すべては君のために   作:eNueMu

42 / 113
様々な変化

 

 「おおっ?」

 

 ヒーロー活動をこなしながら、携帯でネットニュースを閲覧していた千雨。その中に見過ごせない記事があったことに気付く。

 

 『経歴不明!?謎多き新人ヒーロー「スタンダール」活動開始!!』

 

 そんな見出しと共に掲載された写真には、仮面をつけた一種侍のようにも見える男が写っていた。

 

 「(成程…そっちを名乗った訳ね。まあそりゃそうか、『ステイン』はヴィラン名であって彼が考えた名前じゃないし)」

 

 記事には当たり障りのないことばかりが書かれており、碌に取材をしていないのであろうことが窺える。

 

 「(十中八九断られたんだろう。『まだその時ではない』とか思ってたりして。……ただ、何も話さなかったってことでもないみたいだ。『信念の赤』と『不撓の黒』ね…まあ、彼らしいんじゃないかな?)」

 

 独特のキャッチコピーを掲げた「スタンダール」。彼の新たな門出を祝福しつつ、いつの日か再び会うことを楽しみにする千雨だった。

 

 

 

 「(…でも、よく免許取れたね…。………ちゃんと正規の免許だよね?)」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 所変わり、ナンバー1ヒーローの事務所にて。

 

 「サイドキックを辞める?一体どういう風の吹き回しだい、ナイトアイ」

 「……色々と考えてみたんだ。これからも貴方の隣で補佐をするのか、あるいは何か他の道に進むのか。…そうした中で、独立して事務所を立ち上げてみてもいいかもしれないと」

 「…理由を聞いても?」

 「………OFAの後継者を育てたい。けれど…貴方はその必要はないと考えているんだろう?」

 「……そうだね。AFOは生き永らえたが、十分追い詰めた。私の代で、決着はつくさ」

 

 そう語るオールマイトを、悲しげに見つめるナイトアイ。ぽつぽつと、彼は自身の考えを述べる。

 

 「…5年。貴方と共にいた時間だ。だからこそ、なんだ…。大多数の人間は気付いちゃいないが…貴方の衰えを私は理解している。抗いようのない…老いという衰えだ」

 「…」

 「貴方の気持ちは分かっている…!因縁を次世代に持ち込むことが心苦しいのだと!これ以上誰も巻き込みたくはないのだと!そう思っているのは痛いほどに知っている!」

 「だったら何故…」

 「…貴方を…ただ、休ませてやりたい。次なる平和の象徴が生まれれば、もう貴方が無茶をする必要なんてなくなるんだ…!だから…」

 「分かったよ、ナイトアイ。…君は君がしたいようにすればいい。でもね、私は無茶なんてしてないよ。救けたいから救けるのさ。…そんな悲しい顔をしないでくれ。ひょっとしたら、心変わりするかもしれないだろう?そうでなくとも君が良きヒーローを育てることに間違いはないんだ」

 

 心の内を吐露するナイトアイに対し、あくまで諭すように話すオールマイト。双方の心はあまりにも優しくぶつかり合っていた。

 

 「………サイドキックとして過ごしたこれまでの日々は…私の宝物だ、オールマイト。ありがとう。そして、きっと貴方を納得させてみせる。安心して全てを託せる、そんなヒーローを…育て上げよう」

 「フフフッ…そいつは楽しみだ。期待してるぜ、相棒。…またな」

 

 どちらも折れることはなく、それでもひとまずは円満な決着を迎えた二人。握手を交わし、それぞれの道を歩み始めたのだった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 そして、此方でも。

 

 「リ・デストロ!!どういうことですか、あの声明は!!」

 「言葉の通りだトランペット。異能解放軍は活動を停止する」

 「一体どうして!?」

 「……どうしてだろうな。ただ何となく、そうしたくなったんだ」

 「…な、何を言うかと思えば…!今まで我々は何のために…」

 「いい加減にしろトランペット。リ・デストロのお言葉はデストロのお言葉に同じ。黙って従え」

 「スケプティック!!お前はそれでいいと言うのか!?」

 

 四ツ橋力也が「異能解放軍」に向けた発表。それは、当面の間解放運動を中止するというものだった。これにトランペットはひどく狼狽し、四ツ橋…リ・デストロに食ってかかる。しかし彼は曖昧な返事しかせず、スケプティックも追従するばかりだった。

 

 「…なあ、トランペット。異能解放を成したその先を…お前は想像できるか?」

 「勿論ですリ・デストロ!!我らは悲願の成就に喜び、社会は新たな姿に生まれ変わり……それで…」

 「……出てこないんだろう?どうやってその世界を生きていくかのイメージが。私も、そうだった」

 「…」

 

 愕然としたまま黙り込むトランペットに、そして側にいるスケプティックに、呟くように四ツ橋は続ける。

 

 「するとだな…今まで解放運動にかけていた情熱が、綺麗さっぱり消えてしまったんだ。……一体何のためにこんなことをしてきたのか、分からなくなってしまった」

 「リ・デストロ…」

 「それに……異能の抑圧なき社会で私が生きていくというのは即ちストレスに塗れた人生を送るというのと同義でね。…考えただけでもうんざりしてしまったよ」

 

 苦笑いしながらそう話す四ツ橋。こめかみの黒いアザは、終始殆ど分からないままだった。





リ・デストロって異能解放したあと本当にどうするつもりだったんですかね?毎日馬鹿みたいにストレスを抱えながら生きていくつもりだったんでしょうか。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。