そのポケモンたちを少しずつ成長させている。
「ミズゴロウ!みずでっぽう!」
「かわせ!」
ポチエナは右へ飛びのいてかわそうとしたが、みずでっぽうが左の後ろ脚を捉えた。
「決めるぞ!たいあたり!」
体勢を崩したポチエナに向かってミズゴロウが駆け出す。
「負けるなポチエナ!かみつく!」
ポチエナも最後の力を振り絞ってミズゴロウを迎え撃つ。しかし踏ん張りがきかず、たいあたりを受けたポチエナが突き飛ばされた。ポチエナは立ち上がることが出来ない。
「ポチエナ戦闘不能、ミズゴロウの勝ち!」
審判であるクレアの掛け声で試合は終了した。
「ありがとうございました!ミズゴロウ強くてびっくりした!」
「こちらこそありがとう、ポチエナのガッツすごかったな!」
少年と挨拶を交わす、その横で彼の母親も頭を下げていた。
「お姉ちゃんも今度バトルしてください!」
「えぇ、望むところよ。また会いましょう」
クレアは手を振って応えた。
ホウエン地方では、15歳未満のポケモントレーナーがポケモンバトルをするときには必ず保護者が付き添わなくてはいけない決まりになっている。また15歳になるまでは自分のポケモンを持つことが出来ないため、形式上は親のポケモンなどを借りてバトルの経験を積むということになる。
アオイとクレアは主にコユリ博士の研究所内でポケモンを借り、バトルをしていた。
「良いバトルだったわね、ミズゴロウのみずでっぽうもかなり安定してきたように見えるわ」
「そうだろ?よく頑張ったぞ」
キズぐすりを吹きかけながらミズゴロウの頭を撫でる。宿泊所前の広場で意図せずに放って以来、旅の道中でずっとみずでっぽうの練習をしていた。最初の数日は3回に1回成功すれば良い方だったが、トウカシティまでもう少しという今、成功率は80%以上にまで高まっている。
「でもあの少年も強かったな、10歳…いやもっと幼いかな?博士の研究所でポケモン借りてバトルしてた時のこと思い出したよ」
「私もよ、懐かしいわね」
クレアがクスクスと笑った。
「あの、すみません」
昼食を終え、トウカシティに向かって歩いていたところで大人の男性に声を掛けられた。その男はアオイと同い年くらいの色白の少年を連れており、どうやら彼の息子らしい。
「2人は旅のトレーナーですか、良かったらうちの息子に旅の話をしてやってくれませんか」
話によると彼らは先ほどのアオイのポケモンバトルを見ていたらしい。息子も旅をしたいが勇気が出ないから同じぐらいの年齢の2人に後押ししてやってほしいのだという。
「うーん…」
アオイは困ったようにクレアと目を合わせた。
「僕らも旅を始めたばかりですし、旅に出る目的も人それぞれなので役に立つかわかりませんけど…」
アオイの意見にクレアも続ける。
「息子さん自身がどうしたいかがまず一番大事だと思います。」
「それはもちろんそうなのですが、ぜひ若者の目線で旅の魅力というのを伝えてほしいと思ってまして、若者同士だからわかることもあるでしょう」
父親が1歩後ろに立っている息子の方をちらっと見た、息子は何か言いかけていたようだが、結局俯いて黙ってしまった。
「ところでお2人はトウカシティに向かっているんですよね?」
「はい、そうですけど…」
「良かったら、今日はうちの宿に泊まっていきませんか?その先にうちの宿があるんです。年の近いお2人から息子にポケモンとの旅の話を聞かせてあげて欲しいんです。」
トウカシティ東のはずれにあるその民宿は、少年の祖父母が経営しているらしい。時間的にはなんとか今日中にトウカシティのポケモンセンターに到着出来ないこともないところではあったが、せっかくなのでアオイもクレアもお言葉に甘えることにした。
「でも…大丈夫ですか?」
アオイが少年の顔色を窺いながら心配そうに尋ねる。
「もちろんです。私が話すより、きっと年の近いお2人が話す方が良い。な、ほら自己紹介くらいしなさいって」
父親に促され、少年がやっと口を開いた。
「…スイと言います。よろしくお願いします。」
「良かった、俺はアオイ、そしてこっちはクレア。よろしくな」
「目と目があったらポケモンバトル!」って考えたら結構乱暴ですよね…