Fate/Earnest Wish   作:白宮響花

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ついに始まりました。
これからよろしくお願いします。


第2話 召喚

 

生暖かい空気が吹く梅雨の夜。

制服姿で歩く少女がいた。

見た目は、ストレートに下ろした青い髪で黒い目をしていた。

少女の胸には、金色の三日月型の飾りが付いたネックレスが光っており、手には学校指定のカバンと食品の入ったレジ袋を持っていた。

「はぁ、バイト疲れました。帰ったら洗濯とお風呂と……。」

少女は1人で憂鬱な気分に浸っていた。

だからこそ、前から歩いてくる人に気づけなかった。

ドシン!

「きゃ!」

少女は反対方向から来た女性とぶつかってしまった。

互いに尻もちをついたが、上手く着地した少女に痛みは少なく、すぐに起き上がることができた。

「ごめんなさい!大丈夫ですか?」

少女はぶつかった女性に手を差し伸べた。

「ええ、こちらこそごめんなさいね。」

女性も少女の手を取り立ち上がった。

女性は黒いストレートの髪に着物を着ていて、まるで人形のようであり、少女は見惚れてしまった。

「あの?私の顔に何か?」

「あ、いえ!ごめんなさい。」

「いいえ。あら?あなた……」

女性は少女をまじまじと見つめた。

綺麗な顔が近づいているので、少女は内心ドキドキしていた。

「あ、あの」

「そうですか。これも運命ですかね……。あ、ごめんなさいね。では、失礼します。」

「はぁ、では。」

お互いに立ち去るために歩き出した。

「あ、そうそう、一つだけ。満月の夜、どうかお気をつけて。」

少女が後ろを振り返ると誰もいなかった。

少女は梅雨の生暖かい空気が少し冷たく感じた。

 

 

 

太陽の光がカーテンの間から差し込み、部屋の一部を照らした。

一部の光は、私の上を通っているので、必然的に目が覚めた。

「ふぁぁぁ。もう朝ですか、高校に行かなきゃですね。」

重たいまぶたを開けて、ベットから降りた。

閉めていたカーテンを開け、背筋を伸ばす。

「よし!今日から新生活で。新しい高校!友達とかできますかね?」

私はこれから先を想像して、期待に胸をふくらませた。

朝食を食べ、制服に着替えて登校の準備をした。

「あ、忘れてました。」

私は、自室の隣にある和室に入った。

そこには仏壇があり、50代くらいの男性の写真があった。

「じいちゃん。今日から新しい高校生活です。私頑張ります。どうか見ていてください。」

線香に火をつけ、線香立てに刺した。

鈴を鳴らし手を合わせた。

「よし!」

勢い置く立ち上がり、玄関に向かった。

「行ってきます。」

誰かが返事をしてくれることはなかった。

 

 

『県立東実高等学校』と校門に書かれている高校に着いた。

学校を目の前に私の胸はドキドキしていた。

周りを見たって知らない人ばっかり。

スマホをいじったり、友達と話していたり。

キョロキョロして不審がられるのは嫌なので、何食わぬ顔で入っていく。

 

入ったまではいいのだが、職員室がわからず途方に暮れていた。

周りに人も歩いておらず、ここがどこなのか聞くことすらできない。

「あなた、こんなところでどうしたの?」

仕方なく隅で丸くなっていた私に女生徒が声をかけてくれた。

ツインテールの髪に柔らかな笑顔、さらに凛とした雰囲気に見惚れてしまう。

「あ、あの……ここどこですか?」

「え?」

女生徒は笑顔のまま困惑している。

「あ、もしかして、転校生?」

「はい!」

「じゃあ職員室ね。いいわ、来なさい。」

何も言っていないのに察してくれた女生徒に内心感謝した。

言われた通り、ありがたくついて行かせてもらった。

「私は、柊凛。あなたは?」

「え?わ、私は、豊莉響花です。」

「そう、よろしくね。」

彼女は振り向き手を出してきた。

「はい、柊さん。」

私もそれに応え、握手をした。

「そういえば柊さん。」

「凛でいいわ。」

「じゃあ、凛さん。なんで私が転校生ってわかったんですか?」

「あなたのその綺麗な青い髪を見たこと無かったから。そんな綺麗な髪、1回見たら普通忘れないわよ。」

「あ、ありがとう、ございます。」

そんなこと言われたのは初めてで凛さんの顔を見れなかった。

「あら?照れちゃった?可愛いじゃない。着いたわよ。」

「え?あ!本当だ。ありがとうございました。」

「いいのよ別に。じゃあね。」

凛さんは、ひらひらと手を振って、行ってしまった。

私はそれを見送って、職員室に入った。

 

「初めまして。俺は2年3組担任の佐々木竜介。よろしくな。」

職員室に入ると、いきなりの自己紹介にびっくりしてしまった。

佐々木と名乗る男性は、黒いジャージの上下で、両肩から腕にかけて三本の白い線が入ったデザインだった。

「え、えっと、あの?」

「佐々木先生、いきなりは驚かれますよ。」

「あーごめんごめん。」

「いきなりごめんね。私は副担任の細川夏弥。よろしく。」

細川先生は、優しそうな見た目で、しっかり者という感じだった。

「じゃあ、教室行こうか。ほらー細川先生も。」

「はぁ、行きましょか、豊莉さん。」

私は、2人の先生の後をついて行った。

 

「じゃあ、待っててくれ。」

佐々木先生にそう言われて、大人しく教室の前でたっていた。

中では、椅子を引きずった時の音や、生徒たちの挨拶が聞こえてきた。

佐々木先生の声は大きいので、喋っている内容が筒抜けだった。

内容と言っても、昨日猫見つけたとかくだらなかったが、それがまた面白くて聞き耳を立てていた。

「じゃあ、転校生を紹介する!おーい、入ってこーい。」

呼ばれたので扉を開ける。

中は、以前居た学校の教室とほとんど変わらなかったので、戸惑うことはなかった。

「じゃあ自己紹介よろしく!」

「はい。」

私は黒板に名前を書いた。

『豊莉 響花』と。

「始めまして。西村高校から転校してきた、豊莉響花です。色々と分からないことが多いので、迷惑をかけるかもしれませんが、頑張って覚えていくので、よろしくお願いします。」

とても緊張した。

頭を下げたから皆がどんな反応をするか分からない。

パチパチパチ

次第に教室中から拍手が聞こえてきたので、顔をあげた。

皆が笑顔だった。

1部からは可愛いとか、どこから来たの?とか言っていた。

皆が優しそうで安心した。

「じゃあ席は、森瀬の隣が空いてるな。」

「はい。」

席を指定され、森瀬くんと思わしき人の横に座った。

「よろしくな。」

本当にいい人達が多い。

 

キーンコーンカーンコーン

お腹がすく4時間目の終わり、私は屋上へ向かった。

屋上が空いている高校など滅多にないと思い、ワクワクしながら階段を登った。

「あら、響花?」

「あ!凛さん。今朝はありがとうございました。」

後ろから今朝の恩人凛さんが声をかけてくれた。

「響花も今から屋上でお昼ご飯?」

「はい。屋上が空いているなんて滅多にないので!」

「じゃあ、一緒に食べましょう。」

「いいんですか?!」

「ええ、行きましょう。」

今日は幸運の日だ。

誰かとお昼を共にできるなんて思っていなかった。

 

「あなた部活は何かやりたいのあるの?」

食べている最中凛さんが聞いてきた。

「いえ、部活はやらないつもりです。」

「どうして?」

「私、バイトをしていまして、部活をする時間が取れないんですよ。」

「そうなの。バイトね、頑張って。」

「はい。」

「そういえば今日って満月よね。」

凛さんは青空と一体化してもおかしくないほど青い月を見ながら言った。

「満月……」

(満月の夜、どうかお気をつけて。)ザザー

「え?」

いきなりいつぞやの夜にあった女性から言われた一言を思い出した。

「響花?大丈夫?」

気づけば凛さんの顔がドアップだった。

心臓に悪い。

「え、だ、大丈夫です。でも、なぜいきなり満月なんですか?」

「え?特に意味はないけど。」

その言葉に嘘は無さそうだった。

「そうですか。」

その後は、たわいもない話をして、互いの教室に戻った。

 

私にとってバイトとは、明日を生きるための手段。

それが無くなるなんて耐えられない。

だからこそ、目の前で起きていることに私はどうするべきだろうかと悩んでいた。

 

「なーなー、定員さんよ。お客様にぶつかって、さらに怪我までさせるとは、どういうことだ?教育されてないのか?」

これだ。今日のバイトはスーパーのバイトだったのだが、同期の女の子が1人で客の男にぶつかってしまったらしい。

女の子の方が転んでいたから、わざとぶつかられたんだろう。

それで店の評価を落とそうとしているようだ。

「す、すみま、せん。」

「あ゙?聞こえなーなー?」

「ゔゔっ……。」

嫌な客だ。

客という言葉はふさわしくなさそうだけど。

周りの客もこの男に嫌悪の目を向けていた。

正直あの男を殴り飛ばしたいが、ここで問題を起こせば、バイトを辞めることになるのだろう。

あの男も怒鳴って気が済んだら辞めるだろうからここは耐える。

ほかの者達も同じだろう。

「はぁー、これだから嫌なんだよな。慰謝料として100万もらおうか。」

「え?そんなお金……。」

耐えるべき……。

「払えねーのか?なら、体で払ってもらおうかな?」

耐える……。

男は女の子の右腕を掴んだ。

おそらく強い力で。

「痛い。辞めてください!」

男は気に入らないのか、女の子の手を引っ張り、連れていこうとする。

「がたがたうるせーよ。さっさと来い!」

女の子は泣いていた。

「嫌!嫌……誰か」

「グハッ!」

「え?」

「やってしまいました。耐えるって難しいものですね。」

私が蹴り飛ばしたせいで、男は商品の棚に体を強く打ち付けたようだ。

辺りには商品が散乱した。

「て、てめぇ、何しやがる!」

男が声を荒らげたせいで、女の子はさらに怯えて私の後ろに隠れた。

「あなたがやったことに腹が立ったので。」

「こんなことやっていいと思ってんのか?立派な暴行罪でてめぇの人生終わりだな!」

男は汚い高笑いをする。

自分の状況を理解しているのか、いないのか。

「おや?今のが暴行罪になると知っているのですか。では、あなたが先程までそちらにいる定員にしていたことは、業務妨害罪、詐欺罪、脅迫罪さらにわいせつ罪に当てはまりますが?」

「な!」

明らかに動揺している。

「あ、証拠ですか?お客様の証言もございますが、先程からの発言は全て私がボイスレコーダーに録音させて頂きました。さらにあちらには、防犯カメラもございますので、証拠になるでしょう。」

私は右ポッケに入っていたボイスレコーダーを取り出し、左手で天井にぶら下がっている防犯カメラを指さした。

「さて、どうしますか?」

男は完全に言葉を失った。

 

その後、誰かが呼んだ警察によって男は逮捕された。

しかし私は結局今日いっぱいでバイトを辞めることになった。

正当防衛にもなるのだが、やはり蹴り飛ばしたことは見逃せないらしい。

わかっていたことだし、特に悔いはない。

店長に済まないと言われ、他の従業員もありがとうやごめんねと言っていた。

「今までありがとうございました。」

そう言って私は店を後にした。

 

歩いている時ふと、空を見上げた。

左上には見事な満月があった。

夜の冷たい風も吹き、周りに人の気配がなく寂しい町となっている。

家までの帰り道は、電柱のあかりが地面を照らすのみで、殺風景だ。

「新しいバイト探さないと行けなせんね。」

私は、独り言を喋りながら歩いていた。

後ろから、なにかの気配を感じた。

その気配が、殺気をダダ漏れにしていることに気がついた。

何かと思い、後ろを振り返る。

「え?」

そこには、黒い影があった。

その形は人であったが、人というにはあまりにもまがまがしいものだった。

本能で危険だと判断した。

「・・・・・。」

何も言わないことにこそ恐怖を覚える。

互いに見つめ合う時間が続く。

しかし先に影がその時間を終わらせた。

「ぐああああああああぁぁぁ!」

私に向かい、一直線に走ってきた。

私は伸びてくる手を間一髪でかわす。

そのまま影を背に走り出した。

捕まったら死のみだと思った。

走り出したものの、地形をよく知らない私にとって、この状況は実に不利だった。

そこで唯一知っていた学校に向かった。

影はまだ追ってきていた。

 

学校に向かう途中には、山があった。

通学路とは違うが、最短距離ではあった。

不慣れな道を行くのはどうかと思うが、隠れられるものがある分影を巻けるかもしれない。

私は山に入っていった。

 

山の中は、いわゆるけもの道であり足場が悪かった。

私は木の影に隠れていたが、下手に動けば木の枝を踏み、影に居場所がバレる危険性があった。

影はまだ私を探していた。

しかし影は諦めたのか山を降りようとした。

私ほっとし気を抜いてしまったせいで力が抜けて倒れそうになってしまった。

何とか耐えようと足を踏み出す。

パキッ

「あ」

枝を踏んでしまった。

影は音に気づいて、私の元に走ってきた。

「しまった!」

私逃げた。

しかし不慣れな道が仇となり、上手くスピードが出せなかった。

さらに月明かりまで隠れてしまい、足元も見えなくなった。

背後から迫ってくる殺気が徐々に大きくなる。

「あ。」

私はスピードを出して転んでしまった。

足もくじいて上手く歩ける状態ではなくなった。

後ろを振り返るとすぐそこに影はいた。

私は死を覚悟した。

(死に、死にたくない。)

死を覚悟しておきながら心では死にたくないという恐怖出埋め尽くされた。

「まだ、死ねないんです。死ぬ訳には行かないんです!」

「え?」

確かに私の口から出た言葉だった。

しかし、明らかに私の意思ではなかった。

すると、体が熱くなった。

身体を流れている血のスピードが早くなったように感じる。

「ああああああああぁぁぁ!」

自分の体を抱きしめ、必死で抑え込む。

しかし意味がないと言わんばかりに熱さが増していく。

影は驚いたようで動きを止めている。

熱さでもうダメだと気を失いそうになる。

すると一気に暑さが引いていき、何かと繋がった気がした。

何かの回路が2つから1つになっていく。

地面が赤い光で輝く。

「な、なんですか?!」

呆気にとられていたはずの影が動き出した。

「あ。」

目の前で赤い線が横切る。

闇さえ切り裂くように。

すると影は真っ二つに裂け、地面に倒れた。

「呼び出した瞬間に戦闘とか、いいじゃねーか!」

辺りが月明かりで照らされ始めた。

目の前には、月明かりで輝く金色の髪が特徴的で、目燃えるような赤い目を持ち、手には剣が握られている男がいた。

その姿は美しく躍動感がある。

しかし目を見れば不思議と儚く見えた。

「サーヴァント『セイバー』召喚に応じ推参した。お前が俺のマスターか?」

 




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