すべては君のために   作:eNueMu

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トガちゃんのコスチュームは当たり前ですが塵化させていません。変身解いちゃうとえらいことになるので。


2年次1学期期末実技試験:その2

 

 「(────来たッ!!)」

 

 僅かに被身子の変身が解けた…かに思えたが、すぐにその姿が固まる。そこに居たのは、千雨と心詠を足して2で割ったような人物だった。

 

 「ふむふむ、成程……大体3人前後で集まってる感じですねぇ。1つだけいっぱいいる集団も…っとと!」

 

 いち早く爆豪の接近に反応し攻撃を躱す被身子。爆豪も彼女から視線を外すことなく、轟たちに呼びかける。

 

 「轟、()()!!此処で抑えんぞ!!」

 「「応!」」

 「……もう不意打ちは通用しませんよ?」

 

 不敵に笑う被身子。彼女は今、千雨と心詠に()()()変身している。これによって何が起こるのかといえば、答えは単純明快。

 

 

 2人の個性も同時に使うことが出来るのだ。

 

 

 「ハッ!!そォ思うかよ!!?」

 

 開始時と同様、一斉に突撃を行う3人。被身子は後退を試みながら、事前に千雨から伝えられたアドバイスを思い返していた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「実技試験の変更?2-A、Bとそれぞれフルメンバーで模擬戦闘!?ひゃあ、根津校長も中々意地悪だね」

 「分かってないと流石に厳しいって、早めに教えてもらったのです」

 「まあ、そうだね。あの世代は皆本当に優秀だ…被身子ちゃんも完全に初見なら多分勝てっこないだろう」

 「そんなに」

 

 目を丸くして呆ける被身子に、千雨は話を続ける。

 

 「要は事前に対策を練っておけってことさ。それが分かってたから、被身子ちゃんも私にそのことを話してくれたんだろう?」

 「はい!心詠さんをがっかりさせたくないのです!」

 「ふふ、そっか。それじゃあ、私も期待に応えなくちゃね。そうだなあ……とりあえず皆の名前と個性を…」

 「あ!お名前は私から聞きたいので、個性とどんな子なのかだけ教えて下さい!」

 「おや。仲良くなれそうな子が居たんだね?何にせよ、ご注文承ったよ」

 

 千雨は4()1()()全員の個性と特徴をおおよそながら被身子に伝えた。中でも、注意すべき人物については詳しく述べて。

 

 「A組は、緑色の子と紅白の子、それと目つきの悪いトゲトゲ頭の子だね。多分3人纏まって動いてくるから、すぐに分かる筈だ。言った通り、うち2人は私の個性にもダメージを与え得る。それに、トゲトゲの子は頭も回る。倒すのも正直かなり難しいだろう。まずは他の子たちをダウンさせたい所だけど……あと1人、相性が最悪な子が居る。……………そう、その子だよ。まだ被身子ちゃんは塵での探知の精度が良くないから、心詠さんの個性も使った方がいいと思う。()()のことを考えてもね」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「(この3人とは別に1番近くに6人!半分は動揺・焦り無し!きっと…迎撃メンバー!!)」

 

 被身子の塵操作による高速移動は、千雨のもの程ではないにしろかなり速い。個性把握テストで換算するならば、50m走は容易く1秒台をマークするだろう。成長により移動速度を上げた出久たちでも、運動場γの複雑な地形もあって追い付くのは少々手間取る。それ故に、クラスメイトたちは先回りによる迎撃を試みたのだ。

 

 「やべ…思ってたより速ェ!」

 「上鳴!」

 「オッケー、任せろ!」

 

 背を向けて尚も撤退の素振りを見せている先程の奇襲組。待ち構えていたのは、瀬呂と上鳴。彼女を視界に捉えた瞬間に瀬呂がテープを伸ばした腕を引き、予めボルトが外されていた金属管を被身子目掛けて倒す。先程対処して見せたように、この程度の攻撃が被身子に通用する筈は無いが…当然、本命はそれではない。

 

 「狙い通りっスよ先輩!!常闇警戒して、躱しましたね!?」

 「!」

 

 心詠の能力により、またしても金属管に常闇が隠れていることを看破していた被身子は、塵化よりも回避を優先した。そこを狙い撃つ、上鳴の必殺技。

 

 「ターゲットエレクト!!」

 

 瀬呂の引き倒した金属管に取り付けられた、複数のポインター。被身子の回避を潰すように設置されたそれらの内の1つに向かって、電撃が走る……が。

 

 「ぜーんぶ、お見通しですよ」

 「な!?」

 

 塵化させた障害物を前面に展開させて避雷針として活用し、上手く電撃を逸らす被身子。意表を突かれて一瞬怯んだ瀬呂と上鳴を、残りの塵で拘束する。

 

 「ぐえ…」

 「う、ごけね…!!」

 「まずは2人、捕まえました!」

 

 『上鳴電気、瀬呂範太OUT!脱落者は手出し厳禁!』

 

 「げ!!?これダメなのかよ!!?」

 「マジかー…俺って毎年最初の期末こんなんだな」

 

 流れる機械的なアナウンスに顔を引き攣らせる上鳴と瀬呂。被身子に課せられた条件は『相手を行動不能にすること』であり、ダメージを与えて気絶させたりする必要はないのだ。すかさず、イレイザーからの補足が入る。

 

 『本来なら味方に救助されるってパターンも考えられるが、今回は無しだ。一回拘束されたら独力で何とか出来ない奴は問答無用で脱落判定な』

 「先言ってくれよそれえええ!!!」

 

 上鳴の慟哭を他所に、離脱の機会を逸したために同様に塵に縛られる常闇。しかし、黒影が拘束を振り解いて再度離脱を試みた。

 

 『コノ位デ勘弁シトイテヤルゼー!!アバヨ!!』

 

 

 

 「────『三人(トリオ)』。逃しませんよ」

 『エ?』

 

 

 

 瞬間、常闇の意識が飛び、黒影が引っ込む。

 

 『常闇踏影、OUT!』

 

 

 

 直後、被身子の後を追ってその場に到着した3人は、完全に突き放される前に目にした被身子の姿に顔を曇らせる。

 

 「…チッ。あのダセぇバイザー…見たことあんぞ」

 「あぁ…メテオライトのコスチュームだ」

 「まさか…3人まで同時に変身出来たのか……!!」

 

 複数の人間とコスチュームが入り混じった容貌。それでも特徴的なバイザー、そして被身子と接触し得る人物から、彼らはその正体に辿り着く。

 

 「(ダストに、ラインセーバーに、メテオライト…!!!僕らは────3人のプロヒーローと同時に戦ってるんだ!!!)」

 

 正確に言えば、被身子のそれぞれの個性の練度からしてそこまで凶悪な状態では無いのだが…それでも今の彼らにとって、相当な相手であることに変わりはない。そんな中…

 

 

 

 

 

 「………まァ…アイツも焦ってんのは間違いねェな」

 

 ただ1人、爆豪は彼女の弱点を見抜いていた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「ヤオモモ!!上鳴と瀬呂やられちゃった!!常闇も!」

 「承知しております。ですが、無意味な脱落などではありませんわ。私が必ず、彼らの脱落に報いてみせます」

 

 八百万率いる9名のA組メンバーに、芦戸たちも合流する。これでここにいるのは12名。出久たちを除けば、居ないのは障子と耳郎だけだ。

 

 「障子と耳郎は!?」

 「私の作戦通りに動いていただいておりますわ。この戦い、鍵となるのは耳郎さんです」

 「耳郎が?そりゃどういう…」

 「ごめんなさい、説明している余裕は無さそうです!もう渡我先輩がすぐそこまで来ています、御三方にもお願いしたいことが!!」

 「!分かった!!」

 

 現在、17対1。決着の時は、刻一刻と近づいていた。





『複合変身』
渡我被身子の必殺技。複数の人物に同時に変身し、それぞれの個性を扱うことが出来る。現在3人まで同時に変身可能。一見強力無比な技のようにも思えるが、弱点も多い。
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