すべては君のために   作:eNueMu

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撃退か、はたまた

 

 「AFOの後継?」

 「そうです。最終的に志村転弧くん…改め死柄木弔は、AFOの新たな器となる。全ては奴が完璧な肉体を取り戻し、理想の支配者になるために」

 「……一体どうやってそんなことを?」

 「『マスターピース』という、脳無の最高段階のようなものを産み出す技術があったんですよ。死柄木弔はその素体に選ばれ、AFOの個性をその身に宿しうるだけの容量を備えた。そしてAFOの個性は…AFO自身の意識をも宿しているんです」

 「だが、嬢ちゃんの言い方だと心配はいらねぇようにも思えちまうぞ?もうマスターピースとやらは作れねぇんだろ?」

 「………その筈、というだけです。そもそもAFOの個性さえ取り込めるなら、マスターピースを作る必要はない。……そんな人間はAFO本人以外にはいないでしょうが…万が一、『死柄木』の姓を持ったヴィランに出会ったなら…最優先で対処をお願いします」

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「死柄木、葬」

 「あーそうだぜ。リピートしてくれなくて構わねえからさっさとくたばりやがれ」

 

 千雨から聞いた話を思い出し、オールマイトの瞳に力が戻る。死柄木が彼をその掌に捉えようとするが…

 

 「TEXAS SMASH!!!」

 「う、おっ!?」

 

 オールマイトがフルパワーの風圧を以って死柄木を遠ざける。

 

 「ありがとう……おかげで目が覚めた。お前はやはり、AFOの手先に過ぎない。お師匠の顔をしていても…邪悪そのものでしかない」

 

 そのまま死柄木を見据え、宣言する。

 

 「終わらせてやるさ。お前の蛮行も、奴の野望も!!」

 「……チッ。『オールマイト は めをさました!』って訳かよ…オイ!!お前もそろそろ働け『キュレートス』!!!」

 「!!!…ゥ゛ォォォォォオオオオ!!!」

 

 ナンバー1の復活に警戒を示した死柄木は、頭上に向かって声を張り上げる。「キュレートス」と呼ばれた巨大脳無はそれに応じて咆哮すると、無理矢理USJへの侵入を試み始めた。

 

 「う…うっさ…!!」

 「おいヤベェぞ!!!アイツ入ってこようとしてるって!!」

 

 脳無と仮面の男を相手にしていた生徒たちも、流石にこれには焦りを隠せない。

 

 「悪いがさっさとケリを…」

 「つけられるもんならつけてみろよ平和の象徴…俺は逃げさせてもらうけどな」

 

 キュレートスをどうにかすべく先に死柄木を倒そうとしたオールマイトだったが、死柄木は地面を黒く溶かして地中へと逃げてしまった。

 

 「逃がすか────」

 「オールマイト!!!」

 「ッ!?」

 

 彼を追いかけたいオールマイト。しかし間の悪いことに雑兵脳無の攻撃が飛んできたせいで時間を稼がれてしまった。イレイザーのおかげでまともに喰らうことは避けられたものの、死柄木を取り逃がしたことは彼にとって痛恨の極みだ。

 

 「余所見して良いのかしら……あらっ!?」

 「ああ。敢えて隙見せてやったんだよ…梃子摺らせやがって」

 

 オールマイトに声を掛けたイレイザーの隙を突いた女口調の男…の隙を突いたイレイザー。これでオールマイトと共にキュレートスに対処できるようになったのだが…

 

 「オオオオッ!!!」

 「ヴォォォ…」

 

 ナンバー1の乱打を受けてなお、キュレートスは微動だにしない。イレイザーが「抹消」を発動させても縮んだりしない所を見るに、常時発動型の個性がいくつか搭載されているのだろう。

 

 「ダメだ!!13号!生徒たちを外へ!!」

 「はいっ!!」

 

 押し戻すことが難しいと悟ったオールマイトは、USJを諦め避難を促す。未だ残る脳無たちを蹴散らしつつ、雄英メンバーがどうにかUSJから脱出した直後。

 

 「ヴォォォォォ!!!!」

 

 キュレートスが完全にUSJに突っ込み…すぐさま、施設全体が崩れ落ちる。脳無たちが衝撃で死んだのか、散発的に爆発も生じていた。

 

 「…あれ?俺たちと戦ってた仮面がいねえぞ!?」

 「逃げ遅れたのか…!?」

 

 同時に、生徒たちが1人のヴィランが居ないことに気付く。イレイザーに捕らえられたままの女口調の男の他にいた、仮面の男が居ないのだ。

 

 「…いや!!」

 

 しかし、即座にイレイザーが状況を看破する。……キュレートスが、仮面の男を背に乗せて再び動き始めたのだ。

 

 「悪いねー諸君!死柄木の奴が色々言ってたけど、まあいわゆる…ハッタリって奴さ!!」

 「ヴォォォォォォッ!!!」

 「相澤先生!!!」

 

 動き出したキュレートスが大口を開けて狙うのは、イレイザー…ではなく、隣にいた女口調の男だ。

 

 「アデュー♡」

 「な…!!しまった…!!」

 

 キュレートスは彼らが退避した隙に女口調の男を口に収めると、そのまま頭の上の仮面の男も曲芸じみた動きで同じように口に運ぶ。

 

 「そんじゃあまた会おうぜ!!俺たちは敵連合(ヴィランれんごう)!!名前だけでも覚えといてくれよな!!!」

 「ぐ…!!」

 

 仮面の男はそう言い残し、口の中に消える直前に何処から取り出したのかスタングレネードを投擲。オールマイトやイレイザーの目を強制的に潰した。

 

 「……クソ…透明化…それに飛行系の個性も持ってたか…?跡形も無く消えやがった…!!」

 「…間に合わなかった、か」

 

 再び光を取り戻したイレイザーがダメ元での「抹消」を試みる一方で、オールマイトは静かに呟く。…少しして、その場に到着したのは千雨だった。

 

 「!ダストさん…!」

 「やあイレイザー。……襲撃の連絡をオールマイトから受けて、全速力でここまで飛んできたんだけどね。…もう、この辺りにもそれらしいのはいないな」

 「………済まないダスト。予想以上に敵の判断が早かった…私のミスだ」

 「…いえ…この惨状を見れば分かりますよ。結構大変なのが出てきたみたいですね」

 

 生徒たちがチャート1位と3位の共演に目を輝かせるのをイレイザーが制止し、彼らを2人から遠ざけていく。一方USJが「原作」よりも遥かに破壊し尽くされているのを見て、自身の見通しが少しばかり甘かったかもしれないと考える千雨。しかし同時に、ここで襲撃を仕掛けて来たことに対する僅かばかりの安堵もあった。

 

 「(転弧くんの年のマキアの件、そして今回の件を受けて、林間合宿は確実にヒーローの護衛を増やした厳戒態勢で臨むことになるだろう。そうなれば、違和感なく私と…()()()()が合宿先に赴ける。運次第ではそこで一気に形勢をこっちに傾けられる筈だ)」

 

 日程が曖昧だったUSJ襲撃に比べ、合宿襲撃は確度が高い。万全の体制で待ち構えられると千雨は考えていた。

 

 「……ダスト。今回のヴィランの中に…『死柄木』の姓を持った人物が居た。名は、死柄木葬。手で触れたものを黒く溶かし崩す個性を持っていた」

 「────そう、ですか」

 

 少しばかりの不安要素を、抱えながら。





(追記)千雨がオールマイトにタメ口だったのを修正。
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