ラッシュデュエルは調整中!   作:夜鹿

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第1話 転生先は中途半端な世界です

「よろしい、ではその遊戯王とやらが発達している世界へと転生させよう。」

 

 学校に遅刻しそうになった所をトラックに轢かれた私、亜城 幽海は、気が付くと真っ白な空間にいた。ただ、私の他にも困惑している人間が何人か存在しており、動じていないのは如何にも神様と言える白の貫頭衣に天使の輪っかを携えた老人だけだった。

 

 神様は、本来死ぬはずでは無かった者達を異世界に映す事で輪廻転生の輪から外れる事の無いように調整しようという事を話していた。ただ、ボーッと聞いている人物が多かったので神様の「どんな世界に行きたい?」という質問に答えられる物はただ1人を除いていなかった。

 

 「遊戯王が発達した世界に行きたい」と即座に答えたのは誰なのか分からない。ただ、この時に答えた者に言いたいのは……遊戯王には現在2種類……別会社製のを含めればさらに数種存在するって事を考えてくれというものだった。

 

「……イタタ。何?転生ってもうすこし穏やかに降り立つもんじゃないの?」

 

 後で神様に文句を言おうと思いつつ、私は現状を確認する。腕には7の形を模したデュエルディスク、腰回りに重厚なデッキケースが3つ、ポケットの中にスマホと思わしき端末が入っている。リュックも背負っているが大通りの片隅に転移させられたのでここで確認するのはよくないだろう。そう思っていると、警察官らしき男性がこちらに向かって歩いてきていた。

 

「……そこの君、何物だ?トーハ町に入るにはIDカードが必要なのだが……持っていないのか?……怪しいな。」

 

 そう言いながら警察官はデュエルディスクを取り出して腕に装着した。ただ、その様子を見て私は待ったを掛ける。デュエルディスクの操作方法についてはなんとなく分かるのだが、今セットされているデッキがなんなのか見当もついてないのだから。

 

(ラッシュデュエルはルールは知ってるしアニメも見てたけど、私が紙でやってたのはOCGの方なんだよね……。)

 

 カードショップの常連とワイワイしながら楽しむエンジョイ勢だった事もあり、遊戯王の世界に飛ばされてきてもそれなりに戦える筈だ。……もっともそれはOCGが主流の世界の話であり、ラッシュデュエル主体の世界だとまともに戦えるかも怪しいのだ。

 

 その為、デュエルディスクからデッキを取り出した私は中身を確認する。ただ、その内容は明らかに異常と思えるデッキだったのだ……。しかしここで動揺して放心している訳にもいかないので、デッキ確認を済ませた私はデュエルディスクにデッキを戻すのだった。

 

「準備は良いな?じゃ……早速……「デュエル!!」」

 

警察官 LP 8000

亜城 幽瀬 LP 8000

 

警察官「先攻は貰う!俺はカードを一枚ドロー!そして、モンスターを2体セット!そしてその2体をリリースして〈ビックリード・ドラゴン〉をアドバンス召喚!カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

警察官 LP 8000

山札 35枚 手札 1枚 伏せ 1枚 墓地 2枚

〈ビックリード・ドラゴン〉☆7 DEF 2500

 

亜城「私のターン、カードを1枚ドロー……。さて、どうしたもんか……。まぁ、仕方ないか。私は〈ジェムナイト・ガネット〉を2体召喚。そして魔法カード〖フュージョン〗を発動。〈ジェムナイト・ガネット〉2体をリリースして〈ジェムナイト・マディラ〉をフュージョン召喚する。」

 

 

亜城「さらに私はカードを2枚伏せてターンエンド。」

 

 

亜城 LP 8000

山札 35枚 手札 0枚 伏せ 2枚 墓地 3枚

〈ジェムナイト・マディラ〉 ☆7 ATK 2200

 

 本来、ジェムナイトというテーマはOCG出身のテーマであり、ラッシュデュエルには未登場なテーマだ。なのにこのカードが存在している事に対戦相手が違和感を覚えていないのはこの世界では普通に流通しているのだろうと思う。まぁ、この世界がラッシュデュエルの世界である為、色々とエラッタされているのも事実だ。

 

 〈ジェムナイト・ガネット〉は本来レベル4、攻撃力1900、守備力0のバニラモンスターなのだが、この世界では攻撃力が1500まで下げられている。同じレベル4で攻撃力1900の〈ブラッド・ヴォルス〉がデッキに1枚しか入れられないレジェンドカード扱いされているので、エラッタされるのは仕方ないだろう。

 

 ただ、他のカードもラッシュデュエル仕様に効果が変わったりとOCGから入った人間が困惑するレベルのエラッタが行われているのも事実だ。実際、バニラエクシーズの〈ジェムナイト・パール〉がレベル7の効果モンスターに変化している事からもその改変が異常だと分かるだろう。………まぁラッシュデュエルでエクシーズ的な召喚方法が出てきたら間違いなく環境が壊れるので仕方ないだろうけどね……。

 

 

警察官「俺のターン!カードを4枚ドロー!……よし、俺はモンスターカードを2体セット!そしてその2体をリリースし、〈連撃竜ドラギアス〉をアドバンス召喚!そして、デッキの一番上を墓地に送り、〈ドラギアス〉の効果発動!〈ドラギアス〉がバトルでモンスターを破壊した時、もう一度攻撃できる!」

 

警察官「さらにデッキの一番上のカードを墓地に送り、〈ビックリード・ドラゴン〉の効果発動!相手フィールドで最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力を、自分フィールドで最も攻撃力の高いモンスターの攻撃力分ダウンさせる!」

 

〈ジェムナイト・マディラ〉ATK 2200-2500=0

 

亜城「や、やばっ!」

 

警察官「バトルだ!俺は〈連撃竜ドラギアス〉で〈ジェムナイト・マディラ〉を攻撃!」

 

亜城「ぼ、墓地の通常モンスター〈ジェムナイト・ガネット〉2体をデッキに戻し、トラップカード【磁場障壁】を発動!バトルフェイズ終了時まで、自分フィールドに存在する岩石族モンスターの攻撃力をこのカードで戻したモンスターの攻撃力分アップする!」

 

〈ジェムナイト・マディラ〉ATK 0→3000

 

警察官「な、なにっ!」

 

警察官 LP8000-(3000-2500)=7500

 

警察官「くっ……油断したか。俺はこのままターンエンドだ。」

 

亜城「ターン終了時、〈ジェムナイト・マディラ〉の攻撃力は元の数値に戻る。」

 

〈ジェムナイト・マディラ〉ATK 3000→2200

 

亜城「私のターン、5枚ドロー!……私は〈ジェムナイト・アレキサンド〉を召喚。このカードをリリースしてデッキから〈ジェムナイト・クリスタ〉を手札に加える。そして〈ジェムナイト・ガネット〉と〈ジェムナイト・ラズリー〉を召喚、2体をリリースして〈ジェムナイト・クリスタ〉をアドバンス召喚。」

 

亜城「手札の〈ジェムナイト・サファイア〉を墓地に送り、〈ジェムナイト・マディラ〉の効果発動。〈ジェムナイト・マディラ〉がバトルする時、相手はトラップカードを発動できなくなる。」

 

亜城「バトル。〈ジェムナイト・マディラ〉で〈ビックリード・ドラゴン〉を攻撃。」

 

警察官(ぐっ……【反功の竜撃】が使えねぇ……。)

 

警察官 LP 7500-(2200-1600)=6900

 

亜城「〈ジェムナイト・クリスタ〉でダイレクトアタック!」

 

警察官「ぐはぁぁぁっ!」

 

警察官 LP 6900-2400=4500

 

亜城「私はこれでターンエンド。」

 

 ……〈ジェムナイト・クリスタ〉の攻撃力も2450から2400に変わっている。最近は中途半端な数値は嫌われるからなぁ……と思いつつ私は次はど攻めようかと考えていた。

 

 

警察官 LP 6900

山札 29枚 手札 2枚 伏せ 1枚 墓地 8枚

 

亜城 LP 8000

山札 31枚 手札 1枚 伏せ 1枚 墓地 6枚  

〈ジェムナイト・マディラ〉☆7 ATK 2200

〈ジェムナイト・クリスタ〉☆7 ATK 2400

 

 

警察官「俺のターン、3枚ドロー!……よっし!俺は〈フェニックス・ドラゴン〉を召喚!手札を1枚捨てて効果発動!墓地の〈連撃竜ドラギアス〉を手札に加える!そして〈フェニックス・ドラゴン〉をリリースして〈ジャスティス・ドラゴン〉をアドバンス召喚する!

 

警察官「墓地の〈ツインエッジ・ドラゴン〉と〈フェニックス・ドラゴン〉をデッキに戻して効果発動!〈ジャスティス・ドラゴン〉は2体分のリリースにできる!〈ジャスティス・ドラゴン〉を2体分のリリースにして〈幻撃竜ミラギアス〉をアドバンス召喚!手札のレベル7ドラゴン族モンスター〈連撃竜ドラギアス〉を墓地に送り、〈幻撃竜ミラギアス〉の効果発動!」

 

警察官「相手フィールドのレベル7以下のモンスター2体の攻撃力を1500ダウン!さらにこのカードはモンスターに2回攻撃できる!」

 

〈ジェムナイト・マディラ〉ATK 2200-1500=700

〈ジェムナイト・クリスタ〉ATK 2400-1500=900

 

警察官「更に〖火竜の熱閃〗発動!伏せカードを破壊するぜ!」

 

亜城(くそっ!【ブリリアント・スパーク】が……)

 

警察官「バトル!〈ミラギアス〉で〈ジェムナイト・マディラ〉を攻撃!」

 

亜城 LP 8000-(2500-700)=6200

 

警察官「モンスターを破壊した事でもう一度攻撃可能!〈ジェムナイト・クリスタ〉を攻撃!」

 

亜城「うわぁぁぁぁっ!!」

 

亜城 LP 6200-(2500-900)=4600

 

警察官「俺はこれでターンエンドだ。」

 

 くそっ!ライフを一気に逆転されてしまった。【ブリリアント・スパーク】が破壊されなければ〈ジェムナイト・クリスタ〉の攻撃力分のダメージを与えられていたのだが……まぁ、考えても仕方ない。私は逆転のカードが来てくれる事を信じてデッキからカードをドローする。

 

亜城「私のターン、4枚ドロー!!」

 

 その時、私の頭の中に流れるBGMが変化した。それは暗い流れが一気に明るくなるような、チャンスを掴んだような感覚だった。

 

亜城「私は〈磁石の戦士(マグネット・ウォリアー)α〉〈磁石の戦士(マグネット・ウォリアー)β〉〈磁石の戦士(マグネット・ウォリアー)γ〉を召喚!〈γ〉がフィールドにいる時、〈α〉の効果発動!デッキまたは墓地から〈磁石の戦士マグネット・バルキリオン〉を手札に加える!〈α〉がフィールドにいる時、〈β〉の効果発動!デッキまたは墓地から〈磁石の戦士マグネット・バルキリオン[R]〉を手札に加える!〈β〉がフィールドにいる時、〈γ〉の効果発動!デッキまたは墓地から〈磁石の戦士マグネット・バルキリオン[L]〉を手札に加える!」

 

 元々の〈磁石の戦士マグネット・バルキリオン〉は初代主人公、武藤 遊戯が使用したカードであり、レベル8の効果モンスターだ。だが、レジェンドにしてもレベル8なのに攻撃力3500、守備力3850のカードをレジェンド枠でも出すわけにはいかなかったのだろう。その結果がマキシマム化なのかもしれない。

 

亜城「マキシマム召喚!現れろ!〈磁石の戦士マグネット・バルキリオン〉!」

 

警察官「マ、マキシマムだと!」

 

亜城「デッキの一番上を墓地に送り、〈マグネット・バルキリオン〉の[R]効果発動!相手モンスター1体の攻撃力を、そのモンスターのレベル×300ダウンさせる!対象は当然、〈幻撃竜ミラギアス〉!」

 

〈幻撃竜ミラギアス〉ATK 2500-2100=400

 

亜城「そして墓地に存在する〈ジェムナイト・クリスタ〉〈ジェムナイト・マディラ〉〈ジェムナイト・ラズリー〉をデッキ、EXデッキに戻し、〖廃石吸収(タブレット・アブソーバー)〗発動。岩石族マキシマムモンスターのレベルの合計と同じになるように岩石族モンスター、又は〈ジェムナイト〉と名の付くモンスターをデッキに戻す事で、戻したモンスターの攻撃力分、マキシマムモンスターの攻撃力をアップする。」

 

〈磁石の戦士マグネット・バルキリオン〉MAXIMAM

ATK 3500+2200+2400+600=8700

 

警察官「こ…攻撃力8000越えだと…バカな!その数値は里山が旦那に不倫された時、不倫相手とのデュエルでしか……」

 

亜城「バトル!〈マグネット・バルキリオン〉で〈幻撃竜ミラギアス〉に攻撃!」

 

警察官 LP 6600-(8700-400)=-1700

 

Winner 亜城 幽海

 

 

 警察官に無事勝利した私のデュエルディスクに何かの通知が届いた。恐る恐るそれを見ると、『犯罪歴等検出されず』という内容のメールだった。なんでも警察とデュエルするとデュエルディスクを犯罪で使用したか否かを検出できるらしい。ある意味不審者に対する審査を行えるので手っ取り早くデュエルに持ち込んだの事だ。

 

「ついでに住民票なんかの手続きも終わっている。デュエルディスクを役所で見せれば書類などを受け取れる筈だ。住処が見つかるまでは警察署近くの寮で寝泊まりすると良いぞ。……まぁ、今のでDPも入っている筈だから食うには困らないだろうがな。」

 

 DPはデュエルをすれば発生するエネルギーを換金した物であり、1DPに1円の価値があるらしい。流石に即サレンダー等では稼げないが、敗北でもそれなりに稼げるので食うに困ればとにかくデュエル!という世界観なのだろう。

 

「……今ので溜まったのは……8000DP?基準に関してはよく分からないけど、取り敢えず住処が見つかるまでは警察署の近くでお世話になるか……」

 

 そう思いながら歩いていると、警察に連れて行かれてギャーギャー叫んでいる者がいた。……真っ白な空間の中で見た顔の様に見えるが、関わると厄介な事になりそうなので、私は目を逸らした後に役所へと向かうのだった。

 




〈おまけ〉
 DPはデュエルしかしてないのになんで生活できてるんだという疑問を解決するご都合主義的な物なので、獲得したDPのやりくりについては省かせて頂きます。
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