すべては君のために   作:eNueMu

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理想を実現させる方法

 

 独り言に返された声に驚いた青年…赤黒血染はその声の主を認めると渋面を作る。

 

 「ダスト…日々ヴィラン排除に邁進し民衆の声援を意に介することはない。悪を裁くのみならず弱者に手を差し伸べることもできる…オールマイトやエンデヴァーと並び俺の理想を体現する者の様にも見える」

 「(おや。今のエンデヴァーさんは彼のお眼鏡にかなったらしい。「原作」とはえらい違いだ)よく見てもらえてるみたいで光栄だけど…『様にも見える』?」

 「貴様には…言い知れぬ違和感を感じる。平和を見据えるその眼差しの中に、自己への見返りを求める濁りがあるような気がしてならない」

 「(要はなんとなく気に入らないってわけか。といっても彼の理想全てを満たしたヒーローなんて現状さっき名前が挙がった二人以外いなさそうだけどね。見返りを求めてるかは微妙な所だけど…誰かに頼られたいってのは事実だし)」

 「答えろダスト。貴様は何のために正義を為す?」

 「それは当然自分のためだよ。自分が平和が好きだってのもあるし、誰かに必要とされるのは悪い気はしないからね」

 「…残念だ。所詮は貴様も…」

 「まあ待ちなよ。言ったろ?意見交換をしようってさ。結論を出すのは私の話を聞いてからでも遅くないんじゃないかな?」

 

 ダストが己の理想とするヒーロー像に合致しない人物であったことに失望を隠せない血染。しかしそんな彼を諭すように千雨は反論を述べる。

 

 「確かにオールマイトはすごい人だよ。それにエンデヴァーもね。あの二人は自分自身のためじゃなく守るべきもののためにヒーローをやってる…それは間違いない。けどそれは私だって同じつもりだ。ただついでにちやほやされたら尚よしって思ってるだけで…別に悪意を以って活動してる訳じゃない。そういうのが無くたってヒーローを辞めたりするつもりもないよ」

 「金という見返りが無くともか?」

 「勿論。お金目的ならヒーローになんてなってないよ。知ってるかい?勉強とヒーローとしての訓練を両立させるのはかなり大変なんだ。お金が貰えるからこの仕事を続けられてる人はそりゃ沢山いるとは思うけど…『誰かを救けたい』っていう気持ちが全くないままヒーローになった人なんてきっと殆どいないよ」

 「だが全くいない訳でもあるまい。俺が進んだ場所にいたのは力と欲に溺れた贋物の卵どもばかりだった。うんざりするぞ?奴らが語る将来への展望はどれも子供の妄想だ。聞いていて寒気がした」

 「言っちゃあ悪いがその子らが孵ることはないよ…。そういうのを篩い落とすためのヒーロー免許だ。君を絶望させたようなのが免許を取れると思うかい?」

 

 血染は表情こそ変えなかったが、返す言葉は見つからなかったようだ。黙って千雨に続きを促す。

 

 「それにそういうのを減らすために直接手を下す必要はないんじゃない?仮に免許が取れたってすぐに自滅していなくなるだろうし…何より君自身そのうち御用になるだけだ」

 「今はそうだが…力をつける。正義を語るに相応しいだけの力を以って俺は正しき英雄の姿を取り戻すのだ」

 「それこそ子供の妄想だ。道を踏み外した奴の結末なんて案外呆気ないものさ。もしかするとその辺の()()に返り討ちにされるかも、なんて」

 「…何が言いたい」

 「ヒーローになればいいじゃないか。どうしてその発想が出てこないんだい?」

 「体制側に立つことに意味はない。危機感を煽らねば贋物は贋物であることに満足し、あるべき姿を取り戻そうとはしないだろう」

 「彼らの仕事を奪えばいい。それこそ君自身が理想…オールマイトを体現すれば、君の言葉にだって力は宿るよ。『私が来た!』。この一言にどれだけのパワーがあるか…よく知ってるはずだ。ヒーローとして力を示してから、改めて自分の理想を語るといい」

 「!…」

 

 血染は再び黙り込み…しばらくして凄絶な笑みをその顔に浮かべる。

 

 「フフ…フフフ…!!そうだそうだ嗚呼確かにそうだ…俺は蒙を啓かれた。先達の教示に…感謝する」

 

 そう言い残して足早に立ち去ろうとする血染。千雨は慌てて彼を引き止める。

 

 「ちょ…ちょっと!?いきなり何処に行くつもりだい?ヒーローになってくれるっていうんなら歓迎するよ!是非先ずはうちのサイドキックとして…」

 「俺は俺なりに力をつける。ダスト…ヒーローとしての貴様の在り方には未だ納得がいかない。貴様の指図に従うつもりも毛頭ないが…道を示してくれたそのことについては礼を言う」

 

 血染は立ち止まり勧誘を拒む。今度こそその場から去っていった彼を、千雨は無闇に追おうとはしなかった。

 

 「…やっぱり引き入れるのは無理だったか。でも思ったより素直だったね…。高校中退したばかりのはずだし、方針が完全に固まってた訳じゃなかったのかな?何にせよ彼についてはしばらく問題なさそうだ」

 

 望外の結果に満足げな千雨の元に、一本の電話がかかってくる。

 

 「もしもーし」

 『もしもし…千雨さんか?今どこにいる?そろそろパーティの準備の打ち合わせを再開したいんだ』

 「やーちょっと野暮用でね。ごめんよ、すぐ帰るからさ」

 『いや、いいんだ。心読さんから一応催促してくれって頼まれたんだ、悪い』

 「オーケー。転弧くんは?」

 『疲れて眠ってるよ。今日も島で俺と特訓してたからな』

 「なるほどね。…っと。着いたし一旦切るね、仁くん

 『了解』





ステインからみた千雨の印象
英雄→英雄?→贋物→変人

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