すべては君のために   作:eNueMu

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闘いの終わりとその後

 

 全ての行程が終了し、表彰式が始まった雄英体育祭。既に3位の表彰は終わり、残るは美智榴と転弧の表彰のみとなっていた。

 

 「那珂さん、準優勝おめでとう!最初から最後までずっと大活躍だったわね。優勝にはあと一歩届かなかったけれど、本当に凄かったわよ!」

 「…はいっ。ありがとうございますっ」

 

 悔し涙を堪えながらも、素直に称賛を受け取る美智榴。大きな拍手が鳴る中、ミッドナイトも彼女にメダルを渡してハグし、最後の表彰へと移る。

 

 「それじゃ…志村くん、優勝おめでとう。…あなたには、特別なゲストがメダルと労いの言葉をかけてくれるわ。どうぞ!」

 「…!」

 

 ミッドナイトが声をかけると、上空から一人のヒーローが現れる。当然というべきか、その人物はダストだった。

 

 「…転弧くん。優勝、おめでとう。────ついに、ここまで来たんだね。あの日…君と出会えて、本当に良かった。…君は間違いなく、私の誇りだよ」

 「…うん!ありがとう…!」

 

 メダルを首に掛け、転弧を抱きしめる千雨。先程同様大きな拍手が会場に鳴り響き、彼の優勝を祝福した。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「志村くん」

 「…那珂か」

 

 表彰式の後、美智榴が転弧に話しかける。今までになく引き締まった表情で、転弧も思わず身構えたが…その心配は杞憂に終わった。

 

 「どうしよう。めっちゃ嬉しい」

 「…はぁ?さっき明らかに悔しくて泣きそうになってただろ…?」

 「いやぁ何か冷静になってみると準優勝も普通に凄いじゃん、って思ってさ!勿論悔しくはあるけど、それより嬉しさが勝っちゃって」

 「何だそりゃ…まあ、それならそれでいいよ」

 

 話を切り上げようとする転弧に、最後に美智榴が言葉を投げる。

 

 「待って、志村くん!……次は、あたしが勝つからね!」

 「…おう。チャンピオンはいつだってチャレンジャーを待ってるぜ」

 

 拳を突き合わせ、笑い合う二人。互いに自らの全力を賭して闘った末に、彼らは新たな段階へと進んだのだった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「というわけで!転弧くん優勝おめでとうパーティー!」

 「わーい!おめでとう転弧くん!でも生放送見たかったのです!」

 「仕方ないですよ。勉強も大事です」

 

 体育祭を中学校に行っていたため見ることができなかった被身子。そのことを嘆きつつも、素直に転弧を祝っている。一方、それで思い出したのか仁が千雨に苦言を呈す。

 

 「千雨さん…昼間のアレは何だ?全国のお茶の間にあんたの無様な姿が生中継だ。思わずぶったまげちまったぜ」

 「────う、映っていたのかい?…なんて事だ」

 「それはこちらの台詞です。まあ人間らしい所を皆に知ってもらえたとポジティブに考えていきましょう」

 「くっ…!ミッドナイトも悪いんだよ?あんなのが通っていい訳無いじゃないか!」

 「それでも貴女のような人が出るとは誰も思わないでしょう…」

 

 流石に呆れを隠せない心詠。彼らの反応を見て、被身子も俄然興味が湧いてきたようだ。

 

 「えー!?千雨さん何しちゃったの!?録画してるんでしょ、見たいのです!」

 「やめといた方がいいと思うけどな…それはともかく、ごめんな千雨さん。傷つけるようなこと言っちまってさ」

 

 転弧が彼女をやんわりと制止しつつ、千雨に謝罪する。それを受け、千雨は滂沱の涙を流した。

 

 「…!?………あぁ、よがっ゛だあ゛あ゛…ずっど、ずっど…ぎに゛じでだん゛だよ゛ぉ゛〜…」

 「お、おい…泣きすぎだって…ほんと悪かったよ」

 「……こんな千雨さん、初めて見ました…」

 「被身子、録画見るか?ある意味もっとすげえぞ」

 

 パーティーは、そんな混沌とした様相の中始まったのだった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 『見てたよ転弧!!凄かったじゃん!!』

 「ありがとう、華ちゃん」

 『お母さんにも電話した!?何て言ってた?』

 「もう電話したよ。…頑張ったねってさ」

 『ふふっ…!そっか!……それにしても、ダストさん、その…凄かったね』

 「あ、あはは…」

 

 事務所の一室。パーティーの最中、主役は一人抜け出して家族と電話を繋いでいた。体育祭の結果に称賛を送られ、恩人の醜態に微妙な反応をされ、楽しい会話を繰り広げながら、今後についても語り合った。

 

 『ねえ、転弧。卒業したらさ、帰って来るんだよね?……ダストさんの所に通うのは…その、難しいような気がするんだけど』

 「うん。だから、独立するつもりかな」

 『…そう、なんだ』

 

 志村家は都心部からかなり遠く離れた住宅街に位置している。そのため、卒業後に家から事務所に通いつつ千雨のサイドキックとして活動するのは難しかった。

 

 『……それだと…ダストさん、寂しくなりそうだね』

 「────」

 

 転弧は、思いも寄らぬ言葉を告げられ声が出なかった。

 

 「(……そうか。千雨さんは、俺が居なくなると…一人暮らしに戻るのか)」

 

 それでも、心詠や仁といった仲間たちが彼女の孤独を埋めてくれるだろうと思いつつ、転弧は少なからず寂寥感に襲われていた。

 

 『転弧?』

 「ああ、いや…そうだね。…寂しくなる、か」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「おっ。存分に話せたかい、転弧くん?」

 「…うん。ありがとう、千雨さん」

 「いいんだよ。今までの分、もっと沢山家族と話していって構わないさ。さあみんな、主役が帰ってきたよ!パーティー再開といこう!」

 

 

 

 「(なあ、千雨さん。俺にとっては…あんたも大切な家族だよ)」

 

 迷いと悩みを抱えながらも、少年は少しずつ大きくなっていく。

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