すべては君のために   作:eNueMu

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細かい修正のついでに「プロヒーロー・ダスト」と「秘密の共有」の後書きにそれぞれ千雨と心詠の簡単なプロフィールを載せておきました。気になる方はどうぞ。


不審なナンバー1

 様々な学校行事を挟みつつ、被身子は小学5年生に、転弧は中学2年生になった。ある程度新しい訓練にも二人が慣れてきたために仁に彼らを任せつつ、千雨はヒーロー活動に精を出す。しかしながら、ここ最近は妙なことがよく起きていた。

 

 「やあダスト!奇遇だね、調子はどうだい?」

 

 「また会ったね!これで3日連続かぁ。珍しいこともあるもんだ」

 

 「仕事がてら私が来た!何か困っていないかい、ダスト?」

 

 「(異常にオールマイトに遭遇する……!しかも大体向こうからやってくる形で!おかしい、おかしすぎる!この頃ってAFOの勢力を削るので忙しかったりしたんじゃないのかい?もう会わない日の方が珍しくなってきたよ…)」

 

 そう、ナンバー1ヒーローがやたらと彼女の前に現れるのだ。明らかにおかしいと思って千雨が質問しても、いつもはぐらかされてしまう。何かを隠しているのは間違いないのだが、彼女にはそれがはっきりとは分からなかった。

 

 「(……多分原因はナイトアイだ。あんなことを言ったけどまあ結局私の未来を視たんだろう。仮に私が彼だったとしてもそうするしね…。で、何かAFOに繋がるものが視えたとかかな。…もしかするとそのせいで疑われてたりするのかも?)」

 

 自身がヴィランとの繋がりを疑われているのかもしれないと思い、少し余計なことをしたかと反省する千雨。

 

 「(マスキュラーもどうやら一番の目的は私だったらしいし、もう既に奴には目をつけられてるだろうが…病院にあった複製のストックは全部塵にしたんだ。そう易々と手駒は増やせない筈…向こうも頭を悩ませてるのは間違いない。だとしたらナイトアイは一体何を視たんだ?)」

 

 そんな風に考えながら、各地のヴィランを片手間に退治し続ける。

 

 「(『原作』に登場してる大物で残ってるのはムーンフィッシュ、コンプレス、マグネ辺りか?今スピナーとマスタードが現れる可能性は0に近い…特に後者は年齢も足りていない。……あまり考えたくはないけど…ウォルフラムとかが出てきたりするのか?『映画』はよく覚えてないんだよね…いるなら話がややこしくなりそうだ)」

 

 千雨がそこまで思案を巡らせたその時、彼女の向かおうとしていた先に…

 

 「私が来た!」

 「(貴方が出たか)」

 

 またしてもナンバー1ヒーローが現れる。彼はあっという間にヴィランを鎮圧し、一歩出遅れた千雨に向き直った。

 

 「済まないねダスト、先を越させてもらったよ。ところで最近何か変わったことはないかい?」

 「ええ、ご心配なく。強いて言うなら貴方との遭遇頻度でしょうか」

 「はっは、それは間違いない!まあ、何かあればすぐに言ってくれ。ヒーロー同士救け合うことも大切だからね。じゃ!」

 

 そう言って跳び去るオールマイトに、千雨はついて行きながら話をしてみることにした。

 

 「待ってくださいよオールマイト。そろそろ理由を話してくれてもいいんじゃないですか?」

 「おっと。ついて来れるとは流石だねダスト。けど君の救けを待つ人々もいる筈さ。話ならまた今度…」

 「ナイトアイから聞いているんでしょう?私が彼に言ったことと…私の未来について」

 「!」

 

 常に力強い笑みを浮かべるオールマイトの表情が珍しく変わる。そのまま近くのビルの屋上に降り立ち、動きを止めた。

 

 「……その通りだよ。今日君に近づいたのもナイトアイの指示の一部さ。…これ以上詳しくは話せない。ナイトアイ曰く、不確定要素が増えてしまうそうなんだ」

 「彼の『予知』が一時的にずれ込んでしまうという訳ですね」

 

 そう千雨が補足し、オールマイトの顔は更に真剣みを増す。

 

 「………ナイトアイが言っていたよ。どうして君が彼の個性について知る素振りを見せていたのかが分からないと。…素振りどころか、確信していたようだけれどね。一体どこでそれを?」

 「私だけ教えるなんてフェアじゃないでしょう。私の未来について、知っていることを教えてください。そうすれば考えますよ」

 

 千雨の情報源を探ろうとするオールマイトだが、彼女としても未知は不安要素でしかない。できればここで彼から概要を聞き出してしまいたかったが…

 

 「……それもそうだね。お互いあまり喋り過ぎるのもまずいだろう。この辺りにしておこうか。────何かあれば言ってくれよ。すぐにね」

 「…分かりました」

 「ではね」

 

 次のヴィラン退治へ向かうのだろう、方向を変えて去っていったオールマイト。去り際の彼の態度に、千雨は若干の不安を覚えた。

 

 「(…どうやら疑われてる様子では無かったけれど…。活動限界のない…そういう意味では全盛期に近いといってもいいオールマイトがこう何度も忠告してくる程の未来が、私に?……ちょっと、楽観視はやめた方が良さそうだ)」





千雨に言及させておいてなんですが、映画版の登場人物は出てきません。まだワールドヒーローズミッションも観てませんし。

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