・ウルトラマン
・ウルトラマンベリアル
・ウルトラマンゼロ
・ウルトラセブン
東京都世田谷区。
「ビシャアアアアッ!!」
『ウルトラマンジード!プリミティブ!』
「シャアッ!」
ブランシュの襲撃から日が経ち、今は7月。
あの1件からも、怪獣は東京都か近隣地域に出現していた。
おかげでニュースの話題は怪獣と、俺ことウルトラマンジードに関する暗い話題ばかり。
特に最近では、ウルトラマンジードとベリアルの外見の類似性から関係性を疑われている。それだけならまだ許せるけど、中には俺がベリアル軍団の手先ではないかという人まで出てくる始末だ。
「(冗談じゃない。俺はベリアル軍団の手先じゃない!そのために声明を送ったというのに、かえって逆効果になってしまったか?)」
かと言って、俺がウルトラマンジードだと安易に公表するもの危険だ。
別次元の宇宙での話だけど、ウルトラマンに代わる新しい戦力として投入される兵器を完成させるために、ウルトラマンを犠牲にするという本末転倒な計画が実行されたらしい。しかし、投入された兵器は敵に鹵獲され、逆に防衛軍を攻撃したらしい。
優秀な魔法師を作り出す過程で倫理観を捨て、今でも優秀な魔法師の『生産』と『品種改良』を続けている現代で下手に正体を明かせば、同じような事件がこの地球でも起きないと断言はできない。だから今は世間から向けられる疑惑の目と言葉に耐えて、行動で信頼を得るしかない。
「シャッ!」
「ビシャアアアアッ!!」
怪獣の振り下ろした触手を回避し、ローキック。続いて左肘打ち、右正拳突きと繋げていった。
同時刻。東京都内。
「ゼロさん。あの怪獣の名前と特徴は?」
「ああ。あの怪獣の名前はガギ。特殊なバリヤーを形成して、範囲内にいる生物を地中の巣に引きずり込んで繁殖用の餌にする怪獣だ」
ゼロと呼ばれたその男は、見た目からして人間ではなかった。
頭頂部に2本の鋭利な角。物理的に鋭い目つき。胸と肩に装着されたプロテクター。赤と青のツートンカラーの体色に走る、銀色のライン。そして、胸部のランプ。
極めつけは、体の大きさ。10㎝前後と非常に小さな手のひらサイズ。その小さな体でソファーの手すりに腰かけ、腕を組んでテレビ越しにウルトラマンジードと怪獣の戦いを観察していた。
そんな彼の正体は──今まさに怪獣と戦っているウルトラマンジードと同じ、光の巨人。名をウルトラマンゼロ。嘗てこの地球にやっていたウルトラマンの1人、ウルトラセブンの息子であり、ウルトラマンベリアルの宿敵である。
「だが見たところ、バリヤーは形成されていないようだな。地中から出現したという情報もない」
「ああ。ってことは、誰かが持ち込んだのを解き放ったか、最近の怪獣と同様に誰かが変身したんだろう」
ウルトラマンゼロがそう締めくくったところで、戦闘は終わりを告げた。
『レッキングバースト!』
ウルトラマンジードの放った光線が突き刺さり、怪獣は爆発四散。煙が周囲に広がっていった。
「じゃあ、そろそろ戻るぜ、達也」
「わかった」
ウルトラマンゼロは立ち上がると振り返り、淡い黄緑色の光となり、達也と一体化した。
「……深雪、そろそろ慣れても良いんじゃないか?ゼロが何か言うたびに分離するのは手間だと思うが」
「ですがお兄様。お兄様のお体を使ってゼロさんが言葉を発すると、元から凛々しいお兄様のお顔の凛々しさが増大し、それに伴って声音も変化すると私は、私は……っ!!目と耳が幸せ過ぎて死んでしまいそうです!!」
拳を力強く握りしめ、興奮から頬を紅潮させて力説する妹の姿に達也は曖昧な表情で沈黙。そしてゼロは……
「(深雪のブラコンぶりにも慣れ始めてきたな……)」
遠い目をして虚空を見つめた。
なぜウルトラマンゼロが司波兄妹と共にいるのか。時は遡ること、有志同盟と生徒会の討論会の日の夜。
「誰だ」
不意に深雪を庇うように抱き寄せ、何もない空間にCADを向ける達也。しかし、彼にはそこにいる何かが見えていた。
「待ってくれ!俺は敵じゃない!」
現れたのは、青と赤のツートンカラーの体色をした、小さな人型の生物。それは敵対する意思がないことを示すように両手を広げ、口を開いた。
「俺はゼロ!ウルトラマンゼロ!セブンの息子だ!」
「ぶふぅ!?」
それを聞いた古葉小百合が飲んでいたコーヒーを吹き出す。逆流して鼻に入ったのか、のたうち回る音が画面越しに司波兄妹の耳に届く。
「大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫よ……それよりも!」
復活して前のめりになったからか、画面が古葉小百合の顔でいっぱいになった。
「今から急いで2人の家に行くから、鍵を開けておいて頂戴!」
「その前に、あのウルトラマンゼロが何者なのか説明を──」
「いいわね!?」
「わ、わかりました」
「お気をつけて」
今まで感じたことのない圧力に若干引き気味の司波兄妹が暫く待つ事数十分。
「お待たせ!それで、ウルトラマンゼロはどちらに!?」
「ソファーの上に座っています。……そちらの方は?」
大急ぎでやってきたのか、先程吹き出したコーヒーのシミをそのままにしてきた彼女の隣には、スーツ姿の女性。文字通り貼り付けたような、その無表情な顔に達也は少なからず警戒心を抱いた。
「この人はコガネさん。私の上司よ」
「初めまして。AIB極東本部職員、ペダン星人のコガネと申します。これは本来の顔を隠すためのマスクです。どうかご了承ください」
身分証を提示し、礼儀正しく一礼すると達也に案内され、居間にやってきた2人。そしてソファーの上では手のひらサイズのウルトラマンゼロが、背筋を伸ばして座っていた。
懐から、小百合がボイスレコーダーを取り出して起動させる。
「貴方が、ウルトラマンゼロですか?」
「そうだ」
「ウルティメイトフォースゼロのメンバー。グレンファイヤー、ミラーナイト、ジャンボット、ジャンナインの4名はいらっしゃらないのですか?」
「ああ。今回は俺の独断で、誰にも地球に行くことは言っていない」
「そうですか……」
「小百合さん。お話の途中申し訳ないのですが、彼が何者か教えていただけないでしょうか」
司波兄妹を放置して話し合いを始めそうな空気になったところに、深雪が静かに介入した。
「彼はウルトラマンゼロ。この地球に来たウルトラマンの1人、ウルトラセブンのご子息よ」
「あのウルトラセブンに息子がいたんですか!?」
「ええ」
司波兄妹に注目されてこそばゆく感じたのか、頬を掻くウルトラマンゼロ。
しかし。知らなかったとはいえど、ウルトラマンにCADを向けたことに対し、達也は少なからず罪悪感を抱いていた。
「ああ、さっき銃を向けたことは気にしないでくれ。俺だって何も言わずに人の家に上がったわけだし」
彼の考えを読んだのか、気にしなくていいと言ったことで達也の心にのしかかっていた罪悪感が少し軽くなった。
「……では、本題に移ります。今回の地球に来訪された理由は?やはり、20年前の『クライシス・インパクト』関係ですか?」
「そうだ。復活し、以前よりも強大な力を手に入れたベリアルに対抗するべく、光の国で『ウルトラカプセル』というアイテムが開発されていた。だが、実戦投入する前にこの宇宙が崩壊するほどの大爆発が発生した。駆けつけたウルトラマンキングがこの宇宙と一体化することで崩壊は免れたが、その混乱に乗じて何者かに『ウルトラカプセル』を盗まれてしまった。俺は盗まれた『ウルトラカプセル』と、行方をくらましたベリアルを探すため、この地球にやってきた」
「成程……。では、なぜこの家に?」
「俺の知り合い、ウルトラマンエックスの声がこの家から聞こえた気がしてな。そこの通気口から入って、確認しようとしたんだが……」
「タイミング悪く、俺がCADを向けたからそれどころではなくなった。ということか」
「まあ、そういうことだ」
情報もある程度集まったのか、小百合はボイスレコーダーの電源を切り、ポケットに収納する。
「では、これからどうされますか?」
「そうだな。この通りウルティメイトブレスレットも破損しちまってるし、20年前の戦いの傷もまだ癒えてないから本調子じゃない。どうしたもんか……」
腕を組み、今後の動向に考えを巡らせるウルトラマンゼロ。
そこに、深雪が手を挙げて提案する。
「でしたら、私と一体化いたしませんか?」
「「「ゑ?」」」
全員が口を揃え、深雪の方に顔を向ける。
「こちらで活動される以上、誰かと一体化した方が動き易いのではありませんか?それに、お体も本調子ではないようですから、尚更──」
「待て、深雪。それなら俺がゼロと一体化する」
「ですがお兄様。お兄様がゼロさんと一体化されますと、色々と不都合な事があるのではないでしょうか」
「それを言うなら、深雪も同じじゃないか。ウルトラマンと一体化するということがどういうことか、どれだけ危険か分かっているのか?」
「分かっています。ですが──」
そこに達也が待ったをかけ、始まった2人の話し合い。お互いに相手の意見を尊重し、そのうえで納得してもらおうと言葉を選んで平和的な解決を試みている。
「何かあるのか?あの2人には」
「まあ、その……あるんです。色々と……」
話し合いを始めた兄妹から置き去りにされた3人は、静かに彼らを見守っていた。そして話し合いの結果……。
「では、基本的には俺がウルトラマンゼロと一体化して活動する。但し、やむを得ない状況に置かれた場合には、深雪とウルトラマンゼロが一体化する。これでいいな?」
「おう。それじゃあ、早速やってもいいか?」
「頼む」
腕をクロスさせると、ウルトラマンゼロの体が淡い黄緑色の光となり、達也の胸に吸い込まれていった。
「……どう?体の調子は」
「問題ありません。ゼロのほうも、馴染んでいると言っています」
手を握り、開く。軽く肩を回し、屈伸などをして体に異常がないか確かめていた達也は、ズボンのポケットに違和感を感じた。
「達也くん。それは?」
「これは、何?俺が説明するから代わってくれ?……わかった」
何か小声で達也が呟くと瞬きと同時に、声音と表情が若干変化した。
「こいつは『ウルトラゼロアイNEO』。俺が達也か深雪と一体化している時に変身するのに使うアイテムだ」
「眼鏡型……やはり、親子なんですね」
「よせやい。照れるぜ」
「そういうわけで。暫くの間、よろしくな」
直後、深雪が胸を押さえて膝から崩れ落ちた。後に彼らは言った。その時の深雪の表情は、多幸感に満ち溢れていたと。
九校戦。正式名称を『全国魔法科高校親善魔法競技大会』というイベントがある。
期間は8月3日から12日までの10日間。全国にある魔法科高校から選りすぐりの精鋭が集まり、お互いの魔法の腕を競い合う。
そしてこの大会には、競技に出場する選手の他にCADの整備を行うエンジニア──公式用語で技術スタッフが存在する。
魔法を用いた競技では、本人の実力とエンジニアによるCADの調整がかみ合わなければ良好な結果は出ない。
「え?陸とレオ、前に来ないの?」
「俺やレオみたいに大きいのが前にいたら、後ろの人達が選手の顔を見れないだろ」
「そういうわけだ。悪いが俺達は少し後ろにいくぜ」
そう言った俺とレオは、エリカ達と少し離れた席に移動する。
ちなみに、エリカ達が座ろうとしているのは、前から3列目、ほぼ最前列と言っても過言で無い席。なぜそんな目立つところに座ろうとしているのかと言うと──。
「まさか、達也が技術スタッフに選ばれるとはな」
「お前、まだ信じてなかったのか?」
「いやいや。事実だからこそ信じられないんだ。1年生で、しかも二科生で選ばれたのは達也だけだし」
「まあな」
そう。何と、九校戦の技術スタッフに達也が選ばれたんだ。
そして、達也の晴れ姿を近くで見ようというエリカの提案に1-Eの生徒が賛同。そこに何故か、俺にまで声がかかった。その理由はエリカ曰く『いつも一緒のメンバーだから』とのこと。
「それはそれとして、だ。陸、お前、幹比古と何かあったのか?」
「心当たりが全くない。寧ろ本人の口から聞きたいくらいだ」
「そっか……達也も同じ様な感じだし、どっかで何かあったんじゃねえか?」
席に座り、発足式が始まるまでの少しの間。俺とレオは小声で話しをしていた。
幹比古。本名を吉田幹比古。古式魔法の名家、吉田家の次男で、達也達と同じ1-Eの二科生。序に言うと、エリカの幼馴染らしい。
その幹比古は、なぜか俺に対して警戒心のようなものを抱いている。言動や顔には出ていないけど、そんな気配のようなものを向けてくる。しかも、その対象は俺だけじゃなく、達也も含まれている。
俺と達也の共通点、共通点は……なんてこった、二科生以外何もないじゃないか。俺は心の中で匙を投げた。
「そのうち本人に聞いてみるよ」
「そっか。……おっと、そろそろ始まるぜ」
そして、大会2日前の8月1日。
ネオ・ブリタニア号の船内にある居住スペースの一角。
「リク。今更言ッテモ遅イカモシレナイデスガ、本当ニヨロシイノデスカ?クラスメイトカラノ誘イヲ断ッテ、ココニ寝泊マリヲシテ」
「あー……俺もできることならそうしたかったけどさ──」
ロゼッタの言うクラスメイトからの誘いとは、給仕のアルバイトをする代わりに千葉さんの実家のコネを使ってホテルに泊まるというお誘いのこと。柴田さん、レオ、幹比古はこれに応じたけれど、俺は断った。なぜなら。
「夜中に怪獣が現れたりした時のことを考えたら、こうしたほうが良いかな、って。まだ俺の正体を明かせるほど周りから信頼されているわけじゃないからさ」
「……ワカリマシタ。貴方ガソウ決断シタノデアレバ、私ハソレニ従イマス」
ごめん、皆。この埋め合わせは、どこかで何らかの形でするから。
俺は、今頃会場で給仕のアルバイトをしているであろう友人達に、心の中で謝罪した。
今年もよろしくお願いします。