すべては君のために   作:eNueMu

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ダスト事務所の仲間たちの戦い

 

 「あの人を守るんだ!!俺たちを救ってくれた、恩人を!!」

 「ウオォーッ!!」

 

 「こい、つら……!!自分たちが悪党だって自覚あんのかよ!?」

 「ありませんよ!彼らの心は皆1つ……敬意です!たった1人への想いが、こうも多くの人間たちを動かしている…!」

 「それって…なんだか気味が、悪いのですっ!」

 

 ダスト事務所周辺地域。市民たちが未だ避難の途中であるにも関わらず、ヴィランは数え切れない程に襲来してくる。脳無も同様に天地問わず出現し続け、最早一帯の秩序は失われてしまっていた。

 

 「スマイル、前方3名全てヴィランです!分倍河原さん、後退して下さい!戦線に近過ぎます!」

 

 必死に仲間たちに指示を出す心詠。しかし、倒しても捕らえても無限かと思える程に敵は湧いてくる。乱戦故に、仁によって増やされた千雨も弱点を突かれて度々消えてしまっていた。

 

 「(……避難指示が、できない……!!)」

 

 逃げ惑う市民たちの中には、あらぬ方向へ進む者も少なくない。このまま場に留まって敵の撃退を続けるにしても、ジリ貧であることは疑いようのない事実だ。

 

 「クソ…!!使い捨ての癖にやけに強くないかい…!?」

 「……ッ」

 

 更には何らかのブーストを受けているのか、脳無たちも1体1体が並みよりもかなり強くなっている。まずは明確に識別できる彼らをどうにかしようとした心詠だったが、それすらも上手くいっていない。

 

 「(………焦り、恐怖、苦痛…!!一般市民たちの感情が、なだれ込んでくる……!か、身体が────)」

 

 遠ざかりながらも心詠の精神を疲弊させ続ける感情の嵐。彼女も感化され、思考が引き摺られそうになった所で…不自然な1つの感情に気付く。

 

 「(────────歓び?敬意も、混じっているけれど……たった1人、こんな状況で?…………感情の強度に変化なし。足を、止めている。何処かに、留まっている……!!)」

 

 心詠は…その感情の主が脳無たちの強化と無関係である可能性は、低くはないと踏んだ。

 

 「皆さん!!11時の方向に、不自然な感情の持ち主が居ます!!もしかすると、脳無たちに強化を施している人物かもしれません!!」

 「ま、マジか…!?…いや、だが……!!」

 「逃げてる人たちを守らないと!そっちに行くのはちょっと大変かもしれないのです…!」

 

 

 

 「……はい。だから…私が、行きます」

 「!?」

 

 心詠はこの場において、戦力でありながら自身の役割を担える人物の存在を知っている。だからこそ、抜けても1番綻びが小さい己が突破口を開きに行くべきだと考えたのだ。

 

 「スマイル!私とダストさんの変身を利用して、どうにか穴埋めをお願いします!…信じてますよ、被身子ちゃん」

 「ダメっ!!心詠さんが危ないのです!!!」

 「敵はかなり遠くに居ます!!!明らかに戦場に出ることを恐れている!!!まず間違いなく、本人の戦闘能力は高くない筈です!!!」

 「だからこそ護衛が居たっておかしくねえがな…!!」

 「私以外がこの場を離れる訳にはいかないでしょう!!」

 「あ、おい!!」

 

 襲い来るヴィランを躱し、改造スタンバトンで気絶させていく心詠。彼女の心は、既に固まっていた。

 

 「心詠さん」

 「約束できるかい?絶対無事に勝ってみせるって」

 

 2人の千雨が、走り出した心詠に並んで静かに問う。

 

 

 

 「────はい。必ず、皆さんの所に帰ってきます」

 「そっか。……………頼んだ、ラインセーバー」

 「こっちは、任せてくれ」

 

 

 

 その場を離れる心詠に追い縋るヴィランと脳無。千雨たちが、被身子が、仁が彼らを押し留める。

 

 「千雨さん…!!心詠さん、本当に大丈夫なのですか…!!?」

 「もちろん。……ラインセーバーは弱くなんかない。被身子ちゃんも、知ってるだろう?」

 「…!………はいっ!!心詠さんは、ラインセーバーさんは…誰にも負けないのです!!!」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「!!お前、ヒーローだな!?この先には…ぎッ!!?」

 「ハァッ…!ハァッ…!あと、少し…!!」

 

 たった1人、居るかもわからない脳無の指揮者の元へ駆ける心詠。避難する市民に紛れて時折攻撃を仕掛けてくるヴィランたちを返り討ちにしつつ、辿り着いたのは寂れた大通り。見えるのは逃げる人々ばかりで、日常を送っている者は居なかった。

 

 「(近い…屋外にいる!)」

 

 伝わってくる感情の方角と強度から、目的の人物の位置におおよその当たりをつける。一息に距離を詰め、視界内に捉えた相手は…

 

 「(…!!間違い、ない…!この男!!!)」

 

 眼鏡をかけた、ごく普通の男性にしか見えない人物だった。

 

 「…?あの、私に何か……」

 「今すぐ脳無を止めなさいッ!!!!!」

 「な!!?」

 

 自身をあくまでも一般人であると騙る男に、一切の躊躇なくスタンバトンを振るう心詠。紙一重でそれを躱した男は、すぐに本性を顕した。

 

 「ひ…ひぃぃっ!!!脳無たちよ、私を守れッ!!!」

 「!!!」

 

 タイルを割り砕き、地中から現れるのは4体の脳無。いずれも体格は大きくないが、数の有利は相手が圧倒的だった。

 

 「くそっくそっ!!!これだからあの方以外の人間は信用出来ない…!!満足に足止めも出来んのか!!おい、貴様!!![個性は!?]」

 「…?言うとでも────」

 

 突如、個性を白状するように心詠に要求する男。それに心詠は……

 

 

 

 「[私の個性は『読心』。周囲の生物の感情を感知出来る他、意識を向けた人間の思考を読み取ることも可能です。]────!!!?」

 

 

 

 なんと素直に全てを話してしまった。直後、期せずして秘密を暴露してしまったことにより真っ青になる。対して男は強い反応を示した。

 

 「………馬鹿な。………思考…心を、読むという、のか?……………信じられない、巡り合わせだ。最早、私たちが出会うことは…必然だったのかもしれん」

 

 脳無を差し向けずに侍らせたまま、男は自らの名と個性を名乗った。

 

 「……私の名は…音本真(ねもとしん)。個性は、『真実吐き』。私の前では、如何なる人間も嘘をつくことは出来ない。………ヒーロー。これは、貴女への敬意だ。醜い人の心を知りながら、それでも正しくあろうとしている…そんな貴女への。せめて、苦しまないように一息で殺して差し上げよう」

 

 5対1。絶望的にも思える戦いが、始まった。

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