作者の所属するサークルで行った「作者人狼ゲーム」で発表した作品を投稿します!
一枚の写真を見た。
死体の写真だ。人間のではない、タコの死体だ。
タコが死んでいる。
山奥深くの湖いっぱいにタコの死体が浮かんでいる。
これはたくさんのタコの死体がびっしり浮かんでいるのではなく、巨大な一匹のタコが大きな湖の中ほどで長い足を広げて死んでいるのだ。
木の皮のような斑模様の頭は何者かに喰い破られて、ぶよぶよした内臓が飛び出している。全身の肉が裂け、流れ出たタコの体液によって湖が異様な色に濁っている。
しかし一等目を引くのはこのタコの目玉だ。
写真の中央にトラックのタイヤ程もあろう巨大な目玉が二つ並んでいる。赫黒く充血し、はち切れんばかりに見開かれたその瞳孔は真っすぐこちらを見つめている。すでに息絶え、生気の無いその虚無の眼が私の視線をとらえて離さない。
意識的に視線を外し、タコ以外の、周囲の森や地面に視線を移す。
見るに、湖の周辺に生えているのはブナやマツ、それら木々が紅葉し、既に落葉していることから十一月の末頃に撮られたのではないかと推測される。加えて端々に映り込んでいる山脈の形から日本の関西の何処か、かと思われる。
しかしどうしてもこの目玉に視線が吸い寄せられてしまう。
気味が悪くなって二枚目を見る。
二枚目もタコの写真だ。一枚目とは違う角度から撮られている。三枚目も四枚目も。
手元にある十数枚の写真すべてがこの不気味なタコの死体の写真だった。
順繰りに見ていくと、ある角度の写真が目にとまった。
それはタコの頭の傷を映した写真だった。
その巨躯に見合うだけの臓物が湖にぶちまけられ、まだかろうじて体とつながっているもの、すっかり千切れて独立して水に浮いているもの。色鮮やかな臓物が至近距離から撮影されている。それ以降は体中の外傷、大蛸の肉を切り裂く、鋭い切り傷や何者かの咬み跡など、それらが事細かに撮影された写真ばかりだった。
誰がこの大蛸を殺した?
それにこの歯形や爪痕。人間に殺された訳ではないのか?
改めてこの写真達が収められていた封筒を手に取る。
薄汚れていて、ずいぶん古い封筒だ。
封筒の表面にはマジックで「The She」と殴り書きされていた。
『彼女』……とはどういう意味だ?
裏面を見る。宛名も送り主も、何も書かれていない。
皆目わからない。
写真自体がポラロイドカメラで撮られたと思しき代物で、合成やコラージュの可能性も捨てきれない。
いったいこれは何なんだ…
誰がこの写真を私に送ってきた?
誰がこのタコを殺した?
「彼女」とはどういう意味なんだ……