すべては君のために   作:eNueMu

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出久たちの体育祭

 

 「…なるほど…こうなるのか」

 

 本日の千雨はヒーロー活動を行いつつ、携帯の画面を眺めていた。映っていたのは雄英体育祭1年ステージのライブ放送。既に最終種目が始まっており、内容は個性使用ありのガチバトル。概ね「原作」通りの展開で進んでいたのだが…

 

 「(────焦凍くんが優勝するとはね)」

 

 千雨の干渉により、僅かながら変化も生じていた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 『轟と緑谷!!両者激しい攻防が続くゥーッ!!どちらも機動力はあるが、僅かに緑谷が上か!?逆に制圧力は轟が圧倒的!!一瞬たりとも気が抜けねぇぞ!!』

 

 出久は千雨のアドバイスにより、既にフルカウルを使いこなしていた。対して轟も千雨による燈矢救出の影響を受け、エンデヴァーとの特訓が常識的な範疇に収まったものとなったことで、「半冷半燃」をしっかりとフルに活かして闘うことが出来ている。

 

 「緑谷……お前凄えよ。入学してきた時よりも、ずっと成長してる。正直、ここまでやるとは思ってなかった」

 「…ありがとう。でも…まだまだだッ!!」

 「……あァ…!そうだよな!!」

 

 互いに笑い合い、全力を出し尽くす2人。轟は出久のフルカウルに翻弄されながらも、痛打はしっかりと避けている。出久は積極的に攻め、少しずつ、確実にダメージを与えていく。しかし、5%の出力では…轟を破るには至らなかった。

 

 「ここで決めさせてもらうぞ!!緑谷ァ!!」

 「来い…!!勝つのは、僕だッ!!」

 

 巨大な氷壁を生み出し、出久にぶつけようと試みた轟。出久は紙一重でそれを躱しながら、氷壁の上を滑走して轟に接近するものの…

 

 「『膨冷熱波』!!!」

 

 「セメントスッ!」

 「(!!まずいッ!!!)」

 

 今度は炎を噴き出す轟。そのまま氷壁を大火力で粉砕し…同時にセメントスが観客席を護るように防壁を生成する。直後、戦場を中心とした空気の爆発が起こり、荒れ狂う強風が会場の人間を襲った。

 結果、出久は何とか直撃を避けて無事着地したものの風に煽られて場外に。勝利したのは轟焦凍…彼もまた、「原作」の同じ時期よりも少しばかり成長していたのだ。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 そのまま決勝で爆豪と闘った轟は、激闘の末彼の「ハウザーインパクト」を突破し辛くも勝利を掴む。敗れた爆豪も轟に突っかかるようなことはなく、大人しく表彰式に臨んでいた。

 

 「常闇少年、飯田少年。3位入賞、おめでとう!2人とも強みを活かした良いプレーが多かったけど…それぞれの課題もあったね。これから改善していこう」

 「恐悦至極」

 「はい!ありがとうございます!」

 

 オールマイトの言葉に素直な反応を返す2人。ステインによって兄のインゲニウムが再起不能にされることが無くなったため、飯田も表彰式の場にいたのである。

 

 「さて…爆豪少年。準優勝おめでとう……惜しかったね。君は君に出せる全力を振り絞った。恥じることはないよ」

 「……」

 

 そっぽを向きながらも、特に暴れたりといった様子はない爆豪。負けたこと自体は悔しいものの、納得はしているのだろう。

 

 「お待たせ、轟少年!優勝おめでとう!!大活躍だったじゃないか!エンデヴァーもきっと喜ぶ…」

 「焦凍ォォォォーーーッ!!!」

 「…喜んでるね」

 「…」

 

 そして優勝者である轟にオールマイトが労いの言葉をかけているときに、観客席にいたエンデヴァーが雄叫びを上げる。号泣しているのか、炎に包まれた目元からは蒸気が立ち上っている。轟も真顔でそれを受け止めつつ、オールマイトからメダルを掛けてもらった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「やあ、出久くん」

 「ダスト!…すみません、不甲斐ない結果になってしまって…」

 「それ、オールマイトにも似たようなこと言ったろ?」

 「は、はい……」

 

 体育祭終了後、会場に見に来ていなかったことを散々被身子に怒られた千雨は、ついでに出久の所にも寄っておくことにした。校内にいた彼に話しかけ、周囲に気を配りながら色々と言葉を交わす。

 

 「謝ることなんてないさ。この短期間であれだけ動けるようになったんだ、むしろ称賛されるべきだよ」

 「そう、ですか…?」

 「勿論。……ところで、最終種目一回戦の時…」

 「あ、そうだ!心操くんの洗脳を解く直前に、見えました、影!!継承者たちの!!……でも、8人ぐらい居て。オールマイトらしき人もそこに居たんです」

 

 どうやら心操との闘いでの洗脳解除は、しっかりと彼にOFAの深淵を覗かせたらしい。少し不安気な顔をする出久を見て、千雨が安心させようと説明をする。

 

 「あぁ、それについては心配要らないよ。その個性の中には既に彼の意識も宿っているというだけだからね。オールマイトが健在のうちは、ずっとぼやけたままだろう。……ちなみに、そのシルエットってどんな感じだったかな?」

 「え?どんな、って…オールマイトそのままでしたよ?」

 「…そっか」

 

 そこでも「原作」との微妙な差異が生まれていることに、彼女は気付く。

 

 「(出久くんの口振りからして、いわゆるマッスルフォームのオールマイトがOFAの中には居たんだろう。まあ、今の彼はトゥルーとかそういうのが無いから当たり前といえば当たり前だけど…4代目の四ノ森さんが顔に罅が入った姿であの中に居たことを考えれば、恐らく継承時の本人の状態に左右されるのかな?細かい負傷とかは別として、その状態が長く続いた場合…って所か)」

 

 思索に耽りつつも一旦それを切り上げ、出久に励ましの言葉を贈る千雨。

 

 「まあ、これで足掛かりは掴めた筈だ。何かの拍子に覚醒する可能性もあるから、十分気をつけてね。ひとまずは今まで通りフルカウルの%を上げるようにしていくといい」

 「はい。ありがとうございます!」

 

 幾らかの変化もあった体育祭は、こうして幕を下ろした。

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