TS獣耳暗殺者の異世界録 作:不審者γ
そしてあーくらいさん、高評価ありがとうございます。
《ロードside》
「えっ、詠唱が何か知らないのかい!?」
的用の魔導人形がある演習場に着いて、ヴェイルちゃん、というらしいあの子に話を聞いた。
「はい…
ヴェイルちゃんは手に持った杖…?を見て言う。
ま、マジか…えらく無詠唱でしか魔法を使わないな、と思ったら…無詠唱でしか使えなかった、ということか…
「…まあ、詠唱なんて結構適当でも成り立つからね。」
詠唱って、大袈裟なことを言ってるけど、実際はその魔法がどういう効果のものかしか言ってないからね。
「そ、そんな感じでいいんですか…」
「そんな感じでいいんだよ。一言一句正しくやらないといけない訳じゃないし、…まあ、大体4つぐらいの短い文の区切りで作られてるのと、意味があってれば別にどうってことないからね。」
どんだけゆるい規制だ、とは僕も思ってたけどね。まあ、慣れればそんなもんさ、と付け足す。
実際そうだし。まだ僕が30歳ぐらいの時だったかな?詠唱に深い意味をもたせようとするのを諦めたの。
…ま、まだ若い子のインスピレーションも見てみたいところだし、やめようとは思わないけど。
《ヴェイルside》
う、うえぇ…
いや、何?詠唱ってそんな軽い感じなのね…ってか、それでもなんか…ネーミングが厨二病になりそうな予感しかないし…言っちゃえば鉛玉放ってるだけだからなぁ…
とか考えていると、
「そんな難しく考えることはないさ。火球だって言っちゃえば火の玉投げてるだけだからさ。」
…………い、いやいや、やってることが魔法か科学かの違いがあるんで…
とか言えないしなぁ…やってみるだけやっちゃおっか。
その後、色々とロードさんに話を聞いて、いよいよやってみることとなった。
「…じゃあ、準備はいいかな?」
「………はい。」
少し深呼吸をしてから答える。
「では…いいよ!」
目の前の金属でできた的用の人形が動き始めた。
今回は普通にピストルの方。FSRは使わないよ。当たり前だけど。
「………
ガガアァンッ!
「…………ん?」
「…え、」
的用の人形が…バラバラに砕けた。それはもう残骸しか残らないぐらいに。
…あ、あれ?一発しか撃ってないよ?なんであの人形あんなにバラッバラになってんの…?それに…なんか反動が少なかった。…あれぐらいの衝撃なら片手で撃てるかも、って感じの位には。
「わーお、こりゃ想像以上に強化されてんね。まさかあの人形が…」
え…えぇ…!?
なんで?なんで強化されてんの?んん?
……これ、もしかしてどんな事象でも影響で強化できる感じのやつ…?
「よし、じゃあもう一つの杖も試してみるかい!?」
「い、いえ、それは……」
なんかロードさんの目が「見せろ」って言ってるけど…こればっかりは流石に使うわけにいかないよ…一応持ってはいるよ?持ってはいるけどさ…普通の銃であれじゃん?じゃあ、ただでさえぶっ壊れた性能を持ったFSRを詠唱で強化して撃ったらどうなるかな。うん。大変なことになるね。
「流石に、ただでさえさっきのであの威力ですからね…もう一方はさっきのの数十倍、数百倍の威力持ってるので…ちょっと事故案件になりかねないんですが…」
そもそも普通にやったら撃てないし。…まあ、あのレッドベルフ戦みたいにやったら撃てるっちゃ撃てるんだけど…これはもう衝撃が緩和されようとどうであろうとほとんど意味ないぐらいの衝撃来るからね…
「まあまあ、安心していいよ。ここには僕の防護魔法が使われてるんだ。この内からの魔法が外に出ることはまあ…まず無いし、今度は的の人形にも僕から防護魔法をかけておく。そう壊れることはないはずさ。」
おっとぉ…そんな便利な事があるのか…まあ、それがあったとしても…
「いえ、それ以前に…あれは私へのダメージも大きいんです。あの空間は痛覚が遮断されていたので使えましたが、現実世界で使おうものなら肩が飛びます。」
これは冗談抜き。というか、今更自分に言うようだけどスナイパーライフルを改造したやつをそのまま使ってるのも変な話だよね。
「おっと、そういう事だったか。………なら、衝撃無効魔法をかけておこう。それなら衝撃は伝わることなくすべて空間に吸収される。」
と、ロードさんは少し考えて言った。…魔法何でもありかよ…
ってかもう言い訳できる部分が無いんだけど…
「う、うーん……」
あんまり妙に手の内を明かしたくないんだよね…まあでも…
チラ、とロードさんの方を見ても、まあ興味津々といった様子でこっちを見ている。
……はー……
「…分かりました。」
と答えると、ロードさんは喜々とした表情で準備を始めた。
と、準備された魔導人形は何か薄く青く光ってて、FSRも薄く黄色く光ってる。……ゲームとかであるよね。こう…上位の武器とかってこうやって光ってたりする武器。
「……よし、準備オーケーだ。もういいぞ。」
衝撃が来ないのは実際に検証済み。セットしたときに肩に当てた感覚すらなかった。
「…ふぅ…」
人形に銃口を向け、言う。
「光導の銃弾、風を
と、言った瞬間、ロードさんが
「あ、ちょっと待t」
までギリギリ聞こえた。
で、目の前が一瞬にして白で埋め尽くされた。音なんか、一瞬「ドッ!」って聞こえてそれ以降はどこからも聞こえなかった。で、まあ気がついたら訓練場の壁に半径1m位の円形の穴が空いてて、魔導人形なんて最初からなかったかのごとく消滅してて、ちょっと目を抑えたロードさんが見えた。
「……………ねえ、ヴェイルちゃん。」
ふとロードさんに聞かれた。
「…一応聞くけどさ、撃った魔法って一発だよね?」
「…はい。」
目を瞑って答える。…光のあの残像が残ってる…気持ち悪い…
「………まあ、だよね…魔法発動した瞬間に防御魔法全部が歪んだんだけどもう何がどうなってんの?」
頭を抱えて首を振るロードさん。……まあ…だよね…
まさかここまでとは想像もしてなかったよ。だってさ、普通のあの銃だってせいぜい20倍ぐらいの威力だったよ?…それがさ、FSRに切り替えた瞬間にああなるとか誰が想像できるよ?
っていうかほんとにはぁ!?だよ。色々と。ロードさん結構念入りに防護魔法かけてたよ?それをこんな…えぇ!?
「いやはや…この一直線上に家とか無くてよかったよ…あったら消滅しててもおかしくなかったって………」
…幸い、というべきなのか、向いてた方向は門外。このまままっすぐ行っても特に何もない。強いて言うならそこらへんにいた魔物がやられる位かな。…無事だといいな。
とかなんとかやってると、
「ギルド長!また何かやらかしたんですか!?」
大量の人がなだれ込んできた。身なり的に…冒険者とかも含めて門番の人とか普通の人とかもいるね…
「ん?どうしたんだい?君たち。」
「どうしたんだい?じゃありませんよ!轟音がなったと思ったら視界が真っ白になって!気付いたら何もない空間が一直線にできて壁まで粉砕されたんですからね!?前々から色々やってますけど!もうちょっとストレス発散は抑えてください!」
ロードさん、前々からこんな威力の魔法放ってたの…?
と、ロードさんは、ははは、と笑って…
「いやー、ごめんごめん。…まあでも、今のは確かに僕にも非があったとはいえ、あの魔法を使ったのは僕じゃないよ。」
飄々と、またちょっと笑みを含めて、ロードさんはこっちを向いてウインクした。
と、今来た人たちは少し疲れたような感じで、
「この国にあの威力の魔法を使える人がギルド長以外にいますか…?いるなら紹介してみてくださいよ。」
………んん?
これは…ちょっと嫌な予感がするぞ?
……ほら!ロードさんがいかにも「キタコレ」みたいな表情してるし!待って!こればっかりは言うのは…!
「まあまあ、冗談さ。済まないね、今日はちょっと張り切りすぎたみたいだ。…壁とこの一直線の部分の補修はこっちでやっておくから。」
……お?
「もう…今日は本当に冗談抜きで死ぬかと思いましたよ…いつもなら轟音で済んでましたけど、まさか訓練場の壁を破壊して防壁を貫通するほどの魔法を放つなんて…なんか嫌な事でもあったんですか?」
「ハッハハ、僕にもちょっと本気で魔法を使いたくなるときぐらいあるさ。ほら、戻った戻った。」
と、ロードさんは杖を出してここから見える外側の防壁と訓練場の壁をひとまず直してなだれ込んできた人達を帰していた。
「…あんまり、広められたくないんだろう?」
と、全員が帰ったあとに言われた。
「っ、…はい。」
「ごめんね。手柄?みたいなのを独り占めしちゃって。」
「い、いえ。むしろ助かりました。…まさかああなるとは私も思ってもみませんでしたし…」
と、ロードさんは、ははっ、と笑って、
「いやいや、しかし…なかなか面白いものを見させてもらったよ。詠唱だけでこんなに威力が変わるものなのか…もしこれを対戦に使われてたら負けてたかもしれないね。ふむふむ…」
何やら自分の中で色々考えることができたらしく、ロードさんも、僕がまた外に帰るみたいに部屋に帰っていった。
ちなみに、この後レンさんに、
「………今のあの光線…いや、光線って言っていいのか分かんないけど…今の魔法、ロードさんが使った魔法って言われてたけどあれ、ヴェイルちゃんが使った魔法だろ?…感覚でわかる。」
って言われました。
…はい。凄いです。
ちゃんと周りには言わないように約束はしてもらった。………いつものフィードさん、リーンさん、リオルさんも気付いてたみたい。
同じく約束してもらった…んだけど、リオルさんに限ってはお酒を飲まされると話す危険があるらしい。…一月ほど禁酒してくれませんね…?
今年一発目の投稿です。…一発目がこれですか…
また今年も「TS獣耳暗殺者の異世界録」と不審者γをよろしくおねがいします。