となりのゴルシさん   作:天むすちゃん

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ゴルシ視点で過去→19話辺りまでの話。今回実在バモチーフのスペシャルゲストさんが名前伏せて登場します。だーれだ?(しらばっくれ)あと弊社オリモブウマ娘さんは相変わらずちょっと暗い。


となりのゴルシさんsideG(後)

「…その…やっぱり大袈裟というか、過保護過ぎません?…いや、確かにね?夕食時間過ぎてもあんなとこいた私が悪いですよ全て。いやでも…寝るのも一緒っていうのは、ちょっと…。」

「いいじゃんか〜たまには。アタシが一緒に寝たかったら布団に潜り込んでいいし、鮫をふらせたかったら鮫をふらせていいってゴルシちゃん憲法第百一条で定められてるんだからよぉ。」

「…なんですかその憲法…。」

ちょこんと布団の中のアタシの手中で、じっとしていたモブコはそう言いながら少し白けた目線を向けた。

 

いなくなったモブコを見つけてから、とりあえず手を引いて帰ってきた。まあ真夜中の無断外出って訳ではなかったし、フジとエアグルーヴからは軽い注意のお言葉で済んだ。ぶっちゃけ最近元気なさげではあったし、変にキツく言うのもこういうタイプは逆効果なの目に見えてるしな。

(あとスズカとブライアンもアタシらが合宿所に帰ってきた10分後くらいに戻ってきた。時間忘れて外で走ってたらしい。だと思った。)

 

その後も散々トレーナーが構い倒してたし、まあ周りに心配されてたって言うのは本人もこの時理解してくれたと思う。…多分。散々根強い自己否定っぷりを見てきたから一発で根本的解決は難しいけど。まあそりゃそうよな。

ちょくちょく聞いた話限りトレセン入学前は少なくとも学校ではろくな思い出なかったみたいだし。なんか習い事関連は学校外で楽しかったみたいに言ってたけど…

六年間ほぼ無視か精神的サンドバッグの二択はキツいし蟠り残るわ誰だって。コイツなんにも悪い事はしてないと思うけど。くそ真面目で死ぬほど他人の顔色に敏感なコイツに限って。いや、だからこそだったのかもしれないけど。

 

そしてなんやかんやアタシは夜、コイツの布団に潜り込んだ。え、唐突にスキンシップで布団入るの脈絡なくねって?脈絡とかリアルで考えんな、世の中常にフィーリングをナンバーワンに考えんのが一番なんだよ。コイツとアタシの仲だし。ナンバーワンが一番ってなんだ?まあいいか。

 

「…まあいいや。」

そういうとモブコはアタシの胸元で静かに収まって寝た。すぐスヤスヤと寝息が聞こえ始めた。寝つくの早くね?いや親密度上がってる証だからいいのかもしれないけど。

 

「…肩細っ。」

眠った体を抱き寄せる。いつものことだけど本当に体つきが華奢だ。ライス辺りも華奢だけどコイツはタッパはそこそこ平均な上でこの体格だからなんだか心配にもなってくる。スリーサイズとか体重とか聞いた時ちょっとびっくりした。ただでさえ小食なのに近頃は暑さのせいでまた食が細くなったみたいだし。心做しか少しだけ痩せた気がする。

 

顔を覗き込むとフェイスパウダーやらマスカラやらがとれた白い顔が目を閉じた人形みたいにそこにあった。右手からはあの傷痕が少し見える。こうやってみると何だか本当によく模倣された壊れやすい人形かオブジェみたいに見える。バカな思い込みだとは自分でも思うけど、なんだか不安になってきてつい手に力が入る。

 

いつもコイツは勤勉で、何も話しかけないでいるとただじっとしていた。頭も良いほうだと思う。ただよく言えば一本気だけど嘘は下手だし、話すのは苦手だし、想定外の事があったり不利になると露骨にテンパって視野狭窄になる緊張しいだし。

いつだったかエアグルーヴも、「あいつは真面目でマメではあるのだが…なんというか、真面目過ぎるあまり色んな物事に対する心配があからさまにレース中にも出ていて、却って柔軟性や冷静さにやや欠けている局面があるようだ。」とかなんとか言ってたし。

 

もうちょい肩の力抜いて、のらりくらり生きてみたらいいのに。それが出来たら苦労しないって話なんだろうけど。走りを辞めるとか、今やっている何かを切り離してどうにかなる問題でもなくて、コイツのこれはもっと根強い複雑な、呪いみたいに感じる。

「…そう簡単にはいかないか。」

傷痕を少し撫でてから起こさない程度に言葉をぼそりと呟いた。だからこそこんな日くらいは、あんなただ静かに俯むかないで、もっとなりふり構わず泣き喚いて欲しかったなんてのはわがままだろうか。…いや、そんな分かりやすくて単純にはなれない故に辛いんだから、無理か。まあいくら時間がかかっても待つ気満々だから別にどうってことないけど。

「…アタシも寝るか。」

布団を手繰り寄せ直して、向かい合ったまま横になる。そのまま目を閉じて、その日は二人で眠りについた。

 

その後はまあストレス溜まって変になってたこともまちまちあったけど、基本はなんやかんや楽しく過ごしていたと思う。デ〇ズニーシー行ったし。ミ〇キーの前でブリッジしたらちょっと怒られたけど。

 

「…やっぱまあたまにはこうなるか。」

とは言いつつだからキレイさっぱりとは行かないのが世の常でありモブコさん。横で薄ら隈のある寝顔がある。ここ数日夢見が悪く不眠気味な上同室が不在。しかも夢の内容は小学校時代のいじめ。もれなく今週は絶不調気味だった。

「…ほんとキャパオーバーになる前に頼るの下手だな。」

性格的に他人に心配かけたくないからこうなるんだろうけど、コンシーラーで隈は隠せても不調は隠し切れないとなぜ気づかないのか。ババ抜きでババ引く度八の字眉になってる嘘ド下手くそウマ娘なんだからそこはいい加減隠すの諦めて欲しい。

「…しょうがないやつ。」

数日ぶりにまともに寝て安心している様子の寝顔をまじまじと見つめる。いまのところ悪い夢は見ていないのか顔つきは穏やかだ。

 

「…こいつ唇綺麗な形してるな。」

ふと目についた口元。白みがかったベビーピンクの唇がなんとなく目に入った。本人は化粧抜きで人前に出るのは最小限にしたいらしいけど、普通に今の感じでも大して変わらないと思う。飽くまで個人的な見え方ではあるけど。

淡いナイトランプの明かりの中で、胸元で丸くなって眠っている姿が、懐いてくれた拾われ猫みたいで可愛い。

…なんて本人に伝えたら目線もろくに合わなくなりそうな事を考えながら寝顔をまじまじ見続ける。

 

「…ん?」

何でアタシ、こんなに至近距離に近づいてるんだ?

「…アレ?」

なんか唇と唇くっつきそうな距離、に、

「…な、なにしてんだアタシ?!」

え?何気なく顔見てただけなのにモブコが寝てる時になにしてんだマジ?え?

 

 

『もうそれはライクからラブの域に行くレベルでモブコさんが好きになったのでは?それで思わずキスしたくなったんでしょ多分。』

「あっさり言ってくれるなオイ。」

電話口から呆れたような、慣れ親しんだ鹿毛の優等生の声が聞こえる。今は絶賛留学中の、同期で仲がいいやつの一人の。

『貴方がなんでそんな事しちゃったのかなって相談してきたんでしょ〜。というか、本当に気持ちが定まってないんですか?どう思ってるんです彼女に対して?』

「え〜、そりゃ……まあ出来れば、幸せになって欲しいよ。無愛想キャラみたいに思われがちだけど、意外と可愛げあるしいい奴だし、出来ればアタシの近くで穏やかに生きて欲しいよそりゃ。」

『…出来れば自分の近くで、っていう備考が付いてて、しかも無意識にマウストゥマウスしたいと思っちゃう時点で私はそれ友情愛の域からははみ出ちゃってると思いますよ。』

「…やっぱりお前もそう思う?」

『えぇ。』

浅漬けみたいにあっさりした返答が返ってくる。

「正直アタシも今日一日色々考えててさ、やっぱりこう、なんかその、アイツに対するそういう意味での欲求が出てきたっつうか、自覚したっつうか、その…そういうことが出来る想『あー!そこまで生々しい話題は今言わなくていいです。』…ごめん。」

『…間接的な関わりしかありませんけど、彼女…モブコさんは貴方のノリを全面的に許容的できる数少ない私以外の人物…というかウマ娘なのは知ってますし、正直私も夏合宿に布団潜り込んだ話とか諸々小耳に挟んでたので、まあそこまでは想像行かなくてもかなり気に入ってるとは察してましたよ。パーソナルスペースが狭いのはまあ他の方にもそうですが、あの子に対しては傍から見たら正直重症でしたし。』

「重症って手厳しいな。…まあとりあえず、ちゃんと二人きりになる機会作って、話してみようと思う。どう返答されるかはさすがのゴルシちゃんもわかんねぇけど。こういう話題ばっかりはモブコがどう返すか前例を見れてねぇから。でもまあ、あのネガティブちゃんにもちゃんと伝わるようにしっかり話すよ。」

『…それがいいですよ。…大丈夫だと思いますよ、あの子は物静かですけど、誠実な方ですから。同性に対する恋愛感情の許容云々はまあまだ窺い知れませんが、きっと真剣に受け止めてくれますよ。それに、あんなに几帳面な方がもし貴方と一緒になるなら私の仕事も減りそうで助かりますし。』

軽口を叩きながらも穏やかに諭す声がなんだか耳に心地良い。コイツはいい友達だ。

「…あんがとな。」

『いいってことですよ。』

「そんじゃ、そろそろこっちは寮の中入らなきゃいけねぇ時間みたいだから電話きるわ。あ、あと、来春のドバイ土産楽しみにしてっから。」

『もう、わかってますよ、出国前にも言われたんですから。それではまた。貴方みたいな全身超合金に限ってないとは思いますが、風邪には気をつけて。』

「おう、またな。」

電話を切ってスマホをポケットにしまい、寮へと踵を返す。頬を横切る木枯らしは冷たいけど、なんだか緩やかにも感じた。

 




日本ウマ娘トレーニングセンター学園 公式戦自己ベスト記録帳
在籍番号■■■■ モブコ
芝1000 芝1200
53.9(’▇ルミエールAD、1着) 1:08.5(’▇北九州短距離S、2着)
芝1400 芝1600
1:30.4(’▇〇月×日 東京1勝クラス、16着) 1:45.0(’▇五頭連峰特別、16着)

これ補足しておくと新潟千直はレコードが53.7なのでレコード手前くらいまでは早いのに対して、
1600のタイムはもうヘロヘロでやばいです。大差負け。
史実ゴルシの共同通信杯(東京芝1800)のタイムが1:48.3なので(東京と新潟だとコースの地形が違うので100%同一には比べられませんが)
ものすごく単純計算するとモブコさんがもしまた、何かの間違いが起きて1600走るとして(多分ないだろうけど)ゴルシがモブコの200m後ろからスタートして併走してもゴルシの方がゴール速いかもねという。
多分ゴルシやルドルフ会長辺りと比べたらモブコの持久力ってゼンマイ式の玩具くらいなんだろうなって思います。
いや真っ直ぐ千メートル走ったら速いのですごい速いゼンマイなんですけど。
ただもうちょい裏設定言っておくと中山の成績と夏ウマ娘×のせいで第2のカルストンライトオにはなれなかったね…千直だったらね、枠関係なく(強調)成績優秀なんですよこの子。それ以外はその…コーナー膨らむしスタミナぜんまいざむらいだし夏バテ酷いし…はい…
先祖にクォーターホースでもおるんか?

これでもしこの某実在馬モチーフ鹿毛ウマ娘さんが公式で実装されてキャラ違ったらどうするのかって?どうしようもないね…。

併走トレーニング回でモブコと併走して絡んで欲しいウマ娘は?

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