「お!見ろよあれ!ポケモンセンターじゃないか!?」
日没が近付き、空がオレンジ色になり始めたころ民家と思われる建物が道沿いにポツポツと見られるようになっていた。そしてついに今、草原や森に囲まれた101番道路が終わり一行はコトキタウンに到着したのだった。
「そうだね、ついに到着だー!」
マツノが答えた。旅の疲れも吹っ飛んだのかアオイに続いて駆け出していく。
クレアは呆れながらも2人に続いて速足でポケモンセンターに向かって行った。
「うわっ、すげーきれいだ」
アオイが自動扉をくぐりポケモンセンターの中に入った。コトキタウンはホウエン地方の中ではそれほど発展している町ではないがそれでもポケモンリーグが運営する公共施設というだけあってポケモンセンターは非常に清潔感のある施設であった。
「ホントね、そしてこんな時間だし他のトレーナーたちもそれなりにいるわね」
クレアがセンター内をぐるっと見渡して言った、入り口の左右にはソファやテーブルが置かれており多くのトレーナーが休んでいた。右手の奥は食堂に続いているらしく何人かのトレーナーが連れ立ってそちらに歩いて行くのが見える。
「あそこのカウンターでポケモンの診察をお願いできるよ、行こう」
マツノに続いて正面のカウンターに進むと、ナース服を着た受付の女性がこちらを見てにっこりと微笑んだ。
「こんばんは、ようこそ!ポケモンセンターへ」
「こんばんは、ポケモンたちの診察お願いします。」
「はい、お預かりします。」
マツノがカウンターの上の小さな機械にトレーナーIDをかざした。マツノのIDはアオイたちのものとは異なり最も一般的なプラスチック製のカードだ。
「ありがとうございます。診察が終わりましたらお呼び出し致します。」
そう言ってニコッと笑うとマツノのモンスターボールをケースに入れた。横に立っていたピンク色の丸っこいポケモンが扉の奥へと運んでいく。
「こんな感じ、2人は初めてだよね」
「ええ、次は私行っていい?」
「どうぞどうぞ」
アオイがクレアに譲った。
クレアの手続きはマツノの手本通りスムーズに進んだ、カードではなく図鑑に登録された電子版のIDをかざすクレアを見た時は受付の女性が少し驚いたような顔をしていた。
アオイもクレアに続いて手続きをすると、アシスタントのポケモンにモンスターボールを預けた受付の女性が声を掛けてきた。
「電子版のID、珍しいですね。新人さんですか」
「はい、ちょうど2週間くらい前にミシロタウンを旅立ったばかりです」
「2週間前!じゃあその電子IDを搭載した図鑑を託されたのはコユリ博士かしら」
「そうです、ご存じなんですか」
アオイが少し驚いて訊ねた。
「はい、コユリ博士はホウエンでもかなり高名な博士ですよ。ここポケモンセンターのように公共施設の人間に知らない人はいないほどです。」
幼い頃から身近だった博士がそれほど有名だったということをアオイは知らなかった。とはいえ時折取材などが入っていることは知っていたため、正確には慣れてしまっていたというべきかもしれない。
「そのコユリ博士からまずポケモンセンターを目指すように言われてここまで来ました。私たちジムチャレンジがしたいんですけど、まずは何をすればよいですか?」
後ろでアオイのやり取りを聞いていたクレアがカウンターの方に戻ってきて訊ねた。
「ジムチャレンジねですね、わかりました。」
そういうと受付の女性はカウンターの下から大きめの端末を取り出した。画面の大きさはアオイたちの図鑑の5倍ほどはある。タッチでいくつか操作するとマップを開いてアオイとクレアの方に見せながら説明を始めた。
「これがこの辺りの詳細なマップです。先ほど図鑑をスキャンしていただいたので同じものがお2人のマップでも見られます。」
そう言ってマップの中の一つの町を拡大した。
「ここが今皆様のいらっしゃるコトキタウン。そしてここからホウエンにある8つのジムの内ここから最も近いジムは…」
画面がスクロールされてコトキタウンから西の方にある町のところで止まった。
「このトウカシティジムです。コトキタウンからは西方向、102番道路を進んでいくことになります。さらにトウカシティの先はトウカの森を抜ければカナズミシティ、新人さんには難しいかもしれませんが海を渡ればムロタウンもあります。」
「トウカ、カナズミ、ムロか…」
アオイが図鑑のメモ帳機能にメモを残していく
「ジムチャレンジの登録はジムですることが可能です、詳しくはそちらでお聞きになると良いと思いますよ」
「ありがとうございます!」
「まず今日のところはお疲れでしょうからゆっくりお休みになってください」
受付の女性はにっこりと微笑んだ。
「なぁなぁ!それあんたが持ってるの電子版のトレーナーIDってやつか!?」
受付を離れたところで小太りの男がアオイに話し掛けてきた。年齢はアオイより少し上くらいに見えるが少年のような話し方をする。
「あ、あぁそうだけど…?」
「うわー!科学の力ってスゲーな!カードをスキャンするのだってすごい進歩だったと思ってたのにもうカードそのものがなくなるんだ!スッゲーなぁ!」
「たしかに、すごいよな。」
アオイは男の勢いに押されながら答える。
「でもさ、海外にはポケモンが入った図鑑ってのもあるらしいぜ!」
「ポケモンが入った図鑑?」
「そうだよ!なんでも人間の作る電化製品が大好きなポケモンがいるらしくて、あんたが持ってるその図鑑とかにそのポケモンを入れてあげるんだ。そうすると図鑑が飛んだり跳ねたり喋ったり、すっごいらしいぞ!」
「図鑑にポケモンを入れる…?」
アオイは喋る図鑑や跳ねる図鑑は全く想像できなかったが、すごい技術だということは分かったし、何よりそのポケモンが気になった。
「そのポケモンは何て名前なんだ?ホウエン地方にもいるポケモンなのかな?」
「いや!海外留学してる兄ちゃんに聞いた話だから!俺は詳しいことは分かんね!でも科学とポケモンの力ってスゲーよなぁ!」
そういうと男は満足そうに食堂の方へ歩いて行った
「何だったんだ…」
アオイがつぶやくとポケットの中でリモコンが振動した。どうやらポケモンたちの診察が終わったらしい。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ついに最初の町コトキタウンに到着ということでポケモンセンターに来ましたね。
当時ゲームでは戦闘で負けると最後に回復したポケモンセンターに戻る仕様だったようで、新しい町に着いた後うっかりポケセンに寄るのを忘れたまま近くのトレーナーに負けたりすると面倒だった覚えがあります。「なんでわざわざ遠いとこ戻るん」と思ってました。