何か貧乏神拾ったんだが 作:隣の家に晩飯凸する止まらないゴルシ
カプセルを飲み込み、椅子に座る。
そして、数分が過ぎた。
チク、タク、チク、タク、と心地良いリズムを刻む時計が最初に異常を告げた。
いや、もしかすれば最初から何かが異常を告げていたのかもしれない。
刹那、時計がばきん、と大きな音をたて壊れる。
何事かと平井が後ろを振り向くと、そこにはバラバラになった時計に残骸が浮いていた。
何があったのかを調べるため、破片に近づいた瞬間、後ろからうめき声がした。
すぐさま後ろを見るとどこからともなく現れた男が、依神の口と手を抑え、依神ごと
透き通り始めている。
「な…」
「じゃあ、またね」
そう言い残し、男は依神と共にそのまま何処かへと消えた。
依神が攫われた。
どっと汗が全身から噴き出る。
心臓の鼓動も早くなり、膝から崩れ落ちる。
息が荒くなり、呼吸のリズムも乱れ始めてしまう。
頭の中はもう、『どうして?』『何故』『何で』疑問でいっぱいだった。
「落ち着け、息を深く、ゆっくり吸って、吐いて────そうだ、それでいい」
後ろから、声がした。それは、あの居酒屋で出会った男の声だった。
「あん、たは…」
「時間が無い、簡潔に話すぞ。今この付近の大地は物理的に、上空へと浮き始めている。そして、それをしている連中がいる…依神を攫ったのはそいつらだ」
「何、で…」
「それは分からん。兎に角今すべきことは、連中を潰す。連中のうち一人がこの現象の依代になってる筈だ。そいつをやれば、これは止まる」
「やるって…」
「殺す」
何だって?
今、殺すと言ったのか?
かの『賢者』のルールを破って───弾幕ごっこではなく、殺し合いをしてまで、殺すのか?
「なんで────」
「それを説明するには時間がない…注射器は?あるな、よし。いざとなったらそれを使え、役に立つ」
そう言い残し、男は依神を攫った奴同様、体が透け始めて消えてしまった。
ひとまず、外に出ようと扉を開ける。
一言で言うならば、地獄だった。
まるでこの世の理が狂ったように、そこら辺の石っころは大小構わず浮いており、景色は全体的に薄い赤色のカーテンで覆われているようだった。
「どうやって───探せば…」
「すまん、送り届けるのを忘れていたな」
「え?」
「じゃあ行ってこい」
刹那、景色が変わり、依神を攫った男、と依神が視界に現れた。
「んーーーーーー??なんでここまで来れたんだ…?」
男が口を開く。
「お前は…誰なんだ!何で依神を攫う!」
「………」
「答え───」
どっ、と身体に衝撃が伝わる。
立っていられなくなり、仰向けに倒れ込む。
ふと、違和感のした己の身体を見ると、胸にぽっかりとした穴があった。
血も出ており、意識が暗くなり始める。
最後に見たのは、泣き叫ぶ依神と、自分の腕に突き刺さったままの空っぽの注射器だった。