魔法科高校のGEED   作:大豆万歳

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優等生と劣等生(後編)

陸が第二演習室にいた頃。校門前。

 

「(帰りたい)」

 

 私の頭の中ではそんな考えが浮かんでいた。ほのかも表情には出ていないけど、うんざりしているみたい。

 

「いい加減に諦めたらどうなんですか!?深雪さんは、お兄さんと一緒に帰ると言っているんです。他人が口を挿むことじゃないでしょう」

「そういうのは自活(自治活動)中にやれよ」

「相談だったら予め相手の同意をとってからにしたら?」

 

 二科生の巨乳眼鏡っ娘が啖呵を切っている。更に同じ二科生からの援護口撃。いいぞもっと言ってやれ。

 そして言われた相手はというと……。

 

「五月蠅い!他のクラス、ましてやウィードごときが僕たちブルームに口出しするな!」

 

 出た。『ブルーム』と『ウィード』。

 陸という規格外(チート)を知る私とほのかからすればブルームとウィード、一科生と二科生の違いなんて些事。1ミリ程度の身長差で相手を『チビ』と罵倒するようなもの。

 どうしようかと周りを見渡すと、通りがかったのかこちらをじっと見ている先輩の姿を捉えた。あの腕章の色は風紀委員の……先輩には申し訳ないけれど、利用させてもらおう。

 

「森崎君森崎君」

「なんだ!って、君は同じクラスの……」

「うん。北山雫だよ」

「ちょうど良かった、君からも彼らに」

「もうさ、深雪さんの運に決めて貰おうよ」

『……はい?』

 

 私の提案を聞いて、言い争っていた人達が静かになった。

 

「深雪さんに6面ダイス(これ)を投げて貰って、奇数が出たら私達と、偶数が出たらお兄さんと帰るってしない?」

「それは……」

「それにほら、あそこで風紀委員の先輩がこっちを見てるよ。だから、ここは平和的かつ公平な方法で……ね?」

 

 私の提案を、二科生の人達はあっさりと承諾。風紀委員の先輩が見ているというのと、最後の『ね?』の部分で少し語気を強めたのが効いたのか、一科生の皆も渋々ながら同意。

 

「じゃあ深雪さん、お願いします」

「わかりました。では、奇数が出たら皆さんと、偶数が出たらお兄様と帰るということで……いざ!」

 

 運命のダイスロール。結果は──。

 

「『2』ですね。それでは皆さん、また明日」

 

 私とほのかは、心の中でガッツポーズをとる。ありがとう、ダイスの女神様。

 

 

 

 

「雫さんとほのかさんからお聞きしたのですが、超能力が使えるって本当ですか?」

 

 学校からの帰り。雫とほのかと帰っていたところに他のグループと合流した。雫曰く、『少しでいいから交友関係を広げよう』だそうだ。まあ、それは別に構わないんだけど……。

 

「……」

 

 滅茶苦茶見られてる。

 俺のことをじっと見ている男子の名前は司波達也。俺と同じ二科生で、同じく風紀委員らしい。そして、今俺に話しかけている女子生徒、司波深雪さんの双子の兄らしい。あまり顔立ちは似ていないけど、今はそんなことはどうでもいい。重要な事じゃない。

 その男子が俺を、しかも偶に俺の腰をチラチラ見ている。もしかして、制服が僅かに膨らんでいて変身アイテム一式が見えるとか?でも他の人は見えていないみたいだだから気のせい、であってほしい。でも念のため、今度から持って来るのは通信にも使えるナックルだけにしておこう。カプセルとライザーはロゼッタに転送してもらえばいい。バリアで見えなくしていると言っても、布や埃を被ったら見えてしまうだろうから。

 

「どうなんですか?」

「え、ええ、使えますよ。前に風邪で喉を痛めて話すのが辛かった時に、テレパシーで他の人とコミュニケーションをとったことがあります」

「まあ!他にはどのような超能力が使えるんですか?」

 

 目を輝かせて俺が使える超能力に興味津々の様子の司波深雪さん。他のメンバーも気になるのか、俺達の会話に聞き耳をたてていた。

 

 

 

 

 この時の俺は知らなかった。

 この出会いが、俺の今後のターニングポイントになっていたことを。

 

 

 

 

 そして迎えた、風紀委員としての初仕事の日。またの名を新入部員勧誘週間、その初日。

 これは、各クラブ活動の新入生勧誘を1週間という期間を設けて行われる。

 なぜそれに風紀委員が駆り出されるかと言えば単純明快、この期間は学校が無法地帯になるから。

 クラブ活動で優秀な成績を出せば、クラブの評価から所属する生徒個人の評価まで様々な便宜が与えられる。そういうこともあり、どこのクラブも有力な新入部員を獲得しようと必死になる。更に、新入生向けのデモンストレーションのためにCADの使用が許可されるので、陰では魔法の撃ち合いが発生することも珍しくないらしい。一応審査はあるらしいけど、事実上フリーパスだそうだ。しかも入試成績のリストまで密かに出回っているらしい。そんなことをしているから無法地帯になると思うんだけど、学校側は何を考えているんだろうか。雑な情報管理とか、フリーパスと化したCADの使用審査とか、問い詰めてやりたい。

 

「新入生の紹介をしよう。立て」

 

 事前の打ち合わせも予告もなかったけど、すぐさま立ち上がる。

 俺が今いるのは風紀委員会本部。巡回前の業務会議に来ていた。

 

「1-Aの森崎駿、1-Eの司波達也、1-Gの朝倉陸だ。今日から早速、パトロールに加わってもらう」

 

 ざわめきが生じたのは、俺と達也のクラス名を聞いたからだろう。流石に雑草(ウィード)と口にする者はいなかったけれど。

 

「誰と組ませるんですか?」

 

 その代わりなのか、2年の先輩が手を挙げてそう発言する。

 

「前回も発言した通り、部員争奪週間は各自単独で巡回する。新入りであっても例外じゃない」

「役に立つんですか」

 

 俺達3人に向けられたものかもしれないけど、俺と達也の左胸に向けられた視線が本音だろう。まあ、これについては想定内。

 

「ああ、心配するな。3人共使えるやつだ。司波と朝倉の実力はこの目で見ているし、森崎のデバイス操作も中々のものだった。それでも不安なら、お前が森崎についてやれ」

「……やめておきます」

「他に言いたいことのあるやつはいないな?……これより、最終打ち合わせを行う。巡回要領については前回まで打ち合わせの通り。今更反対意見はないと思うが?」

 

 異議なし、という雰囲気でもないけど、積極的に反対意見を出す人もいない。

 

「よろしい。では早速行動に移ってくれ。レコーダーを忘れるなよ。朝倉、司波、森崎については私から説明する。他の者は、出動!」

 

 全員が一斉に立ち上がり、踵を揃えて、握りこんだ右手で左胸を叩いた。敬礼なのだろうか。

 次々と先輩方が本部を出て、残るは俺と達也、森崎、渡辺先輩の4名。

 

「まずこれを渡しておこう」

 

 横並びに整列した俺達に渡されたのは、腕章と薄型のビデオレコーダー。

 

「レコーダーは胸ポケットに入れておけ。ちょうどレンズ部分が外に出る大きさになっている。スイッチは右側面のボタンだ」

 

 言われた通り入れてみれば、そのまま撮影できるサイズになっていた。

 

「今後、巡回の時は常にそのレコーダーを携帯すること。違反行為を見つけたら、直ぐにスイッチを入れろ。ただし、撮影を意識する必要は無い。風紀委員の証言は原則としてそのまま証拠に採用される。念のため、くらいに考えてもらえば良い。委員会用の通信コードを送信するぞ……よし、確認してくれ」

 

 俺達は携帯端末に正常に受信した旨を報告する。

 

「報告の際は必ずこのコードを使用すること。こちらから指示ある際も、このコードを使うから必ず確認しろ。最後はCADについてだ。風紀委員はCADの学内携行を許されている。使用についても、いちいち誰かの指示を仰ぐ必要は無い。だが、不正使用が判断された場合は、委員会除名の上、一般生徒より厳重な罰が課せられる。一昨年はそれで退学になったやつもいるからな。甘く考えないことだ」

 

 肝に銘じておきます。

 

「では、自分は巡回に行ってまいります」

「うむ。行ってこい」

 

 

 

 

「陸、私とほのかをSSボード・バイアスロン部のテントまで連れてって」

 

 本部を出た俺は巡回をしていたところで、雫に捕まった。

 

「俺の仕事は護衛じゃなくて巡回だ。だからそれはできない」

「巡回なら、私とほのかを送り届ける途中と、送り届けた後ですればいいでしょ。それとも、幼馴染のお願いが聞けないの?」

 

 雫が幼馴染という強権を振りかざす。そして制服の袖をくいくい引いて催促してくる。

 

「ほのかからも何か言ってくれないか?」

「……」

 

 ほのかは顎に手を当てて暫く考え込む。そして──。

 

「……お願い。私と雫をSSボード・バイアスロン部のテントまで連れてって」

「ほのか、お前もか」

 

 ほのかが俺の腕をとって上目遣いで言う。まあ、雫の言う通り2人を送り届けている間と後も巡回できるけど、その間の男子生徒からの視線に耐えるのは……。

 

「……わかったよ」

「「やったぜ」」

 

 ジーっとしててもドーにもならない。ここは大人しくお願いを聞こう。それに、断ったら埋め合わせに色々要求されるだろう。

 

「肝心の場所は?」

「わからないから、歩き回って探そうかなー、って」

「(出来るだけ早めに見つかりますように)」

「じゃあ、行ってみよー」

 

 雫とほのかを連れて、目的の部室に向かう。その道中では。

 

「テニス部に入りませんか!?」

「バスケ部に是非!!」

「卓球部もありますよ!?」

「いやいや水泳部に!!」

 

 水槽に餌を投入された魚のように新入生に群がる先輩方と、それに圧倒される新入生達。俺がいなければ、今頃雫とほのかもあの中心にいたかもしれない。

 

「止めないの?」

「……まだ物理的な取り合いに発展してないから様子見で」

 

 それよりも2人を目的地まで送りたい。視線が全身に刺さって辛い。

 

「ここだな」

 

 そして2人を連れて歩くこと数分。目的のテントに到着した。

 しかし凄いな、風紀委員の腕章の力。これつけて歩いている間、他の部が雫とほのかに勧誘に来なかったんだから。

 

「すいません。入部希望者なんですけれど、部長さんはいらっしゃいますか?」

「はい。自分です」

「じゃ、俺は巡回に戻るから」

「ありがとう」

「行ってらー」

 

 さて、どこに行こうかな?もう少し校庭を見て回るか。それとも体育館とかに行ってみるか。

 考え事をしながら歩いていると、携帯端末に着信が入った。このコードは、さっき受信した風紀委員のコードだ。早速トラブルか?

 

「はい。朝倉です」

『第二小体育館で乱闘が発生したとの通報があった!大至急向かってくれ!』

「了解!」

 

 委員長の緊迫した声を聞いた俺は直ぐに携帯端末をしまって全速力で、しかし人にぶつからないように注意して走った。




次回予告
 新入部員勧誘活動週間が終わって数日が経過したある日、『学内の差別撤廃を目指す有志同盟』なる連中と現生徒会長の討論会が行われることになった。正直嫌な予感しかしない。そしてそれは的中し、学内にテロリストが侵入してきた。それだけじゃなく、怪獣まで現れて……!?
 次回、魔法科高校のGEED。『平等』
 「決めるぜ、覚悟!」
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