すべては君のために   作:eNueMu

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予定調和

 

 『さあ!今年もやって参りました雄英体育祭!!何といっても注目は1年生!初々しさが青春らしさを彩ります!!是非とも今日この場所で一皮も二皮も剥けていってほしい所!!…生徒!入場ーッ!!』

 

 ミッドナイトの司会と共にとうとう開幕と相成った雄英体育祭。1年生ステージの会場では、ほぼ満席となった観客席から歓声が轟く中生徒たちが入場してくる。どの生徒も流石に緊張を隠せないようで、それは転弧といえど同じことだった。

 

 「(ひ、人が多い…!テレビにももう映ってんだよな?勘弁してくれよ……こんな中で…()()()()するのか…!?)」

 

 そう。開会式の様々な段取りの中には、生徒代表による選手宣誓も含まれている。それに選ばれたのは、実技試験をトップの成績で通過した転弧だったのだ。

 彼の緊張がほぐれるのを待つことなく、無情にも選手宣誓の刻がやってくる。ガチガチのままマイクの前に立った転弧だが、自分でも驚く程にすらすらと宣誓の言葉が出てきた。

 

 「宣誓。僕たち雄英高校1年生は、ヒーローシップに則り、クラスや学科の区別なく今日という日を全力で闘い抜くことをここに誓います。生徒代表、1年A組志村転弧」

 

 会場には大きな拍手が鳴り響き、無事何事もなく宣誓を終えられたことに安堵する転弧。その様子をこっそりと……周囲の人間にはコスチュームを着たままであるためにバレバレなのだが、千雨が観客席から眺めていた。

 

 「(転弧くん、流石だね…!私が同じことをしようとしてもきっと『頑張ります。以上』ぐらいしか頭に残らないよ。この調子で第一種目も通過しちゃおう!)」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 第一種目は障害物競走。第二種目は騎馬戦。結果だけ言ってしまうと、どちらも特筆すべきことは殆どない。転弧は双方好成績で通過したが、個性は使用しなかったために目立った活躍もなく、観覧しているプロヒーローたちの注目を集めることはなかった。

 逆に美智榴は個性を活用して派手に活躍し、第一種目、第二種目を共に圧倒的1位という結果で終えた。しかしながら、やや個性の制御が甘い場面が散見され、課題も多いと判断したプロは少なくなかったようだ。勿論、千雨もその一人。

 

 「(この目で直接見てみると、確かに凄い子ではあるけど…付け入る隙も多いように思える。現時点の彼女相手なら転弧くんの勝ち筋も0って訳じゃ無さそうだ)」

 

 天真爛漫な笑顔を溢れさせる美智榴を見ながら、千雨はそのように考えていた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 昼食が終わり、レクリエーション。最終種目に出場する者は自由参加なのだが、借り物競走に「楽しそう」という理由で参加した美智榴。しかしその中にミッドナイトによる罠が仕込まれていたことなど、彼女を含めた出場者たちは知る由もなかったのである。

 

 「は、はぁ!?なんだこれ、く、『クラスで1番可愛いと思う人』ォ!?」

 「えぇ…『心からの親友』?な、何か恥ずかしいなぁ」

 

 戸惑う出場者達を見て、異常に気付く千雨。彼らの持つ札を見て、陰謀の存在を理解する。

 

 「(!まさか…ミッドナイト!彼女、自分で作った札を混ぜたのか!?職権濫用にも程がある!!)」

 

 一方、目論見が上手く行きつつあることにご満悦なミッドナイト。

 

 「(ふふふ…大いに悩み、悶えなさい…少年少女!!その反応も、誰を連れてくるのかも!全ては私にとってプラスに転ぶように計算し尽くされているのよオオォォッ!!)」

 

 そんな中、千雨は転弧の元に爆走する一人の生徒に気付く。

 

 「(あれは…美智榴ちゃん!?ふ、札の内容は…………何ィィイイイイッ!?き、『気になっている人』だってえええェェェェェッ!?こうしちゃいられないッ!!!)」

 

 恥ずかしげもなく一直線に席に座る転弧へ向かって行く美智榴だったが、あろうことか千雨はそんな彼女の前に立ちはだかった。

 

 「えっ!?…ダスト、さん、ですよね…?ヒーロー、の」

 「…ああ。君は美智榴ちゃん、だね……転弧くんから、君の話はよく聞いているよ」

 「ほ、本当ですか!?嬉しい!わざわざありがとうございます!」

 

 無邪気に喜ぶ美智榴。しかし千雨は、そんな彼女を突き放すような宣告をする。

 

 「けれど、悪いね……君がこの借り物競走を完走することはない」

 「…え?」

 「借りようとしているのは…転弧くんだね?」

 「はい、そうですけど…」

 「そうか…」

 

 『ダストさん!無断で競技場に降りることはプロヒーローにも許可されていません!至急御退場下さい!』

 「(…千雨さん?何してんだあんな所で…?)」

 

 ミッドナイトが千雨の暴走に気付き、警告を出す。それによって転弧も彼女の存在を知り、疑問を浮かべた。しかし、千雨は止まらない。

 

 「残念だけど、転弧くんにそういうのはまだ早い!!どうしてもというのなら────私を倒していくがいいッ!!」

 「えええええ!?」

 「(……よく分かんないけど…あの人がめちゃくちゃやってるってのはなんとなく理解できたぜ)」

 

 どんどんおかしな方向に進んでいく展開に混乱する美智榴。そして千雨が現状の原因だと把握した転弧。場を収めるべく、彼女に声をかけた。

 

 「千雨さん!!」

 「!?…て、転弧くん!?どうしたんだい────」

 「このままじゃあんたのこと嫌いになるかもしれないぜ!?」

 「────────────なん、だっ…て?」

 「これは俺たちの闘いだ!!邪魔されたらそう思っちまってもしょうがないよなあッ!?」

 「……………う、わああああああああああ!!!」

 「(……流石に言い過ぎたかな…ちゃんと後で謝ろう)」

 

 悲壮に顔を歪め、絶叫しながらその場を去る千雨。ミッドナイトも己の野望を阻止されずに済んだことを喜びつつ、転弧に礼を言う。

 

 『感謝するわ、志村くん!さあ、那珂さん!借り物探しを続行して頂戴!』

 「は、はい!志村くん、来て!」

 「…あ?」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「…なるほど。それで俺が『気になってた』と」

 「うん!最終種目、志村くんと闘うのがいっちばん楽しみだったから!」

 

 ちなみに千雨の醜態は、しっかり全国に生放送されていた。





心詠「…」
仁「うわぁ」
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