナーさんも一緒に。

 

 その特訓の成果を見せる時なのだが、この場にトレーナーさんがいないというのが残念だ。この球技大会は生徒主体で行われる行事であり、そこにトレーナーがわざわざ介入する必要がないのと、彼らも生徒の行事に参加するほど暇ではないとのことだ。せめて応援には来てほしかった。

 

「マックイーンさ〜ん! お待たせしました〜!」

 

 特訓に付き合わせた……ではなく、付き合っていただいたトレーナーさんのことを想っていると、ペアを組む相手であるダイヤさんがようやく到着する。少し息が上がっているところを見るに急いできたのだろうか。

 

「もう、遅いですわよ、ダイヤさん」

 

「ごめんなさい。トーナメント表が貼られていたので確認してたらこんな時間に……。そうだ、この部門にキタちゃん達も参加してるんですよ! それも順当に行けば決勝で当たるかもしれないんです!」

 

「お聞きしましたわ。ちょうど先程、テイオーに宣戦布告されたばかりですもの」

 

「ご存じでしたか、流石はマックイーンさん」

 

 ダイヤさん曰く、テイオー達とぶつかるのは決勝とのこと。シチュエーションとしては100点満点だ。先程あれだけ挑発をしておきながら、決勝までいけませんでしたなんていう結果では目も当てられない。大丈夫、あれだけ特訓したのだ。負けるわけにはいかない。

 

 それに、私にはとっておきの技がある。ウマ娘の身体能力をふんだんに活かした必殺技が。

 

『これより、一回戦の試合を行います。出場ペアはコートに入って試合を開始してください』

 

 一回戦開始のアナウンスが鳴り、何面もに渡るテニスコートにウマ娘達が続々と入っていく。

 

「トレーナーさんにも見てほしかったですね」

 

「ええ。ですが、ここで良い結果を持ち帰れば、あの方もきっと褒めてくださいますわ」

 

「ふふっ、でしたら頑張らないわけにはいかないですね」

 

 さて、私達もそろそろ行かなければならない。ラケットのグリップを握り、ガットの張りを確かめ、ダイヤさんと視線を合わせる。

 

「それではダイヤさん」

 

「はい、マックイーンさん」

 

 

「「油断せずに行きますわよ(行きましょう)」」

 

 

 

 *

 

 

 

 順調も順調、一回戦、二回戦と危なげなく勝利し、その後の試合も難なく勝利した。そのままトーナメントを勝ち上がり、早くも準決勝の舞台へと私達は立っている。

 

「マックイーンさん!」

 

「お任せください! はっ!」

 

 流れてきたボールにトップスピンの回転をかけ、前衛に立つ相手の頭上スレスレへと打ち返す。狙い通りの中ロブで前衛にボールを触らせなかったものの、それにいち早く反応した後衛の方がそのボールへと追いつく。だが無理な体勢で取ったが故に私達へのチャンスボールとなった。

 

「ダイヤさん、今です!」

 

 高く上がったボール目掛け、ダイヤさんはスマッシュの構えを取り……

 

 

 トンッ

 

 

「「……は?」」

 

 スマッシュが来ることを予期してベースラインまで下がった相手を見て、ダイヤさんは空中で体を回転させてドロップショットを打った。……いや、お上手すぎません? 思わずお相手と共に私まで声が漏れてしまったのですが。

 

「ゲ、ゲームセットアンドマッチ! ウォンバイ、メジロマックイーン、サトノダイヤモンド! 6-3!」

 

 審判のコールでようやく我に帰る。特訓時、ダイヤさんはテニスはあまりやったことないと言っていたが、この短期間であのプレーを会得するのは天才の領域としか思えない。

 

「マックイーンさん、私達勝ちましたよ!」

 

「と、とてもお上手でした。いつあんな必殺技を会得したのですか?」

 

「え? できるかな〜と思ったらできちゃいました」

 

 つまりぶっつけ本番というわけか。なんでも挑戦してみようとする彼女らしい一面を微笑ましく思いつつ、彼女の才能を末恐ろしく感じる。

 

「いや〜、負けた負けた。アタシ達もここまで来れたんだし、あわよくば決勝! って思ったんだけどねぇ」

 

「でもでも、マックイーン達のテニス、マーベラス☆ だったよね♪ 次の決勝頑張ってね★」

 

 ダイヤさんに苦笑いをしていると、この試合の対戦相手であるナイスネイチャさんとマーベラスサンデーさんが話しかけてくる。

 

「ありがとうございます、マーベラスさん。ネイチャさん達も大変お強かったですわよ」

 

「たはは、キラキラウマ娘に褒められるとなんだかアタシもキラキラしてる気がする……なんつって」

 

「ネイチャはと〜ってもマーベラス★ だったよ! マーベラース☆」

 

「マーベラース!」

 

「ちょ、やめてってマーベラス! サトノも乗らないでよ、恥ずかしいじゃん!」

 

 ネイチャさんはマーベラスさんとダイヤさんのマーベラスコールに顔を真っ赤にして二人を慌てて止めようとする。そろそろマーベラスという単語がゲシュタルト崩壊を起こしてきた。

 

「そ、それよりさ、マックイーン。そろそろもう一つの準決勝の試合終わってるんじゃない? 見に行かなくていいの?」

 

「大丈夫ですわ。テイオー達はきっと決勝に勝ち上がってくるはずですもの」

 

「でも、見てた方がいいんじゃない? アタシもテイオーが負けるとは思ってないけど、一応、ね?」

 

「む、そこまで言うのなら……。ダイヤさん、テイオー達の準決勝を見に行きますわよ!」

 

「マーベラ……あ、はい!」

 

 いつまでもダイヤさんにマーベラスと言わせ続けるわけにもいかないので、ネイチャさんの助言通りにテイオー達の準決勝が行われているコートへと足を運ぶ。

 ネイチャさんにも言ったが、テイオー達が負けるとは思えない。彼女はいつだって私の前に立ちはだかる存在だ。ライバルとして、勝ち上がってもらわなければならない。

 

「ええっと、キタちゃん達は……あ、あそこです、マックイーンさん」

 

 ダイヤさんが指差す方向には、確かにテイオーとキタサンブラックさんが試合をしていた。だが、彼女達の表情に余裕がない。少なくとも、勝っている時に焦りを見せるような顔はしないだろう。

 

 まさかとは思いスコアを確認しようとした瞬間、審判のコールが響き渡った。

 

「ゲーム、エアシャカール、ナリタタイシン。5-0!」

 

 

 

 ***

 

 

 

「ゲームセットアンドマッチ! ウォンバイ、エアシャカール、ナリタタイシン。6-0!」

 

 そして話は冒頭に戻る。いつもと競技が違うとはいえ、あのテイオーがここまで無惨に敗北するとは誰が考えただろうか。あまりの衝撃にかける言葉が見当たらない。

 

 準決勝でテイオー達が負けた相手、それはエアシャカールさんとナリタタイシンさんだった。このコンビにはいつの日か私達とゲームセンターでお会いしたことがある。あの時はトレーナーさん諸共テイオーに麻雀で敗北を喫していたが、今回はその逆だ。

 

「そんな……キタちゃん達が……」

 

「……それだけシャカールさん達がお強いということですわ。それも、テイオー達が1ゲームも取れないほどに」

 

 ダイヤさんも目の前の光景が受け入れられていないらしくライバルの名を溢す。私とて未だに信じられない。でも、これが現実だ。決勝戦の相手は、テイオー達を完封したシャカールさんとタイシンさんということになる。

 

「ハッ、決勝戦の相手はやっぱりお前らだったか。オレのデータ通りだな」

 

 噂をすれば、その決勝の相手であるシャカールさんとタイシンさんがこちらへ向かってきた。彼女の発言から、どうやら私達が勝つことを予想していたようだ。

 

「悪りィがよ、優勝賞品のスイーツはオレ達が頂くぜ。脳の活性化には甘味が不可欠だからな」

 

「アタシは別にどっちでも良いんだけど……でも、負けたくないから。もちろん決勝も」

 

 それだけ言って二人は去っていく。これは宣戦布告と捉えていいのか、それとも挨拶しにきただけなのか。

 

「い、言いたいことだけ言って行っちゃいましたね……」

 

「牽制、でしょうか? どちらにせよ負けられないことには変わりません」

 

「……! そうですね、トレーナーさんにお土産話を……」

 

「スイーツのために、全力で勝ちに行きますわよ!!」

 

「……そうですね」

 

 あら? 何故かダイヤさんのテンションが急激に下がった。どうしたのでしょうか。

 

「ああ、言い忘れてた。一つ忠告しといてやる」

 

 先程まで持っていなかったはずのノートパソコンを手に、シャカールさんは私達の下へと戻ってくる。

 

「この決勝戦、お前らが負ける確率……100%だ」

 

 彼女は不敵な笑みを浮かべ、文字通りの"宣戦布告"をする。

 

 

 

 *

 

 

 

「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ、エアシャカール、サービスプレイ!!」

 

 審判のコールが響き渡り、いよいよ決勝戦が始まった。デュースサイドに私、アドバンテージサイドにダイヤさん。

 

 ここを勝てば、念願のスイーツ食べ放題の権利を獲得できる。なのに、試合前にシャカールさんに突きつけられた言葉が頭から離れない。

 私達の負ける確率が100%。単なる挑発として受け取ることは可能だが、相手はデータや統計を取り、分析が得意なシャカールさん。彼女の言葉が眉唾物だとは思えない。

 

 だめだ、思考が乱れる。せっかくここまで来たのに集中すら……

 

「ンだ? ボーッとしてンじゃ……ねェッ!」

 

「っ! くっ……」

 

 速い、反応出来なかった。

 

 そうこうしていると、シャカールさんのサーブが私の股の下を潜り抜け、いきなりサービスエースを取られてしまう。

 

「15-0!」

 

「まだまだ行くぜ……オラッ!」

 

 続くシャカールさんのサーブ。今度はダイヤさんがレシーバーだ。

 

「はっ!」

 

 彼女はしっかりと反応し、ストレートに高いロブを上げる。

 

 私も……私もしっかりしなくては……

 

 

「マックイーンさん!」

 

「っ、ダイヤさ……」

 

「いつも通りで行きましょう!」

 

 

 ……何を悩んでいたのだろう。精神攻撃は基本、有名な言葉ではないか。そんなものに悩ませられるなんて、私らしくない。

 

「オラッ!」

 

 シャカールさんはダイヤさんのロブを私の方向へと打ち返す。

 

 いいでしょう、正面から受けて立ちますわ。例え本当に負ける確率が100%だったとしても、必ずその確率の壁を越えてみせましょう。

 

 クロス側にいるシャカールさん目掛け、ラケットを振り……

 

「タイシン、右だ!」

 

「っ!?」

 

 ボールがラケットに触れる瞬間シャカールさんがそう叫ぶと、前衛として前に出ていたタイシンさんが即座に反応してポーチに出る。インパクト時なので、今更打つ方向を変更することなどできない。

 

「30-0!」

 

 そのまま鋭いボレーを決められ、あっさりと二点目を取られてしまう。なんて息の合ったプレイだ。ゲームセンターの時もそうだったが、こうしてテニスでコンビを組んでる以上仲が良いのだろうか。

 

「アンタ指示出すの遅すぎ。ギリギリだったんだけど」

 

「ああッ!? オレのおかげで点取れたンだから文句言うんじゃねェッ!」

 

 ……そういうわけではなさそうだ。

 

「マックイーンさん……」

 

「大丈夫ですわ、ダイヤさん。それより、シャカールさんの的確な判断は要注意です。次行きますわよ」

 

 コクリと頷くダイヤさんは元の位置に戻る。

 

 今のは運が悪かった。タイシンさんの攻めっ気が激しいと分かった以上、ポーチに出る彼女の逆を突けばいいだけの話だ。

 

 シャカールさんがサーブを打ち、次はしっかりと反応してフォワハンドの構えを取る。きっと次もタイシンさんは攻めてくる。だったら、クロス側ではなくストレートに……

 

「タイシン、正面!」

 

「っ……!」

 

 またしてもコースを読まれ、タイシンさんにボレーを決められてしまう。これでポイントは40-0、次を落とすとチェンジコートだ。

 

「すみません、ダイヤさん。またしても同じミスを……」

 

「ドンマイですよ、マックイーンさん。落ち着いて丁寧に返していきましょう」

 

 二度もタイシンさんにボレーを決められ、私は内心相当焦ってしまっている。ダイヤさんに言われた通りいつも通りプレイしているのだが、そのいつも通りが通用しない。

 

「これくらいでヘバッちまッちゃあ手応えがねェ……よッ!」

 

「……!」

 

 シャカールさんのサーブはさらに早くなり、ダイヤさんはそれに追いつくので精一杯だ。なんとか食らいついてボールに触ったものの、それは相手へのチャンスボールとなってしまった。

 

「決めろッ、タイシン!」

 

「アタシに指図すんな!」

 

 小さい体で飛び上がったタイシンさんに、空いていたコース目掛けてスマッシュを決められる。

 

「ゲーム、エアシャカール、ナリタタイシン、1-0!」

 

 一点も取ることが出来ずにコートチェンジ。シャカールさんに狙ったコースを完璧に読まれ、タイシンさんに素早い身のこなしでボレーやスマッシュを決められる。

 

 くっ、どうすれば攻略の糸口を……

 

「無駄だ、お前達二人のデータは既に収集済み。どうあがいてもオレ達から点を取るこたァ敵わねェ」

 

 シャカールさんは再度挑発的に私達に向けてそう言う。データ? 収集済み? 一体何の……

 

「つまり、お前らがゴールドシップみてェな思考じゃない限り、打つ方向は丸わかりッてことだ」

 

「アンタ達相手に体力勝負なんてするつもりなんていないから。悪いけど、速攻で決めさせてもらうよ」

 

 ……なるほど、そういうことか。

 

 どういうわけか、シャカールさんは私達のこれまでの試合のデータを分析して打たれる方向を予測できるらしい。そのシャカールさんをフルで活かすために、反応速度と身のこなしに長けたタイシンさんが前に出ている。

 

 さらに、タイシンさんは持久戦をやらないと言った。主に長距離のレースを勝っている私達にとって、持久戦は得意分野。体力勝負となればこちら側に分がある。それを避けようとするのは至極当然のことだ。

 恐らく、体力に自信のあるキタサンブラックさんは術中にハマってしまっただろう。そしてテイオーはシャカールさんのデータに完封されたと。

 

「あの二人、やっぱり手強いですね……マックイーンさん、どうしましょう」

 

 何も出来ず1ゲーム先取されたのが堪えたのか、ダイヤさんは不安そうな声で私に助けを求める。

 データのシャカールさんと短期決戦のタイシンさん。並大抵のことではこの布陣を崩すのは不可能だ。テイオーとキタサンブラックさんが負けてしまったのも充分納得できる。

 

 

 だが、シャカールさん達は一つ認識を誤っている。"語るに落ちた"、とでも言っておこう。

 

 

 彼女達の作戦は一見完璧そうに見えて、シャカールさんのデータテニスさえ破れば容易に崩れる諸刃の剣だ。つまり、この試合の突破口はいかにシャカールさんの裏をかくかということになる。

 

 とはいえ、データに絶対の自信を持つ彼女を突破するのは困難。ではどうやってそれを成し得るのか。

 

 

 ……一か八か、やってみるしかない。

 

 

「ダイヤさん、貴方は私の合図があるまで、シャカールさんを走らせるように後ろでロブを打ち続けてください」

 

「ロブをですか?」

 

「ええ。私はタイシンさんが取れるか取れないかのギリギリを狙います。それまで耐えてくださいまし」

 

「……マックイーンさん、一体何を……」

 

 こういう時、トレーナーさんならどうするか。悪巧みをする時の彼の顔を思い浮かべ、ダイヤさんへと向き合う。

 

 

「……私に考えがありますわ」

 

 

 

 *

 

 

 

「ゲーム、エアシャカール、ナリタタイシン。2-0!」

 

 

「ゲーム、エアシャカール、ナリタタイシン。3-0!」

 

 

「ゲーム、エアシャカール、ナリタタイシン。4-0!」

 

 

 続け様に4ゲームを取られ、周りで観戦している方達には私達の敗戦ムードが漂っていた。事実、これまで私達は1ポイントも取れていない。いくつかのラリーはあったものの、それが直接的に得点に繋がることは一つとしてなかった。

 

 

「ゲーム、エアシャカール、ナリタタイシン。5-0!」

 

 

 ついに5ゲーム目も取られ、いよいよ後が無い状況となる。あまりの一方的な試合展開に、観戦のウマ娘達も次第に減っていく。

 

「ハァ……ハァ……降参するなら今のうちだ。言ったろ? お前らが負ける確率は100%だって」

 

「ッ……やめなよ……シャカール。最後まで気を抜かない。……ハァ……さっさと、最後のゲーム終わらすよ」

 

 持久戦をしないとは言っていたが、体力を消耗しないわけでは無い。通常の試合であれば、後のペース配分を考慮して見逃していたようなボールも無理をして拾おうとし、試合を早く終わらせようとするのが彼女達の作戦。

 

 だが、その分スタミナの消費の減りは激しい。そこでダイヤさんはロブでシャカールさんを走らせ、私は敢えて全てのストロークで強烈な打球をタイシンさんへと打ち続けた結果、通常より早いペースでシャカールさん達の体力を奪っていった。例えデータ頼りではあっても避けて通ることはできない。

 

 ここまでは順調、狙い通りだ。全ては彼女にかかっている。

 

「ダイヤさん」

 

「……! 分かりました、私に任せてください!」

 

 ダイヤさんに合図を送り、サーブの構えを取る。このゲームを落としたら私達の負けだ。なのに、なんだか負ける気がしない。

 

「チッ、何笑ッてやがる……タイシン、さっさと決めッぞ!」

 

「言われなくても……分かってる。あと1ゲームくらい……」

 

 彼女達の何がそこまで闘志を奮い立たせるのか。それは恐らく、ウマ娘に刻まれた"勝ちたい"という本能。例えどんな勝負であっても、負けず嫌いな彼女達にとっては死んでも勝ちを譲りたくないのだろう。

 

 でも、それは私達だって同じこと。

 

「はっ!」

 

「遅ェ! オラァッ!」

 

 疲れているはずなのに、シャカールさんは私のサーブをなんなく返す。その打球は、私とダイヤさんのちょうど真ん中へと吸い込まれていった。

 

「ダイヤさん、後ろは任せましたわよ!」

 

「はい!」

 

 バックハンドのライジングショットでタイシンさんをかわしながらロブを打ち、無理矢理にでも逆クロス展開を作りながら前へ出る。

 

「ここいらで攻めてくるのは計算通りだッ! 何度もシミュレーション重ねたからなァッ!」

 

 シャカールさんは前に出た私を無視し、逆クロス側にいるダイヤさんに打ち返す。彼女はターゲットを完全にダイヤさん定め、打たれるボールの軌道を計算し始める。

 

 

 これで条件は全て整った。

 

 

「逆クロスの確率100%……決めろタイシン!」

 

「だから分かってるっつの!」

 

 ダイヤさんがボールを打つ瞬間、この試合の間で見慣れたやり取りがシャカールさん達の間でなされる。これまでならば、データ通りのコースを狙われ、タイシンさんのポーチボレーで点を決められていたのだろう。

 

 しかし、一つ思い違いをしている。私ならともかく、シャカールさんは本当にダイヤさんの正確なデータを取れているのか。

 

 答えは否。なぜなら──

 

 

「てやっ!」

 

「なっ……逆!?」

 

 

 うちのダイヤさんは、その気になったらあのゴールドシップをも上回るからだ。

 

 

「どーん……です」

 

 ダイヤさんはタイシンさんとは真逆の方向、ストレートにボールを返し、ついに初得点を獲得する。

 

「ひ、15-0!」

 

 先程シャカールさんは"ゴールドシップのような思考でない限り、打つ方向は丸わかり"と仰った。それは裏を返せば、ゴールドシップのデータは取れないということだ。

 

「な、なんで……ッ! オレのデータが外れた……?」

 

「まだまだですわね、シャカールさん」

 

「ッ、ンだとッ!? 今のはたまたまだ、データは嘘つかねェンだよ! てか決めたのお前じゃねェだろ!」

 

「う、うるさいですわ! そもそもこれは私の作戦です! 早く次行きますわよ!」

 

 痛いところを突かれ、つい早口で反論してしまう。私のサーブで試合が再開すると、今度はダイヤさんが前に出た。

 

「次は間違えねェ、左だ、タイシン!」

 

 シャカールさんはタイシンさんにそう指示するも、ダイヤさんが打った方向は彼女達から見て右方向。またしても裏をかき得点を重ねる。

 

「30-0!」

 

「嘘……ッだろ……」

 

「ハァ……ハァ……クソッ……」

 

 いくらタイシンさんが反射神経と動体視力に優れていても、曖昧なデータではダイヤさんに打ち勝てない。ようやく彼女達に焦りが出てきた。

 

「ダイヤさん、その調子ですわ!」

 

「ありがとうございます、マックイーンさん!」

 

 さあ、反撃開始だ。再び私がサーブを打ち、ダイヤさんが前に出る。

 

「シャカールッ!」

 

「……くッ、浅ェ!」

 

 自分のデータに確信が持てなくなったシャカールさんは私の打球にすら反応を鈍らせる。ギリギリでボールを拾ったものの、打ち上げられた打球はちょうどダイヤさんへの絶好のスマッシュボールとなる。

 

「スマッシュ……ッ! 下がって体勢を──」

 

 シャカールさんが言い終わるまでに、ダイヤさんは強烈なスマッシュ……ではなく、準決勝でネイチャさん達に決めたドロップボレーでセットポイントへと持ち込ませた。

 

「40-0!」

 

 後一点、流れは完全に私達にある。渾身の力を込めてサーブを打ち、ゲームを取りに行く。

 

「……ンだよあれ……あんなのデータにねェ……」

 

「ちっ、しっかりしろシャカール! サトノにデータが通用しないってなら、マックイーンに集中狙いを……」

 

「あら、そんなことをしてよろしいのですか?」

 

「はぁ? 何を言って……んの……っ!」

 

 今頃気がついてももう遅い。シャカールさん達の体力はほぼ限界、なのに私を一人狙いして攻めてこないというのなら、それは大変好都合だ。

 

「体力勝負、受けて立ちましょう」

 

「っ、くそっ!」

 

 ダイヤさんを警戒しすぎるがあまり、彼女達は短期決戦というプレイスタイルを忘れていた。もう一度言おう、"体力勝負となればこちら側に分がある"。

 

「舐めンじゃ……ねェッ!」

 

「とりゃっ!」

 

 データが通用せず、さらに持久戦となった今、シャカールさん達に勝ち目は無い。ラリーの応酬が続けば続くほど互いに疲労が溜まり私達に有利となる。

 

「クッ、しまった!」

 

 そして疲労が溜まるということは、ミスショットに繋がるということ。

 先程よりも高く打ち上がったボールは、またしても私達のチャンスボールとなった。これほどまでにボールの高度が高いと一度地面に落としてからグラウンドスマッシュを狙った方が確実なのだろうけど、あいにく私にとっては待っていましたと言わんばかりのボールだ。そのボールに負けないくらい、私は高く跳び上がる。

 

「なッ、ダンクスマッシュだとッ!?」

 

「決めさせないっ!」

 

 最後は真っ向勝負、空いているコースへ狙いを定める。

 

 

「今です、マックイーンさん!」

 

 

 力の限りラケットを振り切り、ボールを地面に叩きつけると──

 

 

 

 

 ***

 

 

 

「……で、またソファでうつ伏せになってるあのおバカは何してんの」

 

「……トレーナーさん、いくら今のマックイーンさんのお姿が滑稽……悲惨な状態とはいえ、おバカは失礼ですよ」

 

 聞こえていますわよ、ダイヤさん。貴方の方がよっぽど失礼ですわ。

 

「はぁ……球技大会で一悶着あったって聞いたけど、マックイーンは何をやらかしたんだ?」

 

「私がやらかしたって決めるつけるのやめていただけませんか!?」

 

「と、仰っていますが実際のところどうなんでしょうか、サトノダイヤモンドさん」

 

「……実はですね……」

 

 ダイヤさんはトレーナーさんに球技大会のことを語り出す。

 確かに私達はシャカールさんとタイシンさんの作戦を崩し、ゲームのセットポイントではダンクスマッシュを決めることができた。

 だが、そのスマッシュの威力が強すぎたようで、ボールと地面の接地点に小さなクレーターを作ってしまった。トレセン学園ではない外部の施設だったということもあったため、危険性も鑑みて決勝戦はその時点で終了。最後に得点を決めたのは私達なのに、最終的なスコアは1-5となり、勝者はシャカールさんとタイシンさんという結果で幕を閉じた。

 

「うん、マックイーンが悪い」

 

 全てを理解したトレーナーさんはバッサリと切り捨てるように私を批難する。納得いかない。

 

「で、でもでも! 最後には一矢報いることもできましたし、結果は残念でしたけど私は楽しかったな〜なんて……」

 

「結果が伴わないと意味がありませんわ! 嗚呼、スイーツ……私のスイーツが……」

 

「どんだけスイーツ食べたかったんだよ……」

 

 ダイヤさんの慰めも、トレーナーさんのツッコミも何も聞こえない。スイーツのためにこの二週間ほどトレーニングの合間を縫ってテニスの特訓をしてきたというのに、最後の最後てわあんな納得のいかない負け方なのは不完全燃焼もいいところだ。

 

「スイーツ……スイーツ……」

 

「……トレーナーさん、なんとかなりませんか? あのままではマックイーンさんがスイーツの妖怪になってしまいます」

 

「それは元からな気がするけど……。はぁ、しょうがねぇなぁ。ちょっと待ってて」

 

 そう言ったトレーナーさんはトレーナー室にある冷蔵庫へ向かい、その中から何やら小さな箱を取り出した。あれは……

 

「ほら、駅前の何か有名なスイーツ? 買ってきといたよ。万が一優勝できなかったら今みたいにおかしくなるだろうと思って事前に……」

 

「トレーナーさああああああん!!」

 

「ぐはあっ!?」

 

 頬をかきツンデレ気味なトレーナーさん目掛け、一直線に突進して押し倒してしまう。あまりの嬉しさに考えるより先に身体が動いてしまった。

 

「も、申し訳ございません! 私ったらつい……」

 

「あ、ああ、大丈夫……。ほら、さっさとスイーツ食べて、明日からまたトレーニングに精を出せよ」

 

「っ……はい!」

 

 倒れてもなおスイーツを死守するあたり、彼の体幹はどこかおかしい。だが、そんなことを気にする間も無くスイーツにありついてしまう。

 

「ほら、ダイヤの分もあるから」

 

「ありがとうございます♪ それにしても、トレーナーさんがこうして大々的にマックイーンさんにスイーツを許可するなんて珍しいですね」

 

「飴と鞭じゃないけど、まあたまにはな。それに、応援行けなかったのはちょっと後ろめたかったし……な、なんだよその顔。生暖かい目のつもりか? ドラえもんじゃあるまいし」

 

 へぇ、トレーナーさんも可愛いところがあるではないですか。今後一生ネタにしてあげましょう。

 そう思っていると、トレーナーさんのポケットから着信音が鳴り響く。

 

「ん、電話だ。誰から……って、たづなさん? 悪い、ちょっと席を外す、はい、もしもし──」

 

 トレーナーさんはたづなさんからの電話を受け、トレーナー室から出て行った。こうしていつものふざけたトレーナーさんが仕事モードに早変わりしたのを目の当たりにすると、やはり彼は私にとって憧れであると再認識させられる。

 

「トレーナーさん、何かあったのでしょうか……?」

 

「普段からは考えられませんが、きっとあの方も多忙なはずですわ。スイーツの件も含めて、トレーナーさんが戻ってきたら日頃の感謝を伝えるとしましょう」

 

「はい、そうですね!」

 

 ドアの向こうにいるトレーナーさんを見て、ダイヤさんと微笑み合う。私はこうした何でもない日常が好きだ。願うなら、この時間が一生続いて欲し……

 

 

『えっ、テニスコートの修理費? 待ってください、なんでそれが僕に……は? トレーナーの監督責任? ちょっと何言ってるか分かんないです』

 

 

 ……よし。

 

「ダイヤさん、私、今日のところはここら辺でお暇させていただきます」

 

「ちょ、マックイーンさん!? 窓開けて何してんですか!? ここ三階ですよ!?」

 

「問題ありません、このために最近パルクールを習得しましたので」

 

「ダメですよ! 私も一緒に怒られてあげますから、素直に謝りましょう!」

 

「離してくださいまし! このままではせっかくのスイーツが台無しですわ!」

 

「もう既にこの状況が台無しになってますって!!」

 

 ダイヤさんは、無理にでもこの場を離れようとする私を羽交締めにして阻止する。こうなった以上、トレーナー室から逃げることは不可能だ。

 

 もうどうしようもないので、言い訳と謝罪の言葉を考えスイーツを口にすると、

 

 

『いや、やっぱり僕に責任が回ってくるのおかしいですって、考え直してくださいよ。せめてメジロ家にも……たづなさん? たづなさん!? 切りやがった! くそっ、ふざけんなあの全身緑! 今に覚えてろよ!』

 

 

 トレーナーさんの悲痛な叫びだけが、学園の廊下中に響き渡った。残念、無念、また来週。

 

 

 うん、スイーツ美味しい。

 

 

 






ちなみに私は跡部と仁王が好きです。

はい、すいません。次回から二章終了まで真面目にやります。

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