『超大型新人の裏の顔!?未成年誘拐の瞬間を激写!!』
その日、日本全国は衝撃に包まれた。ビルボードチャート5位…「ダスト」が犯罪に手を染めるその瞬間が、大手出版社によってスクープされたのだ。情報は瞬く間に世間に浸透し、しかし地上波での報道を待たずして情報規制が行われることとなる。その裏では、様々な人物の思惑が渦巻いていた。
『ダストさん』
「はぁ〜い。ひょっとしてもう見た感じ?」
『ええまあ。…何か理由があるんでしょう?』
「さっすがあ!私のことよくわかってくれてて嬉しいよ」
『今どちらに?』
「ちょっと母校の方にお邪魔してますよっと。根津校長に色々と説明して協力してもらおうと思ってね。」
『成程。ではテレビ局各社にはこちらで報道自粛を促しておきますね。従うかは怪しいですが時間稼ぎぐらいにはなるかもしれません』
「ありがと。助かるよ」
電話を終え、同時に面談の許可が得られたと事務室から職員が出てくる。堂々と志村転弧を連れた千雨は、そのまま校長室へと向かった。
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「ーというわけです」
「そうか…証明は可能なのかい?虐待があったということについての」
「どうでしょうか…この子と家族の証言があれば世間の目は誤魔化せると思いますけどね。躾と言われればそこまでという気もします」
「だね。僕はやっぱりさっきの案で行くべきだと思うよ。家族も納得させるならそれしかない」
「わかりました。それでは…」
「うん。志村転弧くんの両親に連絡して、僕と一緒に事情を説明するとしようか。…それにしても、まさか模範的な生徒だった君がこんなことをしでかすとはね。僕の頭脳を以ってしてもここまでは予想できなかったよ…君の担任の先生もひどく驚いていた」
「あはは…すみません」
呆れたように嘆く根津校長。やっていることは疑いようもなく犯罪行為であるため、千雨も否定することはできない。そんな二人の会話を出されたジュースを飲みながら静かに聞いていた転弧だったが、千雨は彼を見やると自らの一部を塵に変え、座ったままの姿勢の転弧を別室へと運んでいく。
「あ、あれ?お姉さん?」
「ごめんね転弧くん。けどまだ君をお父さんには会わせられないからさ…。安心して。ちゃんとそっちでも私がついてるから」
「…うん」
不満げではあったが、もう転弧の個性が暴走する様子はなかった。
それからしばらくして転弧の両親が到着し、根津と千雨が揃って彼らと向き合う。形式的な挨拶を交わしてすぐさま、父…弧太朗が口を開いた。
「転弧を返してもらえますか?」
意外なほどに早い切り出しに、千雨が弧太朗への評価を上げようとして…彼の表情からそれが誤りであることに気づく。
「(あぁ…ヒーローと関わりたくないんだね。転弧くんに対する愛情も皆無ってことはないんだろうが…それよりもさっさと連れ帰りたいって気持ちが滲み出てるよ。外聞とか気にしてたりするのかな)」
「あの…私からもお願いです。話がある、ということでしたが…一先ず息子を返してはいただけないでしょうか」
対して彼の妻は同じ要求をしていてもその表情は弧太朗とは全く異なるものであった。我が子を心配し、事実上の誘拐犯である千雨に強い警戒を示す顔だ。しかしその上で、千雨は断言する。
「できません」
「何故ですか?ひょっとして身代金でも請求するおつもりで?」
「彼の個性が危険だからですよ」
「…なんだって?」
弧太朗の悪意ある言葉を受け流しつつ、彼女は本題に入る。
「『崩壊』…とでも言いましょうか。それが転弧くんの個性です。私が彼を連れ去ったあの瞬間に発現したもので、その手で触れたもの全てをバラバラに壊し…そこからさらに崩壊が伝播していく。幼い子供が振るうには余りにも致命的すぎる」
「全く面白くない冗談だ。うちの家系にそんな個性を持った人間はいない。勿論妻の家系にも!第一本当だとして何故!あの夜!あの瞬間に!転弧の個性が発現するなんて分かるんだ!?転弧を連れ去ったあんたは何故バラバラになっていないんだ!?矛盾点が多すぎる!咄嗟に思いついた言い訳にしたって随分と出来が悪いんじゃないか?」
「彼の個性があの瞬間に発現したことについては全くの偶然ですよ。たまたま通りかかったところにたまたま家の外に閉め出された子供のすすり泣きが聞こえた。ヒーローがその子を保護するには十分すぎる理由だ。そして私の個性は『塵』。多少バラバラになったところで私自身が塵になれるんだ…なんてことはありませんよ。それにしても…自慢じゃありませんが、この一年で私がテレビに出ない日の方が珍しかったはずです。ネットでだってちょっと調べれば私の個性なんてすぐにわかるのに…転弧くんも私のことを知らなかったようですし、相当ヒーローがお嫌いな様で」
「…ッ」
言葉の応酬はなおも続く。
弧太朗の奥さんって名前出てましたっけ?多分出てないはず…
千雨の電話相手のサイドキックはオリジナルキャラの予定ですが…ちゃんと出せるのがいつになるやら()
(追記)
ミッドナイトを主人公の担任設定にしていたのですが、大体原作開始15年前程度だとすると全く年齢が足りないことが判明。急遽名無しのモブに変更しました。にわかですまん…マジに。