To be, or not to be...   作:

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2話

新学期第1日目の学級活動を無事に終えることができた。

改めて学校の先生は凄いと思った。

何というか、子どもって自由だなと。

自分も中学生の頃こんなだったかと思うと、当時の担任に申し訳なくなる。

今日は体調を気遣って生徒たちが協力してくれたお陰で割とスムーズに進められたが、明日からの生活が一気に不安になってきた。

前の会社もありえないブラック企業だったが、教員もかなりのブラックと聞く。ブラック企業からブラック公務員へのジョブチェンジなんて笑えない。

そもそも、明日もこのままなのか、それとも一度寝たら元に戻っているのかさえ分からない。

 

生徒たちを見送って教室に戻ると、まだ2人ほど人影が見えた。

場地圭介と松野千冬だった。

場地が机で何かを書いていて、時折、松野が漢字を教えている様子が伺えた。

仲の良くやりとりをしているのを見て、涙腺が緩んでくる。

場地圭介はまだ生きているのだ。

“血のハロウィン”までは半年もある。

今からなら場地を救えるだけではなく、他の東卍メンバーも不幸な運命から守ることができるのではないだろうか。

そんなことを考えていると松野と目が合ってしまった。

 

「おい、なに見てんだよ」

 

じりじりと松野が近づいてくる。

 

「先公が場地さんに何の用だよ。」

 

「担任だからね。用事のひとつやふたつあるでしょう。」

 

松野は何も言い返せず、小さく舌打ちをしていた。

 

「で、何だよ。話があるなら早くしろよ。場地さんは忙しいんだよ。」

 

確かに用はあるが、それは今というわけでもない。

場地圭介救済のためには、場地や松野との接触は不可欠だが、そのチャンスがこんなに早く巡ってくるとは思っていなかった。

つまり、今の自分には何の策も思い浮かんでないのだ。

この状態で、場地に何を話したら良いのか分からない。

 

「んだよ。何もねぇのかよ。」

 

松野はイラついたようにガンガンと近くの机を蹴った。

 

「千冬やめろ、気が散る」

 

「場地さん、すいません!」

 

この松野千冬という男は、本当に場地とそれ以外でこんなにも態度が違うのか。

仮にもこっちは大人で、教師である。少しくらい敬語を使う努力をしてほしいものだ。

実際には、2005年には自分も中学2年生だったわけで、松野とは同い年ということになる。松野に親しみを感じるのはそういうところだろう。

アニメを見ていた時から、自分にとっては松野は友達のような感覚だった。

 

「まじで何なんだよ。ジロジロ見やがって気持ちわりぃな」

 

「んー…話したいことはある。けど、何から話したら良いのか分からない。」

 

「はぁ?」

 

松野は眉間に皺を寄せた。

書き終えたのか、ペンを置いた場地もこちらを見てくる。

睨まれているわけではないと分かるのに、場地の鋭い視線に目が離せなくなった。蛇に睨まれた蛙というか、まな板の上の鯉というか。

こちらが話すまで視線を外してくれそうにない。

意を決して話し始めてみた。

 

「…もし、2人の未来が分かるって言ったら、引く?」

 

「信じるかって聞くならまだしも、引く?って何だよ」

 

そう言って場地は笑った。

八重歯を見せて笑う姿は年相応の中学生といった感じで、仲間のためでも死なせたくないという思いが一層強くなる。

 

「いや、いい歳した大人、しかも教師が未来が見えるどうのこうのって言ったら普通は引くかなーって。急にそんなこと言われたら自分なら引くし、現に松野さんは引いてる。」

 

「普通に引くっしょ」

 

「いいじゃんいいじゃん、聞いてみようぜ、俺らの未来。」

 

何が良かったのか、場地が多少なりとも心を開いてくれているようだ。

これは良い傾向と言えるだろう。

しかし、これから告げることが中学2年生の彼らにとっていかにショッキングかということも容易に想像ができる。

 

本当に言うのか…?

 

ここへきて迷いが出てくる。

そもそも、未来を知って、更に悪い方向へいってしまう可能性だってある。

過去を変えるというのがどれほどリスクがあるかなんて想像ができない。

そう考えると花垣すげぇな。何であんなに前向きに行動できるんだろう。

 

「もったいぶってないで教えてくれよ、センセ」

 

「場地さん、こんな変な先公の言うことなんて聞かなくていいっすよ」

 

「今から話すことは、他言無用でお願いします。」

 

「タゴンムヨウ…」

 

「誰にも言っちゃダメってことですよ、場地さん」

 

「そんなん分かってるっつーの!」

 

「それから、どんな内容でもショックを受けないで欲しい。未来は変えられるから。」

 

静寂な間で雰囲気をつくると、2人が息を飲むのが分かった。

 

「今年の10月31日、後に“血のハロウィン”と呼ばれるこの日、場地圭介は死ぬ。」

 

「は?」

 

「はぁ!?場地さんが死ぬわけねぇだろうが!」

 

松野に胸ぐらを掴まれたが、これは想定の範囲内。

同い年で、しかも今は中学生の松野にメンチ切られたところで、別に怖くはない。まして、あの顔だ。仔犬が威嚇しているようにしか見えない。

 

「千冬、やめろやめろ。学校で騒ぎを起こすんじゃねぇ。そんなことあるわけねぇだろ」

 

場地は突拍子のない話に冗談だと思っているようだった。

 

「てめぇ!ジョーダンでもなぁ!言っていいことと悪いことがあんだよ!」

 

13歳に諭されてしまった。

 

「大人が、冗談でこんなこと言うわけないでしょ。さっきも言ったけど、未来は変えられる。君たち次第だよ。」

 

沈黙が教室を包んだ。

 

「…じゃあ、オレは?場地さんが死んで、オレの未来はどうなる?」

 

「場地さんの墓前で泣きながらペヤング半分食べてる。」

 

「なんか地味だな」

 

「いや…オレは想像しただけで泣きそうっす…」

 

「場地さんはもっとドラマチックな展開の松野さんの未来をご所望ですか?」

 

「なんか俺だけ死ぬとか言われんのムカつくから千冬が死ぬの聞きたい」

 

「ちょっと場地さん!」

 

「いいでしょう。松野千冬は、12年後死ぬ。」

 

「そんだけ?」

 

「とりあえずは」

 

「なんか、千冬の話地味なんだよなー。俺の“血のハロウィン”とかなんかかっこよくね?」

 

全然地味なんかじゃない。さすがに、頭を拳銃で撃ち抜かれて死にます、とは言えなかった。

 

「なんかさ、正直、死ぬとか言われてもピンとこねぇよな」

 

「そうっすね。オレなんて12年後だし」

 

「じゃあさ、今日のこの後のこと占ってくれよ」

 

「このあとのオレと場地さんの予定当ててみろ」

 

占い師になった覚えはない。

そもそも、描かれていないところのことなんか分からない。

 

「えーっと、2人で帰って、仲良くペヤング食べる」

 

「「すげぇ、当たってる!」」

 




なんか最後ギャグっぽくなってしまった。
次の更新は土曜日です(目標)
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