海を大地をポケモンたちと!   作:千月凪

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デボンコーポレーション

「え!タイスケさんあのデボンで働いてるんですか!?」

 アオイとタイスケはキャンプ場に向かって歩いていた。

「そうだよ、知ってる?」

「もちろんですよ!知らない方がおかしいですって!」

 アオイが有名なテレビCMのフレーズを真似した。

 ――デボンコーポレーションはホウエン地方 カナズミシティに本社を置くメーカーでモンスターボール、キズぐすり、ポケモン図鑑などと言ったポケモントレーナーのためのアイテムを幅広く設計・開発しておりポケモントレーナーで知らない者はいないほどの超一流企業である。――

「すげー…頭良い人だ…」

「いやいや、どういうイメージだよ」

 タイスケが茶化すように笑った。入社7年目になるタイスケは初めて新製品開発プロジェクトのリーダーを任されており、ちょうどカイナシティで行ったテストの結果データと試作品をカナズミシティの本社に持ち帰る道中だと話した。

「だからこれは本当に本っ当に大事なものだったんだ」

 タイスケが声に力を込める。眼を輝かせるタイスケを見てアオイも良いことをした、と嬉しくなった。

「じゃあさっきの2人組はそれを狙ってたってことですよね、中身は大丈夫でした?」

「キャンプ場に着いたらもう1回確認するけど、さっき見た感じ大丈夫そうだったよ。どうして私が今日ここを通るって知ってたのかわからないけど…」

 “アクア団”、2人組はそう名乗っていたがアオイもタイスケもその名前に心当たりは無かった。

 

 陽が完全に落ちる頃、2人はなんとかキャンプサイトに到着した。万が一アクア団の2人組が滞在していたら、と懸念していたがその心配は無いようだった。

「え、アオイ君カナズミシティが初めてのジムなの?」

 カレーをスプーンに乗せたままタイスケが目を丸くする。

「はい、訳あってトウカシティは通り過ぎて、カナズミシティが最初のジムです」

「へー、そうだったのかもう2個くらいは持ってるものかと思ったよ」

 タイスケは自分も元ジムチャレンジャーだったという。23歳の時にデボンに入社するのと同時にポケモンバトルは引退したらしい。

「4個目まではなんとか取ったんだけどね、バトルよりもアイテムの開発とかに興味が向いてデボンに就職することにしたんだよ」

 タイスケが足元の鞄に目をやった、再確認のしたところ中身は問題なかったらしい。今はバトルのレベルとかも私たちの時代より上がっているんだろうな、と呟いた。

「ところでその新製品ってなんなんですか?」

 アオイが何気無く尋ねるとタイスケは困ったように頭を掻いた。

「ごめん、そればっかりは企業秘密で恩人の君にもどうしても言えないんだ…」

 でも、とタイスケは真剣な顔で続ける

「でもきっとトレーナーの役に立つものだから、もう少し待っててほしい」

「わかりました、楽しみにしてます!」

森に入ってから2度もトラブルに見舞われたアオイはさすがに疲れたのか、食事の後アメタマがすっかり元気になっているのを確認してすぐに眠りについた。

 

「おはよう、朝ごはんできてるよ…って、なんだその頭」

「おはようございます」

 小さなポケモンが頭の上で一晩中暴れたかのようなアオイの頭を見てタイスケが笑った。

「デボンの製品に寝癖直しとか無いですか」

 寝ぼけ眼でアオイが言うとタイスケが顎に手を当てながら、なんでもなおしならあるいは…と笑った。

 

 朝食を終えるとキャンプ場を出発した、この調子なら昼頃には森を抜けられそうだ。

「出口にうちのマッスグマカーを呼んでるから私はそれでカナズミまで急いで戻ることにしたよ、あんなこともあったし安全に早く帰ってみんなにも報告しておきたい」

 タイスケは昨夜のうちにデボン社に連絡を取り、事情を説明していたようだった。“うちのマッスグマカー”という言葉にアオイは驚いたが、聞くと会社に専属のマッスグマカーがいるらしい。普段は私みたいなのが1人で乗ることは無いんだけど…とタイスケは笑った。

「良かったら一緒に乗って行く?カナズミシティまで3時間くらいで着くよ」

 歩いていけば2、3日の道のりになる。アオイは少し考えたが初めてのジムチャレンジに向けて道中もトレーニングをしたいと丁重に断った。

 

「アメタマ!でんこうせっか!」

 衝撃でひっくり返ったキノココが足をバタバタさせて起き上がると茂みの奥に逃げていった。

「アメタマもすっかり元気みたいだ、良かった良かった。昨日はありがとうね」

 タイスケが話しかけるとアメタマはニコッと笑った。

「あ!」

 アオイが指差した道の先は明るい陽が差し込んでいる。

「出口だー!」

 森を抜けるとすぐ近くにマッスグマカーとスーツを着た白髪の紳士が待機していた。

「お待たせしました、お迎え来ていただいてすみません」

 いえいえ、とドライバーが頭を下げた。タイスケが突然ビジネスマンの振る舞いになったのがアオイは少しおかしかった。

「お願いしたものは持ってきていただけましたか?彼は歩いて向かうらしいのでここで渡しておきたくて」

 ドライバーがカートの中からオレンジの包みを取り出してタイスケに手渡した。

「カナズミシティまでの道はもうタウンマップでわかってるかもしれないけど、ここを道なりに行くと左手に大きな湖があってそこを対岸に渡った先にある」

 遠くの方を指差しながらタイスケが説明するのをアオイはタウンマップと見比べながら聞いていた。

「あとはちょっと寄り道にはなるけど、こっちの道を進んでいくとフラワーショップがある」

 タイスケがカナズミシティとは反対に進む道を指差す。

 「インテリアとしての植物の他に色んなきのみとか野菜を取り扱ってるからポケモン用にもキャンプの食事用にも役に立つかもしれない。急がないなら立ち寄ってみるのも良いかもしれない」

 道の反対側にある看板に“フラワーショップ サン・トウカはこちら”と書いてあるのが見えた。マツノがトウカの森を抜けた先に果樹園があると言っていたのを思い出す。

「最後に、これはほんのお礼なので受け取って欲しい。うちの社員食堂でお弁当を作ってもらったから今日のお昼ご飯にでもと思って。改めて本当にありがとう。」

 タイスケがオレンジの包みを手渡しながらニッと笑い頭を下げた。アオイは“デボンのお弁当”を受け取った!

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