魔法科高校のGEED   作:大豆万歳

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今回は前後に分けず、1話完結にします

カウント、ザ、ウルトラカプセル。現在、陸の持っているウルトラカプセルは──
・ウルトラマン
・ウルトラマンベリアル
・ウルトラマンゼロ
・ウルトラセブン


サマーデイズ

 九校戦を一高の総合優勝で収めて数日が経ち、明日からいよいよ夏休みとなった頃。司波家リビング。

 

「陸。お前が、ウルトラマンジードだな?」

 

 俺の正面のソファに座り、神妙な面持ちで俺に訊ねてくる達也。隣に座る司波さんは、嘘は許さないと目で訴えてくる。

 俺から見て右手のほうに座る千葉さんとレオは頭に疑問符を浮かべて達也をジッと見ている。

 左手のほうに座る幹比古と柴田さんは、達也と俺を交互に見ている。

 そして俺の両隣に座る雫とほのかは、逃がすことは許さないとでも言うように、そっと袖を掴んでいる。

 ……どうしてこうなったんだっけ。

 

 

 

 

 今朝。登校中に、今日の放課後に朝倉君を含む友人達を家にお招きするとお兄様がおっしゃっていました。目的は、朝倉君がウルトラマンジードであることの確認と、私達人類の敵か味方か問うため。

 それなら朝倉君だけで充分な気がするのですが、お兄様曰く『エリカ達を仲間外れにして文句を言われたくない』とのことです。

 

「ちょっと何言ってるかわからない」

 

 そう言って、朝倉君がとぼけます。平静を装っていますが、見るからに動揺していますね。目が泳いでいます。ですが、これは想定の範囲内。お兄様は更に続けていきます。

 

「幹比古が言うには、美月は特殊な眼の持ち主らしい。その美月の眼には、ウルトラマンジードと陸の光の波長が一致していたそうだ。同じような理由で、俺がウルトラマンゼロに変身していたこともバレた」

『ゑっ!?』

 

 お兄様の言葉に、美月と吉田君を除く皆が驚きます。それに追い打ちをかけるように、お兄様の体から光の粒子が放出され、私とお兄様の間に溜まり人型に変貌し──。

 

「よっ。数日ぶりだな」

 

 お兄様と同じくらいの背丈のゼロさんが、気さくに挨拶をしました。

 

「嘘でしょ……」

「マジかよ……」

 

 自分の手の甲や頬を抓り、目の前の光景が現実か夢か確かめるエリカと西城君。

 

「「……」」

 

 口を開け、呆然とする雫とほのか。そして朝倉君は……。

 

「命だけは勘弁してください」

 

 土下座。

 時代を経ても変わらない、日本人の最終奥義。

 私が瞬きをした一瞬に朝倉君はお手本のような、感動を覚えるほどとてもきれいな土下座で命乞いをしました。

 

「陸。それはつまり、認めるということだな?お前がウルトラマンジードであるということを」

 

 お兄様の言葉を聞いて、朝倉君が一瞬震えました。

 

「……やっちまった……」

 

 か細い声で呟いた朝倉君が、床についていた手で頭を抱えます。

 

「まあ落ち着けって。俺はお前に危害を加えるつもりはねえから。だから、まあ……顔を上げてくれ。そのままだと話もできないし、俺が悪者みたいだからな」

「……本当に?俺の話を聞いた後で掌返して、頭のソレで斬りかかったり」

「しないしない」

 

 ゼロさんがそう言うと、朝倉君は大人しく顔を上げました。ですが、少なからず警戒しているようです。

 

「話が逸れたな。陸、なぜお前は正体を隠して戦い続ける?俺達に話せない理由でもあるのか?」

「言えるわけないだろ。俺の父親が他の宇宙で軍団を率いて暴れまわって、20年前にこの宇宙を消滅寸前まで追い込んで行方をくらませたなんて」

「そうか。やっぱりお前はアイツの……」

 

 朝倉君の発言を聞いて納得されたのか、腕を組んで頷くゼロさん。やはり朝倉君の父親は……。

 

「話に割り込むようで悪いが、ちょっといいか?20年前って言うと、『クライシス・インパクト』のことだよな。あれって隕石が衝突して地球が崩壊しかけたんじゃねえのか?」

 

 そこに、西城君が手を挙げて質問を投げかけました。

 

「いや。あれはウルトラマンベリアルが使用した超時空消滅爆弾によって崩壊した地球を起点に、宇宙全体までその被害は広がった」

 

 目撃者であるゼロさんの発言に、皆が息を呑みます。

 

「宇宙全体って、じゃあ今私達がいる地球は……」

「ウルトラマンキングがこの宇宙と一体化することで、崩壊は何とか免れた」

 

 ウルトラマンキングが成し遂げた偉業に、皆が絶句します。

 

「じゃあ、朝倉君の父親って」

「ウルトラマンベリアル、なのか……?」

「そうだよ」

 

 西城君とエリカの好奇の目線が嫌だったのでしょう。視線を遮るように若干俯き、頭を搔きむしりました。

 

「陸、お前は父親がウルトラマンベリアルであると、誰からどこで聞いた?どうやって知った?」

「DNA鑑定したら一致したって言われた。場所は……口で言うよりも実際に見て貰ったほうが早いか」

 

 朝倉君が言うには、自分の父親について知った場所はここから遠いそうです。移動のために、適当な広さの空き部屋が無いか聞かれたのですが、まず台所とお手洗いは論外ですね。私とお兄様のお部屋も当然ながらNG。リビングはテーブルやソファを動かすのが少し手間です。となると残るは……。

 

「それなら、うちの地下室にしないか?あそこならあまり物は置いていないし、そこそこ広さもある。但し、この部屋について口外しないでくれ」

 

 お兄様の言葉に、皆が無言で頷きました。

 そして私とお兄様が先頭に立って皆を連れてきたのは、我が家の地下室。

 皆は知りませんが、お兄様はこの部屋で歴史に残る偉業を成し遂げました。九校戦が始まるひと月前に発表されたトーラス・シルバーの『飛行デバイス』。そのトーラス・シルバーの『シルバー』こそ、私のお兄様なのです。

 部屋を見渡して十分な広さがあると判断したのか、朝倉君が腰に手を当てて何か話し始めました。

 

「もしもしロゼッタ?今からそっちに行くからエレベーターを転送してくれない?」

 

 エレベーターを転送する。

 その言葉の意味について考えていると、部屋の中央に円柱型の巨大な物体が出現しました。

 

『……』

 

 驚愕から固まっている私達をよそに物体の中央が開き、そこから出てきたのは球体の小型ドローン。

 

「ロゼッタ。エレベーターは1度に何人まで乗れる?」

「5人デス」

「5人か……達也、グループ分けはどうする?」

 

 何事もなかったかのように振る舞う朝倉君に、お兄様が質問を投げかけます。

 

「グループ分けの前に、あれは何だ?どこからどうやって来た?」

「俺の父親がウルトラマンベリアルだって知った例の場所から、転送したんだと」

「転送だと?このサイズの物体をどうやって……」

「どうどう達也。その話は後にして、今はエレベーターに乗って移動しようぜ?」

「……そうだな。すまない」

 

 技術者の血が騒ぎだしたお兄様をゼロさんが静止します。グループ分けですがコイントスの結果、先発は雫とほのか、吉田君と美月。後発はエリカと西城君、私とお兄様。ゼロさんは再度お兄様と一体化し、朝倉君は先発後発共に案内役も兼ねて乗ることになりました。そしてドローンの方ですが、エレベーター内の天井付近を浮遊して待機しています。

 

「ねえ陸。これって乗っても大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫。俺がほぼ毎日のように使ってるから、安心して。ロゼッタ、転送お願い」

「カシコマリマシタ」

 

 エレベーターの扉がスライドして閉じた次の瞬間、エレベーターが再び光に包まれ、消滅しました。

 移動した皆の無事を祈っていると、エレベーターが戻ってきて、中には朝倉君とドローンのみ。

 

「早く乗って。ほのか達が待ってるよ」

「……分かった」

 

 私達もエレベーターに乗り込むと、扉が閉まりました。そして不安と期待が入り混じったまま待つと──。

 

「着いたよ」

 

 到着したのか、扉が開きました。外に出ると、そこには艦船の指令室を思わせる空間と、それを好奇の目で見渡す雫達の姿が。

 先程までエレベーターで浮遊していたドローンが部屋の中央のコントロールパネルらしき物の上に着地すると、天井から下がっている謎の球体が点灯しました。

 

「陸。ここはどこだ?」

「赤ん坊だった俺が捨てられていた、横浜沿岸部の灯台の地下500mだよ」

「地下だと?こんな物をいつの間に、どうやって……すまない、話が逸れるところだったな」

 

 お兄様の体から光の粒子が放出され、再びゼロさんが分離しました。

 

「陸。お前は、ここで自分の親がウルトラマンベリアルだと知ったんだな?」

「ああ」

「それで、あの日から1人で戦っていた。と」

「……まあ、自分の父親がウルトラマンベリアルだなんて言えないし。言っても信じてもらえないか攻撃されるかの2択だろうから」

「だから、今日まで誰にも打ち明けずに黙っていたのか?」

「達也と一体化していたのなら、分かるでしょ?世間が俺の事をどう見ているか。だから、できる限りの事をやって信頼を得ようとしていたんだよ。……半分、親の七光りで信頼されている貴方には分からないだろうけど」

 

 座布団で殴りたくなるような、辛辣な言葉がゼロさんに突き刺さります。

 実際、世論調査によればゼロさんは人々から概ね信頼されているようです。その理由は、父親がこの地球で活動していたウルトラセブンであることが大半です。大半と言った通り、ゼロさんの別宇宙での活躍もあるのです。ですが、大した実績を持たない朝倉君にはそれがとても妬ましいのでしょう。

 ゼロさんは頭を少し掻くと、朝倉君に向き直ります。

 

「陸。いや、ウルトラマンジード。人々の信頼を行動で得ようっていうのは良い心がけだ」

 

 だがな。と、ゼロさんは諭すように続けます。

 

「それで無茶を続けた結果、俺の親父みたいに過労で倒れることになっても良いのか?それで最悪死んじまったら、周りの人達が悲しむんだぞ?」

「うっ……」

 

 ゼロさんのその言葉が効いたのか、朝倉君が言葉に詰まります。

 

「俺の親父達だって、一人で戦ってきたわけじゃない。仲間達と協力して、怪獣や侵略者を撃退してきたんだ。俺だってそうだ。お前の親父、ウルトラマンベリアルを始めとした強敵と戦った時は何時だって、仲間がいた。仲間がいたから、俺は強くなれた」

 

 ゼロさんは朝倉君の肩に手を添えて目を合わせ、諭すように言いました。

 

「仲間を信じるのも、ウルトラマンの大事な資質だ。だからお前も、無茶して1人で戦おうとするんじゃない。支えになる仲間を作って、協力して戦うんだ」

「……」

 

 

 

 

 『仲間を信じるのも、ウルトラマンの大事な資質だ』

 

 ゼロさんの言葉が俺の心に刺さる。それと同時に、俺は……嬉しくて涙が出そうだった。

 今まで命がけで戦って、怪獣を倒してきた。

 でも、俺を『ウルトラマン』として扱う声は少数で、『ベリアル軍団の手先』とか『ベリアル軍団の残党』とか言って、敵視されていた。

 そんな俺のことを、同じウルトラマンだと認めて貰えた。それも、俺の戦いを直ぐ近くで見ていた、ウルトラマンゼロに。

 

「リク。東京都練馬区ニ『宇宙怪獣ザイクロン』ガ出現シマシタ」

 

 そこに、怪獣出現の一報が飛び込んできた。モニターが空中に現れ、街を破壊する怪獣の姿が映し出される。

 

「……達也。ゼロさん」

 

 俺は意を決したように目元を拭うと、達也とゼロさんに向かって頭を下げて言った。

 

「一緒に戦ってくれ!」

 

 達也とゼロさんが俺の肩に手を置き、力強く答えました。。

 

「おう!」

「ああ。行くぞ」

 

 ゼロさんが達也と一体化すると、俺はエレベーターに乗って現場に急行した。

 

『デアッ!』

『シェアッ!』

 

 数秒後。変身した達也と俺が──ウルトラマンゼロとウルトラマンジードが、並んで大地に降り立った。

 

 

 

 

 あれから更に日が経ち、今は夏休み。

 自分の正体を明かしたことで俺達と打ち解けたのか、陸の意外な一面を見ることができた。

 それは小田原にある北山家の別荘に招待された日のこと。

 

「陸。お前も泳がないか?」

「コレが完成したら泳ぐ」

 

 波打ち際で戯れる雫達には目もくれず、念力で寄せ集めて押し固めた砂で『チェイテピラミッド姫路城』なる城を作ることに没頭していた。この城は三層構造になっており、そのうちのチェイテ城とピラミッド部分が完成したそうだ。

 どうやら、陸はアニメやゲーム等が好きならしい。それは今作っている城以外にも、作品の名前や登場する架空の地名や人名、名言の書かれたシャツを好んで着用したり、言葉の端々にスラングが混ざっていたりする形で現れている。例えば──

 

『ンンンン!!絶景絶景!』

 

 船での移動中、海を見ていて気が昂ったのかそう言ったり。

 

『いやほのかはともかく雫は新しい水着いらな、グワーッ!』

 

 深雪からの又聞きだが、雫とほのかの買い物に同行するよう言われた日、失言に対する制裁で雫から目つぶしを食らった時に奇妙な断末魔をあげたらしい。

 

『お前も不死人にならないか?』

 

 電話の途中で、昔流行った漫画のポーズで好きなゲームの布教をしてきたり。

 

『陸、そのシャツは……』

『ああ、この間買ったんだけど、似合ってる?』

 

 黄色のパーカーの下に黒で『覚悟はいいか?俺はできてる』と書かれた白のシャツを着こなしていた。着ていたパーカーにもこれまた黒で『黄金の風』と書かれていた。不思議なことに、俺の中で『あのシャツとパーカーを買わなければならない』という謎の使命感のようなものが芽生えた。

 ──余談だが。もう1つの側面として、なおかつ二次元限定で。他者に苦痛を与えられて喜び、苦痛を与えて喜ぶマゾヒストとサディストのハイブリッド。そして、バブみなるものを見出してオギャる、度し難い変態らしい。……どうやら、世の中には俺の知らない、或いは知らなくてもいい世界があるようだ。

 

「達也、ゼロ。非常に申し訳ないんだけど、緊急事態だ」

 

 緊急事態。

 その単語に皆が反応し、陸のほうを振り向く。

 

「怪獣か?」

「ああ。千葉県に自然コントロールマシーン炎山(エンザン)とカオスジラークが出現したって、ロゼッタから連絡があった」

「そうか……すまない。深雪、雫」

「ご武運を」

「……いってらっしゃい」

 

 楽しみに水を差されたことへの申し訳なさと、タイミングの悪さから雫と深雪に頭を下げ、俺と陸はエレベーターで千葉県へと向かった。

 

「達也。あのブローチは持ってるか?」

「この通り、パーカーの胸元に」

 

 陸が言ったブローチとは、シャプレーメタルを基に作ったとされるブローチのこと。今まで陸はこれを使って姿を隠し、人気のない所に移動しては変身していたという。

 このような手に納まる大きさのブローチに、光学迷彩機能が搭載されている。更に基になっているアイテムのことを考えれば、他者に自分の姿の認識を誤解させることも可能だろう。

 こういった地球外の科学技術が、いつか地球の科学技術で再現される日が訪れるのだろうか。

 

「(……あるいは、俺がそれを成し遂げる。というのも面白そうだな)」

 

 陸の拠点、あの宇宙船を目にしてからというもの、飛行魔法の開発という偉業を成し遂げていながら、更に凄いことを成し遂げたいという欲望が湧き上がってくる。

 どうやら俺は。俺が思っている以上に欲深いのかもしれない。

 

 

 

 

 草木も眠る丑三つ時……とまではいかないけど、それなりに夜も更けた頃。

 

「2人ともすまない。こんな夜中に起こしてしまって」

 

 別荘の居間。カーテンを閉め切って灯りを点けた部屋には、俺と達也。幹比古の3人。……より厳密に言うならば、達也の中にいるウルトラマンゼロを含めて4人。

 

「いいよ。幹比古が深刻そうな顔で起こしたってことは、俺達も無関係じゃなさそうだし」

「陸の言う通りだ。だが、できるだけ手短に頼む」

「わかった。早速だけど、2人は『太平風土記』を知っているかい?江戸時代中期頃に編纂されたという書物なんだけど」

 

 名前だけなら。と言おうとしたところで、ウルトラマンゼロが達也の静止を振り切って意識を無理矢理切り替えた。

 

「こっちの宇宙にもあったのか」

「……『こっちの』ということは、別の宇宙にもあるんですか?」

「ああ。俺の知り合いのウルトラマン、エックスとオーブのいた宇宙にもあってな。特にウルトラマンオーブの宇宙にあった方は、未来に起こる怪獣による災害を予言していた」

 

 顔の広さは、流石ウルトラマンゼロといったところか。

 

「ああ、悪い悪い。ついテンションが上がってな。今戻す。……はあ、いきなりだから驚いたぞ」

 

 達也の抗議があったのか、意識が切り替わって達也が戻ってきた。

 

「話を戻すよ。この『太平風土記』なんだけど、僕はこれは、未来に起こる災害を記した予言の書だと考えている。さっきウルトラマンゼロが言った、ウルトラマンオーブの宇宙にあったように」

「根拠は?」

 

 達也に問いかけられた幹比古はタブレットを操作し、俺達に画像を見せつけてくる。

 

「これは、うちの蔵に保管されている『太平風土記』の一部だ。ほら、ここに……」

 

 『蒼球より黒き竜、絶沌(ゼットン)現る時。光は打ち砕かれ、地に倒れ伏す。赤き筆のみが、黒き竜を塗りつぶす』

 

 という文言が書かれ、二本角の生えた黒い影とその足元で倒れる赤と銀の巨人。そして、小さな人々の手に、先端部が赤い筆のような物体が握られていた。

 

「これはまさか、伝説の初代ウルトラマンが敗れた戦いのことか?そんなこと……」

「ありえない。なんて、言わせないよ。他にも」

 

 『真紅の闘士を打倒せんと鋼の具足を纏い、蘇りし双頭の怪鳥版遁(パンドン)。白銀の刃に再びその身を刻まれん』

 

 『血と煤の円盤不落苦円弩(ブラックエンド)。自らを呼び寄せし者の野望と共に、獅子の拳によって打ち砕かれん』

 

 他にもゾフィー、ジャック、エース、タロウ、80、メビウスの最終決戦の模様まで細かく描かれていた。

 これだけ偶然が重なれば、もはや必然といってもいいかもしれない。

 

「そして、これがうちにある『太平風土記』の最終巻だ」

 

 幹比古が神妙な面持ちで端末を操作して、目的のページを俺達に見せる。そこには──。

 

 『恐ろしき巨人排離悪瘤(ベリアル)、三度大地に降り立つ時。始まりの地にて大いなる力を授かりし巨人、これを打ち祓う』

 

 黄色の眼のような模様が書かれた人型の黒い靄と、それに対峙するように身構える白い巨人。彼の背後には、9色の光の球が配置されていた。

 

「……ベリアル……」

「三度ということは、奴はこの地球に再び現れるのか?」

 

 達也の問いに、幹比古は頷く。

 

「ああ。陸、君はいずれ父親と戦うことになる。そして今の君が敗北すれば……」

 

 この宇宙は滅ぶ。

 それはつまり、もっと強くなる必要がある。幹比古に、そう遠回しに告げられたように感じた。

 

「……達也」

「どうした?」

「夏休みが終わったら、久しぶりに八雲先生のところで稽古をつけてもらおうと思っている」

「わかった。先生には、俺から連絡しておこう。きっと大喜びするだろう」

 

 

 

 

 ???

 

「首尾はどうだ?ストルム星人」

「順調でございます」

 

 血のように赤黒い空間で、向かいあう巨人と人間。

 人間は跪き、深々と頭を垂れる。さながら、王に付き従う臣下のように。

 

「ゼロの奴が来たらしいが」

「問題ありません。想定の範囲内です」

「ほう……」

 

 人間が放った自信に溢れた言葉を聞き、巨人は楽しそうに嗤う。

 

「期待しているぞ、ストルム星人。……さて、そろそろ補充の時期だろう。受け取れ」

「ありがとうございます……ベリアル様」

 

 巨人──ベリアルのカラータイマーから放たれた赤黒い靄が、人間の体を包み込んでいった。

 

「ああ、息子よ……お前に会える日が、とてもとても楽しみだ……」




 次回予告
 秋の『全国高校生魔法学論文コンペティション』のチームメンバーに、達也が選ばれた。当日に向けて、学校全体で準備が進められていく中、今度は海の向こうから不穏な影が忍び寄っているみたいで……
 次回、魔法科高校のGEED。『いざ横浜』
 「司波君。秋の論文コンペに出てみない?」

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