すべては君のために   作:eNueMu

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スタンダール:その2

 

 また別の日、今度は出久の職場体験先にて。

 

 「大体10%ってとこか……まあ、伸び方としちゃ良い方か。先に嬢ちゃんからコツを教えててもらったおかげだな」

 「はい…!グラントリノとの特訓がじっくり出来て、自分でも驚く程動きが良くなっていく…!!まだまだ頑張ります!!」

 「気張んのは構わねえが…今日は脳無の頻出区域への出張だ。先走ったりするなよ小僧」

 「りょ、了解です!」

 

 「原作」と異なり安定した活躍を体育祭で見せた出久は、グラントリノの他にもかなりの数の指名を受けていた。しかし、オールマイトからの助言もあり、OFAを使いこなすためには彼の元で経験を積むことが1番だと判断したのだ。

 

 そんな彼は、しばらくグラントリノと鍛錬を続けるうちに許容量上限10%にまで到達。急速に成長しながらも、決して満足はしていない。グラントリノも彼を宥めつつ、内心新たな弟子の進歩に喜んでいた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 しかし、出張先では息つく暇も無い展開が彼らを襲う。

 

 「小僧!!向こうでも脳無が出やがった!この辺の警戒任せたぞ!」

 「はい!グラントリノもお気をつけて!」

 

 その日に限って、脳無の出現率が異常に高かったのだ。元々数の多い区域ではあったものの、1日にここまでの数が現れたことはない。現場に居合わせたヒーローたちとも協力し、手分けして鎮圧に当たっていたのだが…

 

 「ぐっ…!」

 「!!大丈夫ですか!?」

 「あ、あ。心配ない、大した怪我じゃないさ」

 

 流石にヒーロー側がジリ貧で、少しずつ傷を負うヒーローたちが増えていく。

 

 「(一体何が起こってるんだ…!?いくらなんでも多すぎる!……もしかして…USJの時のデカいのがどっかに居るんじゃ…!?)」

 

 彼らのカバーをこなしつつ、原因を探る出久。最も可能性が高いと思われたのは、巨大脳無「キュレートス」が透明化したまま脳無たちを吐き出しているというものだった。しかし、その場にそれを看破し得る個性の持ち主はいない。どうしたものかと悩む彼…その背後から新手が迫る。

 

 「君!!狙われてるぞ!!」

 「えっ!?クッ…!!」

 

 何とか迎撃を試みた出久だったが、それよりも早く横合いからの一閃によって脳無が崩れ落ちる。

 

 「うわ!?ありがとうございます……って!貴方は!」

 「救援要請が出た時、丁度近くに居たのでな」

 「スタンダール…!!」

 

 有名人に救われたことにちょっとした感動を覚える出久。しかしすぐに気持ちを切り替え、事態の収束を図る。

 

 「スタンダール、きっと脳無たちを出現させている元凶がいる筈です。貴方の個性で見つけられたりはしませんか?」

 「…成程。だが不可能だ。私の個性はそういった方面のものではない……それよりも現れる奴らを片付けていく方がいいだろう。無限に出てくるということはあるまい」

 

 スタンダール…赤黒血染の個性は、「凝血」。血を舐め取った相手の動きを────最低でも30分ほど止めることができる。本来ここまでの能力は無かったが、ヒーローを志して独学で制圧術を10年近く学び続けた結果、彼の個性は爆発的に成長したのだ。

 それでも、隠れているヴィランを見つけ出すような真似は出来ない。今彼に出来るのは現れた脳無を片っ端から処理していくことだけだった。

 

 「貴様らも立ち止まっている暇は無いぞ」

 「あ…!待ってくださいスタンダール!!」

 

 一言放って立ち去る彼を、出久は追いかける。

 

 「!!ほう…着いてくるか」

 「あ、あの!住民たちへの避難誘導をしたいんです!今のままだとどんどん脳無が増えていって彼らも危なくなる…!!貴方の協力があれば!」

 

 全力でないとはいえ自らに追い縋る出久を評価するスタンダール。さらに彼の提案を聞いて、益々仮面の下の笑みを深めた。

 

 「…良い提案だ。ヒーローとして申し分無し…だが、心配するな。このスタンダールが奴らが増えるより早く斬り伏せてみせよう」

 「えぇ!?ちょっと……だ、ダメだ…速い!もう追いつけなくなった…」

 

 だが、それはそれとしてさっさと脳無を撃破すべく彼は出久を置いて駆けていく。出久も追いつけず、結局はグラントリノに言われた通りその周辺での対処を行うことにした。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「凄い…!本当に終わらせるなんて…!」

 

 スタンダールの宣言に、偽りは無かった。後から救援も増えてヒーロー側の戦力が向上したとはいえ、スタンダールが現れてからというもの脳無の勢いは明らかに落ちていった。出久がグラントリノと合流した頃には、周辺地域も落ち着きを取り戻していた程だった。

 

 「全く……先走るなと言っておったろうに」

 「す、すみませんグラントリノ。でも、何もせずには居られなくて…」

 

 帰路についた出久は、グラントリノから指示以上の無茶をしでかしたことへの説教を受けた。未だ免許を持たない彼が、保護者であるプロヒーローの見ていない所で無闇に個性を振るうことは望ましくないのだ。

 

 「それに、殆どスタンダールがどうにかしてしまったので。経歴不明ながらあんなにも優秀な方がいるんですね!」

 「おう。そのことだが……嬢ちゃん曰く、『記憶』の中の奴は今とは真逆なようで同じような奴だったとか…面白えことになったと言ってたな」

 「え…!?ダスト、スタンダールのことまで事前に知ってたんですか!?経歴とか、分かってたりするのかな…」

 

 ブツブツと自分の世界に入り始めた出久。一方のグラントリノも、考え事を始めていた。

 

 「(今回の脳無どもの異常発生……たまたまってことは無えだろう。俺たちが来ることをAFOが把握してやがったのか…?いや、違うな。だとしたらもっと強いのを寄越す筈だ。なら…何かのテストでもしてたとかか?……ちょいとばかし、不気味だな)」

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