となりのゴルシさん   作:天むすちゃん

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後書きのモブコのヒミツ⑦辺りで触れたモブコの死生観に関する話。またもや時系列ちゃんが謎。さらっとゴルシが都合よく一人部屋みたいな雰囲気で話を進めてる。モブコの仄暗い話が前半続くけど後半はしっとりイチャコラするから許して欲しい。


となりのゴルシさん16

「アタシさ〜、200歳くらいまで生きたいんだよね〜。」

「…switchでマ〇オカート対戦した後にする話題にしては急な上にスケールが大きいですね…いや貴方はいつも急ですけど。」

ゴルシさんの部屋に来て成り行きでマ〇オカートをやってました。3連敗です。モブコです。そしてはじまった死生観トーク。

 

「いやしかし200歳って長いですね、まあ貴方くらいタフで元気なウマ娘なら出来そうですけど…そんなに長生きして、仙人にでもなるんですか?」

「え?仙人にはもうなってるけど?」

「えぇ…。」

またおかしなことを…。

「なんつーかこう、百何十年後の地球、いや、宇宙の行く末を見てみてぇんだよな!!!」

「はあ…そうですか…。」

「あ、お前は何歳まで生きてたい?」

「え、私ですか……う〜ん…。」

あまりこういった話を他者にはしたくないが、正直長く生きていく事にはあまり興味が無い。若い今でさえ自信の無い容姿がもっと衰え醜くなるのは正直見たくないし、なにより生きていくモチベーションを長く保てる将来が見えない。大嫌いな自分の事で他人にずっと迷惑かけたくないし。介護とかお金払ってヘルパーさん呼ぶのも私はヘルパーさんに申し訳なくなりそう。

でもなあ、嘘ついて数字盛るにもゴルシさんは私の嘘すぐ見破るからなあ…ババ抜きすら勝ったことないし…そもそも私嘘が下手って色んな人に言われてるからな。はは。

…正直な数字を言うか〜。

 

「…三十……五?」

「え、はや。」

あ、やっぱり早いんだ、三十五歳までに死ぬ予定なの。やっぱり皆一般的にはもうちょい長生きしたいものか。

「まあどうやって死ぬのかとかはまだ考えてないんですけど…今のとこの数字ですし…。」

「そっか、理由は?」

普通もっと驚かないのかな。かなりシリアスな状況のはずなのにすごくあっけらかんと、ラフにゴルシさんは理由を尋ねてくる。

 

「なんか…今でもウマ娘の癖してエネルギッシュさの欠片も無いのに、自分が生きてくモチベーションを長く保てる気がしないんですよね…それにただでさえ自分の事は今でも嫌いなのに、もっと容姿は老いて醜くなるだろうし…結婚なんか出来る気がしないから独り身で老後の世話見る人もいなさそうだし、お金払って介護士さんのお世話になるのも申し訳ないし…親の老後資金を貯めたらスパッと三十代くらいで死ねたらな、とか今考えてるんですけど…痛いのはあまり…好きじゃないから…その、出来たらあんまり痛みを感じない死に方がいいな、なんて我儘ですよね…葬式とかは別に挙げずにぱぱっと焼いて灰にしてもらって構わないんですが…。」

自分で言っといてなんだけど『痛くない死に方』ってなんだろう。市販薬のオーバードーズは失敗して、誰かに見つかったら搬送からの即胃洗浄らしいからな。確実じゃない。毒とか?わかんない。

成人した後無理やりヘビースモーカーにでもなったらぽっくり死ねないだろうか。無理か。

 

「いやいや具体的な死に方まで決めてなくていいって…でもさ、逆に言えばモチベーションが保てたらもうちょい長生きする予定なワケ?」

「…いや、まあ、はい。多分、そうします。」

「じゃあほら、アタシらデ〇ズニーさ、シーは一緒に行ったけどランドは一緒に行けてないだろ?ランド行ってからでもよくないか?死ぬのは。」

「…えぇ…いやまあ、ランドは五歳くらいの時親に連れて行ってもらってから全然行ってないので…死ぬ前にちょっと、行きたいですけど…一人で行くのはあれだからまあ、ゴルシさんいるなら…。」

「じゃあ決まりな〜、ああ後、他にも一緒に行きたい所色々あるからそこも付き合ってからにしてくれよ。」

サラッと要求増やしてきたよこの子。しかも話しつつさりげなく手を繋いできた、ちょっと恥ずかしいんだけど。

 

「…人が他にいない空間だからって急に手繋いでくるの恥ずかしいってこの前も言いましたよね…まあ、私でよければ多少なら付き合いますけど…私以外にも他に仲良い方々いらっしゃるんですから、その子達と行けばいいんじゃ…。」

「わかってねぇなあ。お前とやりたい事がまだ山積みだから、あんまり生き急ぎ過ぎるなって話をしてるんだよ。」

「…私と?」

「そう、モブコと。」

 

私の右手を大きくて指の長い手のひらで絡めとって、強く握りながら、いつもより心做しか穏やかな声色で彼女はそう応えた。

顔が少し熱い。頭がごちゃごちゃだ。ずっと誰かにこういってもらうのを夢みてた?違う。そんなわけない、昔ずっと私は独りで、ぼんやりではあるけどさっさと死んでしまおうと思ってたはず。私なんかがこんな気持ち受け取るのは烏滸がましい。でも嬉しい。喜ぶなよ、思い上がるなよ。予定通りちゃっちゃと死んだ方がいいよ。

 

「…そんな顔すんなよ。」

ブライトピンクのビー玉みたいに透き通った瞳が私を覗き込む。いつの間にか頬に彼女の片手が添えられてる。頭のごちゃごちゃが表情にも出てしまったのだろうか。

「…ごめんなさ「いいよ、謝んなくて。」

私の謝罪をそう優しく遮ると、手を繋いでいたもう片方の手でまた私の両頬を挟むように包んで、じっと私を見つめてくる。

「…顔、もうちょっとちゃんと見たいから、フード取ってもいいか?」

「え、あ……はい。」

思わずパーカーのフードを取る許可を出してしまった。彼女の手が今度は私のフードにのびて、左耳の髪飾りが取れないようそっと優しく彼女はフードを脱がせた。

お風呂も一緒に入った事もあるし、一緒に寝た事もあるからフードを外した姿自体は何度もこの子に見せてるのに、改まってこう見られると恥ずかしくなるのはなぜだろう。

 

「ゴルシちゃん急行発車〜…かるっ。発泡スチロールとかで出来てんのか?つか前から思ってたけどお前の手足の細さフラワーとかとあんまり変わんないじゃん。真面目に心配だわ。」

「え、あ、な、なんですか今度は。」

すると今度は急に私を抱き上げた。本当急だな。

「はい到着〜。」

ゴルシさんのベッドに寝転ぶように置かれた。ゴルシさんも私と向かい合うような形で寝転ぶと、ニコニコしながら頭をひたすら撫でたり、頬を触ったりしてきた。私は何も言えなかった。彼女の長いまつ毛が揺れる瞳が、穏やかに私を見つめる顔そのものがすごく近くて、綺麗で、恥ずかしくてたまらなかった。

「…改まって言うのもなんだけど、お前本当色白いな〜。手も脚も首も顔も白くて雪みてぇ。」

「え、あの、えっと…その…。」

「…なに、モブコ?照れてんの?可愛い。」

「え、あの、え…。」

褒められて固まる私を他所に、彼女はガラス細工に触れるような優しい手つきで私の頭を撫で続ける。

また頭がぐちゃぐちゃになる。嬉しいけど、私はこんなに大切にされていいのだろうか。この体温を私が貰っていいんだろうか。この学園に来てから、この子に会ってから、なんだか前よりもずっと息がしやすくなった。でもこんなに大事にされる価値は私にあるのかな。

顔はマックイーンさんやライスさんの方が百倍私より可愛い。身体も貧相で、ゴルシさんはもう知ってるけど、右手首には昔自分でつけた二箇所の汚い傷痕も残ってる。あの痕をお風呂などで見る度に私はまたどうしようもなく自分が嫌になる。

他者の目線と傷痕がバレる事が怖くていつだってパーカーが手放せない。夏だって薄手のパーカーがいるし、水着を着る時もラッシュガードが不可欠だ。そんなやつなんだ、私は。

嬉しがっていいの?だめでしょ。ちゃんと素直に受け取ってお礼をいうべき?今でも自分なんか大嫌いなのに他人に言われたら受け入れるの?嬉しい、嘘、違う、嬉しい、ずっとこうして欲しかった?寂しかった?違う、違う、欲張り、違う。

脳内に溢れるノイズは鳴り止まない。感情の整理がつかない。どうしよう、あまりに頭がごちゃごちゃなせいか手が微かに震えてる。

 

「まだ許せなくてもいいよ。」

そんな私の頭の中のノイズを遮るようにゴルシさんの声が降ってきた。

「……え?」

今度は頭を撫でていた手を止めて、彼女の胸元に私を抱き寄せてきた。私の頭の後ろに片手を回して、もう片方の腕は腰に回されて、いつにも増して穏やかかつ優しい声色で喋り始めた。

「まだ自分で自分を許せなくてもいいよ。でも…アタシがお前を許すのは許して欲しい。まあアタシ以外にもお前の同室とか、トレーナーとか、お前を許してるやつはいるだろうけどさ。…お前が自分の事大事に出来なくても、アタシには大事にさせてよ。頼むから。…まあ、いつかはお前にも少しは自分の事許してあげて欲しいけどさ、そんな急には無理だよな。そんな簡単な問題じゃないから今も苦しいんだろうし。…ただせめて、許せるようになる手助けくらいはさせてくれよ。お前はほっといたら自分で自分追い詰めて、どっか行っちまいそうだから。」

彼女が私を抱き寄せる手つきは優しい。強引なようでこの子はいつも私を大事にしてくれてる。壊れ物や、繊細で綺麗な花に触れるみたいに私を扱う。だから今も私の早死にを憂いたり、こんなに優しくしてくれている。その事実が改めて確認できて、心が掻き乱されて、涙が出そうになる。

 

「…私みたいな暗いやつにそうやってずっと構ってたら疲れちゃいますよ。」

そう問いかける声は震えてしまった。

「疲れねぇよ。」

「…なん、で。」

「お前が好きだから。」

「…っ。」

あまりにストレートな言葉に息が詰まる。我慢してた涙がぽろぽろこぼれ始めてしまった。ダメだ。困らせたくないのに涙が止まらない。この子の隣がどんなに心地よくて、息がしやすいかを知ってしまったら、もう一人には戻れない気がしてきてしまう。

 

「あ、ちょ、泣くなよ。ほら、ティッシュ。」

「…ありがとう、ございます。」

「…それは嬉し泣きか?」

「……多分。」

「多分か〜。」

ティッシュを手渡して、また私の頭を宥めるように撫でる彼女の顔つきはとても温和だった。この綺麗で優しい子がどうか幸せに生きていけますように、と昔から今までずっと信じていなかったはずの神様に心の片隅で私はそう祈った。




次回「ゴルシと100万回デ〇ズニーランドに行くモブコ」

モブコお前…自分で書いといてこんな事言うのもなんだけど、ここまで危なっかしいとお前もう一周回って魔性の女だよ。儚げファム・ファタールか?

さらっとモブコの耳飾り設定足してすみません。もうこの際固定しちゃえと思って…でも皆色白スレンダー貧乳黒髪ウマ娘のブルマみたくない…?私なんかこの間ニシノフラワーのブルマに脳を焼かれちまったからさぁ…ブルマに目覚めたからさあ…(は?)

併走トレーニング回でモブコと併走して絡んで欲しいウマ娘は?

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