To be, or not to be...   作:

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更新が遅くなり申し訳ありません。



【2021.11.11. 23:00】
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ありがとうございます!
いつの間にかお気に入り100超えてました!
こんなにたくさん増えていて、とてもびっくりしています。
とても励みになっております。


14話

「なんか急に人数増えません?」

 

「83抗争で愛美愛主(メビウス)が東卍の傘下になったからな」

 

最近、花垣に会っていないことに気付いて集会を覗きにきたところ、あまりの人の多さにびっくりしたのと同時に、胸騒ぎがした。

暴走族の活動にも夏休みがあるのか、集会がしばらくなかった。

久し振りに見る集会で、呆気に取られていると龍宮寺が寄って来て、先程の状況に至る。

目的の人物が見当たらないので、鳥居へと続く階段に腰掛けて待つ事にした。

 

「ところで、花垣くんは?」

 

「タケミっち?今日は来ねぇぞ」

 

「え!?」

 

「そもそもタケミっちは東卍のメンバーじゃねぇし」

 

そういえば、そうだった。花垣が東卍に入るのは場地が芭流覇羅(バルハラ)に行くと宣言した時なので、まだ1ヶ月以上も先なのだ。

今日は花垣と接触して未来がどう変わったのか聞くのが目的だったのに、非常に残念である。

しかし、よくよく考えてみると、未来が花垣や橘にとって良い方向に変わっていたら花垣はこちらには帰って来ない可能性もある。花垣とは共同戦線を結んでいるのだから、未来の状況が変わっていたら花垣の方から連絡

あると思って良いだろう。音沙汰がないということは、花垣がこちらに戻って来ていないということか。そうなると、“血のハロウィン”も回避できているのだろうか。

 

「つーか、センセーよぉ、アレどうにかなんねーの?」

 

龍宮寺が指さした方を見ると、場地と松野が騒いでいた。

 

「場地さんヤベーっすよ!」

 

「いつもの時間だよな?俺、時間間違ってねぇよな?」

 

「絶対なんかあったんすよ!」

 

隊長と副隊長につられて壱番隊までざわつき始めた。

騒ぎを見兼ねた三ツ谷が「どうした?」と場地と松野に尋ねている。

 

「三ツ谷君!センセーがいねぇんすよ!」

 

「三ツ谷も見てんだろ?いつもあそこ(ベランダ)に居んだろ!」

 

「ぜってぇ何かあったんすよぉ!」

 

どうやら、場地と松野はパブロフの犬のように、“集会に来たら担任に手を振る”と学習していたようだ。

今日は場地と松野が神社に着く前に家を出てしまった為、入れ違いになってしまったのだ。

いつも通りにそこに居なかっただけで、あのテンパりようである。ヤンキーのくせに、なかなか可愛いもんじゃないか。

見た目がイカつい割にアホ可愛い教え子たちに和んでいると、三ツ谷と目が合った。

三ツ谷はここに来ていることを伝えようとしているのに、場地も松野も全く聞く耳を持たない。

壱番隊総出で、捜索活動が始まろうとしているようだった。

 

「オイオイ、大事になってんぞ。早くここに居ること教えてやった方がいいんじゃねーの?」

 

「いや、面白いからもう少し様子を見ましょうよ。」

 

「センセー意外といい性格してんな」

 

龍宮寺が呆れたように笑っている。

そこへマイキーまで来てしまった。

 

「面白そうなことしてんじゃん」

 

パサッと肩に何かが掛けられた。

 

特攻服(トップク)着て集会に紛れてみ?アイツら絶対気付かねーよ、バカだから」

 

ケラケラと笑っているマイキーを見ると特攻服を着ていなかった。

ということは、この肩に掛かっているのはマイキーの特攻服ということか。

 

「…これは、重いです。」

 

「はぁ?そんな重くねぇだろ。まぁ、みんなよりは布の量が多いから多少重いかもしんねーけど」

 

「いや、そういう物理的な重さじゃなくて、重みというか…荷が重いというか…」

 

総長の特攻服を、こんなに簡単に着て良いわけがない。

というか、流石に総長の特攻服だったらバレるだろう。

 

「ふーん、あっそう。」

 

そう言ってマイキーはどこかへ行ってしまったので諦めたのかと思いきや、すぐに戻って来ると手には別の特攻服を持っていた。

 

「これならいいっしょ」

 

ニコニコと手渡されたそれには、“参番隊 特攻”と書かれていた。

マイキーが来た方を見ると、いかにも下っ端っぽいヤンキーが身ぐるみを剥がされていた。

 

「元愛美愛主の奴で1番雑魚そうなやつからひっぺがしてきた!」

 

「いや、どこの誰だかも分からない奴の、脱ぎたてホヤホヤの服なんか着ませんよ。」

 

「潔癖症かよ」

 

脱いだ上着などを他人に着せるのなんて、少女漫画の世界でイケメンがやるから許されるのであって、現実で見ず知らずの奴の服なんて、気持ち悪くないか?

というか、教員が暴走族の特攻服なんか着て良いワケがない。

 

「とりあえず、あの人が可哀想だから特攻服返してあげて。」

 

「つまんねーの」

 

マイキーはわざとらしく不貞腐れたように声をあげて特攻服を返しに行った。

その時、元愛美愛主組の中に稀咲鉄太を見つけた。

胸騒ぎの原因はコレだったのだ。

愛美愛主が傘下になったことで、漏れ無く稀咲も付いてきたのだ。とんだ全サである。

龍宮寺が生きているから副総長にはなれない。林田も参番隊隊長として健在。稀咲が座る椅子はないのに、なぜ東卍にいる?ただの隊員でものし上がる術があるのだろうか。どんな策略を考えているのか、全く予想ができない。

稀咲は芭流覇羅のメンバーとして“血のハロウィン”を計画していると思っていた。

しかし、東卍に稀咲がいるということは、内部から何かを仕掛けてくる可能性が高い。

場地と松野に「アレが稀咲だ、気を付けろ」と教えておくべきか。

龍宮寺にも話しておいた方が安心か。

そもそも、稀咲の話はどこまでしたんだっけ。

 

考えに集中し過ぎて、人が近付いて来るのに気付かなかった。

 

「山口先生ですよね?」

 

声を掛けられて顔を上げると、目の前に居たのは稀咲鉄太だった。

 

「えーっと…?」

 

何故ここに稀咲がいるのか、何故山口先生(自分)を知っているのか、訳が分からない。

 

「稀咲です。稀咲鉄太。」

 

それは、知っている。

 

「小学生の頃、塾でお世話になったんですけど…」

 

なるほど、山口先生は学生時代に塾講師のアルバイトでもしていたのだろう。

 

「稀咲くん?雰囲気全然違うから、分からなかったよ。元気にしてましたか?」

 

我ながら演技力が上がったと思う。

アニメで長内は稀咲の第一印象を「地味なガキ」と言っていた。「雰囲気違うから分からない」で筋は通っているだろう。あとは、何か思い出話が始まってぼろが出る前に何とかして会話を切り上げたい。

そう思っているのに、稀咲は話を続けてきた。

 

「全国模試で1位がキープできたのは山口先生のお陰だと思ってます」

 

想像していた稀咲の印象とだいぶ違っていた。

どうやら、話を聞いていると、小学生の稀咲は山口先生に心を開き、信頼していたようだった。

 

「ところで、山口先生は何故こんな所にいるんですか?」

 

「ちょっと野暮用で。」

 

場地や松野との関係をわざわざ稀咲に話す必要もないし、濁した。

ましてや、自分が山口先生ではないことは悟られてはいけない。

しかし、上手くいけば稀咲を止めることが出来るのではないかと思ってしまう。

このタイミングで稀咲と接触したことが、吉と出るか、凶と出るか。

 

「逆に聞きたいんだけど、稀咲くんがこんなに変わったのは何故?」

 

「…“憧れ”と“夢”ですかね」

 

そう語る稀咲は、キラキラと目を輝かせていた。

稀咲は本当に敵なのだろうか。と、気持ちが揺らいでしまう。

 

「ちなみに、夢って何?」

 

「ダークヒーロー」

 

「え?」

 

「日本一の不良になるために、計画を遂行しているところです。6年後には東京を制し、10年後には日本一を牛耳っている予定です」

 

「…凄い、壮大な計画ですね。」

 

「“何を達成するにも必要なのは緻密に作り上げられた完璧な計画だ”って教えてくれたのは、山口先生じゃないですか」

 

山口先生よ、何余計なことを教えてくれちゃってるんですか。

きっと、山口先生は勉強や進路を実現するための計画のつもりで言ったのだろうが、その進路が“日本一の不良”では話が違ってくる。

稀咲はその為に、人を殺したりする計画を立てているのである。なんとも恐ろしい。やはり、稀咲は敵だ。

 

「いや、受験勉強の計画の話だったんだけどなー」

 

今更こう言ったところで稀咲の意思は変わらないだろう。

 

「でも、今までも受験以外のことでもちゃんと計画を立てて失敗した事ないので、今回も上手くいくと思います。…思ってたんですけど」

 

そう言いながら、稀咲はいつのまにか移動していた龍宮寺を見ていた。

稀咲につられて龍宮寺を見ていると、龍宮寺の近くにいた場地と目が合った。

 

「センセー!」

 

場地の声に反応して、松野もこちらに気付いたようである。

2人が近付いて来るのに気付くと、稀咲は「失礼します」と離れて行った。

 

「センセー何でここに居んだよ。心配したじゃねーか」

 

「ちょっと花垣くんに用があったんだけど、今日は来ないみたいですね。」

 

「花垣?マイキーの新しいダチか?あんな弱そうな奴に何の用があるんだよ」

 

「強いか弱いかで、用があるかないかは決まらないでしょ。」

 

場地と話をしている間、松野はじっと稀咲を見ていた。

 

「さっきのって、元愛美愛主のヤツっすよね?知り合いっすか?」

 

「あれが、稀咲鉄太。」

 

「は?キサキって、敵だって言ってた奴?知り合いだったのかよ」

 

「昔の教え子、らしい。」

 

「“らしい”って何スか?」

 

「君たちの未来が分かる弊害で、自分(山口先生)の過去が分からないんだよね」

 

「未来が分かるっていうのも良いもんじゃねーんだな。思い出が無くなんのは寂しいだろ」

 

場地が同情してくれたのは意外だったが、仲間を大事にしている場地から出た言葉に胸が熱くなる。

実際には山口先生の過去が分からないだけで、自分の記憶はある訳だから、なんとなく後ろめたくなってしまった。

 

「キサキが敵だって分かってるんだったら、やっちまえばいいんじゃないっすか?」

 

「バカか、センセーの教え子なんだぞ。そんな簡単な話じゃねーだろ」

 

「因みになんだけど、教え子じゃなかったらやっちまっても良いとは思ってないですからね。本当は喧嘩も抗争もして欲しくないんです。敵を倒す事じゃなくて、場地さんが死なないための計画を練りましょう。」

 

稀咲の10年計画は分かったが、内容までは分からない。

稀咲は“血のハロウィン”で羽宮を使って場地を殺す計画を立てているはずだが、もうこの時点でその計画は立っているのだろうか。アニメでは、場地が稀咲を嗅ぎまわっていたせいで狙われたのだろう。そもそも場地が稀咲を嗅ぎまわらなければ、的にされることもなく、殺されはしないのではないだろうか。

まだ憶測の段階で、場地たちに話せることはないので、もう少し稀咲を探る必要がありそうだ。

 

「場地さん、集会始まるみたいっす」

 

「おう、千冬先に行ってろ」

 

場地は松野にそう告げると、人が少なくなるのを見計らって口を開いた。

 

「一虎がもうすぐ出所してくる」

 

「それを言うために、わざわさ1人で残ったの?」

 

「…悪ぃかよ」

 

「松野さんにまだ言えてないんだ?」

 

「言えねぇよ。マイキーの兄貴を、真一郎くんを殺したなんて…」

 

「でも、場地さんが()ったわけじゃない、でしょう?」

 

「だけど、俺がもっとちゃんと一虎を止められていたらって思うと後悔してもしきれないし、すげぇ反省してる。一虎も手紙で罪を認めて反省してるし、もうマイキーを恨んでないって。出所したら、許してもらえないかも知れないけど、マイキーにちゃんと謝りたいって書いてあった。」

 

“お手紙大作戦”は上手くいったようだ。

これで、羽宮が芭流覇羅に行かなければ、羽宮が場地を刺すことはなくなるだろう。場地が死ななければ、マイキーが羽宮を殺すことはないはずだ。

これは、かなり良い方向に向かっていると言って良いだろう。

 

「一虎が出所したら、一緒にマイキーに謝りに行く。一虎が許してもらえるまで、何回でもマイキーに頭下げるよ」

 

場地が決意表明したところで、上からマイキーが場地を呼ぶ声がした。

壱番隊の隊長が不在では、他に示しがつかない。

早く行くように促すと、場地は一段飛ばしで階段を駆け上がっていった。

 





かなり間が空いてしまい、申し訳ありませんでした。
最近忙しいので、しばらく更新日予告は辞めようと思います。

でも、息抜きに短編を書いてます。
短編って前後の流れ考えなくて良いから楽だなーって思いました。
面白いかどうかは別です。
自己満の産物だと思ってます。
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