少しばかりアクシデントも発生したものの、レクリエーションも終わり、ついに雄英体育祭もクライマックスを迎える。
『大変長らくお待たせ致しました!これより最終種目に移ります!毎年1on1で生徒たちがぶつかり合う本種目、今回のルールは…ドッジボールッ!!』
歓声とどよめきが同時に広がる中、ミッドナイトは説明を続ける。
『勿論ただドッジボールをしたってつまらないでしょう?当然、追加のルールもあります!球数はお互いに無制限、先に3回ヒットした方が負け!更に自分のコートから出たら即敗北!ヒットした球で戦闘不能になっても同様よ!』
彼女の説明と共に、会場の準備も整えられていく。どこから持って来たのか、大量のボールが入った籠を背負ったロボットがそれぞれ構築されたコートの両端につく。競技に使うであろうコートは少し高い位置に作られており、場外が一目でわかりそうなものになっていた。
『そして!今回は個性の使用を許可します!単純に個性で投げたボールを強化するも良し、相手の妨害をするも良し!度が過ぎていなければ、どんな妨害をしても構いません!』
「直接戦闘ではないけど、個性使用あり、か…」
転弧は己にとってこのルールが有利なものか不利なものかを吟味する。一方で、既に傷心から立ち直り戻ってきていた千雨は早くもルールへの評価を下していた。
「(このルール…転弧くんには相当有利だ。ボールを遠隔操作できるような個性の持ち主が居れば話は変わってくるけど、基本的には直線的な攻撃しか飛んでこないことになる。余程豪速球でもない限り転弧くんが躱せないってことは無いだろう。そして崩壊はこの上なく妨害に向いている…足場をどうにかしてやれば体勢を崩した隙にボールを当てるのは容易だ。……優勝の可能性が、見えてきたね)」
『ルール説明は以上です!それではトーナメント表を発表したのち、早速一回戦を開始したいと思います!皆、全力で頑張りなさい!!』
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トーナメントは、転弧と美智榴が決勝でぶつかるようになっていた。それぞれが相手との熱闘を待ち望み、順調に勝ち進んでいく。
「よし来い────ぶっ!」
「あぁっ!が、顔面はノーカンですか!?」
『大丈夫よ那珂さん!』
相手に3ヒットさせるまでも無く戦闘不能にするか、場外にまで叩き落とす美智榴。
「うおおッ!?や、やべ…うあっ!」
「悪いね」
「(また直さなきゃ…)」
毎試合コートを破壊しながらも安定した勝ち方を決める転弧。
二人は運命に導かれるように、決勝の舞台まで上り詰める。
『それではこれより!那珂美智榴さん対志村転弧くんによる、最終種目決勝戦を開始いたします!二人とも、位置について!』
ミッドナイトの司会を聞きつつ、美智榴と転弧は向かい合う。
「ほらね。やっぱり志村くんだった!」
「…俺も、上がってくるのはお前だと思ってたよ」
改めて、お互いに宣言する。
「あたしが優勝するからね!」
「いや…俺に譲ってもらうぜ」
ロボットから渡されたボールを構え、二人はその時を待つ。そして…
『用意────始めッ!!』
闘いの火蓋は、切って落とされた。
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試合は、美智榴が一方的な展開を繰り広げていた。
『志村くん再びヒット!壮絶な猛球にもう後がない!!逆転の兆しは見出せるのかーッ!?』
『転弧くんは間違いなく善戦してるよ。今まで全試合1ヒットで終わらせてきた美智榴ちゃんがここまで投げ続けてるんだからね』
『えっ!?だ、ダストさん!?』
『やあ。折角だし実況解説に参加しようと思ってね。ちなみに校長に許可は取ったよ』
実況席に乱入した千雨にミッドナイトが驚きつつも、試合は進んでいく。
「ちッ」
「おっと!…むぅぅーッ!
「よく言うぜ。ぶち抜いてくる癖しやがって…」
転弧は崩壊させた自身のコートの瓦礫を盾にする事で、何とか2ヒットに抑えていた。そうやって球速を落とすなりしなければ、まともに受けられなかったのだ。
「いいよ!ならあたしも…せいっ!」
「なにを…」
痺れを切らした美智榴がボールをぶつけたのは…ボール出しロボット。けたたましい破損音を鳴らしながら、転弧のコート内に倒れ込む。
「な…!?おい審判!!」
「セーフです」
「マジかよ…!!」
審判を務める教師…セメントスが転弧の声に応える。これが通ってしまったことで、試合展開は更に泥沼になっていく。
「だったらこっちも!」
「うわわっ…え?あーっ!」
崩壊を伝わせて美智榴のロボットを破壊する転弧。さらに籠にだけ伝播させることで、彼女の保有するボールを大幅に減らした。美智榴の元にはコート内に転がっている数個しか残っていない。
『これでどちらもボールの確保は自分で行う必要が出てきました!籠が無事な志村くんがやや有利な展開か!?』
『どうだろうね。転弧くんは既に2アウト、対して美智榴ちゃんはノーアウトだ。球数だって数発もあれば彼女には十分すぎる。転弧くんは今なお絶体絶命だよ』
試合は遂に、最終局面へと突入する。