2日目の夜。教師・ヒーロー陣は改めて予定の布陣を話し合っていた。
「もしもヴィランの襲撃が確認された場合……プッシーキャッツとウォーターホース、ラウドクラウドは生徒たちの保護を最優先に。そのまま宿舎周辺の防衛をお願いします」
「積極的に迎撃しに行くのはウチの事務所のメンバーたちとメテオルイン事務所の2人、後はオールマイトだね」
緊急時にはすぐに行動に移れるよう、しっかりと示し合わせておく。特に千雨にとってみれば、今回死柄木たちが襲撃を仕掛けてくるのはほぼ間違いないことであり…警戒してもしすぎるということは無かった。
「それと、ダストさんとオールマイト以外は最低でも2名以上でまとまって動いて下さい。最悪生徒と一緒でも構いません」
「むしろ、孤立している生徒にはちゃんとついてあげてほしい。とにかく突然行方が分からなくなる、といったことだけは回避しよう」
「原作」通りラグドールがAFOに狙われている可能性を考慮し、ヒーロー側にも単独行動を控えさせることにした千雨。全ては千雨からオールマイト、そして彼とナイトアイから根津の調整を通して決定された行動だ。
「あと、ヴィラン側から得られた情報はできるだけマンダレイに伝えるように。共有すべき情報ならテレパスで伝えて…」
可能な限り、考えつく限り。本格的に状況を動かすべく、千雨はありったけの策を巡らせていた。
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「腹もふくれた皿も洗った!お次は…」
「肝を試す時間だー!!」
「その前に大変心苦しいが、補習連中は…これから俺と補習授業だ」
「ウソだろ」
3日目の夕方。憂大きめで一喜一憂する芦戸を見ながら、オールマイトが千雨に問う。
「…肝試し自体を中止しなくても良かったのかい?」
「……死柄木たちの襲撃があっても、彼らには手を出させませんよ。それに、仕掛けてこない可能性だって0じゃない。なのに楽しみを取り上げるのは…少し、忍びなくて」
「…そうか。そうだね、私たちが少年少女の合宿を守ってやらなきゃな!」
「ええ。頼りにしてますよナンバー1」
決意を新たに、悪意を見据える2人。一方でプッシーキャッツのルール説明を聞いた美智榴は、疑問の声を上げた。
「あれ?あたしの時は直接接触OKだったよね?」
「……実は、貴女のせいだったりするのよミーティア。あんな大事件があって有耶無耶になっちゃったけど…トラウマを植え付けられた子も多かったみたいでね。『那珂さんたちやりすぎ!』って苦情が多くって。だから、その翌年から直接接触は禁止になったのよ」
「ほらな…だからあの時ホントにやるのかって言ったのによ」
「うぅ……ごめんなさい」
「まあ、気にしないで。遅かれ早かれ禁止になってたと思うし」
知らなかった事の顛末を聞かされ、思わず謝る美智榴。もっともピクシーボブの言う通り、危険性を考慮すれば美智榴がやっていなくともじきに禁止になっていただろう。
その後くじを引き、ペアに分かれる生徒たち。出久がその場の人数の関係上1人だけ余ったりしたものの、恙無く肝試しは始まったのだった。
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「────!!こ、れは…!!」
肝試しが始まって少し。「索敵塵形」にて可能な限りの範囲を探査していた千雨は、無数の反応が引っかかり始めたことに気付く。
「オールマイト!!東の辺り…20km程離れた位置から、数十……違う!!百は下らない数の人間サイズの何かが近付いてきます!!!恐らく…脳無!!」
「百か…!!いいだろう、私が行く!!」
「飛行するタイプも2割程!!お気をつけて!!」
2人の会話を聞き、教師や他のヒーローもすぐに動き出す。生徒たちも、何人かは状況を理解した様子だ。
「生徒の皆は宿舎に避難!!ここは私たちに任せなさい!」
「待って下さいピクシーボブ!まだ森に入ったままの奴らも…」
「心配するな!そのために我らがいる!!」
「プッシーキャッツ!森の方は任せた!」
「私たちはこの子らを!」
「皆、俺についてくるんだ!」
クラスメイトを案じる彼らを宥めつつ、プッシーキャッツも役目を果たすべく動く。ウォーターホースとラウドクラウドは残っている生徒たちの護衛役だ。
「ミーティア!!俺たちも行くぞ!」
「了解ッ!」
メテオルインの2人が駆け出す中、千雨も後を追って森に入りつつ頭を動かす。
「(オールマイトに教えてもらった『タフでデカい鯨型脳無』らしきのはいない……死柄木たちは来ていないのか…?)」
そう考えた直後…森の中で、地面に空いた穴から複数の人間が這い出るのが感じ取れた。
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「んもぅ!ドロドロよぉ〜!」
「しかもしんどい……これならキュレートスの口の中のがマシだったぜ」
「ダストにはアイツは使えねえ。ま、俺らも多分もうバレてるけどな…そのための
「何でもいいよ。どのみち僕の個性で眠らせて終わりだし」
「しなきゃ、仕事」
合宿先に到着していた敵連合とその追加メンバーたち。森の中に現れた彼らと共に…千雨を欺くための潜行型脳無たちも同時に各所に出現する。
「オールマイトを引きつける分はずっと向こうの方でキュレートスが吐き出した。ダミー共も5体1組。さァ……どうするんだ?ダスト」
志村菜奈の顔で、邪悪に嗤う死柄木葬。その瞳の奥に宿るのは…オールマイトではなく、千雨への憎悪だった。