すべては君のために   作:eNueMu

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メテオルインの戦い

 

 「チッ!!!また避けられた…!!!当てんのは無理か…!!!」

 「コタロ」

 

 閑静な住宅街に暴風が吹き荒れる。女性型脳無…「ナナ」が、転弧を狙って来襲したのだ。彼女に与えられたのは、五感を強化する個性に加えて耐久力を上げる個性とほんの僅かな増強系の個性。そして…「気流操作」。最後の1つは容量の問題からAFOが手放さざるを得なかったものだが、死柄木を回収して千雨から逃れる時、そして今も、その個性は憎らしい程に役立っていた。

 

 「(さっきから殴る蹴るしかして来ねえが……嘘みたいに速ェ上にぶち当たった地形がデケェクレーターに早変わりしやがる!!風に煽られたら一巻の終わりだ…!!)」

 

 そんな転弧の手に握られているのは、サポートアイテムの「コラプションシューター」。小さく砕いた瓦礫を込めて撃ち出す中型の銃のようなアイテムだ。

 間接的な「崩壊」によって、瓦礫を緩やかに崩壊させながら放つことで、命中した相手にも崩壊が伝播する。細かい調整が困難であるため基本的には対脳無専用ではあるが、崩壊を付与せずに瓦礫を相手にぶつけることもできる。ただし、弾速は拳銃と比べて少しばかり落ちるのが難点だった。

 

 「(弾がトロすぎてこのレベルの敵には当たりっこねえ……やっぱりちっとばかし悔しいが────)」

 

 

 

 「ぁーたーしーがー!!!来たっ!!!

 「!ラァァッ」

 「お前が居ねえとな…!!!」

 

 

 

 空から降ってきた美智榴が挨拶代わりにナナに着地を試みる。紙一重で躱されてしまったが、転弧にとっては非常に心強い援軍であることに変わりはない。

 

 「寒ッ!!?この風、あの脳無が!?」

 「おう。悪いが俺はこの距離でも踏ん張ってるだけで精一杯だ……しかもアイツ自身も別次元に強い。任せてもいいか?」

 「もっちろん!!住民の人たちの避難はお願いね!!」

 「当然!」

 「ラヱ…」

 

 それぞれが目的を達成すべく、二手に分かれようとした転弧たち。しかし、ナナは執念深く転弧を追う。

 

 「ラァァァ!!!」

 「!?オイマジかよ…!!?1人狙いは勘弁してくれッ!!!」

 「ちょっと!!君の相手はあたしだよ!!!」

 

 下手な攪乱は住宅の破壊に繋がりかねず、迂闊に身を隠せない。転弧たちはひとまずナナをこの場から遠くへ連れて行くことにした。

 都市の中心部から離れたこの住宅街の近隣には、未だに小さな山が残っている。そこでなら、この場で戦い続けるよりは幾分か被害も抑えられると彼らは考えたのだ。

 

 「とりあえずここから遠ざける!!!メテオライト、いつもの頼む!!!」

 「了解っ!!!」

 

 素早く美智榴が転弧を背負い、全速力で駆け出す。ナナも気流操作によって自らに追い風を吹かせながら2人に接近していく。

 

 「速い…!!!確かにこれは、今までとは桁が違う…ねッ!!!」

 

 路面を砕いて急加速する美智榴。同時に転弧がコラプションシューターをナナ目掛けて放ち妨害することで距離を稼いだ。

 

 「良し…出来るなら命中して欲しかった所だが、まあいいだろ」

 「ヮラヱヱヱ」

 

 

 

 逃避と追走。命懸けの鬼ごっこは自然の中に飛び込んだ転弧たちが反撃に転じようとしたことで終結を迎える。

 

 「メテオライト、この辺りでいい!!!」

 「オッケー!!そんじゃ……こっからはあたしのターンだね!!!」

 「ララ」

 

 吹き荒れる風に木々が鳴き、山が軋む。長引かせるのも少々まずいようだった。

 

 「『メテオナックル』!!!」

 「ラァァァァ!!」

 

 開戦の狼煙…拳と拳の衝突。大気が揺れ、音がくぐもる。続く第二撃、先に動いたのは美智榴。

 

 「『コメットフォール』!!!」

 「ゴァ!?」

 

 ナナの頭に全力で踵落としを決めた。しかし、あまり大きなダメージにはなっていないようだ。

 

 「ウッソ硬った!!正直潰すぐらいのつもりで…」

 「メテオライト!!!!防御しろッ!!!!」

 

 美智榴が口を開いた隙に今度はナナが攻撃の準備に入っていた。脚技には脚技で、彼女目掛けて回し蹴りを放つ。

 

 「ラ゛ァァァ!!」

 「!!!」

 

 焦りの表情は、ほんの一瞬。高打点の蹴りを腕でガードした美智榴に、一切のダメージはない。

 

 「ラ…」

 「…もしかしてびっくりしてる?意外だね…そういう所も特別ってこと、かなッ!!!?」

 「ラァァァァ!!!!!」

 

 拳を放つ。

 躱す。

 反撃に対して反撃。

 膝蹴りを受け止める。

 頭突きがぶつかる。

 

 

 

 「『スターダストアヴェンジ』!!!」

 

 

 

 かつて千雨に気まぐれで指導してもらった近接格闘技術、その自己流の極致。全身全霊を振り絞った無防備な相手に、必殺のカウンターを叩き込む。

 必要なのは、必殺の瞬間を見逃さない目とそのタイミングをある程度予測する経験。何よりも、受けるべき攻撃は受けられる度胸と頑強さ。あらゆる攻撃を受けきることの出来る、美智榴だからこそ可能な技だ。

 

 「ゴ────」

 

 胴に渾身の痛打を浴び、この戦いで初めて吹き飛ぶナナ。転弧たちも油断なく彼女の出方を見る。

 

 「……来るぞ」

 「ん!」

 

 土煙を切り裂き飛び出すナナ。その視界に捉えているのは…転弧。

 

 「また俺かよッ!!!!」

 「避けて!!!」

 

 飛び蹴りの態勢のままに彼の元へ突っ込んだナナ。鋭い一撃を何とか躱した転弧は、ナナの着地点を崩壊させ、伝播を試みる。が…

 

 「!!ラァァ!」

 「クソ…!!絶対避けられるんだよなこれ…!!!勘がいいのか何なのか…!!」

 

 ナナは鮮やかに跳び退きながら転弧に反撃する。中々次なる着地を狙うことが出来ないのだ。

 

 「メテオ…うわわッ!!?」

 「ラァ!!!!」

 

 不意をついた美智榴の腕を掴み、放り投げる。簡単なことのようにも見えるが、最大まで密度を高めた美智榴の重量は巨大化したギガントマキアのそれに匹敵する。ナナの尋常ならざる膂力でなければ不可能な芸当だ。

 

 「そろそろ大人しくしてくれよ…嫌になるぜ」

 「コ、タロ」

 「………?」

 

 ナナの声に疑問を抱えたのは…美智榴。

 

 

 

 「………ねえ、ルイングレイ。ルイングレイのお父さんの名前って、何だっけ」

 「………あ?何で今そんなこと…」

 「確か…弧太朗さん、だったよね」

 

 

 

 彼女はしばしば志村家にお邪魔することも多かった。そんな付き合いの中で、転弧の家族について既に名前ぐらいは把握していたのだ。

 

 

 

 「ヒーローだったおばあちゃん、AFOにやられたんだって…ダストさんに教えてもらったって、言ってたよね…!!?」

 「────」

 

 

 「コタロウ」

 

 

 目を瞠り、ナナを見据える転弧。

 直後、その目は鋭く彼女を射抜き、静かな怒りと決意が、彼の身を充たしていく。

 

 

 

 「……………成程な。舐めた真似しやがって………どうやら随分なクソッタレ野郎らしい…AFOってのは」

 

 

 

 予期せぬ因縁が、彼の目の前で暴れ出した。

 

 「ヮラヱ」

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