英雄になれなかった男   作:スーパータヌキ

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1話 あまりにも地味な最期

どうしてこうなったのか。そんな問いを今の俺にしたところで碌な答えは返ってこないだろう。

何故かって?俺もわかんねえからさ。わかっても知識のない俺の語彙力じゃあ無理かもしれんが。

だがそんな俺にも一つだけわかることがある。

 

俺はトラックにひかれ、ここで死ぬという事だ。

 

だというのにだ。正直驚きはしたが絶望はこれっぽっちもしていない。

ぶっちゃけてしまうと死ぬことより今までアルバイトして貯めてきた貯金が無意味になる。

そっちのほうが悲しい。こんなことならさっさと使っておくべきだった。後悔。

 

………ああ、死ぬ前後悔すると地縛霊になるんだっけか?やだな。こんな地味なところから動けなくなるのはごめんだ。

 

ところで俺が死んだあとどうなるんだろう。ニュースとかに俺の名前が出るのだろうか。

美人のアナウンサーがあれの名前を言うのか。悪くない。聞きたいし見たい。無理だけど。

だが、まあそうだな。できれば10代の男性、とかで報道してほしいがね。

別に俺が死んだところで何も変わらんし、誰も悲しまない。

 

それでもやっぱり人が死ぬニュースは聞いてていい気分にはならない。

だからニュースにするならさらっと済ましてほしい。

それでいいんだ。それで。

 

…おっと。体が寒くなってきたぞ。そろそろ限界かな?

だんだん世界が暗くなっていくのを感じる。あーあ、終わりなのねマジで。

 

来世に期待、といったところか?明るい未来に乾杯といきたいね。

乾杯する相手いねえし、明るい未来が来るとは決まってないが。

 

じゃ、これにて俺の人生終了です。グッバイマイラーイフ。

 

視界が真っ暗になり、意識も消えゆく中、そんなことを考えながら、終わった。

 

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終わったと言ったな。あれは嘘だ。

 

いや違うんです。聞いてください。目が覚めたら赤子の姿カナーとか思ってたんですよ。違いました。姿は生前と同じでした。

んでもって今得体のしれないところにいます。なんて言ったらいいのでしょうか。白と黒の景色しか見えません。怖いです。

 

さらに怖いことになんか目の前に立派な白い髭を生やした得体のしれないお爺さんがいます。

赤い帽子と服を着せたら子供の夢を叶える人になれそうですね。ああ後白い布袋ですね。持たせて着させてみたいです。フフハ。

 

「聞こえてるからな?」

 

あらやだ声に出てたかしら。どうやらうるさくしてたみたいですね。申し訳ないです。許して。

 

「…いや別にいいけどさ」

 

お許しが出ました。あざーす。

 

「君ほんとにさっき死んだんだよな?」

 

死にました。死んだはずです。てか何で知ってんの?

 

「それは儂が神だからだな」

 

へえ、てことは死後の世界ってこと?すごい不気味なのね。

 

「いや、ここは儂とお前さんが今後話し合いの時に使う精神世界みたいなものだな」

 

……今後?まるで次があるみたいな言い方じゃあないか。

 

「あるさ、お前さんにはやってもらいたいことがあるからな。こういう場所がないと色々面倒になるし」

 

ほお、俺にゃあ力も知恵も運も心もないけどできんのそれ?

 

「せめて心はあってくれるか?まあやる事はシンプルだし、儂も手を貸してやる。安心しろ」

 

自称神に手伝っていただき大変光栄だな。そんで?俺は何をすりゃいいんだ。

 

「自称じゃない、モノホンの神だ。にしてもあっさり引き受けんだな。考えなくていいのか?」

 

…引き受けなきゃ生まれ変わらせてくれなそうだしな。とにかく俺はやるっつってんだ早く教えろ。

 

「…お前さんがいいならいいけどさ。じゃあいうぞ」

 

神の口から飛び出た言葉はとんでもなく吹っ飛んでいて現実味のないものだった。きっと俺はこの瞬間を一生忘れないだろう。その言葉は

 

「お前さんには、ダンまちの世界に転生して、とある怪物を討伐してほしいんだ」

 

神の考えてることはやっぱり分からない。そんな考えが頭に駆け巡った。

 

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その神曰く、怪物を倒すのと並行して、その怪物を討伐する手助けをしてくれる人物の運命を変えてほしいとのこと。

誰を助けるのかを聞いてはみたが、言ってしまうと意味がなくなるようだ。その後、ダンまちを知っていればわかる、とも言った。

俺は小説は全部読んでいるしゲームもやっていた。だからと言って俺はダンまちの全て知っているわけではない。はっきり言って困る。

神は見れば分かると言って強制的に話題を変えられた。まあいい。ここは信じよう。

 

次に転生後について軽く説明された。どうやら俺の魂に調節を施していたようで、俺がステイタスを刻むのと同時に魔法が発動するらしい。

魔法の内容は神にもわからないらしいが、どんなものかは大まかに見当がついているらしい。

 

普通に鍛えていればさらに2つの魔法に目覚めるらしい。どれも怪物討伐に必要だから頼むと釘を刺された。若干圧がすごくてビビったのは内緒だ。

 

あとは死んだら終わりだから無理するなとか、転生しても困らないように武器と防具と金は持たせてやるとか、とにかくいろいろ言われた。

 

ところで、本当に転生なんてしていいのだろうか。過去を変えれば未来も変わる、某特撮シリーズの中にこんな感じの物語があった気がする。

俺という異物が世界崩壊とかに追い込んだりしないだろうか。心配しすぎかもしれないが怖いものは怖い。

 

聞いてみたところ、ノリでどうにかなるらしい。くたばってほしい。

 

正直未知の世界で戦ったり色々なことをするのは、ロマンの塊のように思える。少なくとも俺目線だと魅力的に見えるのだ。

さっきまで生きていた世界よりこちらの世界で色々やってみたいのだ。

 

だからこそ、俺は目立たず生きよう。ひっそりと、しかし目的を達成できるよう確実に。栄光や名誉、称賛より自分の望む在り方を優先していこう。

次の人生では幸せに生きたいから。

 

ということで2つ返事で承諾した。世界に変な影響をもたらさない、という覚悟をもって。

 

俺の回答を聞いた神は嬉しそうにうなずくと同時に、白い空間に某ネコ型ロボットの扉が現れた。このドアをくぐることでダンまちの世界に行けるらしい。

 

……なんていうか、あっても困るのだが、緊張感がないな。異世界に行くのだからちょっとはハラハラしたかったのだが。

 

ああそうだ。異世界に行く前に聞いておかなければならないことがあるのを忘れていた。この神の名前だ。

 

神が言うには長い付き合いになるらしいし、聞いておいて損はないだろう。

 

という事で聞いてみよう。ワッチャネー?

 

「なんじゃそりゃ…ユピテルだ」

 

ほほーうユピテルか。あっ様つけたほうがいいか。何かのゲームで神のキャラとして出てきていそうな名前だな。

…神だったわこいつ。メンゴユピテル様。

 

「わかったから早く行けよ……頼んだぞ」

 

ドアのほうに視線を向けていたからユピテル様の顔見てなかったんだけど、ちょっとだけ鼻声だった気がするな。気のせいか?

兎にも角にも出発だ。さあ頑張ろう2度目の人生。そう意気込みながら、俺はドアの先に広がる光の中に進み始めた。

 

まばゆい光が消え、その次に目の前に広がっていたのは、広大な大地。草原。丘の上に俺はいた。そして見えるあの景色。

 

どこまでも高い塔。円形に建てられた城壁。夢にまで見た、あの

 

「迷宮都市、オラリオ」

 

第二の人生が幕を挙げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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