となりのゴルシさん   作:天むすちゃん

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寮長視点の比較的ほのぼの話が先に書けたので先にこちらUPします。こないだ傷心オリモブウマ娘書いたら心が自分でちょっとしんどくなりましたのでガス抜きに。(言い訳)
ちょっとだけウマ娘の世界観独自解釈描写があります。


となりの寮長さん2

蛍光灯が淡く光っている。栗東寮の北方にある薄暗い廊下を進んだところにある、自販機コーナー。

なぜか設置場所があまりに日当たりが悪く、また奥だったために、人気がなかなかない。

時たまに部屋が近い子達が飲み物を買いに来る時以外は、一つの自販機がぽつんとあるだけの場所になっていた。

 

彼女が入学してくるまでは。

 

「…もう、こんな所で。」

黒髪のウマ娘が座ったまま眠っている。自販機脇のベンチで、とても静かに。手元にはノートとスマホが。

「……前に静かなところならどこでも寝れるとは言ってたけど…疲れてたのかな。」

同室相手のトコトコから夕飯時から会ってないと聞いて、以前夏合宿中思い詰めた様子で姿を消したこともあったし万が一があるとと思い、もしかしてお気に入りのここにいるかなと思って足を運んだら、大当たり。

 

この子はただでさえ起きていても話しかけられない限りは置き物みたいに静かだから、こうやって目を瞑ってじっとしていると本当にリアルな人形みたいだ。化粧抜きでも一歩も外に出てないみたいにその肌は青白く、いつもの悩ましげな瞳は伏せられている。

時間帯的にもそろそろ起こした方が良いだろうか?でもなんだかこんなにすやすや眠っているのを起こすのも申し訳ないな、なんて考えつつもふと視線をずらすと、右手の人差し指に絆創膏が爪を覆うように貼られているのに気づいた。

 

「(爪を深く噛みすぎたのかな…)」

時折見かける彼女がふと爪を噛む姿を思い出す。ふと不安になったりストレスが溜まった際に彼女がしばしばやってしまう癖。爪や指が傷ついてしまうと見かけたらやんわり止めてはいるのだが、どうやら幼い頃からの無意識な癖らしいのでこればかりはその都度周りがそっと止めるしかないのだろうか。サイレンススズカの左旋回癖のような、ウマ娘という種族特有の個々の癖や好き嫌いは人間と比べると顕著で独特であるという学説もあるらしいけど、なんだかスズカのそれに比べると明らかに自傷じみているからなあ。

 

それで事実何度かこうして深く噛んで指が絆創膏で手当されているのを見かけている訳だし、

几帳面で真面目な子ではあるのだけれど、こういうところを見るとなんだか、やっぱりちょっと危なっかしく感じる。

 

危なっかしさの方向性は少し違うけれど、先月にもこんなことがあった。

 

「新潟で怪我人?!」

「ああ。先程連絡がURAから生徒会に来た。一名怪我をしたと。」

 

複雑そうな顔でエアグルーヴにそう告げられた。

「その、栗東寮のモブコが…お前、何度も話したことがあるだろう?」

レース中の接触や転倒だと、私はこの時は思っていた。

「モブコ…あぁそうだ、今日は雪うさぎ賞…トレーナーさんと連絡は?!」

条件戦や未勝利戦のため新潟に向かった子達の中に彼女の名前は確かにあった。怪我の報告を聞くのはいつも肝が冷える。

「現地の病院で精密検査を先程終えて、大事には至らなかったらしい。」

「それはよかった…ところで怪我の原因と箇所は?」

「その…だな…。」

一瞬言い淀んだあと、エアグルーヴは話を続けた。

 

「ゲート入りを渋る他のウマ娘を待っている間、緊張のせいか、どうやら狭いゲート内をかなりドギマギした様子で右往左往していたらしく…先日新潟は雨だったためにバ場が湿っていたせいもあるのだろうが…足を滑らせゲートの壁に頭を殴打…競争を除外され病院に搬送と言った感じだったらしい…。」

「……えっ、とつまり、それは…レース中の転倒とかではなく…出走前に緊張であたふたしていたら運悪くゲートの中で足を滑らせて…頭をぶつけて走る前から怪我をしてしまった、ということかな?」

「…ゲート入りを渋るタイプでも無く、コンディションは良好だったらしいのに、なぜ怪我で競争除外になったのか最初は私もよく分からなかったが…詳細を聞いてみたら…なんともまあレアなケースを聞いた…。」

「……とりあえず、その…本人への連絡とその雪うさぎ賞含め今日のレース全般ビデオで確認しておくね…。」

 

「いやあ、色んな意味であれはびっくりしたな…。」

そんな事を思い返して小さく独り言を呟く。

そしてやや下向きになっていた目線を目の前の彼女の顔に戻して、しゃがみ込んだ。

 

「…色々不器用というか、不運というか、意外と繊細で抜けてるというか…悩んでたりストレス抱えてる時に頼られるのは別に迷惑でもなんでもないんだけどな…。」

思わず本心をボソリとそう呟く。もう少しこの子が生きやすくなれるといいのにな、なんてことを思いながら。いや、そのために私や彼女のトレーナーや色んな周りの人がいるんだけど。

 

「ん…ん~?」

そんなことを考えていたら彼女は瞼の睫毛を震わせて、目を覚ました。

「あ、ごめんね、起こしたかな?」

「…え、あ、フジ先輩、えと、おはようございます?こんばんは?」

「ふふ、おはよう眠り姫さん。」

彼女は目が冴えて私のことを認知し、照れてあたふたし始めた。

「え、ねむ、え、あ、え。」

「はは、可愛い。」

 

 




ぶっちゃけモブコさん、真面目ではあるけど正直ゴルシとは別ベクトルでやや気性難です多分。ゲートは結構すんなり入りますが、シャイだし意外とすぐテンパるし。初期は尚更。

併走トレーニング回でモブコと併走して絡んで欲しいウマ娘は?

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