となりのゴルシさん   作:天むすちゃん

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シリウスシンボリサポカイベみてノリで書いた話。サポカイベのセリフネタバレを含みます。
サポカイベ未読でも話の流れがわかるように頑張ったけど分かりにくかったらすいません。
気難しいモブコさんがイタチごっこを更にややこしい話にします。シリウスさんと会長が主体で絡む話なんでゴルシ最後の方にしか出てこない。


となりのゴルシさん15

まさかこんな日陰にベンチがあるとは。この学園は広いから最近気づいた。今更。

たまに外で一人休むならここにいた方がいいな。その内ゴルシさんが突撃してくるかもしれないけど…その時はその時だ。…でもわざわざ呪〇廻戦の十七巻ここで読まない方がよかったかな。

いやでも気になったし…。

「ハッなるほど!どんどんこぼれてくって訳だ!…なァ皇帝サマ、アンタは何もわかっちゃいない。」

待って、今まで全然気づかなかったんだけど誰か向こうで喋ってない?

…そーっと確認しよう。

「大抵のヤツにはな、生まれながらに何かしらの問題がある。持病やケガ。劣悪な家庭環境。

家の経済的困窮。そして、そういう問題は突発的に降りかかってくる。レースがあろうと、トレーニングがあろうと、否応なくな。

つまり、優等生のアンタと違って__アイツらに『次』なんてねぇんだよ。なら見るべきは『今』。そして個々に目を向けなきゃ『今』は見えてこない。」

「ふむ…つまり、個々に応じた対応策を取るべきというわけか。その主張には一理ある。…しかしながら、現実的でないのも事実。個々に合わせた結果、全体がおろそかになっては本末転倒。まして一部の生徒だけを厚遇するわけにはいかない。よって、均等な機会を設けることこそ最善と私は考える。」

 

シリウスシンボリ先輩とシンボリルドルフ会長が何やら真面目なお話中。え〜こんなとこにエンカウントとかするの嫌なんだけど。

違う派閥に属するリーダータイプの方々の意見対立的な。…私みたいなフラフラしてる日陰者にはこういうリーダー精神論はいまいちピンと来ない話だ。

…ここは一つ何も見てなかった、聞かなかったフリをして存在感を消しておこう。そして寝たフリをしよう。

 

「…あっ。」

やっちゃった、十七巻落とした。拾わなきゃ…中のページは汚れてない。ブックカバーをしておいて良かった。布製のカバーじゃないしちょっと手で払えば汚れはどうってことない。

「何か落としたような音が聞こえたが…。」

「…誰かいるのか?」

…拾ったはいいけどなんか水差しちゃったみたい。

まずい、シリウス先輩とルドルフ会長が目の前まで近づいてきた。…何この状況?乙女ゲー?私王道乙女ゲーのヒロインみたいなハイスペックと明朗快活な性格の持ち主じゃないんですが?

『ウマ娘の☆プリンスさまっ♪マジLOVE2400m』ってやつですか?スプリンターなのでそんな長い距離走れませんよ私は。

…とりあえず会釈しながら立とう。

「ど、どうも…。」

気まずい。ひたすらに気まずい。

 

「おい、アンタ今の話聞こえてたか?」

シリウス先輩が私にそう尋ねてきた。

「え、えっと、はい…ちょ、ちょっとだけ…。」

「…どこから?」

「えっと、その…たしかシリウス先輩が『どんどんこぼれてくってワケだ』と、仰ったあたりからです…。」

「ちょっとどころかだいぶ聞いてたんじゃねぇか。…まぁちょうどいいか。なあ、アンタはどっちが正しいと思う?」

「…へ?」

「最初の下りは聞こえなかったみてぇが、アンタは私達の話、コソコソ聞いてたんだろ?一生徒の忌憚ない意見ってやつをくれよ。」

「…えぇ…そういう話は私専門外というか…私の心にノブレス・オブリージュみたいなのはないんですが…。」

「もうこの際どっちかに手放しで完全同意しろとは言わねぇよ。このまま二人で話してても埒が明かねぇから、今の話を聞いたアンタ個人の考え、自分はこうありたいっていう思想を聞きたいんだよ。」

私個人の、かぁ。絶対参考にならないと思いますけど…。

「あの、お二人がされてたのって要は、組織から取りこぼされた個人に対しても配慮するか、飽くまで全体を主体にすべきかって話…でしたっけ?」

「…あぁ。」

「その、正直聞いててどちらも一理あるお話だとは思ったんですが…いまいち私はピンと来なくて…。」

「…へぇ、理由は?」

シリウス先輩がそう言ってまた深く尋ねる。

あ、これ長く喋らないといけないやつかな。ちょっと緊張して思わず手に力入る。

「お二人共、方向性は違えど最終的には全てのウマ娘が幸せになれる組織作りをって考えじゃないですが…その…でも、なんていうか……まずそれって、全員がなんだかんだ真っ当に目的のために歩める子である前提じゃないと成立しない話でもあると思うっていうか…。」

「と、いうと?」

今度はルドルフ会長が深掘りしてくる。

「その、自分でも考え方が後ろ向きだとは思うんですけど…ウマ娘でも人間でも、感情と知能のある生き物の集団には必ず悪意のある方っていると私は思ってて…徒らに他者を否定したり罵る方とか、ダートや短距離のウマ娘を極端に見下す方…他者を狡猾に陥れようとする方…そういう荒地みたいな想像力と感受性の持ち主、他者の尊厳を軽率に踏みつける存在が集団の中にいないとは限らない以上、まず積極的に全員のために動くのはちょっと…私は躊躇いますね…そういう方が周りに悪影響を及ぼして全部台無しにするかもしれませんし…。」

「…まあこんだけウマ娘がいればそういうヤツもいるかもしれねぇって思う理屈は分かるが…随分疑り深いっつうか…他者との関係に対して潔癖なんだな、アンタ。」

「…いやまあ、自覚はしてるんですよ、シリウス先輩…世渡り下手が原因で入学前は散々痛い目見たもので、こういう性分にまた拍車がかかってしまい…。」

「…でもたしか、君は入学後トレーナーや…数こそ少ないが友人が出来ていた様子だった。彼らに対しては信頼を置いているんだろう?」

ルドルフ会長がそう尋ねてくる。

 

「それは間違いないです。ただなんていうか…私は…私個人の心の中にはそういう…私のような陰気なやつとも親切に接してくれるような、善良な方々が救われる世であればっていう…線引き?みたいなのがあるんです。

私はお二人程の能力も、高尚なヒーロー精神も持ち合わせていないので…誰も彼も助ける力も精神も持ち合わせていないので、せめて自分の手の届く範囲にいる善良な、害のない他者の力に私はなりたいなって…まあ善良かどうかの個人的判断の時間はかかる上に、私個人の勝手なエゴが混ざっている考えですし…自分でも結構独善的な思想である自覚はあるので…やっぱりこの話は聞かなかった事にしてもらって…そもそも話の本筋から話が逸れてますね、すいません全く参考にならない役立たずで…役立たず…役立たずモブコです…。」

「あ、いや、気にしないでくれ。元はといえば私とシリウスが無理に君から話を聞いたようなものなのだから…。」

「…なるほど、アンタの考えは理解出来た。生憎と私とこの皇帝サマはアンタほどの他者への疑り深さは持ってないんでね、導き手としての自分の考えを変えるつもりは毛頭ない。…ただ、個人のあり方としてそれはアリだ。」

「え?」

「他者を懐疑し、善悪を見分け、善なる者だと判断したものに肩入れする。たしかにアンタ個人のエゴが否応なく入る思想だ。アンタはこの学園にいる奴には珍しく自己否定的で、潔癖で、歪だ。…でも、私はそういうのは嫌いじゃない。どうせ全世界の他者と分かり合おうとしたって、いつか限界が来るんだ。だったらせめて、ある程度の線引きを個人でするのは決して糾弾されるようなことじゃねぇ。」

「は、はぁ…それは、どうも…?」

え、何?急に褒められた…のかな?

 

「アンタ、モブコとかいう名前だったか?」

「……え?あぁ、はい、そうです。モブコっていいます…。」

「…まあアンタみたいなタイプは、一人でうだうだ考え込んで暴走しないかどうかがちょっとばかし心配にはなるが…まあそこをどうにかするやつは私以外にもアンタのトレーナーなりなんなりこの学園にはいるだろ…なんだお前、話を聞いてみたら結構『こっち側』の奴なんじゃねぇか。」

うっすら口元に笑みを浮かべて、シリウス先輩がつり目がちなルビー色の瞳をこちらに向けてくる。

え、さっきの話のどこにシリウス先輩側の要素あった?

「え、いや、私シリウス先輩とか先輩と仲がいい方々とはそんなに共通点ないんじゃ…。」

「まあ素行や性格は私が面倒見ている連中とは真逆みたいだが…群れからはぐれた者なりに個をみて、善き者を支持する。アンタの価値基準ならこの王様も善良な者には入るだろうが…それはこの際いい。はみだし者特有の歪さを持っていて、それに理解があるやつは嫌いじゃない。なんなら少し気に入ったよ。」

「え?」

唐突なオキニ宣言。え、まじ?

「え、あの、え?」

「まあ、また会う機会があれば、その時はよろしく。お前の顔と名前、覚えたからよ。」

「え、あ、はい。」

会釈しながら返事はしたけど…そんなに今の話シリウス先輩のツボだったんだ。

「…そうだ、皇帝サマ。今は私も少し機嫌がいい。このままアンタとグダグダ喋るのもなんだ、併走しようぜ。」

「…生徒会の仕事も今はだいぶ片付いているし、それは構わないが…。」

「じゃあこの後。芝Bコースで。」

そういうとそそくさとシリウス先輩は後ろ手で手を振りつつその場を去っていった。

 

「…改めてすまなかったな、急に話に巻き込んでしまって。」

私と二人になってからルドルフ会長がそう謝罪してきた。

「え、ああ、いや、全然。会長さんはお気になさらず…。」

「…その、ここまで話を聞いておいてまた君を困らせたくはないのだが…私からも一つ聞いていいか…?」

「…え、あ、はい…?」

「例えばの話だが…君自身と、君が先程言ったような善良な友、どちらか選ばなければならなくなった時、君はどうする?」

「善良な友人を選ぶと思います。」

「…理由は?」

「…私自身が善良で尊いと思った方々には、私以上に価値があると思うからです。…さっきも言いましたが、私自身は独善的というか…どうしようも無いやつですし…。」

「…そうか。その…君自身の考えが悪いものとは私も言わないが…君が君の友人に対して傷ついて欲しくないと思うように、君自身が傷ついて傷つく者もいるという事も…分かっていて欲しい。」

会長のタフィーピンクの大きな瞳が懇願するように私の目を覗きこんでくるから、ドキリとする。

「…お心遣い、痛み入ります。」

「…そんな顔をさせるつもりはなかったんだが、すまない。でもこれだけはどうか、どうか分かって欲しかったんだ…。」

「…あ、いえ。気にしないでください。……あの、シリウス先輩、お待ちしてるんじゃ…。」

「おっと、そうだった。それではモブコ、最近少し肌寒くなってきたから、身体を大事にな。」

そういって会長はいつもの綺麗な姿勢で歩きながら去っていった。

なんだか暗い話を展開してご心配おかけしちゃったみたいで申し訳ないな…。

 

 

 

「…って、事があったんですけど…。」

「いや重い!話題が青春真っ盛りの学生三人の会話とは思えねぇくらい重いッ!!!!ゴルシちゃんがその場にいたら小島よ〇おのモノマネで場を盛り上げたのによぉ!おっぱっぴーしたのによぉ!」

「…いや、それは…ダメでしょ。色んな意味で。」




トレセン学園英語テスト 第二問
「future」という単語を使った英文を作りなさい。
ゴールドシップの答え

I am going to become the king of the pirates in the future !!!

教師のコメント
満点の回答です。ですがそこは海賊王ではなく三冠ウマ娘等と書きませんか?普通…

モブコの答え

I don't have dreams for the future.

教師のコメント
満点の回答です。ただ深読みかもしれませんが、先生はモブコさんの精神状態が心配です。何か嫌なことがあったのなら遠慮なく先生に相談して下さい…


こんな暗い訳ありそうなオリウマ娘を組織論してる二人に絡ませたらマズイだろ!話暗くなるに決まってるよ!だれだよこんな話考えたの、私か!

あとシリウスさんその…この子面倒くさい上に絡むともれなくゴルシもついてくるけど大丈夫?

この話呼んで「この作者絶対呪〇廻戦に最近ハマってたな」って思った人、正解です。なんならこのシリーズ書き始めた時期、ウマ娘の他にハマってたジャンルも呪〇廻戦なんでモブコのキャラ造形にちょっと初期から影響してる。
伏〇恵よりはモブコの善良判定はガバいだろうけどね…。

併走トレーニング回でモブコと併走して絡んで欲しいウマ娘は?

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