すべては君のために   作:eNueMu

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葬る者

 

 ウソの災害や事故ルーム…略してUSJ。色々と危ない雄英の訓練施設に、出久たち1年A組は来ていた。今回の訓練目標をヒーローであり教師の「13号」が説明する。

 

 「個性は一歩間違えれば人を傷つけ殺す能力にもなる。ここではそうならないよう人を守る訓練をします。人命のためにどう個性を使っていくのかを学んでいきましょう。君たちの力は人を傷つけるためにあるんじゃない。助けるためにあるんだと心に刻んで帰ってくださいな」

 

 その場には彼女に加え、担任のイレイザーヘッド、そしてオールマイトが居合わせている。もしものことがあっても大丈夫だと、そう誰もが思っていた中…轟音が響いた。

 

 「な、何だァ!?」

 「訓練…じゃなさそうだな」

 「13号!!生徒たちを頼む!」

 

 突然の天井の崩落。生徒たちが動揺する一方、イレイザーはいち早く対処を開始する。「抹消」の個性を発動させ、崩落部を見つめると…

 

 「お、オイオイ!!なんだアレ!?デカすぎねぇか!?」

 

 巨大な鯨のような頭部を施設内に突っ込ませたヴィランが現れた。しかし、相応に大きい脳が剥き出しになっており、まともな存在でない…即ち、脳無であることは見て取れる。

 

 「(萎まねぇ…!異形型か!透明になってたのはアイツ自身の個性かそれとも…!)」

 「相澤くん、そのまま頼む!私が叩く!!」

 

 相手がこれ以上何かを仕掛けてくる前に終わらせてしまおうと、先制して飛び出すオールマイト。そのままヴィランに渾身の一撃を叩き込む。

 

 「DETROIT SMASH!!!」

 「ヴォォォォォーーーー…」

 

 しかし、それを受けたヴィランは不気味な鳴き声を残すのみで特に堪えた様子はない。さらに、その口を開くことで施設内に何かを吐き出した。

 

 「あぁんもうベトベト…最悪よぉ〜」

 「しかもクッセ!!これからずっとこんなのかよ!?」

 「五月蝿いなお前ら。先生がわざわざ用意してくれたんだ…文句言うな」

 「いや俺らその『先生』に会ったことねえのに無茶言うなァ!」

 

 出てきたのは…無数の脳無と3人のヴィラン。軽口を叩きながら、ヒーローと生徒たちに向き直る。ヴィランはそれぞれ、女口調の大柄な男、仮面をつけた紳士然とした男、そして…手元が露出してしまっているグローブとブーツを身につけた女性のような顔の青年だった。

 

 「よぉ勘違いヤローども、授業中で何よりだぜ。今日はちょっとした挨拶ついでに……ん?オールマイトもいんじゃん。ラッキー」

 「…………き、さま…一体、何だ…!!!それはァァァ!!!」

 

 オールマイトの壮絶な激昂に、生徒たちは勿論13号やイレイザーまでもが面食らう。しかし青年はあくまで気味の悪い笑みを張り付けたまま、オールマイトの質問に答えた。

 

 「あぁ……ひょっとしてこのマスクのこと?いいだろ、先生に貰ったんだ。────後から聞いたら、対平和の象徴特攻だって言ってたけど…ホントだったみたいだね」

 「…ッッッ!!!」

 

 変装のようなものなのか、マスクは青年の顔にピッタリと合致しており、本物の顔のようにしか見えない。そのことが、オールマイトにより大きな精神的ダメージを与えた。

 

 「オールマイト!!落ち着いてください!!何だかよく分かりませんが…今はとにかくこいつらを!!!」

 

 衝撃に立ち尽くすオールマイトを、イレイザーが呼び戻す。無数の脳無たちは既に動き始めており、生徒も巻き込まれ始めていた。

 

 「ちょっと!個性使えないわよぉ!?」

 「コイツイレイザーヘッドだ…消せるんだよ個性を!わりぃ俺パス、マグ姐頼むわ!」

 「んもぅ酷いわ…ねッ!」

 「チッ」

 

 女口調の男にイレイザーを任せ、仮面の男はA組の生徒たちの方へ向かう。イレイザーがそれを阻止しようとするが、女口調の男に阻まれてしまった。素の身体能力が高い彼…あるいは彼女相手に、イレイザーも手を焼く。

 

 「(見た目に反してちょこまかと…!!)」

 「布邪魔!!小汚い男は嫌われるわよぉ?」

 

 一方生徒たちの方では、13号が個性使用を許可し脳無たちへの反撃が繰り広げられていた。

 

 「フルカウル……5%!」

 

 出久もOFAを最低限使いこなして応戦しつつ、オールマイトを気にかける。

 

 「(さっき…凄い迫力だったけど…!!大丈夫ですよね、オールマイト……!?)」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「どうしたよ平和の象徴?随分動きが読みやすいぜ?」

 「(おのれ…おのれAFO!!!よくもお師匠の亡骸を!!!弄んでくれたなッ!!!)」

 

 オールマイトは青年を捉えきれずにいた。原因は、彼のマスク。人の顔をそのまま切り取ったらしい背徳的なそのアイテムは…先代OFA継承者、志村菜奈の顔そのものだった。そのせいで動揺と躊躇が生じ、オールマイトは全力を出しきれていなかったのだ。

 

 「へへ…隙ありだ」

 「!!うおおッ」

 

 綻びを見せたオールマイトに掌を突き出す青年。オールマイトはそれを何とか躱すが、そのまま青年の掌と接触した背後の岩が黒く変色し溶けて崩れ落ちた。

 

 「(……確かに…!私のパフォーマンスは今劣悪そのものだがッ!!それを差し引いても目の前のこの男は強い!!!個性も、地力も!!相澤くんでも抑え切れるかどうか…!!)」

 「…あ、そーだ。自己紹介してなかったや」

 

 オールマイトの思考を遮るように呟いた青年は、そのまま戦いつつ彼に己の名と目的を告げる。

 

 「俺、死柄木葬(しがらきほうま)。今日は雄英めちゃくちゃにしに来たからよろしく」

 

 歪みの権化が、現れた。

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