ほぼ原作なぞってるだけの嘘みたいな話になってしまったので読み飛ばしてもらって構いません()
「強盗だァ!!!誰かああああ!!」
誰かが叫ぶ。
「キリねえなー」
誰かが呟く。
「キリはある。何故って?」
言葉を返すのは、ナンバー1。
「私が来た!!」
運命の歯車は、ようやく彼らをここまで運んできたのだ。
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強盗は、辛くもナンバー1から逃れた。己の身体をヘドロ化させる個性を活かし下水道を通ってマンホールから再び地上に出た彼は、偶然そこに居合わせた1人の少年を襲う。
「大丈ー夫…身体を乗っ取るだけさ、落ち着いて。苦しいのは約45秒…すぐに楽になるさ」
「ん゛ーー!!」
突然襲われ抵抗するも、逃れられそうにない少年。しかし、救いの手はやって来る。
「TEXAS SMASH!!」
ヴィランを追ってきたナンバー1…オールマイトによる拳の風圧は、彼を危機から救った。飛散したヘドロヴィランをペットボトルに詰めたあと、やがてショックによる気絶から覚めた少年に謝罪と礼をしつつ、ナンバー1は空の彼方へ飛んで行こうとしたが…
「コラコラー!!放しなさい!!熱狂が過ぎるぞ!?」
「僕…!あなたに直接っ…!!色ろ色々…ぼっ!あなっ…」
「オーケーオーケーわかったから目と口閉じな!」
なんと救けられた少年が彼の脚に捕まったまま着いてきたのだ。そのまま彼は、オールマイトと共にビルの屋上に着地した後彼に問うた。
「『個性』がなくても…ヒーローは出来ますか!?……『個性』のない人間でも…あなたみたいになれますか?」
少年は、「無個性」だった。個性所有者が8割を超える現社会において、マイノリティと呼ばれる側の人間だったのだ。それでも、己のヒーローになるという夢をナンバー1に保証してもらいたいと縋る思いで声を出すが…
「………夢見るのは悪い事じゃない。だが…相応に現実も見なくてはな少年。『個性』がなくとも成り立つとはとてもじゃないがあ…口に出来ないね」
オールマイトが告げるのは残酷な事実。個性のないヒーローなど、今日まで前例は無かった。
「………そう、ですよね」
「…済まないね。ではな、少年」
そのまま再び空の彼方に去っていったオールマイト。少年は失意の中、ビルを後にした。
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「さて……おや?」
何処かに着地したオールマイトは、そのままヴィランを警察に持って行こうとして…
「な…無いッ!?ホーリーシット!!何処かに落としたのか!?一体いつ…」
ヴィランを詰めたペットボトルを落としていたことに気付く。いつの間に落としたのかと、あたふたしているうちに…その可能性に思い至る。
「(そうか!さっきの少年にしがみつかれた時…!だとしたら彼が危ない!!)」
オールマイトはそう考え、すぐに彼のいた所に引き返すべく跳んでいく。…運の悪いことに、丁度同じタイミングで爆音が響いたことに気付かないまま。
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「こぉんのおおおおおおッ…!!!」
現場では、中学生の少年がヘドロヴィランに襲われながらも激しい抵抗を続けていた。少年は、先程襲われていた子とは別の少年。…もっとも、浅からぬ因縁のある者ではあるのだが。
「ダメだ!これ解決出来んのは今この場にいねえぞ!!」
ヒーロー達も現場に駆けつけるが、直接彼を救おうとする者はいない。相性が悪い、あるいはそこでの戦闘が困難であるということから…皆、傍観せざるを得なくなっていた。
「(……クセでつい来ちゃったってか)」
そこに、無個性の少年も通りかかる。意気消沈しながらもヒーロー達の活動を見ずにはいられなかったか、現場の人だかりに近づき…ヴィランを見て、驚愕に顔を歪める。
「(────あいつ何で!!!?オールマイト!?逃げられたのか!?…落とした…!?だとしたら……)僕の…せい……!」
連続して轟く爆音に、流石のオールマイトも気付き今まさに現場に到着しようとしていた所だった。しかし、それよりも早く────
「(────────)」
少年は、ヴィランに捕らえられた人物と…その顔を見て、駆け出した。傍観していたヒーロー達が彼を制止する中、無個性の少年はそれでも目の前の少年…腐れ縁の幼馴染を救うべく動く。
「かっちゃん!!」
「何で!!てめェが!!」
無個性の少年は…彼に凄惨ないじめを受けていた。個性を理由に罵られ、蔑まれ続けた。…実の所は、もう少し複雑な事情があるのだが…ともかく、それでも少年は彼を救おうとした。
「足が勝手に!!何でって…わかんないけど!!!」
少年は、ヒーローがそうするように笑って彼にこう言った。
「君が、救けを求める顔してた」
「よく言った少年!!!!踏ん張ってろよッ!!!」
直後、上空から彼に称賛の声が届く。ついに到着したナンバー1が、少年2人の腕を掴み、彼らを引っ張りながらの一撃をヴィランに放つ。
「DETROIT SMASH!!!」
放たれた拳の衝撃はヴィランを完全に飛散させ、余波による気流の変化は突然の雨を辺りにもたらす。
「すげえええええ!!これが…オールマイト!!!」
歓声の中…オールマイトは、無個性の少年を見つめていた。
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無個性の少年の蛮勇は、讃えられることはなかった。逆に抵抗のあまり被害を広げた筈の爆破の少年は、多くのヒーローから褒められた。しかしながらどちらも不満を露わにした表情のまま、2人は帰り道を往く。
「デク!!!俺は…てめェに救けを求めてなんかねえぞ…!救けられてもねえ!!あ!?なあ!?一人でやれたんだ」
爆破の少年は無個性の少年を呼び止め、ありったけの捨て台詞を吐きながらその場を後にする。無個性の少年も、彼の言葉を正面から受け止めヒーローの夢を諦めようとして…
「私が来た!!」
「わ!?」
目の前に現れたオールマイトに思わず驚く。
「オールマイト!?何でここに…」
「……礼と訂正。それと提案をね、しに来たんだ」
「提案?」
彼の言葉に、少年は問い返した。
「ひとまずは…ありがとう。君のおかげで、ヒーローのあるべき姿を…改めて思い出すことができた。そして、訂正しよう。あの場で…『考えるより先に体が動いていた』であろう君なら……きっとなれるさ」
「────────そ、れって」
多少の差異はあれど、その結末に変化は無く。
「────君はヒーローになれる」
少年が、最高のヒーローになるまでの物語が…始まった。