すべては君のために   作:eNueMu

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※一部美智榴視点


那珂美智榴:オリジン

 

 小さい頃から、ヒーローが大好きだった。プロヒーローも、戦隊ヒーローも、プリユアも、とにかく全部が好きだった。

 

 「お父さん、お母さん!あたしもヒーローになれる!?」

 「ああ!美智榴ならきっとなれるよ!」

 「お母さん達、応援してるからね!」

 

 そう言ってくれたお父さんとお母さんは、あたしが中学生の時に突然帰らぬ人となった。ヴィランが関わったわけでもなく、ただの事故だった。

 

 「…美智榴ちゃん、ウチに来るかい?」

 「大丈夫です!1人でもちゃんと、やっていけますから!」

 

 あたしを引き取ろうとした親戚の叔母さんは、すごく悲しい目をして私を抱きしめてくれた。でも、あたしは悲しくなかった。ヒーローは困難を乗り越えて強くなれるって、知ってたから。

 

 実際それからは凄く頑張ったのもあって、中学の段階でいきなり学費免除を言い渡された。初の雄英出身者が出るかもしれないってことで、学校側も異例の対応をしてくれたらしい。流石に推薦入試の日程を間違えたのは、めちゃくちゃ怒られたけど。

 

 一般入試でも、またまたうっかりしてしまった。その時に助けてくれたのが、志村転弧くん。あたしよりももっと凄い子で、ヒーローアニメのライバルキャラみたいな雰囲気。この子となら、きっとあたしは本物のヒーローになれる。そうしたら、きっと────お父さんたちも、生き返らせたりできるよね?ヒーローの物語は、いつだってハッピーエンドなんだから。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「…珂!おい、那珂ァァ!!」

 

 誰かが、あたしを呼んでる。…ああ、志村くんか。あたし、デッカいヴィランに踏み潰されたんだっけ。

 そろそろ、起きなきゃね。ヒーローはこんなとき、笑ってこう言うんだ。

 

 「…!!那珂ァ!!無事か…」

 「無駄だヴィラン!!正義は決して悪には屈しない!!」

 「…は?」

 「うぬううゥゥ…主の懸念は正しかったか…確かに並ならぬ強靭さ!!」

 

 そう、ヒーローなら…敵にやられたりしない!ヒーローなら…いつだって最後には勝って終わるんだ!!()は今、ヒーローだ!!

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「志村ッ!!奴の足元を狙うんだ!君は補助に徹してくれ給え!私が奴を叩くッ!」

 「お、おい…!?どうした那珂!!頭でも打ったか!?」

 

 ギガントマキアによって踏み潰されながら、一見無傷で立ち上がったように見えた美智榴。しかし様子がおかしいことに転弧は気付く。

 

 「否!我が名は『ミーティア』!全ての悪を挫くべく、今この瞬間を以って馳せ参じた真のヒーロー!!此処からは…一切加減しないぞヴィランッ!!」

 「ヌウウッ!?」

 

 訳の分からないことを言いながらギガントマキアに吶喊する美智榴。そのまま異常な程の速度で突っ込み、彼を押し返す。

 

 「(な…何が起きてる!?あいつの個性にここまでの出力は無かっただろ!?様子もおかしい…!さっきまで逃げてたのに、急に立ち向かいだしやがった!今のあいつは何か変だ!)」

 

 困惑しつつも、美智榴に言われた通りマキアの足元を崩壊させる転弧。体制を崩したマキアの顔面に、美智榴が演技がかった台詞を吐きながら殴打を繰り返す。

 

 「諦めろッ…!もうお前に勝ち目はない!我が『メテオシャワー』を受けて立ち上がった者は…何ッ!?」

 

 しかし、岩のような外殻を砕かれながらも、マキアは平然と立ち上がる。美智榴の預かり知らぬことではあるが、彼は個性によって痛覚を喪失しているのだ。

 

 「貧弱すぎる…タフなだけかッ!?今すぐすり潰してやるッ!!」

 「ぐうっ!」

 

 飛び上がったマキアのダブルスレッジハンマーで叩き落とされる美智榴。しかし、此方もすぐさま立ち上がり距離を取る。

 

 「言ったはずだ…悪には屈しないと!お前の攻撃は何一つ私には通用しない!」

 「…那珂。先生たちを呼ぼう。今のお前ならあいつからも簡単に…っておい!」

 

 転弧の言葉を無視し、またもマキアに突撃する美智榴。今度は更に速度も威力も上がっているらしく、受けたマキアの胴に大きく罅が入った。

 

 「グオオオオッ!!小賢しいッ!!」

 「む…!!変身か!?」

 

 痺れを切らしたのか、その姿を大きく変貌させて美智榴を仕留めにかかるマキア。両手の爪は長く伸び、顔にもフェイスカバーのような甲殻が被さっている。

 

 「砕けろオオオ!!!」

 

 爪の一振りで山が抉れ、地形が変わる。未だ逃げ惑う生徒たちにも危険が及び、それは転弧にも…

 

 「ぐっ」

 「…!!しまった…!!志村ッ!!」

 「ちょこまかとォッ!!」

 

 マキアの凶爪が再び振われ…半ばで、美智榴の蹴りに止められる。

 

 「クッ…これ、以上、好きにはさせんぞオオオォッ!!!」

 「大人しくしろオオオォ!!」

 

 巨人と少女が真正面からぶつかり合い、互いに血を流し始める。マキアは一部の甲殻が完全に砕かれ始め、美智榴は個性の制御に限界が近付きつつあった。

 

 「脆い!!さっきよりも!!」

 「お前もだヴィラン!!決着をつけてやるッ!!」

 

 マキアが爪を振るう。

 受けた美智榴の骨が砕ける。

 尚も彼女が反撃する。

 マキアの左腕が動かなくなる。

 

 「ガアアアアアアアアァァァァッ!!!!」

 「はああああああああぁぁぁぁッ!!!!」

 

 大小の拳が激突し、ほんの一瞬の静寂。

 

 「……ヒーローは…負け…な…」

 

 先に限界を迎えたのは、美智榴だった。全身から血を流し、それでもマキアに立ち向かおうとするが…身体から力が抜け、気を失う。

 

 「ハァ…ハァ…危険、因子……排除オオオオッ!!!」

 

 満身創痍のマキアも、倒れた彼女を引き裂かんと右腕を高く掲げ…

 

 「させねえよ」

 「ヌァ!?」

 

 復活した転弧によってそれを崩壊させられる。

 

 「へへ……悪いな。こういう、土壇場で…よく成長するんだよ、俺」

 

 転弧が触れていたのは、マキアの脚。間接的に右腕を崩壊させた彼に、マキアは激しい怒りを向ける。

 

 「おのれェェェ!!!最初から最後まで邪魔立てをォォォ!!!」

 「…おいおい……流石に気絶してくれよ」

 

 立ち上がり、先に転弧を始末すべくそちらに振り返るマキア。…その判断が、彼の命運を分けた。

 

 「DETROIT SMASH!!!」

 「ガッ…!?」

 

 致命的な攻撃を受け、マキアは遂に倒れ伏した。駆けつけた教師やヒーロー達も、生徒の救護に当たる。

 

 「志村くん!?大丈夫!?」

 「…先生」

 「生きててくれて良かった…本当に…!!ごめんなさい…気付くのが遅れてしまって!那珂さんは!?」

 「多分この子だミッドナイト!酷い怪我だ…!すぐに病院へ!!」

 「!!ええ、分かったわ!!ピクシーボブ!!」

 

 ヒーロー達が協力し、美智榴を応急手当てしながら搬送の準備を急ぐ。そして美智榴を預けたナンバー1…オールマイトが、転弧の方に向き直った。

 

 「…君が、志村転弧くんか」

 「…?はい。…オールマイトが、何でここに?」

 「ダストが泣きそうな声で私に連絡してきてね…君たちを救けて欲しいって。彼女にもちょっと事情があって、こっちに来られそうになかったみたいでさ」

 

 オールマイトの言葉に驚きを隠せない転弧。

 

 「……まさか千雨さんここまでついて来てたのか?でも、なんで…」

 「ごめんな。話しにくいことなんだ」

 「…まあ、構いませんよ」

 

 そして彼はふと、口を開いた。

 

 「……あの人にとっては…俺もまだ、子供なのかな」

 「…かもな。けど転弧くん、君の頑張りは私から彼女にちゃんと伝えておいてやるぜ?」

 「…え?」

 

 時折マキアの方を警戒しながらも、オールマイトは言葉を繋ぐ。

 

 「さっきの子が…君の守ろうとした子なんだろ?美智榴ちゃんって名前はちょくちょくダストから聞いていたよ。転弧くんと仲がいいってね」

 「…あのデカブツを追い詰めたのは殆ど那珂1人です。俺の力じゃ…」

 「それでも君が居なけりゃ彼女も助からなかったかもしれないだろ?……大丈夫だ転弧くん。君は誰よりも立派なヒーローになれるさ。私が保証するよ」

 「……ありがとう、ございます」

 

 ひとまず納得しておくことにした転弧。そんな彼を、オールマイトは優しい眼差しで見つめていた。





雑に覚醒させてしまって申し訳ない…
ここで出すにはギガントマキアがあまりにも強すぎました()
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