それからも、オールマイトとの遭遇は毎日のように続いた。あまりに二人が一緒になっていることが多くなったために、一部では熱愛疑惑が囁かれたり、あるいは検挙数を競い合っているのではないかなどと言われることもあったが、当人たちはそれらをはっきりと否定していた。
「オールマイトさん!ダストさんとの熱愛疑惑について一言!」
「皆期待してくれてる所悪いが…彼女とはそういう仲じゃないよ。ただ同じ高校の先輩として放っておけない事情があるのさ」
「ダストさん、オールマイトさんとヴィラン検挙数を奪い合っているという噂は真実なんでしょうか?」
「まさか。勘違いだよ」
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「やれやれ…最近メディアに囲まれることが増えた。勘弁して欲しいよ全く…」
取材やインタビューを求められることが増加し、ますます気を休める機会が少なくなりつつある千雨。メディアの取材陣や原因であるナイトアイを恨めしく思いながらも、彼女は己の未来に懸念を抱く。
「(オールマイトが繰り返し念を押す程の予知…『オーバークロック』込みのマスキュラーレベルでも多分そこまではいかない筈だ。………そうなると最早考えられる可能性はただ一つだけど…それは、本当にまずい。……のに、ない話じゃないというのが辛い所だね)」
脳裏に浮かぶのは、文字通りの「最悪」。
「(転弧くんのこともそうだし、リ・デストロに目をつけていたということも十分あり得る。何よりドクターの件で疑いを持たれているのは間違いないだろう)」
それでも、どうか違っていてくれと千雨は願わずにはいられない。
「(二人の決戦は今年。時期的に、まず私を始末しようとしてもおかしくはない。……本当に、憂鬱だよ)」
そう考えながらHNに従いヴィランの出現報告があった地点に到着した彼女。しかし、そこには誰もいなかった。ヴィランも、ヒーローも、通行人さえも。────ただ一人を除いて。
「(────────そう、か。こう来る、のか)」
「こんにちはお嬢さん。今日は実に…いい天気だね」
雲は分厚く、今にも雨が降り出さんとしていた。
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ナイトアイが、千雨の未来を視た日のこと。
「オールマイト。至急お話ししたいことが」
「ナイトアイ?一体どうしたんだい?」
「未来を視ました。ナンバー4ヒーロー…ダストの未来です」
「……何が見えたんだ?」
告げられた変えようのない未来は、一欠片の慈悲も持ち合わせてはいなかった。
「…………時期は、恐らく数ヶ月後。彼女は…AFOと対峙し……命を落とす」
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「……いい、天気か。見方によっては、確かにその通りだね。恵みの雨という言葉も、あることだし。中々いい感性をお持ちで」
必死に言葉を紡ぎながら、後ろ手にオールマイトに連絡を入れようとして…目の前の男に遮られる。
「済まないね。ここら一帯の電波は遮断させて貰っているんだ。携帯は使えないよ」
「…ご忠告ありがとう。ところで、HNにこの辺りでヴィランが暴れていると報告が上がっていたんだ。危ないから早く避難するといい」
携帯をコートのポケットに仕舞いつつ、何とかこの場を切り抜けるべく男に避難を勧めてみる千雨。当然、その提案は断られてしまった。
「そういう訳にはいかないよ。わざわざ偽の情報を君の端末に流してここまで誘導したんだからさ。……悪いねぇ。君のことは本当に面白いと思ってたし、できることなら僕と友達になって欲しかったんだけど…残念ながら頷いてくれそうにないからね」
「…話が見えてこないな。目的はなんだい?」
「惚けなくともいい。君は僕のことを知っているんだろう?こうして目の前に立って君の反応を見てよく分かったよ。実に不思議なことだ」
全て見抜かれていることに少なからず慄きながらも、千雨は必殺のチャンスを探る。後ろに組んだままに見せかけた両手を、少しずつ男の背後に忍び寄らせていく。しかし…
「おっと。忘れていたよ」
「!?」
超大型の台風もかくやという暴風に押し流され、手も千雨自身も大きく吹き飛ばされてしまう。男は辺り一面を破壊し尽くす風をその身から噴き出し続けたまま、彼女に告げるように呟く。
「何度も言うようだけど…悪いね。これ以上君に生きていられると、将来とても困るような気がしてならないんだ。でも安心するといい。できる限り傷つけず、美しいまま死なせてあげるからね。そして……遺体はしっかりと、有効活用させてもらうとしよう」