To be, or not to be...   作:

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明けましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いいたします!



【2022.1.3. 10:00】
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19話

あっという間に1週間が経った。

明日が運命の日だ。

“踏み絵”の翌日、松野は花垣と接触し、どんな話をしたのかよく分からないが、松野は花垣を「相棒」と呼ぶようになっていた。そこまで指示した覚えはないが、松野が楽しそうにしているので良しとしよう。それから、佐野家の墓に行ってマイキーと話したことや、長内に話を聞きに行ったことを教えてくれた。こちらは殆どアニメと同じ展開で進んでいるようだ。

場地の方はというと、学校で劇の練習に参加し、下校した後はずっと羽宮と行動を共にした。羽宮はいつもうわ言のように「マイキーを殺す」と言っているらしい。そして、対マイキー用にケンカのエキスパートを用意している。それ以外、芭流覇羅に大きな動きはないが、半間がいつも携帯で誰かと連絡をとっていると言っていた。恐らく相手は稀咲だろう。こちらもまだ想定の範囲内の動きをしている。

ちなみに、松野は怪我のためジュリエット役を降板した。登校した松野の顔を見て宮本さんは「私のジュリエットが!」と悲鳴を上げていた。代役は演出を担当していた宮本さんになった。さすが演劇部というだけあってセリフを全て覚えていて何の問題もないが、演技力がずば抜けて良く、正直上手いとは言えない場地と合わせるとちぐはぐしているが、それもクラス発表の醍醐味といったところだろうか。昨日の文化祭本番では、ロミオの最期と“血のハロウィン”の当初の結末を重ねてしまい、私は周りが引くほど号泣してしまった。

先程の決起集会でマイキーは予定通り「場地とは戦えねぇ」と宣言した。「芭流覇羅をぶっ潰して場地を東卍に連れ戻す」これがマイキーの希望。場地と松野を死なせずに、マイキーと羽宮を和解させ、稀咲を東卍から追い出す、これを全て叶えようとするのは欲張り過ぎだろうか。

決起集会の後、花垣に声を掛けた。

 

「え、教師が暴走族の決起集会なんか参加して良いんですか?」

 

「いや、参加はしてないし。そこの茂みから見守ってただけだし。」

 

83抗争の前に場地と似たようなやり取りをした気がする。

 

「今更だけど、過去に戻ってきたってことは良い結果じゃなかったってことだよね。」

 

「…そうですね」

 

花垣の表情から、壮絶な未来になっていたのだろうと予想ができる。

 

「辛いこと思い出させてごめん。」

 

「いえ…」

 

花垣は何も言わないが、なるべく橘や千堂を連想させないように話題を選ぶ。

 

「未来で龍宮寺くんには会った?」

 

「ドラケンくんは死刑囚になってました」

 

「何か言ってた?」

 

「“血のハロウィン”で東卍が負ける、一虎くんが場地くんを殺してマイキーくんが一虎くんを殺す、って。でも、稀咲が身代わりを用意したからマイキーくんが捕まることはなくて、稀咲が東卍に入ったのはマイキーくんが目当てだったんじゃないかって」

 

83抗争があんなに上手くいったのに、全然変わってないじゃないか。

結局は“血のハロウィン”次第ということか。

 

「あと、場地くんの他にもう1人、東卍から死者がでるとも言ってました。誰とは言ってなかったけど」

 

背筋が凍った。

 

「…最悪のパターンじゃないか。」

 

「えっ、もう1人って誰なんですか?」

 

「たぶん、松野千冬。」

 

「千冬!?なんで!?」

 

「元々、私が知っていた未来では場地さんだけが死ぬ予定だった。83抗争の前に林田くんが逮捕されたことによって、稀咲が参番隊の隊長になって“血のハロウィン”を仕組んでた。でも、今は稀咲は参番隊のただの下っ端で、幹部の座を狙ってる。それで目を付けたのが壱番隊。場地さんも松野さんも稀咲が幹部になるためには邪魔だから…あーもう!そうかもとは思ってたけど、やっぱりそうなんじゃん!」

 

柄にもなく取り乱してしまった。

稀咲は身代わりを用意することで功績をあげ、壱番隊の隊長になることができた。そして、後に龍宮寺が逮捕されるように仕向け、自分がナンバー2の座についたに違いない。

稀咲の10年計画が恐ろしいほど順調でびっくりする。

 

「花垣くんはこの過去で何をしようとしてた?」

 

「場地くんを助ける。そしたらマイキーくんは一虎くんを殺さないで済むから、きっと稀咲の思惑も阻止できる…と思ってました」

 

「うん、それは同意見。でも、場地さんと松野さんにもしものことがあったら、その時は花垣くんがマイキーくんを止めてね。」

 

「…え」

 

「…私の知る未来では、血のハロウィンは失敗するんだ。さっきも言ったけど、場地さんが死ぬ。でも、そのお陰で、君は壱番隊の隊長になる。」

 

「ええっ!?オレが?隊長!?」

 

「場地さんが君に託し、松野さんとマイキーくんがそう決めた。そして、未来に戻ると君は反社会組織東京卍會の最高幹部の1人になる。これが当初の予定。でも、2人とも死んで、マイキーくんが羽宮くんを殺したら稀咲が壱番隊の隊長になってしまう。だから、せめてそれだけでも阻止しないと。」

 

「わかりました」

 

花垣は拳をぎゅっと握りしめた。

 

「ところで花垣くん、御守り拾わなかった?それ、場地さんの大事なものだから、明日忘れずにちゃんと持って来てね」

 

話を終えて階段を降りて行くと、駐車場では松野が待っていた。

 

「相棒、遅かったな…って、センセーもこっち居たんスか。オレ、バイクでタケミっち送ってくるんで、家いてください。すぐ戻るんで。」

 

「本当に早く帰ってきてほしいです。家に2人きりになっちゃう。」

 

「えっ、あの人もう来てるんすか?」

 

「あの人、時計読めないの?集会の前から居るんだけど。教え子と2人で家にいるなんてバレたら…」

 

「はははっ、教師が生徒連れ込んでるなんてクビっすね」

 

「連れ込んではない!あんた達が勝手にウチを待ち合わせ場所にしたんでしょうが。」

 

花垣が不思議そうな顔で松野とのやりとりを見ている。

松野は場地のことを話していなかったらしい。花垣には「場地さんはスパイでこちら側の人間だが、自分のやるべきことがあるから邪魔をしないように」と釘を刺しておいた。

 

松野は約束通りすぐに帰って来ると、ウチで場地と合流した。

明日の計画を確認し、必要なものを準備する。

 

「こんなの何に使うんだよ」

 

「念のため。それもちゃんと着ておいて。」

 

「この長い布は何すか?」

 

「濡らすと締まるらしいから、冷たいかもしれないけど我慢して巻いて。」

 

この時代のインターネットで調べられることは調べた。これで身を守れる保証はない。ないけど、無いよりはマシだろう。

2人には何度も今日だけは絶対に自分の家に帰るように言った。

逆に2人には「巻き込まれないようになるべく遠くにいろ」「巻き込まれないようにあまり早く来るな」と心配されてしまった。

 

 

 

 

10月31日、ついに決戦の日。

今日は月曜日だが、土曜日に文化祭があったため、振替休日になっている。もし、今日が普通に登校日だったら、2人を学校に引き止めて抗争に行かないようにすることも出来たかもしれない。しかし、この日程を知ったときからそれは叶わないと分かっていたことだ。その為に作戦を立てたのではないか。

 

廃車場に着くと、すでに乱戦は終盤に差し掛かっていた。

積み上げられた車の上で、マイキーが芭流覇羅の黒マスクの幹部にやられそうなところを稀咲が助けたところだった。予定通りである。稀咲はここでも点数を稼いでおく算段なのだろう。

すかさず場地が稀咲を攻撃する。アニメでは鉄パイプで頭を殴っていたが、銀色に塗装した塩ビパイプを持たせておいた。攻撃する場所は頭以外を狙うように言った。やはり威力は弱いが、さすがは壱番隊隊長。稀咲はそれなりにダメージを受けている。

場地は稀咲の手下に投げ飛ばされ、花垣のところへころがった。場地が稀咲に殺されると勘違いしている花垣は、また上に上がって行こうとする場地を止めた。邪魔するなと言ったのに。しかし、これも想定の範囲内。

ナイフを持った羽宮が後ろから場地に襲いかかる。松野が飛び込んできて場地を庇い、勢い余って一緒に転がった。脇腹を押さえた松野の手が赤色に染まっている。

場地の「千冬!」と叫ぶ声が場内に響くと、他の動きも止まり、シンとした。

松野の荒い呼吸と、小さな声がよく聞こえる。

 

「…オレは…壱番隊、副隊長…っ!…場地さんを、守るために…ここに、いる…!」

 

それだけ言い残すと、目を閉じてぐったりとし、動かなくなった。

 

「一虎ぁ!何で、千冬を殺したんだ!?」

 

場地は羽宮の胸倉を掴んだ。場地の手も服も赤くなっていて、羽宮の特攻服も染まる。

 

「お前まで俺を見捨てるのか…場地…」

 

「あ?」

 

「死ね…場地…」

 

羽宮はナイフを振り回した。殺す、敵、裏切り、死ね、そんな言葉をぶつぶつと呟いている。羽宮が大きく振ったナイフが場地の腹部を切り裂くと赤色の液体が飛び出した。

場地はその場に倒れると動かなくなった。

 

「やっぱヤベぇ奴だな一虎は!場地を芭流覇羅に引き抜いたのは、こうやって寝首をかくためか!」

 

稀咲が白々しく煽ると、マイキーはゆっくりと降りてきた。

 

一虎(テメー)少年院(ネンショー)から出てきたら、真っ先に俺が殺そうと思ってた。そんな俺を諭し続けてくれたのが場地だった」

 

マイキーの顔に感情はなかった。ただ淡々と語っている。

喧嘩はもう終わりだと半間を一撃で倒すと、芭流覇羅の大半の奴らは逃げて行った。

半間が倒れたことで、龍宮寺が自由に動けるようになり、急いで場地の元へ行く。

ギャラリーが固唾を飲んで見ている中、マイキーと羽宮は向かい合った。

 

「終わらせようぜマイキー。テメェが死ぬか、俺が死ぬかだ」

 

マイキーは何も言わずに、羽宮を思い切り殴った。一発で羽宮は吹っ飛んで、倒れ込んだ。

 

「大事なモン壊すしか能がねぇなら、俺がここで壊してやる」

 

その時、場地がふらりと立ち上がった。

 

「マイキィィ!!」

 

場地は「俺のために怒ってくれてありがとな」と笑った。ゆっくりと羽宮の元へと歩いていく。

 

「気にすんなよ、一虎。俺は…一虎(オマエ)にはや()られねぇ」

 

そう言って、場地は自分の腹にナイフを突き刺した。仰向けに倒れた場地に龍宮寺が真っ先に駆け寄る。

 

「場地くん…なんでだよ?わかんねぇよ…なんの為に…自分で自分を刺したりなんか…!?」

 

「…俺は、()()()()()()。マイキーが一虎を殺す理由はねぇ…タケミチ、オマエはどこか真一郎くんに似てる。マイキーを…東卍を…オマエに託す!!」

 

「ダメだよ場地くん、そんな事言わないで!!」

 

「…千冬ぅ」

 

「場地…千冬はもう…」

 

「そうだったな…ドラケン、後は頼んだ…」

 

「場地!」

 

「場地くん…?場地くん!場地くん!!」

 

花垣の声が響き、それをきっかけにマイキーは箍が外れたように何度も「殺す」と言いながら羽宮を殴りつけた。

空を仰いだ花垣は急に雄叫びを上げ、マイキーと羽宮の間に割って入った。殴られても、花垣は諦めずにマイキーの前に立つ。

 

「場地くんはこんな事望んでねえよ!」

 

「テメェが場地を語んじゃねぇよ」

 

「場地を語んな?死んじまったんだぞ場地くんは!!」

 

花垣は立ち上がると学ラン脱ぎ捨てると、()()御守りが地面に落ちた。

 

「なんでわかんねぇんだよ!?場地くんが何の為に死んだと思ってんだよ!?2人の…東卍の為だろ!?場地くんは一虎くんに殺されるんじゃなくて、自決することを選んだんだ!!場地くんは一虎くんに負い目を感じてほしくなかったから!!マイキーくんに一虎くんを許してほしかったから!!みんなが大好きだからその決断をしたんだって、なんでわかんねぇんだよ!!!」

 

マイキーは落ちた御守りを拾い上げた。

 

「タケミっち、この御守りを…どこで…?」

 

「…集会の時、神社で拾ったんですよ…」

 

「場地…ずっと持ってたのか…?」

 

マイキーの目に光が戻っていく。そして静かに語りはじめた。

 

「これは、その結成記念の御守りだ。東卍を創ったのは俺じゃない。場地だ。“誰かが傷ついたらみんなで守る”“1人1人がみんなを守るチームにしたい”そうやってできたチームだったな」

 

マイキーの目には涙が浮かんでいた。羽宮も泣いている。三ツ谷も林田も、あの龍宮寺も涙を溜めていた。

 

「場地くんはずっと1人で戦ってたんスね…その日の約束を守る為に…」

 

「ゴメンな…場地」

 

パトカーのサイレンが聴こえてくる。

 

警察(サツ)だ」

 

「帰んぞお前ら」

 

「解散だ!はけろはけろ!」

 

羽宮はゆっくりと立ち上がった。

 

「俺はコイツらとここに残る」

 

ケジメをつけたいという羽宮に、マイキーは短く返事をすると踵を返して歩き始めた。

 

「東卍もここで解散だ!」

 

龍宮寺が皆を促して廃車場を出て行く。

 

「マイキー…許してくれなんて言えねぇ。真一郎くんのことも、場地たちのことも、一生背負って生きていく」

 

羽宮は深く頭を下げた。

廃車場の中に入ろうとすると、気付いた三ツ谷に止められた。

 

「先生!?何でここに?先生は、入っちゃダメだ!見ない方がいい!」

 

「大丈夫。だから、離して。」

 

「三ツ谷、行かせてやれ」

 

龍宮寺が諭すと、三ツ谷は道を開けてくれた。

 

「センセー、後は頼んだ」

 

すれ違う時、龍宮寺は目を合わせることなく肩を震わせていた。

人がいなくなるのを見計らって、場地の横に腰を下ろして声を掛けた。

 

「さあ、そろそろ行きましょうか。本物来たら困るんで。」

 

「おー、千冬ぅ、行くぞ」

 

あの松野が場地の呼びかけに返事をしない。

 

「千冬…?おい!千冬!」

 

「松野さん!?松野さん!」

 

動揺している場地は、松野の首が取れてしまうのではないかと思うほど激しく肩を掴んで揺らした。

 

「…場地さん?…オレ…」

 

やっと開いた目は、虚ろで、焦点が合っていないように感じる。

 

「ハッ…!すんません!寝てました!昨日緊張して全然寝れなくて…」

 

「んだよ、脅かすんじゃねーよ」

 

「クッソ!紛らわしいんだよ!ふざけんな!心配してソンした!」

 

思わず松野の頭を叩いてしまった。

 

「あ、体罰っすよ」

 

「あんだけ人をボコボコに殴っておいて、今の一発が体罰だなんて言われる筋合いない。」

 

松野も場地も笑っている。

羽宮は状況が分からず目を白黒させていた。殺したと思っていた人間が、生きて動いて笑っているのだ。悪い夢でも見ているような、そんな顔をしている。

いつまでも立とうとしない羽宮に手を差し伸べた。

 

「羽宮くん、自分で歩けますか?」

 

「あんた…何者だ?」

 

「私?私は場地と松野(コイツら)の担任の先生だ。」

 




改めまして、明けましておめでとうございます。
勢いで始めた場地圭介救済小説もいよいよ次回血ハロ編が最終回です。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
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