予めご了承ください。
【2021.11.23. 21:00】
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ありがとうございます!
とても励みになっております。
「テスト前休部って、何のために部活が休みだか分かってますか?」
「でも先生、殺陣の先生が今日なら都合が良いっておっしゃってたので、基礎の稽古をするのは今日しかないんです!」
どうやら宮本さんは、たかがクラスの出し物に本格的な殺陣のシーンを盛り込もうとしているらしい。
教頭に事情を話し、放課後体育館を借りることが出来たが、チクチクと嫌味を言われた。
体育館にはロミオ役の内田くん、ティボルト役の場地を始めモンタギュー陣とキャピュレット陣それぞれ数人の男子生徒が集まっていた。
なぜか松野もいた。意気揚々と練習用の木刀を構えている。いや、さすがにジュリエットは殺陣に参加しないだろう。あの時は意気消沈していたし、自分がジュリエットになったことを覚えていないのかとも一瞬思ったが、あれから1週間、場地と一緒に3人で台本の読み合わせをしてきたし、ちゃんとジュリエットのセリフを読んでいたからそれはない。ああ、これは、ただ木刀を振り回したいだけだ。
「松野さん、君にこれは関係ないですよ。練習の邪魔しないで、こっちで台本覚えるか、テスト勉強するか、先に帰りなさい。」
「オレもあれやりたいっす!ぜってぇ楽しいじゃん」
目をキラキラと輝かせているが、そういうわけにはいかない。
今は期末テスト直前で、本来こんなことをする時間ではない。教師としては、すぐにでも帰えらせて勉強するように言わなければならない立場だ。限られた時間で練習しなければならないのに、松野に邪魔されている場合ではないのだ。
「なんでオレはジュリエットなんて引き受けちまったんだろ」
松野は勉強する気なんか更々無くて、台本を出して読み始めた。
4月当初のことを考えると、よくもまあこんなにも懐いたなぁと思う。因みに、夏休み明けから松野は“電気係”から“電気&窓係”に昇格していた。教室の窓を閉めるのも松野の仕事になったが、1日も忘れることなく仕事が出来ている。凄い成長だ。
その時、「山口先生、お客様です」と放送が入った。
職員室に戻ると、卒業生が職員玄関で待っているとのことだった。
今まで卒業生が訪ねてくるなんてことは一度もなかった。会っても思い出話しの一つもしてやれない。どうやって誤魔化そうと考えながら玄関に向かう。
そこに立っている人物に驚いた。
「え、稀咲…くん?」
「ここ、警備甘くないですか?卒業生って嘘付いて簡単に入れましたよ」
そもそも公立中学校にそんな警備体制とかない。
しかし、長年この中学に勤めている先生もいるはずなのに、誰一人として稀咲のことを知らないはずなのに、卒業生と言う見知らぬ人物に違和感をもっていないことは問題だろう。
でも、今はそんなことはどうでもいい。
目の前にいる稀咲は一体何が目的でここに来たのだろうか。
稀咲の情報を集めようとは思っていたが、向こうからやって来るのは予想外だ。
「山口先生のこと、調べさせてもらいました」
「…は?」
これは、やばい展開か?
山口先生ではないことがバレたか?
「この間、先生と喋ったときに違和感があって、昔と雰囲気違ったような気がしたんですけど」
「自分だってそんなに変わったんだから、不思議なことはないでしょう。」
「まあ…でも、気になったので調べました。塾の先生を辞めてからは中学校教師になって、今この中学校に勤めてるってことだけしか分かりませんでした」
一般人の情報なんて、そんなもんだろう。
「だから、確かめに来たんです」
真っ直ぐな視線に、嫌な汗をかいた。
「…正直に話しますね。あの時、咄嗟に稀咲くんのことを知っているフリをしました。実は4月にに倒れて、それより前の記憶ないんです。」
嘘は言っていない。
本当のことも言ってないけど。
「じゃあ、何でオレが変わったのを知ってたんですか?」
「小学生の時に塾に通っていたのに中学生になったら暴走族なんて、一般的に“変わった”って思いますよ。」
「そう、ですか」
「センセー!」
松野が走ってきた。
その様子から体育館で何かあったことが分かった。
「は?稀咲?」
松野は稀咲に気付くと、すぐに睨みつけた。
「稀咲、テメェなんでここにいんだよ」
「お前には関係ない」
稀咲も負けじと松野を睨み返す。
松野が稀咲を警戒するのは分かる。自分がそう仕向けたのだ。しかし、今のところ何の接点も無かったはずの稀咲が松野に対してこんなに敵意を剥き出しにする理由が分からない。
なんか、余計なところにフラグを立ててしまった気がする。
「…じゃあ、また来ます」
そう言って、稀咲は帰って行った。
また来る?何しに?まだ何か用があるのか?
「こんなことしてる場合じゃなかった!センセー大変なんだよ!場地さんが…」
「え?何で松野さんが来たの?場地さんに何かあったなら松野さんが側にいるべきでは?」
「オレが1番足早いからセンセー呼んで来いって宮本さんに言われて」
「なるほど…って言ってる場合じゃなかった。早く体育館に戻りましょう。」
急いで体育館に戻ると、場地が木刀を振り回して無双していた。
「え、何か場地さんの逆鱗に触れるようなことがあったの?」
「いや、場地さんの才能が開花しちまったんス」
よく見てみると、ちゃんと当てずに殺陣が出来ている。
邪魔だったのか眼鏡を外していて、髪もいつもより高い位置で結んでいる。動き回っているせいか少し乱れていて、それもまたワイルドといったところか。この場に女子がいなくて良かったと思う。
殺陣の先生によると、場地には才能があると。アクション俳優の道を勧められてしまった。勉強が苦手な場地にとって良い選択肢かもしれない。しかし、場地には生き延びることができたら、是非ペットショップの夢を叶えて欲しいと思う。
「ところで、何が大変なの?殺陣が上手で良いことじゃないですか。」
「そのことなんですけど、これだと場地くんが強すぎて
「場地さんが負けるわけねーだろ」
宮本さんは松野を見て溜息をついた。
「なので、場地くんをロミオにしたいんですけど…」
「いや、無理でしょう。場地さんはティボルトのセリフもやっと覚えてきたところなのに、今からロミオのセリフなんて覚えられるわけ…」
「俺、ロミオのセリフ言えるぞ」
ひと暴れ終えて休憩していた場地が飄々と答える。
「なんでだよ」
「千冬とセンセーが読んでるの聞いてたらなんか知らねぇけど覚えてた。だからジュリエットもいけるぞ」
そう言って、一人でロミオとジュリエットの掛け合いを暗唱している。
場地は耳で聞いて覚えるタイプだったのか。
そんなことなら、ティボルトのセリフも聞かせれば良かったということか。
「場地さんがセリフ問題ないなら別に良いと思うけど。内田さんは、それでいいの?」
「俺も場地くんがいいと思います。アレには勝てる気がしないんで、色んな意味で」
内田くんは笑いながら言った。
何故か松野が得意げだった。いつものことだけど。
場地は自分が主役になったことにやっと気付いた。
「は?何で俺がロミオになってんだよ!ティーポットは?」
「ティボルトな。え、もしかして、場地さん今までティーポットの役だと思ってたの?」
「よく喋る
思わずティーポットな場地を想像して笑いそうになってしまった。
先程セリフを暗唱してみせたのは、何かバカにされている気がしたからバカじゃないことを証明したかっただけで、ロミオがやりたい訳ではないと弁明してきた。
しかし、もう遅い。宮本さんの頭の中には既に場地がロミオを演じているバージョンの演出が浮かんできているようだった。
当初の予定とはだいぶ違う『ロミオとジュリエット』になっているが、本当にこれで良いのだろうか。
血ハロは?って思ってるかもしれませんか、もうしばらくお待ちください。
場地くんと松野くんで『ロミオとジュリエット』やりますが、BLではありません。
声を大にして言います、これはBLではありません!
絶対BLにはしません(決意表明)
BLはTwitterかpixivで(小声)