海を大地をポケモンたちと!   作:千月凪

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ロッジ104

「ごちそうさまでした!さすが一流企業の食堂はうまい」

 お弁当を平らげて腰を上げた。サン・トウカは気になったものの、森を抜けるのに1日多く使ったこともあってバッグの食材や薬がだいぶ心許なくなっていたためアオイは仕方なく先を急ぐことにした。

「今日はここからできるだけバトルは避けていこう、夕方までには民宿につけるはずだ」

ミズゴロウが頷いた。最寄りの宿は湖の手前にある、とタイスケから聞いていた。

 

 湖のほとりにある宿に着いたのは夕方だった。”ロッジ104”はこれまでアオイが見た民営宿泊施設の中では最も大きく、家族連れの利用者もちらほらといるようだった。

「ロッジ104へようこそお越しくださいました。おひとりさまですか」

 受付の台に置かれたガラスの彫刻には星が3つ彫られており、アオイはこのホテルの活況ぶりに納得した。受付でトレーナーIDを提示して1人部屋を用意してもらったアオイは一旦部屋に荷物を置くと再びロビーに戻り買い物をすることにした。民営の宿でも食材や道具を販売しているところは多い、量や質は宿によってピンキリだがここなら期待できる、と考えていた。

「やっぱり良い品ぞろえだ、さすが三ツ星」

 ――――民営宿泊施設には様々な形態がある。最も一般的なのはスイの祖父母が経営していたようなもので、概ね同じクオリティの部屋が複数用意され、公的支援対象のトレーナーもそうでない一般の利用者もごちゃ混ぜで利用するタイプだ。この場合、公的支援対象者の証、つまりトレーナーIDを提示することで割引が受けられる。このロッジ104はそれとは違い、一般客が利用する部屋とトレーナーIDを持つ者で使う部屋が全く異なる。事実アオイが宿泊する部屋は窓からの景色の良さや広さなどが一般客の部屋よりも劣っている。大都市の中や観光地にある宿泊施設ではこういった形態のものが多く、ロッジ104が三ツ星を受けているのは一般客用の宿泊施設としてであるが、ロビーは共通であるため物販などは充実していた。――――

「あとは食材を買い足せばカナズミまでは大丈夫かな……あっと!」

 棚の陰から突然目の前に小さな女の子が飛び出してきて、メモを見ながら歩いていたアオイは危うくぶつかりかけた。

「ごめん、大丈夫?」

 女の子はアオイの方を見て小さくうなずいた。7、8歳くらいだろうか、アオイのカゴの中のキズぐすりをじっと見ている。

「ナオー、こら走っちゃダメだってば危ないから」

 後ろから近付いてきた父親らしき男がアオイを見てすみません、と頭を下げる。横にはナオと呼ばれた目の前の女の子とそっくりな女の子が父親と手を繋いで立っていた。目の前のナオがアオイの持つキズぐすりを指差すと、もう1人の女の子もアオイの方を見た。

「お兄さんポケモントレーナー?」

 ナオにそっくりな女の子が尋ねるとナオもそれに続いた。

「そうだよ、だってポケモンの薬持ってるもん」

「じゃあミオたちとバトルしようよ」

 父親がナオの手を掴んで帰るよ、と声を掛けた。

「突然すみません、ほらバトルならパパがやってあげるから」

 両脇の娘2人を納得させようとするが2人とも首を横に振っている。

「やだ、いっつもパパだから違う人が良い」

「パパじゃない人とバトルしたい」

 聞く耳を持たない2人に父親が困っているようだったのでアオイがしゃがんで2人に目線を合わせ声を掛けた。

「よし、じゃあお兄さんとやるか?」

「「やる!!」」

 2人が目を輝かせて返事をする。

「良いんですか?すみませんわがまま言ってしまって…」

 いえいえ、とアオイが手を振る。

「決まり、ただし試合は明日の朝ね、お兄さんのポケモンは今日ここまで歩いてきてへとへとなんだ」

「わかった!!」

「明日ね!!絶対だからね!!」

 2人がぴょんぴょん跳ねる。父親に時間と集合場所を伝えてその場は解散となった。作戦会議しよー、という元気な声が廊下に響いた。

 

 翌朝、朝食を食べたアオイはそのまま集合場所のロビーに向かった、少し早めに外に出て水辺でミズゴロウとアメタマを遊ばせようと考えていたのだが、出て来てみると受付のところで既に2人が待っていた。

「きたー!!」

「おそーい!!」

 ナオとミオが口々に言い、父親がすみません、と頭を下げる。

「遅くないよまだ早いくらいだよ」

 アオイが笑うと2人はアオイの手を取って玄関まで引っ張った。扉を出て右に少し行ったところ、水辺を散歩する他の利用者から十分離れたところまでくるとナオとミオはアオイから距離を取った。歩いてくる間に父親は2人が双子であると話すとアオイはやっぱり、と改めて2人を見る。準備万端といった表情でこちらを見る2人は瓜二つだった

「よっしゃ!始めるか!まずはどっちからだ?」

 アオイが問いかけると2人は声を揃えて言った。

「「2人で一緒だよ、ダブルバトルだよ」」

 え…?アオイがポカンと口を開けたまま父親の方を見るとお願いします!と手を合わせている。父親はこうなることがわかっていたが、楽しみにしている双子を前にアオイに断られては困る、と仕方なく黙っていた。

「ダブルバトル!?」

ふたごちゃんのナオとミオはにっこり笑った。

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