To be, or not to be...   作:

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名前有モブ先生が登場します。
予めご了承ください。



【2021.12.05. 15:00】
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17話

無事に期末テストを終え、本格的に劇の練習が始まった。

「無事に」とは言ったが、場地は5教科のうち1つ赤点を取ってしまった。さすがに“鉛筆コロコロ作戦”はそう何度も通用しない。今回は文化祭も近いため、放課後補習ではなく特別課題を提出することでなんとかなるらしい。2学期制のこの学校では、10月末の文化祭で前期を終え、11月から後期が始まる。その為、今は生徒も教師も忙しい時期なのだ。

放課後は劇だけではなく、合唱の練習も行なっている。一時はどうなるかと思った合唱の練習も、今では男子もちゃんと歌ってくれるようになり、クラスがまとまってきている。

部活がある生徒もいるため、劇の練習は毎日30分と決めた。そんな短時間で大丈夫かと不安だったが、意外となんとかなっている。場地と松野もセリフをしっかり暗記出来ていたし今のところ問題ない。セリフ暗記しなければその分テスト勉強に使えたわけで、テストでの赤点を免れたのでは…と思っているが、気にしたら負けだ。

 

 

ある日、松野がひとりで登校してきた。

 

「あれ?松野さん今日はひとりですか?」

 

「あー、なんか場地さん体調悪いっぽいっす」

 

「へぇ、何とかは風邪ひかないって言うのに…やべ、声出てたわ」

 

最近、気を抜くとつい素が出てしまうことが多くなった。

松野は「場地さんをバカにするな」と言いたげな顔をしていたが、それ以上は何も言ってこなかった。ひとりだからか、いつもより元気が無いようにも見える。

それにしても、場地が休むのは珍しい。2年生になってから、遅刻ギリギリで登校することはあっても、休んだことは一度もなかった。それは松野も同様だった。

その日は一日中、松野は腑抜けたようにボーッとしていることが多かった。劇の練習のお陰でクラスメイト達とも馴染んできていて、代わる代わる声を掛けられて喋っていたが、場地と一緒にいる時ほど砕けた様子を見ることはできなかった。松野にとって場地の存在がいかに大きいか分かった1日だった。

 

 

翌日、場地と松野はバラバラに登校してきた。

廊下をひとりで歩く場地に声を掛けた。

 

「場地さん、何で今日は松野さんと一緒じゃないんですか?」

 

「あー、昨日帰ってねーんだよ」

 

「…昨日は体調不良で休みって聞きましたけど。」

 

「ヤベっ…」

 

「何を隠しているんですか?」

 

場地は少し悩んで話し始めた。

 

「一虎が少年院(ネンショー)出てきたんだよ。そんで、一緒にマイキーんとこ行ってた」

 

始業の予鈴が鳴り、話しはそこで終わってしまった。

羽宮が出所したら一緒に謝りに行くと言っていた事を思い出した。

きっと、まだ松野に話せていなくて、それを隠すために体調不良を装ったのだろう。

早く話しておいた方が良い気がする。しかし、だいぶ重い案件なので慎重に取り扱う必要があるだろう。

松野に言うべきか、言わないべきか、それが問題だ。

 

放課後、場地は「用があるから練習に参加できない」と帰って行った。

羽宮と久し振りに会って遊ぶ約束でもしているのだろうか。マイキーとも和解して創設メンバーで集まっているのかもしれない。

この時は、そんな呑気なことを考えていたが、次の日も、その次の日も場地は劇の練習には参加せずに帰って行った。

1日だけならまだしも、劇に出演するクラスメイトたちも困ってしまう。ロミオ(主役)無しの練習が何日も続き、ロミオの出演しないシーンが全て仕上がってしまった。

 

「場地くん、今日は練習参加できるかな…?」

 

宮本さんが勇気を振り絞って場地に声を掛けているのが分かる。

最近の場地はなんとなく話しかけにくい雰囲気を漂わせていた。

場地が休んだ日以降、場地と松野の間に距離を感じる。朝は一緒に登校しているし、休み時間も一緒にいるが、一緒に下校することが無くなっていた。その小さな変化からクラスメイトたちも何か感じとっているのだ。

場地は「わかった」と短く返事をすると、携帯電話を取り出してメールを打ち始めた。

 

「ちょっと待て!学校に携帯持ってくんなよ!堂々と使うな!没収だわ!」

 

「センセー返せよ!一虎にメールだけ送らせてくれよ!」

 

「分かったから、早くしてください。」

 

「やっぱセンセー話し分かるな〜サンキュー」

 

悪いと思いつつ、見えてしまった画面には「遅くなる」と一言だけ書いてあって、すぐに送信された。

やはりここ数日は羽宮と会っていたのだろう。最近、場地が松野と連んでいないのはそのせいか。

場地は約束通りメールを送信すると、素直に携帯電話を預けてきた。

預かった携帯電話がすぐに鳴り出した。マナーモードで、音が鳴らない設定になってはいるが、二つ折りの外側のディスプレイには「一虎」の文字が光っている。一旦切れたかと思うとまたすぐに鳴り出す。怖くなってポケットに突っ込んだが、羽宮は場地が電話に出るまで鳴らし続ける気なのだろうか、視界の端でずっとポケットの中が光っているのが分かった。

劇の練習後、場地に携帯電話を返すと、「うわぁ…」と引いていた。

その日からは毎日練習に参加しているが、変わらず毎日松野とは別々に帰っている。

 

「最近、場地さんが変なんスよ」

 

「わかる。」

 

「ぜってぇ何かあるのに、何も教えてくんねーんスよ、あの人」

 

「わかる。」

 

放課後、職員室で仕事をしていると、急に松野がやってきて話し始めた。

 

「ところで松野さん、他に相談できる友達いないんですか?ここ、職員室なんですけど。君が座っている椅子は佐藤先生の席なんですけど。」

 

隣の席の椅子が空いてるのを見つけると、まるで自分の席かのように座って天井を見ながらクルクルと回っていた。

 

「なんで先生の椅子って、座ると回りたくなるんだろうな」

 

「そんなどうでもいいこと聞きたいだけなら本当に帰ってほしい。こっちは通知表書いたりしなきゃいけないんですよ。こう見えて忙しいんです。」

 

「別に友達いないわけじゃねーんだけどさ…学校のダチには言いにくいし。東卍の仲間っていうと、三ツ谷くんとか相談に乗ってくれるとは思うけど、壱番隊の問題っつーか、オレと場地さんの問題っつーか…」

 

自分に言い聞かせるようにブツブツと言っていたかと思うと、回るのをやめて椅子ごとグッと近づいてきた。

 

「センセーは何か知らねーんスか?」

 

「場地さんが松野さんにも言わないことを知ってるはずないでしょう。」

 

「センセーはオレが知らないことも知ってるじゃないっすか。未来とか、場地さんの手紙の相手とか」

 

「あー、そう言われると、そうですね。」

 

「やっぱ今のナシ。場地さんが言いたくねぇことセンセーから聞くのはなんか違う気がする」

 

松野は大きく深い溜息をついた。

 

「オレって、副隊長として信頼されてねーんかな…」

 

「信頼しているから、副隊長なんじゃないの?」

 

松野はポツリポツリ話し始めた。

 

「オレは場地さんのお陰で変われた。だから、あの人の力になりてぇ。場地さんのためだったら、何だってする。ずっとそばで見てたから場地さんのことは何でも分かると思ってたのに、このザマっす。結局何も分かってねーじゃんって自己嫌悪」

 

「自分以外の人間を100%理解するなんて不可能ですよ。まして、場地さんは人に相談とかするタイプでもないでしょう。」

 

「それはオレが頼りになんねーから…」

 

「いや、自分を心から信頼してくれている松野さんにカッコ悪いところ見せたくないからでしょ。場地さんは、松野さんのことをちゃんと考えてますよ。」

 

松野は腑に落ちない様子だったが、佐藤先生が戻ってきたため席を立った。

 

「松野は職員室で山口先生口説いてるのか?」

 

「んなわけねぇだろ、テメェじゃあるまいし」

 

佐藤先生に揶揄われて、松野は捨て台詞を吐くように職員室を出て行った。

相変わらず教師に対して敬語を使えない松野を見て、自分は松野にとって信頼するに値する人間なのだと再確認した。

 

「松野も場地も山口先生が担任になってから変わりましたよね」

 

「そうですか?」

 

「山口先生ってもっとドライな人かと思ってたけど、生徒のこと良く見て考えてますよね」

 

「たぶん、場地と松野だからですよ。あの2人は将来が心配なので。」

 

「確かに」

 

佐藤先生は笑っていたが、こちらにとっては笑い事ではない。

もうすぐハロウィンがやってくるわけで、早ければそこで場地の将来は終わってしまうのだ。

やはり、場地が松野に羽宮のことを話していないせいで、拗れている気がする。アニメではあんなに自信満々に花垣に語っていたのに、今日の松野はとても不安そうだった。

 

 

松野の心配をしたいところではあるが、松野のせいで通知表が書き終わらなかったと言っても過言ではない。

いつもよりも退勤するのが遅くなってしまった。

花金ということもあって街は賑わっていた。

家に向かう途中、東卍の特攻服を着てバイクに乗る人達とすれ違った。

名前も知らないモブたちだったが、今日の集会が既に終わったことを知るのには十分だった。

今日もベランダにいなかったせいで場地と松野が騒いで無ければ良いのだけれど。先日の騒動を思い出し、思わず笑みがこぼれた。

 





最近、私生活で口が悪くなってしまって困ってます。
絶対小説のせい笑
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