すべては君のために   作:eNueMu

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因縁の死闘

 「オールマイト…!殊勝なことだ!よくもまあこんな雲の上までェッ!」

 「ダストが導いてくれたのさ…久しぶりだな!オール・フォー・ワンッッ!!」

 

 千雨のおかげでここまで辿り着いたのだというオールマイト。AFOが疑問を口にするより早く、千雨が答えを口にする。

 

 『携帯ヲポケッとにシマった時…脚のナカから地めンを通して事務ショに送っておイたのさ。オールマイとに連絡スるように表示シた状態でネ。ついでに位チ座標のさービス付きだ』

 「な!?ダスト…その姿は!?」

 

 声を発した千雨の姿は目元から上までは本人のものであったが、それ以外は明らかにゴミの寄せ集めのような彩りであった。

 

 『オドろいたヨ。何ぶン全身バラバらにすルト感カクが無くなっテしまうものデね。ここマで消しずミになってイるとは思わナかった』

 「質問に答えてあげたらどうだい?僕としてもそれは気になるね」

 『見てのとオりその辺ノ塵を無理ヤ理集めただケさ。音をダすのが難しクてね、おかしな喋りカたになってしまうのは許しテくれ』

 

 AFOまでもが異形の千雨に目を移し、説明を求める。あくまでも塵操作の一環だと言ってのける彼女に、彼は改めて評価を上げる。

 

 「…君は本当に面白いね。一体いつから個性の鍛錬を?」

 『おールマイトを無視してイいのかい?』

 「!!ぐおオッ」

 

 英雄そっちのけで千雨に質問を重ねるAFOにオールマイトが殴りかかり、拳の風圧で炎を抜かれて痛打を受けた彼もようやく本気で其方と向き合う。縦横無尽な戦いは最早千雨が入る余地を残していなかった。

 

 「(これが全力のオールマイトとAFOの戦い…!間に割り込むなんて不可能だ!目で追うのもやっとだよ…!)」

 

 そうしてしばらく遠目に傍観を続ける千雨のもとに、更なる加勢がやって来る。

 

 「俊典の奴、先走りおって…!!…む!?新手か!!」

 『エェッ!?ち、違イます御老人!!ダスとです、ヒーローの!』

 

 異様な風貌の千雨を目にした老人…グラントリノは、彼女に対して構えるが、すぐさま千雨が弁解を行う。

 

 「!おぉ、本当じゃな!スマンかった、ではワシは行く!」

 

 勘違いを謝罪したグラントリノは、さっさとオールマイトの加勢に行ってしまった。それを見て、千雨も自分にできることがないかを考える。

 

 「(オールマイトやグラントリノのように炎を吹き飛ばしつつ攻撃する?いや、私の攻撃速度じゃ躱されて終わりだ。それなら…二人が隙を作った瞬間を狙おう。絶対に身動き出来なくなる場面がやって来る筈だ。…そこで全てを終わらせる…!()()()以来残しておいた最後の切り札は、ここで切るッ!!)」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 千雨がドクター…殻木球大を殺害したのは、僅か4歳の時のことだった。個性の発現と同時に記憶をはっきりと取り戻した彼女は、死に物狂いで己の個性を伸ばし、彼を始末する算段を立てた。

 

 蛇腔総合病院に人の出入りが無くなる夜、塵化によって院内に侵入した彼女は病院の()にいそいそと向かっていた球大の脳の血管を「切り札」を以って破壊し、「超再生」を妨げることで彼を始末した。

 そのまま手早く彼の脳を自らの脳に置き換え、適当に大きさを調整。当然脳の細かい機能など知りもしなかったが、ある程度の模倣さえできていれば問題はなかった。

 

 そうして自らも球大の体内に潜り込み、眼をも自らのものとした千雨は、何食わぬ顔で奥へと進んでいき、個性の複製ストックを発見。あたかもそれらの「作品」を愛でているかのように振る舞いつつ、これまた「切り札」を交えながら全てのストックに触れることで塵化させる準備を終える。

 

 やるべきことを終えた千雨は再び院内へ戻り、念のために脳卒中で苦しみ倒れ込む演技をしてから球大の身体を抜け出した。残しておいた彼()()()塵を先程まで模倣していた脳と視神経を含めた眼球の形状に戻し、血管を破損させた状態で脳からの出血を演出。病院を後にした。

 

 帰宅した彼女は、全ての複製ストックをそこで塵化。こっそりと、少しずつ、それらを海へ放逐し、球大の脳と眼は操作が不可能になる…即ち、火葬されるまで維持し続けた。

 

 検死などの際に虹彩認証でもされれば異常が発覚し、AFOに見つかってしまっていたかもしれなかったが、どうやら上手く隠し通せたらしい。

 

こうして数多の幸運の末、千雨は初めての「改変」を果たしたのであった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「俊典、合わせるぞ!!」

 「オオオオッ!!!」

 「ぐッ…ク、クク。いやに必死な形相じゃないかオールマイト。僕のことが憎いかい?」

 「黙れェッ!!お師匠の仇はここで討つッ!終わりだ…AFOッ!!」

 「甘い…ッ!?」

 「させねェよ」

 

 二人がかりでついにAFOを追い詰め、渾身の一撃を放たんとするオールマイト。迎撃しようとしたAFOだったが、グラントリノのカバーによって妨げられてしまう。そして…

 

 「DETROIT SMAAAAAAAAASH!!!」

 

 AFOの顔面に全力を叩き込んだオールマイト。そしてそこを狙った千雨の切り札が巨悪を捉える直前…

 

 「な…何ィッ!?」

 「消えた…!?」

 「(ワープ…!?逃げたのか!?早すぎる!!)」

 

 AFOの姿が掻き消えた。混乱する3人の耳に、彼の声が木霊する。

 

 『残念だよオールマイト。できるなら君との決着をつけたかったけど、これ以上は…厳しそうでね。良き理解者がいなくなってしまったものだから、本当は致命傷は避ける必要があったのさ。……ああ、ダメだ。何も見えない、聞こえない。酷い奴だよ君は…僕の友人たちを奪い、その上僕自身からも奪うのか。クックック、君が僕を憎む気持ち…少し分かった気がするよ』

 「き、さまァァッ…!!」

 

 一方的に喋りながら、オールマイトを嘲るAFO。そして彼は、千雨にもその矛先を向ける。

 

 『いつの日かまた会おうオールマイト。次こそはその師匠譲りの間抜け面をぐちゃぐちゃに歪めて惨たらしく殺してあげるよ。そして…ダスト。詳しくは解っちゃいないが…ドクターとストックを僕から奪ったのは君だね?当時の君は幼児に過ぎない筈だけど…そこが本当に面白いよ。待っててくれ、僕の邪魔をしてくれたお礼はたっぷりしてやるからね』

 

 声は止み、ただ空に立ち尽くす3人。戦いは終わったが、雨雲は彼らの降りる地上をしとどに濡らしていた。





実際本人と見て分かる状況で虹彩認証とかまでは流石にしないと思います。脳の記憶を取り出したりも多分出来ないでしょうし。どうしても納得できないって人は検死官が破茶滅茶に無能だったんだと思っておいてください()
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