すべては君のために   作:eNueMu

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番外編です。投稿間隔は不定期です、気長に待って頂ければ…


番外編
2年次1学期期末実技試験:その1


 

 雄英高校ヒーロー科、2()年A組の生徒たち。彼らは今、学年が上がって最初の期末試験、その実技部門の会場へバスで向かっている所だった。

 

 「うぇ〜ぃ…やっぱ範囲広すぎだろ筆記……」

 「しょうがねえよ……普通の高校でやる内容1年でやりきっちまったからな」

 「しかも数IIIの最後めっちゃ難しかったよね!?何アレ!!?」

 「エクトプラズム先生の趣味でしょう。最低限基礎を教え終えたということなのか…どの先生方もかなり好き放題なさっておられましたわ」

 

 各々筆記試験の感想を溢しながら、友人たちとの談笑に耽る。よく見れば、身に付けているのは制服でも体操服でもなく、それぞれのコスチュームだ。

 

 「お喋りは程々にしときな。これから始まる実技試験の内容考えて対応策練っとく方がよっぽど合理的だぞ」

 

 そんな賑やかな雰囲気も、イレイザーヘッドの一言で瞬く間に引き締まる。少しして再び生徒同士の会話がちらほらと行われ出したが、どれも内容は実技試験についてのことばかり。1年と少しの経験は、彼らを確実にヒーローとしての高みへ押し上げていた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「運動場γ、か」

 「そうだ。修復のついでにちょっとばかし構造も変わってるが……まあ、何もここ全域を使う訳じゃない。詳しい説明はお前たちの試験相手が来てから────っと、もう居たか」

 「!!」

 

 イレイザーの視線の先、ゆっくりとA組の面々に近付く人物。生徒たちも彼の視線を追い、直後驚愕の声が上がった。

 

 「ダ…ダスト!!?」

 「し、試験相手ナンバー3っすか!!?」

 「ハンデあるよね!!?去年みたいな!!!」

 「あんなのがあってもあの人には意味無さそうだけどな」

 

 混乱に包まれる生徒たちを見て、目を細めながら悪戯っぽく笑う「ダスト」。その顔に、出久など一部の生徒は違和感を抱く。違和感の正体は、イレイザーがすぐに明かしてくれた。

 

 「落ち着け。それと、お前も紛らわしいことするな渡我」

 「クスクス、すみません。今度こそお友達になれる機会だと思ったので、つい」

 「渡我…ってことは!」

 

 ダストが溶け、中から現れたのは被身子。コスチュームなのかどうなのか、私服姿の彼女は改めて2-Aに自己紹介を行った。

 

 「後輩の皆、お久しぶりなのです。渡我被身子です。今日は私も期末試験として皆の相手をすることになってるので、よろしくね!」

 「私『も』?」

 

 誰かが発した疑問の声を、イレイザーが拾う。

 

 「今回の実技試験は渡我とお前たち、それぞれの評価を一度に行うことになった。……知ってるだろうが…渡我は体育祭を3連覇してる。ダストさんやメテオライトでさえそれが出来なかったんだ。どんな偉業か、みなまで言わずとも分かるだろ」

 「ちょっと照れますねぇ」

 

 1年から3年まで、被身子は雄英体育祭を一切の苦戦も無くその全てを圧倒的な成績で優勝している。

 

 

 その功績から、ついた異名は『クラウン1』。

 

 

 伝説を残した一つ上の先輩を、A組の生徒たちは畏敬の念を込めて見据える。

 

 「そういう訳で、内容はこうだ。渡我被身子と2-Aによる模擬戦闘。運動場γのこの場所、比較的開けた半径200m圏内をフィールドとする。お前たちの勝利条件は何でもいいからとにかく渡我に1発クリーンヒットを入れること。渡我の勝利条件はお前たち全員をノックアウトすること。分かりやすいだろ?」

 「ぜ、全員って…!!20対1ってことですか!?」

 「釣り合っていない、と?サポートアイテムもコスチュームも無かったとはいえ、似たような条件で通形に伸されたのを忘れたか?」

 「うぐっ…」

 

 寄ってたかってはどうなのかと考えたか、イレイザーに問いただす切島。しかし、1年の頃にミリオに手も足も出なかったことを指摘されると言葉に詰まった。

 

 「心配しなくとも勝敗で成績をつける訳じゃない。2-Aは連携とその中での己の役割に対する理解度、及び活躍の度合いを。渡我は対多数における戦法の如何を見られることになる。それともう分かってるとは思うが、過度な破壊行為は減点対象だ。去年の大乱を受けての実技試験、複雑な地形で強敵相手にどう立ち回るかが大事になるってことだな」

 

 そうしてイレイザーは一通り自分の受け持つ生徒たちの顔を流し見たのち、発破をかけた。

 

 「………最初は1年だけお前たちの担任をするつもりだった。…が、気が変わってな。無理言って今年と来年もお前たちにつかせてもらえるようにしてもらったんだ」

 「ら、来年も!!?」

 「急に相澤先生がデレた…!!」

 「やかましい。…何で今こんな話をしてるか分かるか?俺がそれだけお前たちに期待してるってことを知っといて欲しかったのさ。……つまり、だ。────情けねぇ結果出したら承知しねえぞ」

 「「「頑張りまああぁす!!!」」」

 

 彼の凄みに久々にいつものノリを炸裂させたA組。側で様子を見ていた被身子も、イレイザーに声をかける。

 

 「仲良しですねぇ?」

 「…ハァ…さっさと位置につけ。渡我はフィールド中心、A組は各々自分がつくべきだと思う場所に。5分後試験開始な」

 「クス、りょーかいです」

 

 言い残して立ち去るイレイザーを他所に、皆一様に慌しく動き出すのだった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「皆で作戦を立てる時間は、無いようね…」

 「梅雨ちゃん、私らも────」

 「ねぇねぇ、2人ともカァイイね!お名前教えて下さい!」

 「うぇ!?」

 

 数人が簡単な方針のもと移動を始め、蛙吹と麗日も自分たちの能力に合った位置取りを考えていたその最中。背後から突然話しかけてきた被身子に麗日は思わず驚いた。

 

 「と、渡我先輩!私、麗日お茶子……じゃなくて!位置につかないといけないので、えぇっと…!」

 「落ち着いて、お茶子ちゃん。先輩、私の名前、蛙吹梅雨っていうの。本当ならもっとたくさんお話したいのだけれど、今は期末試験中。お互い全力を尽くした後で、改めてお友達になりましょう」

 「……!はい!お茶子ちゃん、梅雨ちゃん!よろしくね!」

 「は、はい!よろしく、です!」

 「ケロ」

 

 和やかな一幕。本来なら決して相容れることのなかった彼女たちの間に、小さな繋がりが生まれた瞬間だった。

 

 

 

 「(……お茶子ちゃんとお話していたとはいえ、全く渡我先輩の接近に気付けなかった。相澤先生も認める実力は…伊達では無いということね)」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 『2-A及び渡我被身子の実技試験、始め!』

 

 放送直後のブザーと共に一斉に動き出すのは、出久・轟・爆豪の3人組。エンデヴァーの元で培った経験は、レベルの高いA組の中でも彼らを突出させていた。挑戦的にも出久が正面から被身子に挑みかかる一方で、轟と爆豪はそれぞれ被身子の死角から攻める。

 

 「いきなりですか」

 「情報収集は…済んでますから!!」

 

 被身子はその活躍ぶり故に、戦闘スタイルを非常に多くの人間に把握されてしまっている。プロになる上では避けては通れない道であるため、悪いことでは無いのだが…こと多対一というシチュエーションにおいては辛い部分でもあった。

 

 「(間違いなく初手の変身はダスト!ラインセーバー()()じゃ捌き切れないことぐらいは…百も承知の筈だ!)」

 「私も、行きますねっ!」

 

 出久の考えた通り、被身子が変身したのは千雨。すぐさま頭部以外を塵化させ、上空へ逃避して3人の包囲網からの離脱を図る。この状態ならば、今警戒すべきなのは肉弾戦主体の出久ではなく…

 

 「そうするっきゃねェよなァ!?『徹甲弾(A・P・ショット)』ッ!」

 「緑谷!退がれッ!」

 

 轟と爆豪の2人。迫る轟の炎を前に、地上から離脱した際に塵化させた地面の一部を盾として利用しようとした被身子。しかし、爆豪の繰り出そうとしている技の性質を瞬時に見極め、一転回避を選択する。

 

 直前まで被身子が漂っていた位置を貫く爆発。この程度の流れは想定内だったか、動揺している者はこの場にはいない。

 

 「(ちょっとした壁ぐらいなら簡単に貫通しちゃいそうですね。……でも、焦らない。まずは────)」

 

 被身子が目を向けた方向から、轟音を立てて巨大な金属管が倒れ込んできていた。下手人は切島、芦戸、砂藤。金属管の根本をへし折り、溶かし、被身子目掛けて妨害を試みたのだ。

 

 「ぃよし!」

 「カンペキッ!!」

 「(────数を減らしていかないと!)」

 

 後退する彼らを目で追いつつ、金属管に手で触れて即座に塵化…した瞬間、内側からさらに人影が飛び出す。

 

 「『宵闇よりし穿つ爪』!!」

 「!」

 

 常闇踏影の「黒影(ダークシャドウ)」が被身子の顔に掌を突き出す。彼女もギリギリで反応し、直撃寸前で塵化して逃れたが…さらにその隙を轟と爆豪が突く。

 

 「(粉の弱点!!!)」

 「(頭をバラした瞬間は五感が利かなくなる!!!)」

 

 火炎と爆発。2つの輝きが辺りを照らし、一瞬常闇の黒影が萎んでしまうが、コスチュームの内側から再び伸びた黒影に抱えられながら常闇もその場を離れる。肝心の2人の攻撃は────

 

 「チッ」

 「躱されたか…」

 

 それを予測していた被身子が一手早く動いたために直撃とはならなかった。離れた位置で出久たち3人を視界に捉え直した彼女は、

 

 「…真っ黒な子もどっか行っちゃいましたか。………ちょっと、甘く見過ぎてましたね」

 

 戦法を変えることに決めた。

 

 

 

 

 

 「『複合変身(トランスマイル)二人(デュオ)』」





THE・補足
トガちゃんは十数種類のタイプのコスチュームを日替わりで身に付けている。「カァイイ」と思った服装を自身の毛髪から造られた特殊繊維により反映しており、変身に呼応して変身先の人物の服装を肩代わりしてくれるようになっている。服が嵩張らなくて素敵。
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