To be, or not to be...   作:

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【2021.9.26. 22:00】
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ありがとうございます。
とても励みになっております。


8話

()()()に来て1ヶ月が経ち、5月も半ばになった。

相変わらず平和な日々を過ごしている、と言いたいところだが、そうでもない。

先日の体育祭で事件が起きたのだ。いや、正確には体育祭後の所謂打ち上げである。

体育祭自体は滞りなく進行され、大成功に終わった。ちなみに、うちのクラスは、松野がリレーのアンカーを務め、足に自信のある運動部らを蹴散らしトップでゴール。場地はぺったり眼鏡なのに騎馬戦で無双していた。喧嘩って全身運動なんだなと思わされるほど、場地と松野の運動能力が高くて驚いた。主に2人の活躍で他のクラスに大差を付けて優勝することができた。

しかし、それが良くなかったのだ。良くも悪くも、場地と松野は目立ってしまった。そして、それを面白く思わない人もいる。そんな事でと思うかもしれないが、中学生とはそんなものである。

その結果、ついに、恐れていた“警察に生徒を迎えに行く”という面倒な仕事がきてしまった。

カラオケで中学生同士がケンカをしていると通報があったようで、警察から学校に連絡があった。松野と3年生が揉めたらしい。松野はてっきり場地と一緒なのかと思っていたが、この日は別の友達とカラオケに来ていたそうだ。そして、そこで3年生が場地の悪口を言って、馬鹿にしているところに遭遇。「場地のガリ勉スタイルはダサい」「場地はヤンキーだと思ってたけど弱そう」「場地の金魚のフンじゃん。どうせこいつも弱いんじゃね?なんかムカつくしやっちゃおう」で、やられそうになったから、やられる前にやった。一発ずつしか入れてない。これが松野の言い分である。ちなみに、松野は無傷だ。

警察は「中学生のケンカだから学校で指導してほしい」と、思ったより早く帰してもらえた。

しかし、一緒に生徒を引き取りに来た3年の先生が最悪だった。

 

「2年の松野千冬といえば()()だからな〜どうせ松野が3年相手に楯突いて手出したんだろ」

 

「テメェなぁ!!」

 

「うちの松野は理由なく人を殴るような生徒ではありません。」

 

「でも、そいつは入学式から問題起こすような奴だぞ!」

 

「それだって、もともと先に呼び出したのは先輩で、それを返り討ちにしただけでしょう。しかも、1対複数で、卑怯でしょ。松野が強くなかったらただのリンチじゃないですか。松野だけを悪く言うの辞めていただけませんか。」

 

「チッ…生徒が生徒なら、担任も担任だなぁ!」

 

その先生は捨て台詞を吐いて、自分の生徒を放置してそそくさと帰っていった。

教育の現場にこういう人間がいるのは、とても残念だと思う。いじめやパワハラが無くならないのは、こういった背景があるからだろう。

気がつくと3年生たちも各々家の方向へ歩き始めていた。

 

「松野さん、もう暗いし、家まで送りましょうか。」

 

「ガキじゃねーんだから1人で帰れる…っす」

 

「13歳は十分ガキですよー…って、え?今、敬語だった?」

 

「ッ……ありがと…センセ」

 

「…え、照れてんの?そんな顔して言うくらいなら、今まで通り“てめぇ”でも別にいいのに。」

 

「うっせーな!オレは認めた奴にはちゃんと敬意を示すんだよ!」

 

この日から、松野は「先生」と呼んでくれるようになり、少しずつ敬語が使えるようになってきた。

 

 

 

そして今、初めての危機を迎えようとしている。

前期の中間テストが2週間後に迫っていた。

このままでは、“血のハロウィン”を回避しても、場地が3年生になれなさそうなのである。

松野の『場地さんが進級できますように』は強ち間違いではなかったのだ。

テストまでの間、部活の時間を利用してパソコン室で勉強会をすることにした。パソコン部は相変わらず開店休業状態で、部員は誰も部活動に参加していないため調度良いと思った。

場地と、ついでに松野を連れてパソコン室へ来た。

 

「へー、パソコン室初めてだわ」

 

「オレもっす。何でパソコン室?」

 

「こう見えて、パソコン部の顧問なんで。あ、どうせ部員誰も来ないから自由にして大丈夫ですよ。」

 

「おっ、それ助かるわ。結構、窮屈なんだよなぁ、この格好」

 

場地は眼鏡を外してネクタイを緩めた。松野もブレザーを脱ぎ捨てていた。2人とも普段よりリラックスしているようだった。やはり、教室では彼らなりに気を張っているのだろう。

 

「さて、今日は数学からやりましょうか。」

 

「すうがく…?」

 

「え、まさか数学自体が分からないの…?」

 

「んなワケねーだろ。教科書は机の中だなーと思って」

 

「場地さん!オレ持ってます!オレの使ってください!」

 

そう言って、松野は場地に教科書を差し出していた。

 

「そしたら千冬が使えねーだろ、俺はいいから自分で使えよ」

 

「場地さんに使ってもらえた本望っす」

 

「いや…」

 

「じゃあ、間に置いて教科書半分コしたら?」

 

自分は一体何を見せられてるんだと思いながら、そう言ったものの、すぐに教科書なんか必要なかったことに気付いた。

中2の内容をやるレベルに達していないのだ。昨年のテストをどうやって乗り切ってきたのか、不思議でしょうがない。

 

「足し算と掛け算だったら掛け算から計算。括弧があったら括弧が先。」

 

「なるほど…?」

 

「場地さん、本当に分かってます?」

 

「…なんとなく?」

 

「じゃあ、この問題やってみて。松野さんは、どう?できた?」

 

「っす」

 

「これ、違う。このxはこっち、左辺に移行して、数字は全部右辺にもってきて…これとこれを計算して…そしたら答えは?」

 

「…10?」

 

「正解!」

 

「すげーな千冬ぅ」

 

場地の採点をすると、半分程しか正解していなかった。

 

「場地さん、引き算と割り算は割り算が先です。」

 

「んなこと、さっき言ってなかったじゃねーか」

 

「ちなみに、足し算と割り算だったら割り算、引き算と掛け算だったら掛け算が先です。」

 

「…じゃあ、これはこっちから計算すんのか…したら、答えは……」

 

「手を使うな、手を。てか、二桁だから指足りないぞ。筆算をしなさい。」

 

「……31?」

 

「お、正解。」

 

「先生、オレのこれ丸付けて」

 

「千冬、そういえばお前いつから先生って呼んでんの?」

 

「えっ!?」

 

「いや、お前、先公なんてクソ喰らえって感じだったじゃん」

 

「ちょっと色々あったんすよ。場地さんでも教えらんねーっす」

 

きっと喧嘩の原因が場地絡みだから、本人には知られたくないのだろう。

しかし、場地は松野に秘密にされたことが気に入らなかったのか、拗ねている。

 

「松野さんが警察の厄介になったのを迎えに行ったらなんか懐かれた。」

 

「ちょっ…!何で言っちゃうんすか!」

 

「場地さんがなんか拗ねてるから、つい。」

 

「別に拗ねてねーよ。そーかそーか、何があったかはもう聞かねーから」

 

場地なりの優しさであり、本人もまだ話せていない過去があることの表れだろう。

 

「じゃ、無駄話はそれくらいにして、続きやりましょうか。今から10問正解するまで帰れま10!」

 

場地と松野の頭の上にはクエスチョンマークが浮かんでいた。この時代はまだ帰れま10は始まっていないのか。いや、そもそもアニメの世界だから現実のネタは通じないかもしれない。

そんなことを考えながら見ていたが、これがなかなか正解できず、全然終わらないのである。下校時間も近づき、最終的には、10問やったら終わりというところに落ち着いた。

 

松野はなんとかなるだろう。問題は場地だ。

どの教科も提出物だけは何がなんで提出するように言った。

念のため、鉛筆に数字や記号を書いて転がして使う方法を教えておこうと思う。

 





また、更新日詐欺ってしまった。
ごめんなさい。

次の更新は10月3日です(目標)
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