海を大地をポケモンたちと!   作:千月凪

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ポチエナに追われていた少年マツノは元ジムチャレンジャーだった。窮地を何とか切り抜けた3人は101番道路の宿泊施設で1日目の疲れを癒すことにした。マツノのポケモン達を見せてもらうクレアだったがポチエナが何かおかしくて…?


優しいトレーナー

チェックインを済ませるとアオイとマツノは同じ部屋、クレアは別部屋でそれぞれ荷物を下ろした。さほど大きな施設ではなく、他にも何人か利用者がいたためアオイが先にシャワーを使うことになった。マツノ2階の部屋からロビーに降りてくるとクレアがアチャモにブラッシングをしていた。

 

 「お疲れ様、女性の方も順番待ち?」

マツノが机を挟んでクレアの反対側に座った。

 「いいえ、女性は余裕ありそうだったわ。先にこの子を綺麗にしてあげようと思って」

アチャモは気持ちよさそうにしていた。

 「そういえば、マツノのポケモンって見てないわよね?見せてよ」

クレアがブラッシングを終え、ブラシを片付けながら言った。

 「たしかに。もちろんいいよ、出ておいで」

マツノがモンスターボールを転がした、出てきたのはケーシィとスバメだった。

 「わー!かわいい!スバメはこの辺でも、というか今日も何度か見かけたけどケーシィはちょっと珍しいわね」

 「ケーシィは俺の最初のポケモンなんだ。親父のフーディンのタマゴから生まれた。」

ケーシィはふわふわと漂ってマツノの横のソファに座った。

 「クレアのアチャモはどうやって手に入れたの?」

アチャモがクレアの方を見た、何か自分のことが質問されていると感じたらしい。

 「この子はミシロタウンのコユリ博士が託してくれたのよ、出会いは今日の朝なの」

 「うわぁそっか!ミシロと言えばコユリ研究所だったね。君たちは今日出会ったとは思えないほど仲良しだね」

クレアがにっこりとアチャモを見た、アチャモは首をかしげている。

 「あ、そうだこの子もさっき捕まえた新しい仲間なんだ」

マツノはそういってボールをもう1つ足元に転がした。

出てきたポケモンはポチエナだった。先ほど追いかけられたことを思い出して一瞬どんな顔をすれば良いか迷ったクレアだったが、すぐにそのポチエナの異変に気付いた。

ポチエナは顎をペタンと床につけ、浅く早く呼吸していた。目は半分閉じており尻尾も力なく垂れ下がっている。

 「ポチエナ…?」

マツノが慌てて近寄ってポチエナの体に触れた。

 「熱がある…早く治療してあげないと…!クレア!ちょっとここでこの子を見てて!」

マツノはそう言って急いで部屋に戻って行った。

 

 「マツノ、熱だけじゃないみたい、というか原因はこっちかもしれないわね」

鞄を持って帰ってきたマツノにクレアが声を掛けた。

 「こっちって?」

マツノが訊ねるとクレアがポチエナの左後ろ足の付け根辺りを指差した。そこには何か別のポケモンに引っかかれたようなキズがあった。

 「マツノ、あなたバトルして捕まえたあとどうしてこの子をすぐに回復してあげなかったの!?」

クレアがマツノを睨んだ、その手には自分のカバンから出したキズぐすりが握られている。

 「それは……」

マツノは何も答えずポチエナを仰向けにゆっくりと倒した。

 「とにかく早くこの子を治療してあげないと!」

クレアが丁寧にポチエナの治療を行った。

----各地域の宿泊施設は大きく2種類に分けられる。ポケモンリーグ等が提供する公共施設と地域の人々が旅人のために開く民間の施設だ。公共の施設は各地域どこでもほぼ同じ設備、サービスだが民間施設は地域によって様子が大きく異なる。

クレアたちが現在宿泊するのは民間施設であり、この施設にはポケモンを治療できるドクターは常駐していない。----

 

 「とりあえずはこれで大丈夫かな、きのみのジュースなんて初めて見たわ。熱が下がってくれるといいわね。」

クレアが一息つきながら言った、治療は一通り済んでポチエナは眠っている。苦しそうな顔も先ほどよりは和らいで見えた。

 「ありがとうクレア、助かったよ。きのみはまぁ旅の途中で色々集めてね。」

マツノはポチエナを心配そうに見ている。

 「どうして捕まえた後すぐに回復してあげなかったの」

クレアはマツノをまっすぐ見つめていた。

 「違うんだ…俺…本当にバトル下手でさ、全然捕まえられなくてスバメも何度もやられて、持ってたキズぐすりを全部使い切っちゃったんだ。」

マツノは伏し目がちに続ける。

 「それで諦めて帰ろうとした時に森の奥の方の木陰にこの子が見えたんだよ。後ろから付いて行ってもゆったり歩いているだけで、きっとおとなしい子なんだって思ってボールを投げたら簡単に捕まったんだ。」

 「バトルしてなかったのね…ごめんなさい私決めつけて…」

クレアが申し訳なさそうに言った。

 「いや、良いんだ。本来バトルしていようがいまいが捕まえたポケモンの様子をチェックするのがトレーナーとして当たり前だよ。でもそのあとあのポチエナとグラエナに追いかけられて…」

マツノはポチエナに触れた、体はまだ少し熱い。

 

 「じゃあ、私はシャワー行くわね」

しばらくするとクレアが立ち上がって言った。

 「うん、ありがとうクレア」

マツノが後ろから声を掛ける、クレアは小さく右手を上げた。

部屋に戻ったマツノはアオイに事情を話し、アオイにポチエナを見てもらっている間にシャワーを浴びた。

 

夜遅く、クレアが水を飲みにロビーに降りてくると先ほどのテーブル辺りに明かりが点いていた。そこには心配そうにポチエナを見つめるマツノが座っていた。

 「こんな時間よ、もう寝た方が良いわ」

 「クレアか、いやどうにも心配で…アオイが起きると悪いからここで見てたんだ。」

クレアもテーブルをはさんで反対側に腰掛ける。

 「あなたも体調崩したりしたら大変じゃない。この子だって心配するわ」

ポチエナの方を見ながらクレアが言った。様子は先ほどよりさらに落ち着いて見える。

 「そうかもしれないな…」

そう言いつつもマツノは立ち上がろうとしない。

 「まぁ、止めはしないけど様子も安定してるみたいだし無理しない程度にね。おやすみ」

クレアはコップの水を飲み干して部屋に戻って行った。

 

翌朝、アオイが朝食を食べようと降りていくとマツノと彼に寄り添うポチエナがソファで眠っていた。

ソファで寝ていることを疑問に思いつつ朝食のためにマツノを起こそうと近付いていくと後ろからクレアが声を掛けた。

 「そのまま寝かせておいてあげて、疲れてるだろうから」

クレアは優しく笑って言った。

 「朝まで起きてたのか?」

アオイの問いかけにクレアは"さぁ?"と両手を開いた。

 「マツノの分の朝ご飯は包んでもらいましょう」

 

101番道路の天気は今日も晴れ、食堂にはあたたかな朝の陽ざしが差し込んでいた。




最後までお読みいただきありがとうございました。

ポケモンの世界のきのみってたまにおいしそうなのありますよね。
個人的にはモモン、オレン、チイラ、ナナ辺りはおいしそうだなと思います。
ただ弱点半減きのみなんかはまずかったり食べにくかったりしそうですね…

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