白銀御幸♀ 作:白銀ξ紳士
γ【早坂愛】
――早坂愛は四宮かぐやの近侍(ヴァレット)である。
アイルランド人の血をクォーターとして持つその容姿は非常にクールであり、逆に校内擬態ギャルモードの彼女はKAWAIIといったところ。そんな二面にも三面にも “顔” を持つ彼女だが……今まさに、早坂愛はその化けの皮を剥がされそうに、つまり大ピンチの状況に陥っていた!
ことの始まりは、自身の主人が男の相談を持ち掛けるようになった頃まで遡る。
20:30夜、四宮かぐやの部屋にて。
「早坂、あなたの意見を聞きたいと思うのだけれど」
「あーっ……うん」
主人である四宮かぐやが早坂に投じてきた問いはこうだ。「この私と友人になりたい人がいるらしいが、どうしたらその人と友人になることができるか」である。早速だが訳が分からない。「それって単純にOKを返せば解決なのでは?」と、早坂愛は困惑していた。
「いいえ、それはできないわ」
「えっ、どうして?(素)」
「その人の誘いを一度断ったからです」
「ええっ……」
なんで断る必要があるんですか(正論)
「一応ですが…かぐや様、その方の性別は?」
「オス♂」
なるほどつまり私の主人は恋をしているのだろう。そして異性からの想いを恥ずかしがって断ってしまった……えっ、そんなまさか。鉄面皮で一切の感情を私以外に見せようとしない主人が、あの可愛らしい私のかぐや様が!? これは許せない事案である。四宮家に主人を利用してまですり寄るとは消毒すべき存在に違いない、きっとそうだろう。
「分かりました、速やかに処理の手配をします」
「えっ、待って。いや待ちなさい!?」
かぐやによる十五分ほどの説明により、ようやく早坂愛は落ち着きを取り戻した。
「それで、どうして断ったのですか?」
「だって……私に友人なんて初めてで、どうしたら良いか分からなかったもの」
幼馴染の藤原某さんは友達じゃないんですか、その言葉をぐっと飲み込み早坂愛は思考をめぐらす。 “一度断った” きっとそれは四宮かぐやという人間の生い立ちによる防衛本能だろう。彼女は妾の子であり、更に幼少期から厳しい英才教育と周囲の黒い大人たちによる利権のぶつかり合いという、ひどく壮絶な環境に揉まれていたのだ。それは今でも変わらず、疑心暗鬼になるなというのは無理がある。きっと今回もそれに漏れず、培われた本能から脊髄反射で断ってしまったのだ。
「分かりました、では一度私がその人物とやらを調査してみます」
「……助けてくれるの?」
どこか不安げでしゅんとした主人を見て思う。
「もちろん、私たちは“姉妹”のようなものですから」
(翌日、先の発言を思い出しゴロゴロする早坂が発見される)
「……ですが困りましたね」
――かぐや様の言う人は、私にとって少し因縁のある相手でしょうから。
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因縁の相手、
それは目の前で「おっはー☆」と声をかけてきた彼女のことを指すのだろう。
……アレはふとした出来心だった。いや不可抗力であった。今日も今日とて俺は隣の大和撫子に大胆な告白(フレンド申請)をしたのだがあえなく撃沈、心はいまだ中破といったところ。そんな中、気分を晴らすため運気を上げるため「ふふふーん」と無駄に広い校内を散策していたのだが、ふと妙な違和感に気づいてしまった。
(……つけられている?)
昼休みだというのにカップルの姿はなかなか見えず、風も立ち止まって辺りには静寂が訪れていたのだ。妙な気持ち悪さを感じた。まるで人払いでもされているようで、世界はここを中心に停止してしまったのだろうか。
「なわけないんですけどね、ハハ帰るか!」
そんな冗談もさておき、揚々と歩みを校舎へと引き返して曲がり角に入る。
――と見せかけて思いっきり逆走した。
「きゃっ!?」
「ぬわああああっ!?」
なんとそこには、見覚えのあるとびっきりの美少女と……黄金の布が視えたのであった! やはりエデンは存在した(確信) しかし、気の動転していた俺は恐らくクラスメイトな気がする彼女に勝利宣言をして逃げ出した。急な遭遇にわりと本気でこちらもビビっていたためだ。
「お前は黄金! ええっとハヤ…ハマ…そうだ! 浜崎順、俺の勝ちだ! ハハハハh」
その正体は早坂愛、主人にまとわりつく存在の調査をしている最中であった。
そんなこんなで、例の女子生徒とは目があっても互いに逸らすような仲へと発展したはずなのだが……。
今現在。
「おっはー☆」と声をかけてくる彼女は、「ねえねえー」とこちらを覗く因縁の相手が、とてもフレンドリーなギャルモードでこちらに接してきているのである! ……凄く怪しいと思います‼
「本当にすみませんでした」
「えー? ひななくんどしたしー?」
どしたん話キコカ? 思い当たりしかない(開き直り) ええ私は淑女の聖骸布を高らかに晒し上げた愚か者です。ああどうか神の御慈悲を……。しかして両の手を合わせいわゆるNENBUTU状態。やは〜、俺の所業を晒されたら学校生活終わっちゃうなりかもー^
「やは~☆ ひななくん面白~い」
「ありがとうございます」
「えへ~☆ てれるしー」
そろそろ本題に切り込まねば俺の命が危ういだろう、彼女の目の奥は間違いなく底冷えていた。その視線は絶対零度、華氏-459.67度……。俺は〇されるかもしれない。まずはハヤ…ハマなんとかさんの「早坂☆だしー」そう、早坂さんのお声掛けの理由だ。それを拝聴しなければならない。
「し、して。本日は如何様にてございますでしょうか…?」
「えっとねー」
曰く、今日一緒に帰って欲しいとのこと。
曰く、良ければ夕食を共にしないかとのこと。
曰く、曰く、曰く……つまりモテ期である。(単純) ついに人生の春が訪れたのだろう。
「どう? いいかなー?」
「もちろん!(即答)」
例え火の中、水の中、ひなな~☆ 男たるもの美少女とTOMODATIになれるチャンスは決して逃してはならない。ふっ、過去のことなんてささっと水に流すのさ。(流される側)
そして放課後。
早坂に言われるがままノコノコと店に連れられてきたわけだが……。
――四宮かぐやが、目の前に座っていた。
「そうはならんやろ」
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δ【四宮かぐや】
計画はすべて順調に進んでいた。(一人の少女を犠牲にして)
(早坂が例の男……ひななを調査して…ひななに声をかけて…ひななを誘導して、そして私が登場する。ふふっ、やはり私は天才ね! そうに違いありません‼)
どこからか従者の悲痛な声が聞こえてきそうである。一度チェックシートを導入すべきだろう。
「えーと…四宮さん?」
「はい、何の御用でしょうか」
「どうして我々は二人きりなのでせうか」
ここはいわゆるファミレス……のはずだが、ゴールデンタイムだというのに客は二人を除いて誰もおらず、何だか並べられる料理も二ランクほど上の素材であろう輝きを放っている。それもそのはず、対面に座る少女はかの四宮財閥の令嬢なのだから。人払いは当然、食にも力を入れていた。
「それは私が呼んだからです」
二人の微妙な空気をわずかに薄れさせているのは店内から流れているクラシック音楽。しかしどれも運動会で聞くような曲調の速いものばかりであり、安らぎとはまるで程遠い。選曲者の音楽センスは皆無だろう、どうか向上することを心の片隅に祈っておく。
『♫♫♫~』
「良い曲ですね」
「はい」
緩やかな緊張が走っていた。だがそれは、この豪勢な料理の前に目を見開いているひななからではなく、このある意味で異常な状況を作り出した四宮かぐやその当人からだった。
「それで……なのですが」
沈黙を先に破ったのは四宮。
口をもごもごとさせ、不安げな表情を少し浮かべてから言葉を発した。
「私は一度、貴方の誘いを断りました」
フォークとナイフをそっと置き、改まった様子でこちらを見つめる四宮。二人の空間が外界から切り離され、今だけは静けさに包まれているような気がした。真剣な雰囲気、彼女は一体何を語りだすのだろうか。もし重い宣告だったらどうしよう……ひななは背筋を正した。
「私と友人になるということは、万が一にも私との“責任”が生まれるかもしれません」
……三秒ほど、彼の思考は真っ白く支配されていた。“責任♂”というワードが四宮の口から飛び出したためである。更には“生まれる”との言葉もあり……ん、わからん(ショート状態)
「責任です。私たち四宮家に恨みを持つような連中は多いですから」
そして直ぐに復旧した。
どうやら早とちりな誤解だったらしく、四宮は『お家柄的な問題』のニュアンスで使ったようだ。
「そんな私でも……本当に、本当に宜しいのですか?」
しかし心配しないでほしい、元より答えは決まっている。
「全然大丈夫です(即答) むしろ親友になりましょう(早口)」
「っ、ええ……‼(困惑)」
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帰宅時、車内にて。
「随分と情熱的でしたね、彼」
「そ、そうね……いささか激しすぎる気もしたけど……」
思わず握手を差し出された時、かぐやは柄にもなく焦ってしまった。
「かぐや様」
「? どうしたの」
「かぐや様、今日凄い情熱的でしたよ」
頬を紅く染める早坂愛。
かぐやがその真の意味に気付くのは、また遠い日となりそうだ。
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そしてようやく冒頭に戻る。
主人がなんと熱を出してしまい、そのお見舞いとして例の男がやってきているのだ。先ほどまでは予測不能な藤原某の相手をしていたのだが今度は彼。今日は平和に終わると良いなと願いつつ、来客用の『スミシー・A・ハーサカ』姿に変装して出迎える。
迎えたのが、
「おっ、早坂じゃーん。もしかして、ここでメイドしてるのー?」
バレた。
――早坂愛は四宮かぐやの近侍(ヴァレット)である。
顔を穿つ豊かな太ももにキスをして終了
四条妹♀に可能性を感じる