となりのゴルシさん   作:天むすちゃん

35 / 35
本当に久々の更新です。すいません。
久しぶりの割に終始モヤッとしたやや暗い話です。すいません。gls割と真面目かもです。
キングとデジたんは匂わせ程度の描写で出てきます。


となりのゴルシさん25

三月、中京レース場、芝1200。短距離GⅠの一つ、高松宮記念。

確かにいつか私の隣にいた見知った二つのシルエット。

見えないかなと思いつつ、私がパドックへ控えめに手を振ると、小柄な桃色のふわりとした髪を揺らした彼女はあからさまに嬉しそうにした。彼女は相変わらず目がいいみたいだった。

キングさんも少し、目配せをしていた、たぶん。

 

18人のウマ娘がゲートに並んで、薄曇りの刹那を駆けた。

観客席側に私はいた。喧騒は遠いけれど、確かにそこに電光石火の熱はあった。風が吹き抜けて、大衆が湧く。ゴールまでは中長距離に比べるとすぐで、見る側に回ると体温の生々しい白昼夢か幻のようでもあった。

 

ここに立っていたいと願ったウマ娘は何人いるのだろうか。それは叶わず、私と同じようにどこか群衆やスクリーンの視聴者Aになった少女が何人いるのか。

ふとそんな水を差す自分もいたが、なんだかそれをこの場で考えるのは本当によくない気がして、一旦脳みそを裏返しにしておくことにした。

 

悪く言えば逃避だと思うけど、嫌われ者だった時のライフハック、なんて、ブラックジョークにもならないかな。

 

いや、もしかしたら、本当は愚かな私が傷つきたくないだけだったのかもしれないけれど。

 

 

「…なんか、調子悪いな。」

体が重い。また食も細くなった気すらする。ただでさえ食べられないのに。

ここ三週間くらい、少しずつなにかが自分の体の中で下降するような、力の無くなる心地がする。

季節的な寒暖差によるものであってほしいけれど。虚弱体質のせい、とは違う“何か”が背後に迫る感覚がする。

「……ガタがきたのかな。」

人気のない休憩スペースでぼやく。なんだか元々あってなかったようなものに対して。

恵まれているとは思う、祝福もされてはいる。いつだって。トゥインクル・シリーズでオープンタイトルを取ったウマ娘だという経歴があれば将来的な活路、進路は見い出せはするレベルなのだ。十分立派とその道の知識がある人なら口を揃えて言うけれど。

そうかも。そうだ。そうだ。

周りにも恵まれている。勿体ないくらいに。最近は特に。幸せに生きた気はする、昔に比べたらだいぶ。

そうだけど。

 

寂しさと孤独感にはいつも静かな音が鳴る。

夜風の静かに吹く音と、寮内の誰かの弾んだ声が遠くに置かれているような錯覚。

寮の裏側でしかないのに、今は地球の奥深くみたいに、宇宙の底みたいに静かだ。

暗くなってきた頃特有のひやりと頬に這う感触が、なんだか慣れ親しんだ何かに感じるのは、私が寂しい奴だからだろうか。

 

「あ、いた。」

「……どうも、こんばんは。」

喧騒から離れたはずの薄暗い裏庭で、白銀の髪を揺らした長身の見知った陰、貌が現れた。

しゃがんでぼんやりした私の頭上で、キャンプで無垢に笑う少年のような表情をして。

「祝勝会、楽しかったな。」

当たり前のように、目線を合わせてしゃがみこんできた。こういう目の合わせ方をされると、なんだかよく分からない気持ちになる。

「…この時期に勝った後輩達のまとめてって話で、私、知り合いでもないのに混じっちゃっていいのかと思いましたけど。意外と皆ああいうとこ集まりますよね。フレンドリーというか、なんというか。…あの子達、嬉しそうでしたね。」

「な。あ、キングがお前のことさっき探してたぞ。なんか話したいみたいだったし。いつの間にかいなくなってたから、アタシもてっきり先に部屋行ったのかと思ったら、ここいたから。」

「あー、なんか、すいません。もうちょっと外の空気吸ったら中に戻ろうとしてたんですけど。キングさんには私から連絡します、後ほど。」

 

寮の集まりでなんとなくその明るい雰囲気に交じってはいた。さっきまで。

クラスの子とかと喋ったり、ジュースを飲んだり。

でも正直ああいう場だと、ゴルシさんはいつも周りの人と話しているから、邪魔もいやだし、基本隅にいたのだけれど。

あ、そういえば、キングさんとデジタルさん探せなかったな。デジタルさんはもしかしたら、あの場にいなかったのかもしれないけど。

 

 

「ちょっと隅にいたと思ったらすぐまたどっか行くよな、モブコ。」

「いや、なんか少し、気分的にまた一旦一人になりたくて。あ、いや、クラスの子とかとも普通に楽しく喋れた、んですよ私。ちゃんと、それは、本心にあったっていうか。」

「あー、や。これ、咎める流れではないから。別にヤなことがあったとかじゃなくて、だよな?」

「あ、はい…。」

どうやら私の説明がなくても、彼女はそこの考えに辿り着いていた。

なんだか、気遣ったつもりが、私結局嫌なタイプの子になってないかな。

 

「……ゴルシさんって人がいいですね、やっぱり。わざわざ、その。話に来てくれて。」

こんな回りくどくて、嫌味ったらしい話をする奴だっただろうか、私は。

でもさ、正直に不調だって話して、それでどうする訳?自分の事ってどこまで、どう話したらいいのか時々わからなくなる。こういう時どう話せばいい?

「そうか?べつに普通に、誰かと話す時はこんなもんじゃないか。お前もアタシも。なんなら、お前の方が気遣うタイプだろ。」

あくまでいつも通り、彼女はそう言葉を返してくれた。

「……私、周りに思われてるほど優しくないんですよ。」

「え?」

「なんか、皆私が親切で清いみたいに言ってくれますけど。ただ、その、本当は傷つけられたくないだけなんじゃないかなって。嫌われたくないっていうか、結局、そういうのって自己防衛の手段だったんじゃないかなって、この間は思ったり…。」

何を口走っているのか。酷いな。気づいて会話を途切れさせようとした時にはこうなった。

やってしまった。

「あ、なんて、そんなこと貴方相手に急に言われてもって話ですね、ごめんなさい。…先戻りますね。」

一旦部屋に帰って頭を冷やそうとした。すっと立って立ち去ろうとする。そうする以外の選択肢は要領が悪いバカな私には思いつかなくて。

「あ、いや、おい。」

当然だけど、彼女はすぐ私に追いついて、私の情けなく細い腕は掴まれた。あーもう、なんでこういう時も上手くできないの、私。

「いや、いいですよ。ほんと。だいた「いいだろ、別に。」

「……は?」

「優しくなくてもいいよ。多少は感情任せでも、わがままでも。悔しかったりモヤモヤしたら誰だってちょっとはそうなるから。罰は当たらないだろ、悪戯に傷つけた訳じゃないから。

4.3光年の生涯さ、上手く処理できないこともあるだろ。今までお前我慢してたよ、ちゃんと。だからいいよ、ちょっとくらい。」

飽くまで声色と表情はいつも通り飄々と余裕がある感じなのに、どこか私の腕を掴む手は固かった。

「…なんですか、それ。ていうか、光年って寿命の長さの単位じゃないし。」

頼りない私の声帯から出た震えた声が、夜の冷えた空気に舞って、ポンと消えた。




次の話の事ははっきりしていないですすいません。
更新いつになるかもわかりません、本当すいません。
でもこのシリーズの話久々に書き上げて良かったです。

併走トレーニング回でモブコと併走して絡んで欲しいウマ娘は?

  • アグネスデジタル
  • ナイスネイチャ
  • ハルウララ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ウマ娘に転生したけどやべえのと同期なんですが…(作者:sannsann)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

ウマ娘にTS転生して、走るの たーのしー!って喜んで。▼レースに勝って褒められてチヤホヤされて、それに味をしめて。▼どうせなら無敗三冠…いや、最強のウマ娘目指すぜってなって。▼けどなんかやばいのが同世代にいて絶望して。▼本人なりにあの手この手でなんとか勝利を目指し、最強と呼ばれて鼻高々したいが為に、四苦八苦しながら頑張るTS転生オリウマ娘の話。▼競走成績とか…


総合評価:12098/評価:8.71/連載:37話/更新日時:2023年11月18日(土) 21:03 小説情報

桜の姫がターフを駆けた軌跡(作者:夜刀神 闇)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

競馬ファンである女の子が2020年代の競走馬に転生する物語でございます。▼ドゥラメンテ産駒、しかも白毛の牝馬として。▼ターフを駆ける、競走馬として。▼いつか、誰もいない先頭の景色を見るために。▼チート過ぎても面白くないのでそこそこ競走馬としての宿命みたいなのを背負わせてます。ごめんね主人公、そして主人公が生まれたせいで勝てなかったコたち。▼あと、鞍上と馬の関…


総合評価:1777/評価:8.23/連載:38話/更新日時:2026年04月21日(火) 20:07 小説情報

【RTA】鬼滅の刃RPG『長い長い人の歴史のほんの一欠片』獲得チャート(作者:バブ辻オギャン)(原作:鬼滅の刃)

 縁壱は言った、「私たちの才覚を凌ぐ者が今この瞬間にも産声を上げている」と。▼ 「彼らがまた同じ場所まで辿り着くだろう」と。▼ そして、本当にそんなのが生まれてしまった。▼ ▼ 無惨はキレた。▼ 主人公イラスト(作:宙良もよ様)。▼【挿絵表示】▼【挿絵表示】▼


総合評価:22278/評価:8.7/連載:61話/更新日時:2026年03月24日(火) 16:31 小説情報

【完結】陸八魔アルに転生しました(作者:黒ヶ谷・ユーリ・メリディエス)(原作:ブルーアーカイブ)

そして失敗して反転して嚮導者になりました▼2026年05月03日(日) 18:00 本編完結しました▼2026年05月07日(木) 18:00 嚮導者の後日談完結しました▼匿名設定解除に合わせてPixivにも投稿を開始しました▼https://www.pixiv.net/novel/series/15866161


総合評価:11140/評価:8.87/完結:9話/更新日時:2026年05月08日(金) 18:00 小説情報

進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する(作者:霧夢龍人)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

なお、しっかりと飼い主♀に襲われる模様。▼カクヨム、なろうでも連載してます▼R18版投稿しました↓↓↓▼https://syosetu.org/novel/410361/#


総合評価:10294/評価:8.45/連載:95話/更新日時:2026年05月06日(水) 16:41 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>