となりのゴルシさん   作:天むすちゃん

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夏合宿です。真面目モードゴルシが出てきます。フジ先輩とモブコのトレーナーもいます。


となりのゴルシさん2

トレセン学園恒例夏合宿。当然私モブコもこれに参加しトレーナーさんや他のウマ娘とトレーニングをしていた、のだが…

「モブコ大丈夫〜?」

「モブコ、夏場は必ず体調崩すよね…。ただでさえ日頃から貧血なんかもあるのに、難儀な体質だ。」

「すみません、今年こそ健康体で合宿を終えようと自己管理を頑張ってはいたんですが…どうにもならず…。」

私は今優しいフジキセキ先輩と女トレーナーさんに救護テントに連れてきて貰った所だ。元々虚弱な私の体は夏の暑さがとても苦手なのだ。入学して初めての夏合宿は出発前から体調が悪く途中合流になったのは苦い思い出である。それでも昔に比べたら耐性はついたし今年はずっと元気にトレーニング出来ると思っていたのだが…。

「アイビスサマーダッシュまでちょっと根詰めすぎたかな、ごめんね〜私がもうちょい気遣ってあげればよかった。」

「…サマースプリントシリーズで根詰めてるスプリンターの子なんていっぱいいます。アイビスサマーダッシュもなんとか4着には入りましたが、反省点も沢山ある。そんな中で、秋のレースに備えて行かなきゃ行けないのに…。謝らなきゃいけないのは、むしろ私です。…ダメですね、本当に…いつもこうやって調子を崩して…。」

「いけないよ、ポニーちゃん。」

とめどなく出てくる自責をフジ先輩が遮る。

「体調を崩すことくらい誰にだってあるものさ。君はよく頑張っているよ。だからこそ、今は少し休憩が必要なんだ。あまり自分を責めないで。」

「…すいません。」

「…君が冷めているようで実はひたむきな子なのを、私はよく知っているから。ただ、周りに少しそれが伝わりづらいだけで。…それじゃあモブコのトレーナーさん、私はまたトレーニングに合流しなければいけないので、戻ることにします。モブコも多分、今日休めばまた皆と合流できると医療スタッフの方も仰ってたから、安静にね。」

「…はい。」

 

そう言うと、フジ先輩は手を振りながら練習に戻って行った。フジ先輩はやっぱり優しくて、同性ながらイケメンの先輩だ。管理職ってすごい、私には真似出来ない。フジ先輩を見送った後、トレーナーさんが話しかけてきた。

「ねぇ、モブコ。よかったらアイス買ってきてあげようか?」

「…アイス?」

予想していなかったワードが出てきて思わず素っ頓狂な声が出た。

「そう、高いやつ。ダッツとかさ、ここまで頑張ったご褒美で。今日食べられなさそうなら、別の日に食べていいから。」

「…じゃあ、ダッツのクッキークリームので…。」

「わかった。じゃあ、ささっと買ってくるね。まだ見学してたかったらこのテントスタッフさんいるから居てもいいけど、外に居られないくらい悪化したらすぐスタッフさんに言って、合宿所の中に入ってね。」

「はい、あの、すみません。」

「もう、こういう時はありがとうでいーのよ。それじゃ、買ってくるね。」

私に笑いかけてそういうとトレーナーさんは買い出しに行った。目の前では他のウマ娘達が走り込みをしたりしている。私はそれをテントで見ている。体を動かしたい気持ちはあるが、肝心の体は怠く重い。

私は恵まれている。友達は…あの芦毛のお尋ね者と同室のトコトコさんしかいないが、フジ寮長には以前貧血を起こした時や夏合宿で体調を悪くした時も気にかけて頂いたし、トレーナーさんはお世辞にも扱いやすいタイプのウマ娘とは言えない暗い私に対してもいつも親身に接してくれる。あのゴルシさんもおちゃらけた奴だがいい子なのはここ数年で充分わかった。

なのに私はなかなか結果で返せない。重賞入着は果たした。だがこの先に行ける実力がまだ無いことはアイビスサマーダッシュで身をもって理解した。万全のつもりで挑めば重賞で1着を必ず取れる訳では無いのだ。秋に挽回するため頑張っていたら、このザマ。私は何もかも足りない、ダサい。

「(情けない…。)」

あまりに自分が惨めで手元のタオルを握る手に力が篭もる。

私は

「ハイサ〜イモブコちゃ〜ん☆調子はいかが〜☆」

「…良くは無いです。あと、ゴルシさんの顔が近くてビックリです。」

シリアスな思案してる時にノリが軽いゴルシさんが顔を覗き込んできた。近い、顔が近いよ。

 

「そりゃ救護テントにいるんだからそうだよな。そんなお前に贈りもんだ。ほらよ。」

「あっ、ポ〇ジュース…。」

ゴルシさんは私にジュースを手渡すとさっきフジ先輩が座っていた私の右隣のパイプ椅子を引きずってさらに私に近づけて座ってきた。そして三〇矢サイダーを開けて飲んだ。様子見に来てくれたのは嬉しいけどこの子トレーニングは…前も勝手に焼きそば屋さん手伝ってたらしいし、今更な心配か。言った所で戻るタイプじゃないし。

「だから近い、脚当たるんですけど。……これ、好きなの覚えてらっしゃったんですね。」

「お?あぁ、よく買ってるだろ。ほら、最初の合宿の時も買ってたし。」

「ああ。そういえば…。」

最初の合宿に途中合流した日に買い物に誘われた時に買ってたな。まあ学校でも買って飲んでたの見かけてただろうけど、1年の時のことよく覚えてるな…。

「最初の合宿のこととか、よく覚えてらっしゃいますね……なんか、すいません。わざわざこんな…私のために。」

「…なんだよ〜萎らしいなぁ。いつものキレキレツッコミくれよ〜。あたしとお前はダイビング中船員の手違いでサメのいる海に取り残された時、数少ないグミを一緒に分け合った仲だろ?」

「…すいません。」

「…どうしたんだよ、本当に。夏場に色々立て込んで体調も気も滅入っちまたか?」

ゴルシさんはそう言った後ペットボトルの蓋を閉めて長テーブルに置くと、体の向きと椅子の位置を変えた。そして私をゴルシさんと向き合う体勢にさせてきて、また顔を覗き込んできた。

「だから近い……まぁ、そうですね。立て込んでたのは合宿に、サマースプリントシリーズもあったので…スプリンターの子は割とそうなんですけど、私の体が追いつかなかったみたいで…。」

「モブコ夏苦手だよな〜まあ夏じゃなくても貧血でぶっ倒れてゴルシちゃんがおぶって運んだこととかあったけど!」

「…その節はどうも。…アイビスサマーダッシュ、入着は出来ましたけど、反省点もいっぱいあって…秋レースで挽回してこうって思って…。でもこんなザマになっちゃって…情けなくて…。」

 

「なんかさ、お前焦ってるか?」

「え?」

急に真面目な顔になったゴルシさんにそう尋ねられ、ドキッとする。

「いやなんか、もうすぐ爆弾が爆発するのに爆弾処理が終わらなくて焦ってる爆弾処理班みたいな顔してっから…。」

「なんですかその例え…ちゃんと、結果を示したいんです。寮長とか、トレーナーさんとか…一応、ゴルシさんも…恩がある人達に返したくて…。」

話しながら鼻の奥がツンとしてくる。ダメだ、本当に気が滅入っちゃってる。

「だから、私…頑張りたくて…でも、今日は頑張れなくなったから…みじ、め、で…。」

とうとう涙が出てきてしゃくりあげてしまう。何泣いてるんだよ私、さすがのゴルシさんでも困るでしょ。慌ててジュースボトルを置いてタオルで涙を拭いてもまた涙が出てくる。そんな自分が情けなくてまた涙が出る。もう今日は本当にダメだ。

「おいおいそんな乱暴に拭くなよ〜泣いたって別にいいからよ、ゴルシちゃんの肩で泣け〜。」

ゴルシさんは私をそう宥めながら自分の肩口に寄りかからせてきた。

「服、よ、ごれますよ。」

「いいよ、晴れてっからお前の涙くらいすぐ乾くし。」

「…きっ、たな。」

私の悪態もよそにゴルシさんは私の背中をポンポンし始める。

「私、赤ちゃん、みたい、です。」

「いいじゃねえか、たまにはオギャッたって。…あたしは別に、お前に対して見返りとか、御恩と奉公とか求めてねぇから。まあなんか貰えたら嬉しいけどよ、そのために絡んでる訳じゃねぇし。走ってるお前の事もまあ気に入ってるけどさ、こう、やっぱ今日みたいな時に頑張んなきゃとか考えてたら、逆にフジもお前のトレーナーもゴルシちゃんも心配してよくねぇだろ?いーんだって別に。ちょっとくらい休んだって。頑張るとか気が向いてる時でいーんだよ。あたしも今日サボりでここ来たし。」

「…怒られますよ。」

「べっつにゴルシちゃんはそんなん気にしねえからい〜んです〜…だからよ〜、真面目ちゃんもいいけど、今は結果とかさあ、追い求め過ぎず肩の力抜いたらって話。…それによ。負けは負けだったけど、アイビスサマーダッシュのお前、カッコよかったぜ?」

「見、たんですねレース映像…そういう形容、の仕方は、家族とトレーナーさん以外には、初めて、されたかもしれません。」

「結構いわれてるじゃねえか!…後で目ェ冷やせよ。」

「…はい。」

今日のゴルシさんはなんか真面目だ。いつも仏頂面の奴が泣いてたらそりゃそうか。

 

 

「…まだ、背中ポンポンするんですか?」

「さっきより落ち着きはしたけど、こんなナーバスモブコちゃんを放っておけるほどゴルシちゃんは薄情モンじゃねぇからな。」

「…トレーナーさん帰ってきちゃいます。ってかスタッフさんもいるし…。」

「いいだろ別に。」

ゴルシさんがよくても私が恥ずかしいんですが…。ま、たまにはこういうゴルシさんに身を任せてもいいか…。

「あ、そうだ!お前が元気になるように今からあたしのトレーナーの髪ワックスでサイヤ人みたいにトゲトゲにしてきてやろうか?!」

「結構です。」

…やっぱあんまりこの子いつもと変わらないかも。




ゴルシは夢女適性Aだからね…

併走トレーニング回でモブコと併走して絡んで欲しいウマ娘は?

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